1:偽威議員 ワイキキこのエントリをはてなブックマークに登録

1:ワイキキ



「駄目だな。黒人の代議士はまだ日本では受け入れられないだろうな」
「はあ、しかし、なかなかの美声の持ち主のようでつい3年前、NHK世界のど自慢大会にハワイ代表として出場したぐらいでございます」
「のど自慢大会、、何を歌った?」
「“きよしのズンドコ節”だったと記憶していますが」
「誰の歌だ?」
「氷川きよし、でございます」
「演歌か?」
「はい、さようで」
「その人物の名前は?」
「黒人の?、、加賀大和様です」
「加賀ヤマトでいいのか?」
「はい、あの戦艦大和でございます」
「わしは海軍の出だ。
加賀と大和に乗っていた。
加賀が沈没した時、2時間泳いで助かった。
のど自慢ね、、演歌、、面白いかもな。
で、おつむの方は?」
「こちらに4年程いてハワイ大を卒業しています」
「日本にいたのか?」
「はい、中学校から高校まで」
「ということは、漢字、平仮名は書けるのだな?」
「と思いますが、そこまでは」
「代議士となると大事なことだ。
確かめんと。
何でも言うことを聞く馬鹿がいいのだが。
まあ、一度見てみるか?
使える馬鹿なら考えよう。
早い方がいい、ハワイに行く。
飛行機の手配をしてくれ」
「そうでございますか?
加賀奥様のご了承は?」
「いらんよ。
そんなもん」
「そうおっしゃられても、他の女性のお子様、おまけに黒人。
一言伝えておいた方がよろしいのでは」
「お世継ぎがいないのは誰の責任だ。
加賀家存亡の危機なんだ。
わしが決まったら話すからいい」
「かしこまりました。
少しお時間を頂けますか?
私、今週はスケジュールが塞がっていまして」
「あなたはいい。
娘さんの明子秘書を連れて行く。
英語がしゃべれるからな」


「土方会長、あそこに座っているのが加賀大和です。
少し、眠そうな顔をしている方です。
ワイキキツアーのデスクの主任をしています。
歳は28。
調査によると、かなり女癖が悪いそうで、付き合っている女性10人までは確認したそうですが、まだかなりの女性がいるらしく諦めた、と言ってました」
「父君の加賀三郎先生に良く似ているな。
うん、、肌は程よい褐色か、、あれなら日本でもなんとか受け入れられる。
字は書けるのかね?」
「はい、4年程日本にいましたので漢字,仮名問題ありません。
達筆だそうです」
「そうか、、。
どうかね、明子秘書?
女性から見てあの男の好感度は?」
「あの眠そうな感じは女性の母性本能を惹きつけますね。
癖のあるハンサムだと思います」
「独身だったね?」
「はい、女癖が悪い独身です」
「いや、君だよ」
「あ、、、私ですか?、
はい独身です」
「どう、あの男は?
いい男かね?」
「まあ、、どう言ったらいいのか。
私の趣味ではありませんね」
「そうかね、、。
まんざらでもない顔をしているがね、明子君。
おつ、顔が赤いね」
「まあ、会長、、」



「どうも、ようこそハワイへ。
こちらは初めてでいらっしゃいますか?」
「ええ、、楽しみにしていました」
「そうでございますか。
では、説明させていただきます。
このデスクが橋本様の、、お名前はサチコ?ユキコ?、」
「サチコで」
「はあ、橋本幸子、、言葉の響きが穏やかでワイキキビーチのそよ風のようです」
「まあ、、」
「このデスクが幸子様ご滞在中、お手伝いさせていただきますワイキキツアーでございます。
私の名前は加賀大和、何かありましたらご連絡いただければすぐ参上いたしますので」
「これ私の携帯、いつでもいいから連絡待っていますわ。
必ずして」
「あ、、はい。
かしこまりました」



「女性にもてるな。
これで女性票は頂か」
「お客様にも手を出しているようでございますよ」
「客に?
そんなこと会社に知れたら首だろう?」
「誘惑するのはお客様の方なので会社は何もしないそうです。
彼を指名してくる女性客が多いので喜んでいるとか」
「ホストクラブじゃないか」
「はあ、もう皆様、ここハワイではセックスに狂っている、とか調査員が申してました」
「そうか、開放的になるのだな、、。
これで加賀先生も、、」


「サリーちゃんよ、ツインベッドでオーシャンフロントの空部屋ないかな。
何とかしてよ」
「今日はないようね。
パーシャルオーシャン(部分的に海が見える部屋)ならあるけど」
「その部屋、キープしといてくれる。
客に聞いてみる」 


「笠置様、遅れてすみません。
残念ながら海が見える部屋にツインがございません。
グレードを落としたらありますがどういたしましょう?」
「どうこうもないですよ、ワイキキさん。
1時間以上も待たせといて、それはないでしょう。
電話しても出ないし。
いい歳してお袋とダフルで寝れませんよ」
「連れの方はお母様だったのですか?」
「言いませんでしたか!」
「申し訳ありません。
もう少し待っていただけますか。
折り返しお電話差し上げますから」 

「サリーちゃん、なんとかツインベッドのオーシャンフロント頼むよ。
お客さん、待たされて怒ってるのよ。
困ってるのよ」
「じゃあ、今晩家に泊まるならなんとかする」
「約束するよ」

「笠置様、なんとかフロント主任に無理を言ってオーシャンフロントのツインを用意することができました。
ご宿泊予定のご家族がたまたま当ホテルの従業員だったのでキャンセルしてくれました。
つきましては50$追加料金がかかってしまいました。
こちらで勝手に決めてしまったのですがよろしいでしょうか?」


なかなか、抜け目なさそうな男だな。
これなら金さえやれば意のままに動く。
「明子秘書、加賀大和と接触したい。
セットしてくれ」
「はい」


「加賀大和君、単刀直入に話そう。
代議士になる気はないかね」
「代議士?
日本の?」
「君の父君、加賀三郎先生は衆議院議員だった。
その後を継ぐ方がいない。
地盤、看板、鞄、すべて整っている。
資金、知名度、後援会のことだ。
君は人形になってにこにこして愛嬌を振りまくだけでいい」
「にこにこしているだけで代議士になれるのですか?」
「そうだ。
わしは87だ。
60年日本の政治を見てきた。
いずれ国会は世襲議員だけになる。
新人は世襲議員によってふるいにかけられ、扱いやすいのだけを生き残らせて2世、3世、の仲間入りだ。つまり代議士世襲制度があるのだよ。
世襲の長年の知恵だ」
「能力、資質、政策で選ばれるのでは?」
「綺麗ごと言っちゃいかんよ。
そんなもんとっくにありゃせん。
利益誘導、地縁、血縁だよ、民主主義は。
皆、自らの利益になるから投票する。
エゴイズムだ、それが民主主義だよ。
選挙の期間は短い。
公示日から衆議院で12日、参議院で17日だけだ。
それだけがんばれば4年、参議院で6年も遊んで暮らせる。
選挙も簡単。
我々後援会が中心になって選挙運動をやる、組織固めであいさつ回りと必要に応じて決起集会を行う。
それだけだ。
君は、凡凡党総裁の写真ぶらさげて車の上から自分の名前を連呼するだけだ。
適当に、財政改革、環境問題、構造改革、この3つだけ大声で言えばいい。
そうだ、君はのど世界自慢大会に出たことがあるとか?
本当かね」
「のど自慢です。ええ、歌は好きです」
「それはいい、選挙カーの上で歌ったらいい。
うん、それはいい考えだな」
「そんなにいい加減でいいのですか」
「何がいい加減だ!
こうなるまで先代様の血と汗の歴史が刻まれているのだよ。
まあ、任せなさい。
抜け道はいくらでもある。
これも世襲様達のお陰だ。
法律で個人に規制があるのは選挙期間中の政治活動費用だけだ。
日常の政治活動に使う金の規制はない」
「日常の金の規制はない?」
「政治活動の名目もいい加減としたら、どうだね」
「何もないに等しいと?」
「政党に限ると、選挙期間中だろうが何の規制もない。
今度、農相になった息子が事務所でもめてるだろう。
事務所費、人件費、規制がないから、それらを名目にポルシェを買えるのだ。
金は入ってくる。
それを分らないようにするのが難しい。
その隠れ蓑かがこの規制なしの事務所費、人件費だった。
今回の選挙で旗色が悪いので、与党、凡凡党の小安総理は領収書5万添付する、と。
これは大変な譲歩で困ったことだよ。
あの息子のポルシェ、5万じゃあ、いくら領収書がいると思うかね。
名目は?
、、困るよ、これ。
だが、まだ上手い方法がうんざりするほどある。
何でも出来る、どうかね、大和君?
代議士になってくれんかね。
金、女、周到にやればすべて思いのままだ」



theme : 連載小説
genre : 小説・文学

Junk Musicこのエントリをはてなブックマークに登録

Junk Music

Junk(がらくた)Music始めました。
容量(500k)、音源、音、この状態で出すのはかなり問題あります。
ただ、寝食忘れ、狂ったように膨大な時間を?
曲作りに費やしていた男のPassionだけを感じ取っていただければ幸いです。

11・29から、インディーズ系サイトmuzieで、細切れではない曲を流せるようになりました。
Linkにサイト”dorock・Junk Music・muzie”が貼ってあります。音、声、相変わらずどうしようもありません。
   

theme : DTM、宅録、ミックス、レコーディング、機材
genre : 音楽

下:6キャラメル 復讐このエントリをはてなブックマークに登録

下:キャラメル超特急
Sweet Candy Express


6:復讐 

「ボスの指図で当たってみたが、殺しの真相を知るには無理があるということだけは理解してくれ。
分かったことだけを読み上げる。
断っておくが、殺し屋、代理人、依頼人の名前は明かせない」
「頼む」
「最近マルセイユのある代理人をとおして殺し屋がバンクーバに来ていた。
世界でも五指に入る殺し屋だ。
標的は元テロリスト。
依頼があったのは約3か月前。
依頼人は仏外務省筋の人間らしい、、」
「依頼人の情報をもう少し知りたい」
「表に出せるのはこれだけだ」
「ほんの少し前、レジナルド・ダリを調べてくれるように頼んだのを覚えてるか。
最近カナダ大使になった」
「アラン、俺はカルロスの指図で動いてるだけだ。
彼の許可なしではこれ以上言えない」
「標的がテロリスト。
依頼人は仏外務省筋。
もう少し教えてくれないか」
「、、、、、これから言うことは聞き流してくれよ。
依頼人は最近、米大陸のどこかの国の大使になったという噂だ」
「ありがとう。
それから、殺し屋と緑茶とシーウィード(海苔)の付いた寿司との関連は何か分かった?」
「ノー」
「なんとか頼むよ。
もしかして殺し屋は東洋系、日本人の可能性があると思う」
「世話が焼けるぜ。
一応当たってみるが期待はしなさんな」
「ありがとう。
カルロスによろしく言っとていくれ。
それからもう一つ。
レジナルドの近々の予定と彼の交友関係も調べてほしい。
特定のボーイフレンドがいればそいつのことも知りたい。
おっと忘れるとこだった!
レジナルドの顔写真も」
「、、、、依頼人はその男だと言った覚えはないが」
「依頼人の件とは別だ。
頼むよ」
「彼の顔写真はインターネットで見れるよ」 

アランは仏が任命した米大陸大使の着任日をインターネットで調べた。
この1年で大使が代わっていたのは、着任して2か月にも満たない仏駐カナダ大使だけだった。

仏駐カナダ大使、レジナルド・ダリの顔写真をプリントアウトした。
ふくよかな柔和な顔をしていた。
顔のパーツ毎に落差が激しかったがうまくバランスを保っていた。
間隔が開き加減の目は射るような冷たさで、それを丸い鼻が隠していた。
左口元の下がり加減に見られる傲慢さをたるんだ顎がコミカルに見せていた。 
意図的にそう見せているような周到さ、不自然さを感じた。

数時間後、珍しくカルロスから電話があった。
「アラン、殺し屋の件は忘れてくれ。
いいな。
忘れるんだ!」
「何かあった?」
「バンクーバーの同業者が代理人に頼まれこっちで殺し屋のお膳立てをした。
その殺し屋は同業者にとって大事な人間ってことだ。
俺はその同業者に借りがある。
忘れろ!
アラン、いいな」

それから一週間余り、ウィスラーのアランの家で過ごした。
モモの相手、マウンテンバイク、マコトの買い物、何をするでもなく時が来るのを待っていた。
レジナルドに復讐する時が来るのを。

俺たちの気持ちはレジナルドが黒幕だと分かった時点で既に決まっていた。
ロシュトーを殺してまでも守ろうとした彼の将来、野心を粉々に打ち砕くつもりだった。
失敗は許されなかった。
ロシュトーの友人関係を調べて俺たちを割り出す可能性もあった。
ロシュトーの背後に潜む事実関係を俺たちが知っていると推測して、殺そうとするかもしれない。
下手するとマコト、モモも、、、。

数日後、情報屋からガスタウンのアランの事務所に電話が入った。
「仏大使は2週間後の5月6日、木曜日、ワシントン・DCへ行く。
就任挨拶のためだ。
中国首相来日など米政府の都合で延び延びになっていたらしい。
それから5月9日までは予定なし。
どこへ行くかは想像がつく。
NYにコンドミニアムを持っている。
月に2回、第2,第4の週末は必ずそこだ。
ボーイフレンドに会いにな。
コンドの住所を知りたいか」
「頼むよ」
「350・W・14ST.#909号。
Tel×××××××。
建物の名はヴィレツジ・ポンイト(Village.Point)コンド形式のア パートだ。
ドアマンはいない。
ついでにボーイフレンドはヴィレッジのハドソン通りに住んでる。
名前はクリストファ・リー、NY大の学生だ。
歳は22。
専攻は映像。
住所は、513・ハドソン通り(Houdson ST)#706。
W10丁とクリストファー通りの間、Tel×××××××」
「クリストファー・リーは中国人か?」
「ベトナム系のな」
「ボーイフレンドの住所まで調べてくれたのか。
ありがとう。
どんなことでもいい、彼をもう少し調べてくれないかな。
来週あたり電話するから分かったことだけでいい。
それに写真も」
「アラン、一つが終わればもう一つ。
切りがないな。
カルロスの命令だからやってやるよ」
「どうせ、パソコンの前に座ってるだけだろう」
「それがどれだけ苦痛か分からないだろうな」
「恩に着るよ。
カルロスは今何処に?」
「知らんな。
電話してみな」
「名前教えてよ。
これからまだ頼むことがありそうだから」
「まだあるのか。
恐いな。
俺の名はラッキーワンだ」
「変な名だな」
「余計なお世話だ」 

アランはカルロスの携帯に電話した。
「誰だ?」
「カルロス、どうしても頼みたいことがある。
どこに電話したらいい」
「この番号に30分後。×××××××」 

アランは事務所を出て向かいのバーに向かった。
「NYで2万$分のコカインを手に入れたい。
誰か紹介してほしい」
「お前は何を考えてる!
殺し屋に今度はコカイン!
俺に分かるように説明しろ。
でなきゃあ駄目だ」
「殺されたロシュトーは俺の数少ない友達だった。
それを仕組んだ奴に復讐をしたい。
彼はテロリストだったけど俺と同じ孤独な生き方をしてきた。
親父はナチスパイの容疑をかけられ病死、母親は狂い死に。
子どもの頃からナチ呼ばわりされ除け者にされ、まわりは敵ばっかりで誰一人、友達も身内もいなかった。
俺と同じなんだ。
殺しを仕組んだ奴はロシュトーを利用して出世した。
邪魔になって殺した。
許せない」
「どうする気だ」
「そいつの野心を潰す。
取り敢えず2万$分のコカインとデートドラッグ(記憶を無くさせる睡眠薬が入った薬)10錠ぐらいほしい」
「期限は?」
「5月4日、火曜日に受け取れたらベストなんだけど」
「NYでほしいのか」
「うん」
「希望する場所は?」
「ないよ。
向こうに決めてもらっていい」
「3日、夜10時、電話をくれるか」
 
一週間後に動いた。
アランは仕事で何度もNYに行ったことがあった。
俺も昔いたことがあったので土地勘があった。
だが昔の友達とは会いたくなかったので工作が必要だった。

マコトは何も言わなかったが、彼女なりに察していたようだ。
「明日から2週間留守にする。
ロシュトーを殺した犯人に復讐をする」
 落ち着いた声でマコトが聞いた。
「誰が殺したのか分かってるのね」
「カナダ駐在仏大使だ。
自分の将来のために邪魔になったロシュトーを殺した」
「どうしてもやるのね」 
彼女が俺を見た。
「殺しはしないよ。
蹴落とすだけさ」
「ロシュトーが復讐を頼んだの?」
「彼はそんなことを頼むような人間じゃない。
むしろ逆だろうね。
マコト、殺しはしない。
しがみついてるものを壊してやるだけだ。
アランは十日ぐらいで無事帰す。
約束するよ」
「そんなことをして何になるの。
放っておくことはできないの。
もうロシュトーはいないのよ。
彼が復讐を望んでると思う?
友達を危険な目に遭わせたいと」
「俺たちの結論はもう出てる。
これから先どこまで上に昇進するかは知らないが、仮に今以上の権力を握ったらどうなると思う。
簡単に殺し屋を雇うような人間なんだ。
目障りな人間をまた排除しようとしないだろうか」
「耕三、先のことは分からないわ。
彼もあなたたちに復讐を企てるかもよ。
こんなのどこかで断ち切らないといけないのよ。
そうじゃないと前に進めないわ、、、、。
もう何を言っても駄目なようね」

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

2:偽威議員 武蔵このエントリをはてなブックマークに登録

2: 武蔵



「武蔵、俺に代議士にならないかと誘いがあった」
「親父の加賀の跡継ぎか」
「跡継ぎじゃあない、お世継ぎ様だ」
「笑えるな!
お前がお世継様なら俺は大統領にでもなれそうだな」
「無理だな、代議士の家系に選ばれた者の特権だ」
「今の小安首相といい、代議士の世襲は増えてるようだな」
「後援会長の感じでは、世襲息子が馬鹿ほどいいみたいだ」
「扱いやすいか。
利権、金にがんじがらめだろうからな」
「当分、馬鹿面していようかと思ってる」
「大和、本気か」
「たまたま片親が代議士だった。
それならやってみたいだろう」
「私生児のお前がそう感じるぐらいだから、世襲息子達は当然の成り行きか。
居心地はいいんだろうな」
「あいつらとは違う」
「何も言わんよ」
「どうだ、シリコンバレーは?仕事面白いか」
「目が相当病んでるな。
慢性疲労越して赤信号が点滅だ。
もうディスプレイ見たくない」
「30前で失明か。
コンピューターがない所に行くことだ。
海がいい、プーケットとか。
3ヶ月、浜辺で遊んでれば目に巣食った悪魔達も逃げるさ。
だが、又、同じことを遣り出したら数日で後戻りだ」
「黒んぼで大丈夫なのか?
日本で」
「俺の黒さは許容範囲だとよ。
ぎりぎりな」
「笑えるな。
真っ黒ならアウトか。
ふざけた国だ」
「そう言うな、それでも俺達の国だ」
「お前みたいな黒んぼが、日本を俺達って言うのもおかしいな」
「お袋の話では、加賀三郎は俺をすぐ認知したらしい。
お袋とどういう風に知り合ったのか知らない。
女遊びはひどかったらしい。
それでも日本人の間には子どもが生まれなかった。
外国人の間にしか生まれていない。
血を継いだ後継者が必要だった。
黒でもな。
俺が生まれたのは加賀が50の時だ。
武蔵、俺はこの話に乗る」
「黒人、黒、黒んぼ、ニガー、何とでも汚く言われるぞ。
惨めな思いするぞ」
「黒いのは事実だからな。
利用できればな」
「利用?」
「今まで日本ではなかったことだ。
黒人が代議士になるなんてな。
インパクトはでかい。
これから人口は減る。
ますます他の国の人との交流が増える。
人々の意識を少しは変えれるのかな。
まだ白人と俺のような黒、他のアジア人にはヘビーな対応をする国だ。
武蔵、羽目を外して日本を見てみようぜ。
やる価値はある」
「俺を引き込むつもりか?」
「そんな若さで失明したくないだろう。
俺が代議士になったらお前を秘書にする。
どうだ?
乗らないか?」
「お前の秘書?
想像できないな」
「今の政治どうだ?
狂ってると思わんか?」
「また、抽象的だな。
青いな、大和、そんなので代議士務まるのか?」
「誰でもやれるさ。
慣習に囚われ,利権に目ざとい世襲と年寄りばっかだ。
彼等とは生活環境が余りにも違う。
世襲政治家達に俺達の感覚なんてない。
生活の痛み、苦しみなんてな。
所詮、凡凡のせんずりだ」
「殆ど当選して出てくるな」
「日本の社会が小泉で変わった。
アメリカ型の社会みたいになってきた。
その内、ここのようにクレジットカード持ってない人が社会の落伍者とみなされ、
現金いくら持っていようがレンタカーさえ借りれなくなる。
ますます富める奴と貧しい人の差別化が進む。
その内、カルフォルニアと同じように3−ストライク法が出来る」
「3−ストライクはないよ。
刑務所の人口がもう満杯でカルフォルニアは首吊り状態だ。
パリス・ヒルトンが3−ストライクで捕まれば面白いけどな。
金持ち連中が抜け道探すだろうが。
政治を変えたいか?」
「変えたい。
20代の若者がインターネットカフェで寝泊りして日雇いで生活している。
考えられるか?
一昔前に。
20代なんて何でもできる。
前には広大な白いキャンパスしかない。
どうにでも描ける」
「そんな生活しか出来ないなら外国に出た方がましだな。
夢、希望がまだある」
「今の若者にはそれさえない、出来ない。
完璧にくもの巣に囚われの身だ。
DVDにしこたまテレビ番組録画してそのままだ。
見もしないのに溜める。
容量が足らなくなってHDD買う。
狂ってる。
なぜそんなことやる?」
「無駄なことに金、体、頭を浪費しているか。
似たようなことやっているからお前みたいに言えないな」
「溜めるために録るんだ。
目的が明確じゃあない。
やがて目的自体、どうでもいいものだと、気づく。
そのどうでもいいものが多い。
メディアが加担して駆り立てる」
「どうやって変える?」
「簡単だ。
世襲議員達が嫌うことをやればいい」
「大和、簡単じゃない。
法律作るのは彼等だ」
「詰まる所、選挙だ。
世襲代議士達は組織票に護られている。
それに宗教団体お抱えの正大党が手助けだ。
それを壊すには若者の投票率を挙げることだ。
2/3は棄権している。
5%上がれば世襲も変わる。
一般大衆の目線で物事を見れる政治家を選ぶ」
「単純じゃないな。
お前も世襲だし、いつの間にかお仲間に入っていたりしてな」
「投票は義務だ、と小学校で教育することだ。
どこかの国みたいにある期間、罰金制度を設けるのもいい」
「世襲議員は反対するな」
「俺見たいなずぶの素人の政治家が増えれば確実に変わっていく。
国会議員に20%の新人枠を置く、70歳定年制、これでも変わる。
武蔵、小安の野朗、親父の秘書やっているらしいぞ」

(パリス・ヒルトン:ヒルトン財閥相続人・トルブルメーカー)
(3-ストライク法:カルフォルニア・1994年、過去に2度有罪判決を受けた人は、万引きでも自動的に25年の刑務所行き)

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genre : 小説・文学

3:偽威議員 参議院選挙このエントリをはてなブックマークに登録

3:参議院選挙

土方会長と大和は挨拶回りに出かけた。
支援者、後援団体、支援会社、約50ヵ所を訪問した。
土方は正直、驚いた。
殆ど全ての女性が大和に何らかのメッセージを投げた。
低学年の子どもから婆さんまでもが。
色気、誘い、愛、こんなにもてる男を見たのは初めてだ。

羨ましかった。
87年間の自分の人生は何だった!
自問で頭の中がはちきれそうだった。

女性達の視線が大和に降り注いでいる。
枯れ木が注意を引こうとその横で喚いている。

それでも大和は普段と変らなかった。
持って生まれたものなのか。
自宅での夕食後、酒を手にしたとき、もう自問していなかった。

家の82の婆さんまでもが、、注意を引こうと、色気を出そうと、足掻いていた。
これじゃあ、適わない。
婆さんの色気を見るのは40年振りだ。
こんなに強烈だったのか?
別の自問が顔を出し始めた。
婆さん、俺を愛してたのかな、、、、?

「今日は、どうも色々ありがとうございました」
「これで、皆が君を知ったわけだ。
黒人は駄目だ、、!
大和君、気にしないでくれ。
支援者の中にそう言うのがいた。
わしは奇麗事は言わん。
事実を言う。
気を悪くするかもしれんが」
「お願いします。
陰でこそこそ言われるよりは、黒、黒んぼ、、
どうぞ、会長がお使いになりたいお言葉で」
「だが、これで彼等も変る。
実際、変わってもらわないと今度の選挙は厳しい」
「参議院選挙ですか?」
「主民党が過半数を取る勢いだ。
そうなったら、選挙だ。
大和君、意外と早く代議士になれるかもしれない」
「と、おっしゃいますと」
「参議院を主民党が過半数を取れば法案は通らない。
予算案ぐらいしか。
どうなると思う」
「衆議院選挙ですか?」
「そうだ。
しかし、凡凡党がいくら勝っても情勢は変わらない。
参議院で法案は通らない」
「小安首相を変えても」
「同じだ。
もう首相が誰になっても。
こんな状態では誰もやりたくないだろう。
皆、情勢が分ってきたから首相退陣なんて言わない。
首相はどんな状況でも辞めないよ」

「何か手はないのですか?」
「不ぞろいの絆創膏貼った農相が、
無精ひげでテレビに出てはな。
締まりのないガーゼがだらしなくほつれていた。
野良仕事の気分ではな。
もう若者のお笑いの世界だ。
おまけに満足に話せない。
領収書は出さない。
駄目だな、これじゃあ」
「農相を代えればいいのでは?」
「代えても無理だよ。
皆、同じ問題を抱えている」
「打開策は何もないと?」
「北朝鮮が人質を返してくれたら勝てる」
「それは、、」
「無理だ。
小安を嫌っているからな。
小安自身、北朝鮮がなかったら首相になっていない。
その内、今IAEA(国際原子力機関)が査察をしようとしているが、
その機材の運搬、諸経費、数億を誰が払っているか公表したら小安は死ぬ」
「日本ですか?」
「確実ではないが、ある国際機関を通してと噂がある」
「日本は金は出さないと言ってましたが」
「6者会議、米の都合だ。
日本だけ何もしないわけにはいかない。
米と北朝鮮は国交正常化するかもな。
日本に知らせずに。
今、小安首相の味方はどこにもいない。
誰もが選挙に負けるように仕向けている。
最近、横田めぐみさん生存説を唱えた工作員、安明進が覚醒剤で捕まったらしい。
これも一種の小安嫌いだ。
今度、赴任する駐韓大使の,外務省内でのレベルが低いので韓国政府が激怒して小安をいじめた、って噂だ」
「そうなのですか?」
「わしの情報ではな。
今度の通常国会で成立した改正国家公務員法は、2008年中に官房長官を長とするセンターを内閣府に設置すると規定した。
これまでは各省庁の官房長が再就職あっせんをしていたのを3年以内に禁止してセンターに一元化するということだ。
これに、官僚は激怒している。
首相をいじめたくてしようがない。
主民党は、5年間凍結すると言った。
今までのように各省の官房長官が牛耳っていいと。
今の主民党は凡凡党より官僚経験者の候補者が多い。
社会保険庁もだ。
首相に悪者にされ、解体して首だと言われて被害者意識しかない。
社保の連中はそのレベルだ。
保身しかない。
主民党は、首だと言わないから、首相に不利になる情報を主民党に渡しているって噂だ」
「この半年でそんなに情勢が変わったのですか」
「世襲様様、だと思っていたが、凡凡党も正大党も今回は過半数を取れない。
これまでの野党は真剣に政権を取ろうなんて思っていなかった。
これまで野党だった会社党と凡凡党は裏で出来ていた。
凡凡党から金が来ていた。
当時、国会、委員会、シナリオ通りに皆動いた。
たまたま、大根役者根性出したのが、弾みで撲ったりすると後で謝罪した。
裏では仲良しだったんだ。
だが今回、主民党は政権を本気で取る気だ。
違うんだ。
これまでと」
「どうなると予測されますか?」
「凡凡党も正大党も政権にしがみついていたい。
小安首相も主民党の大沢も党内の人気はない。
大沢なんて若手に嫌われている。
彼等が凡凡党と組む可能性もある。
この政党間の駆け引きは誰も読めんのだよ。
予測どおりに行ったためしがないんじゃあ。
双方が分裂するかな」
「じゃあ、私は代議士には?」
「組織を引き締める。
わしの最後の選挙だ」

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キャラメル超特急
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7:NY



4月30日、金曜、午後4半時、NYラガーディア空港に降り立った。
タクシーでヴィレッジ・ポイントに向かった。
一週間以上の滞在を条件に、旅行者用に3部屋が貸し出されていた。
運良く、その一室をバンクーバで2週間予約することができた。
もちろん偽名だ。
アランがトム・スコット、俺がマーク・アンソニー、日系二世。カルロスが本物のパスポート、免許証、を用意してくれた。


5種類のカツラを持ってきていた。
ラガーディア空港のトイレで変装した。
アランは小さめの横長の眼鏡に口髭と顎髯を付けた。
俺は丸眼鏡をかけて、真中が禿げたカツラを被った。
これがNY滞在中、俺たちの基本スタイルになる。
万が一、友達に出会っても分からないだろう。 

部屋は11階の1104号室だった。
出入り口を見渡せる部屋を頼んでみたが、残念ながら空き部屋は他に無かった。
アランがレジナルドのコンド、909号との位置関係を探りに9階へ行った。

「耕三、あの部屋だよ」
アランが指差した部屋は、大きな銀杏の木がある中庭の約30m先にあった。
2階下の斜め右約40度の角度にあった。
カーテン越しにテレビとソファが見える、居間のようだ。

「ここからあんなに見えるんじゃあ、向こうからも見えるってことだよ。
この部屋とここら周辺では、この変装は絶対条件だよ」
「アラン、お前、ランボーのスターロンに見えるんだよな。
目立つよ。
髪、サラリーマン風に切ってやろうか」
「カツラ付けるにはちょっと長いんで頼むかな。
腕前は?」
「自慢じゃないが床屋にはもう20年近く行ってない」

30分後、シャワー室から角刈りのランボーになったアランが、俺を呪い殺しそうな顔付きで出てきた。

「自然な顔をしろよ」

駄目だ、顔から凄味が抜けない。
俺が掛けていた丸い黒ぶちの眼鏡を掛けてみた。
どじで間抜けなサラリーマン・ランボーとスーパーマンのクラーク・ケントを足して2で割った感じだ。
これでもさっきよりはいい。

909号室の明かりが点灯した。
俺たちは身を沈めた。

アランが窓枠をスクリーンに、909をしばらく窺っていた。

「人がいる。
若い。
彼じゃない。
あれがボーイフレンドのクリストファ・リーかな。
写真がほしいな。
耕三、情報屋に電話して来るよ」

記録はできるだけ消しておきたかった。
携帯は二人の連絡の時だけにした。
それ以外は公衆電話だ。

運良く向かいの軽食堂の中にクレジットカードも使えるボックス型の公衆電話があった。
カードから足が付く危険を犯したくなかった。
硬貨を使った。

「ラッキーワン、クリストファー・リーの顔写真がほしい。
それと、何か情報があったら」
「俺のe-mailにアクセスしてくれ?########。
30分後に」
「OK。
レジナルドがNYにいる可能性は?」
「、、レジナルド?
この前も言ったが、依頼人は彼だと言った覚えはないぞ」
「分ってる。
可能性だけ」
「、、俺の情報では今週は第一だからネガティブだ」
「分かった。
じゃあ30分後に」 

間違いなかった。
部屋にいたのは彼だった。
リーはハンサムな顔立ちをしていたが、全体がまとまりすぎていた。
これといった特徴が見当たらない。
面長で額の真中に米粒ほどの黒子が二つあった。

『クリストファー・リー、22歳。170cm、55kg。
祖父は元ベトナム軍大佐。
仏軍とともにベトミンと戦う。
その功績により1953年、一家は仏移住。
父親は7年前に病死。
仏人の母親は再婚、以来、彼との接触はない』
 
ベトミン:
(ベトナム独立同盟。1941年ホーチミンが中心となって結成した民族統一戦線組織)

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4:偽威議員 カラオケこのエントリをはてなブックマークに登録

4:カラオケ



こんなに早く総選挙が来るなんて、
参議院選挙で凡凡党、正大党が負けて過半数を取れなかったからだ。
大和君にとってはチャンスだ。
女性票は完全にこっちのものだ。
問題は男性票だな
丸っきり駄目だ。
ジェラシー、ひがみ、、やきもち、、男も女と同じだ。
自分を差し置いて他の男に熱を上げる、、、。
もてない男には拷問だ。
わしもそうだった、、。
同じ状況だ。
ひがみか、、どうしようもない。
ねたむわな、、ひがむわな、、嫉妬するわな、、
あんなにもてたら。

男達よ、しようがないんだよ。
大和君はもてるんだから。
あきらめてくれよ。
、、、、無理だな。
どうしてもねたむわな、、、。
ほんの一握りの男の特権だ。
だが、彼の場合は子どもから婆さんまで、すべての年代に及ぶ。
どういうことなんだ。
若い頃のわしの方がハンサムだと思うのだが、、。
このままでは負けてしまう。
男性票が必要だ。


今晩は、本日テレビ・ニュース、ONEの尾村です。
衆議院選挙投票まで後4日になりました。
候補者の熱はヒートアップする一方です。
今夜は、未だかってなかった珍現象をレポートします。
G県では、加賀三郎、前外務大臣の後継で長男、加賀大和候補が出馬しています。
加賀候補はアフリカ系日本人です。
母親はアフリカ系米人です。
これまで日本の選挙史でアフリカ系日本人の出馬はありませんでした。
これでも、特筆すべきことなのに、もう一つの奇妙な現象をお伝えしたいと思います。
それは、全ての女性が加賀候補を支持している、ということです。
ほぼ100%と言っても過言ではないでしょう。
その反面、男性の支持は、ほとんどない模様です。
このように性別で支持層が分れるということがこれまでの選挙であったのでしょうか?
今夜のゲスト、選挙アナリストの鹿児島さんに聞いてみたいと思います。

「鹿児島さん、このようなことはこれまでの選挙でありましたか?」
「はい、そうですね。
ここまで一方的に偏る支持層、、、
いえ、、間違いました。
性別によって分れる、ということは私、この30年近く国政、地方選挙に携わってきましたが初めてです。
私自身、どうして、、、という思いで答えを見出せません。
表層的には、候補者があまりにも女性にとって魅力的だからだと思います。
しかし、アカデミックに選挙を研究している者にとって、こんな理由で、、
恥ずかしいというか、、
情けないというか、、もっと学術的な、理論を伴った裏づけがあると思いたいわけでありまして」
「で、学術的な理由があるのでしょうか?」
「いえ、まだ研究の段階です。
先の言葉を補足しますと、世の男性は、皆自惚れが強いのです。
加賀候補の場合は肌の色が違います。
なんでこんな男に、、なんて気持ちがありまして、とても女性を理解できない。
例えば、長年連れ添った仲むつまじいご夫婦で、奥様が急にある男に熱を上げたらどうします?
新婚まもないカップルの片方が、突然、自分に見向きもしなくなったらどうします、、、?
耐えられますか?
しかもですよ、肌、」
「鹿児島さん!
その言葉は!放送中です」
「あ、、、はい、私、鹿児島は絶対に無理です!
我慢できません。日本男子として断固、」
「先生?
先生?
先生、、」
「あ、、はい」
「放送中です。
ちょっと、話が逸れましたか、、、ね?」
「失礼。
それほど、世の中が変わったということでしょうか?
例えば、加賀候補を支持される方々は女性、ゲイが圧倒的です。
男性は皆無に近い。
悲しいでしょう、、
こんなことが国政選挙で起きるなんて、
、そういう訳で、私、この選挙を最後にアナリスト引退を考えています」


「明子君、男が好きなカラオケを年代別に知りたいのだがね。
曲を教えてくれたまえ」
「歌でございますか?」
「そうじゃあ、男性票が欲しい。
大和君は、NHKのど世界自慢大会に出たぐらいだ。
選挙カーの上から歌わせる。
どうだ、いい案だろう」
「はあ、、会長、世界のど自慢大会ですね?
はい、若者にはミスチル、スガシオ、倖田來未、ドリカム、
年配の方には、中島みゆき、高橋真理子、テレサテンでしょうか」
「年代別にリストアップしてくれ。
男が好きな曲だけだ。
大和君が歌えるか確認しよう?
個人的なんだが、
村田英雄の“王将”、千昌夫の“影のワルツ”、
国民歌手の三波春夫の“チャンチキおけさ”も忘れんようにね」





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5:偽威議員 衆議院議員このエントリをはてなブックマークに登録


5:衆議院議員


G市駅前は、群集で身動きが取れないほどだった。
二日後の投票日を前に、加賀大和がマイクを手に歌っていた。

秘書の明子は曲の順序を特に考慮した。
どうしても若者の票が欲しかった。
若者用、中年用、若者用、老人用、中年用、若者用、老人用、
よし、この順でいいわ。


今晩は、本日テレビ・ニュース、ONEの尾村です。
先の参議院選挙の歴史的な敗北を受け、
凡凡党内、反主流の造反によって解散に追い込まれた衆議院選挙の投票日がいよいよ二日後に迫りました。
先日、レポートいたしましたG県、加賀大和候補に新しい動きがありました。
金曜キャスターの小石さんがレポートします。

加賀大和候補はアフリカ系日本人です。
母親はアフリカ系米人です。
先日、ここで起こっている奇妙な現象をお伝えしました。
女性の支持が異様なほど高い反面、男性の支持は得られていない、というものでした。
しかし、私が今日、取材した限りではそうではありませんでした。
加賀候補の演説に集まっていた聴衆の約1/3は男性でした。
お話を伺っていますのでお聞きください。

「黒人が日本の代議士になったらどうなるかと思ってたが、
はるみちゃんの“北の宿から”
あんなに情感入れて歌えるんだから、肌は黒いが日本人の心を持ってるね」

「驚きましたよ。
ORANGE RANGEの“上海ハニー”の後に北島三郎の“与作”ですよ。
こんな組み合わせ信じられますか?
でも、彼等より歌上手かったですね」

「感激したのう。
わしの年で歌聴いて感激するなんて考えられんことです。
“本気かしら”島倉千代子、いいいね。
涙が出てきた。
あれは、、何時だったかな、昭和の42年頃だよ、、」

「すげー落差。
ミスチルの“Tomorrow never knows”そして舟木なんとかさんの“高校三年生”だよ。
俺、投票棄権よ。
一回も行ったことない。
代議士の面見りゃあ分るっぺー。
サラダ油で髪の毛洗ってんのばっかでよ。
あいつらのだみ声、遠慮したいよな。
それで棄権してたんよ。
俺の大事な歌なんてどうでもいい連中だ。
ヒップホップから民謡、演歌、、。
これだよ!
クロスオーバーっのは」

「良かったですね。
サザンの後に北島三郎ですよ。
凝ってましたね、演出?
ユーミン、竹内まりや、梅沢富美男ですよ」
「どういうことでしょう?」
「レポーターやってて分らないのですか?
南と北、それに松竹梅」


万歳!万歳!万歳!万歳!

「おめでとう、大和君、おめでとう。
よくがんばった。
これで加賀家の日本200世襲家元、安泰だ。
おめでとう」
「ありがとうございます。
これも会長と皆様のお陰です。
どうもありがとうございます。
ああ、岸本さん、明子秘書、ほんとうにありがとうございました」
「とんでもございません。
三郎先生も喜んでおられますよ。
私も嬉しくて、、、」
「大和さん、、、、女性の方がお会いしたいと待合室で、お母様のお友達のようです。
ハワイから来られたとか」








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6:偽威議員 出生の秘密このエントリをはてなブックマークに登録

6:出生の秘密



「ヤマト、おめでとう」
「日本語を?」
「米流だと、コリアン系日本人。
ここでは在日韓国人、、、だったわ」
「日本でお生まれに?」
「遠い昔よ」
「ハワイにお住まいですか?」
「カルフォルニアのオークランドに住んでいます」
「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「キャサリン・ウォーカー」
「お袋とは?」
「ファニーとはシュープリームスのそっくりさんショーをワイキキでやっていたの。
あなたにも会ってるわよ、何度も、小さい頃、赤ちゃんの時」
「そうでしたか。
お袋が昔、ショーをやっていた、とは聞いていましたが。
あなたと?」
「ええ、もう一人、エセルと3人。
若かったわ、私たち。
想像つかないでしょう」
「いえ、聴きたかったですね、、。
お袋が歌っている記憶がないので、、
シュープリームスを歌っていたなんて」
「一度もファニーの歌、聴いたことがないの?」
「はい」
「そう、、」
「今日は、わざわざ私に会いに来られたのですか?」
「ハワイにいるエセルからファニーの子どもが日本の選挙に出馬した、って連絡があって。
あなたはよくテレビで報道されているようよ」
「知ってます」
「実は、ファニーと約束していたことがあったの。
あなたが大きくなったら事実を伝えて欲しいと。
時間を作ってくれない?」
「どちらにお泊りですか?」
「Pホテルに」
「申し訳ありません。
今日は無理なので明日でよろしいでしょうか?」
「ええ」
「何時がよろしいでしょうか?」
「当選して忙しいのに大丈夫」
「構いません。
挨拶回りなんて何時でも出来ます」
「10時にPホテルのロビーで」


「何、大和君、明日の予定はどうするんだ!
当選した後の挨拶回りが大事なんだ。
当選して知らん振りされたらどうだ。
駄目だ!
明日は駄目だ!」
「土方会長、昼過ぎまで時間を下さい。
わざわざオークランドから会いに来てくれました。
お願いします」



「お袋と約束?」
「もう充分あなたは大人ね。
私が元気な内に伝えておこうと思って、。
あなたの出生のこと、、、。
ファニーは、ヤマトが大きくなったら伝えて欲しい、と言った。
あなたが知りたくなければ話さない、」
「お願いします。
親父のことを聞いても何も話さないし、話したくなさそうでした。
日本の代議士だと知ったのは亡くなる直前でした。
何度か調べたのですが、、、。
何時かこの日が来ると信じて生きてきました。
どうかお願いします」

「日本から来ていた外務大臣の歓迎レセプションでショーをやって欲しい、と州知事から直々に頼まれたの。
外務大臣が私たちをひどく気に入った、と言ってた。
日本はハワイにとって特別な国、大事なお客様よ。
断れなかった。
私たちはハレクラニホテルに向かった。
ショーの後、すぐには帰れなかった。
ファニーは大臣に呼ばれたわ。

1時間後、知事の秘書と外務省の役人が来て、ファニーは後で送るから、と言った。
エセルと私は先に帰った。
翌朝、ファニーから電話があった。

「キャス、昨日の夜送ってくれたの?」
「ファニー?
どうしたの?」
「私を部屋まで送ってくれたの?」
「私とエセルは先に帰ったわよ。
知事の秘書と外務省の方が、あなたを送り届けると、、
どうしたの?
何があったの?」
「記憶がないのよ」
「記憶がない?
今、自分の部屋?」
「ええ、どうやって帰ってきたのか、、
大臣の部屋でお酒を飲んだのは覚えている。
それからが分らないの」
「そんなに飲んだの?」
「いえ、そんなに、、ワインだけよ」

知事の秘書に確認した。
外務省の方が送った、と言った。
それから何があったのか分ってきた。
生理がなくなってお腹が大きくなってきた。
ファニー、妊娠していたの。

州知事、州政府、領事館、相手にしてくれなかったわ。
メディアに訴えるよう、ファニーに言った。
ホノルル・アドバタイザーの記者とアポが取れて待ち合わせ場所に行ったけど相手にしてくれなかった。
証拠がない、相手は日本の外務大臣だろう、そう言った。
当然といえば当然ね。
私たち、どうしたらいいのか、、分らなかった。
ファニーは、、こんなことあなたに言いたくはないけど、、」
「すべて隠さずお願いします」
「、、ファニー、、堕ろすつもりだった、、
でも、、気が変わった。
2ヵ月後、外務省から役人が来た。
パーティで知事の秘書と一緒に来た人よ。
情報が向こうに行ったのね。
中絶して欲しい、と言ったわ。
そうしてくれれば一千万円払う、と。
あの夜、何が起きたのかはっきりした。
ファニーはあなたを生むと決めた。
許せなかったの。
あなたが、、生まれれば、、
ごめんなさい」
「いえ、、どうぞ、、お願いします」
「、、証拠として断罪できると思ったの、、。
ヤマト、、、大丈夫?」
「、、、ええ、、、、ちょっと、トイレに、、
よろしいでしょうか?」

やっぱりそうだった、、
何だ、、俺は、、
何なんだ、、
なぜだ、、こんなとこに、、
生まれてはいけなかったんだ、、、
生まれては、、、、、、
俺は、、、
生まれては、、いけなかったんだ、
なぜ、、生んだ、、お袋、、、
なぜだ、、
、、、、、
代議士の息子、、
聞いてあきれるぜ、、、、

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7:偽威議員 小安首相このエントリをはてなブックマークに登録

7:小安首相



「ヤマト、大丈夫」
「はい、お願いします」
「つらいでしょう。
でも事実を知ってほしい。
あなたに乗り越えてほしいの。
ファニーもそれを望んだから私に伝えてくれるように手紙に書いたのだと思う。
どう、?」
「ええ、ぜひ全てをお教えください。
お願いします」

「あなたが生まれてすぐ外務大臣の秘書という方が来た。
岸本と名乗った」
「岸本、、家にもいます。
先ほどお会いしませんでしたか?」
「いえ、、相当年配の方だったわ」
「彼のお父さんでしょうか、」
「訴えないでくれ、と言った。
大臣の子どもだと確認できたら認知する、と。
ファニー、訴えるつもりだった。
でも、あなたが変えた。
あなたを授かって幸せを知ったのよ」
「そうですか」
「あなたに夢中だった。
認知されてすぐに、ファニーはあなたを連れて日本に行った。
大臣はあなたに日本語を覚えさせようとした」
「そうでしたか。
なぜ東京にいるのか分りませんでした。
日本語をですか?
だからあんないい生活ができたのですね」
「大臣の後継者があなたしかいない、とファニーが言ってた」
「お袋には恋人か付き合っていた人は?」
「私が結婚した相手はファニーの恋人だった。
結婚してオークランドに行った」
「そうでしたか」
「結婚するまではよく電話、手紙のやりとりをしていたけど、、あなた達はどのくらい日本にいたの?」
「お袋が病気になってハワイにいい医者がいるということで12の時に戻りました」
「そんなに居たの。
不思議ね、私も病気だったのよ。
ファニーと大体同じ時期」
「そうでしたか。
今は、」
「もう大丈夫よ。
ファニーが亡くなった時動けなかった」
「あの時、オークランドから男性が見えました。
旦那様でしたか?」
「ええ。
その前に、手紙が届いた。
ファニーからよ。
事実をヤマトに伝えてほしい、と」
「お袋とは殆ど二人っきりの生活でした。
外に出ることもなく、友達付き合いもなく、孤独が好きな女性でした」
「あなたはファニーが亡くなった後、こちらに戻ってきたの」
「はい、13から17までいました」
「そう、、、」
「キャサリン、もし誰か知っているのなら教えていただけませんか」
「誰を」
「加賀三郎外務大臣のパーティにいた外務省の役人を、、確か、同じ人物が、中絶してほしい、と」
「知ってどうするの?」
「分りません。
もう、30年前のことです。
もう生きていないかもしれない。
でも、お袋はまだ許していません。
私の知る限り一度も加賀三郎に会っていません。
その役人に、何があったのか直に訊いてみたいのです。
お袋に謝罪させたいのです」
「、、、、、、」
「誰か、知っているのですね?」
「、、、、」
「事実を伝えてほしい、と。
それには役人の名前も含まれているような気がしてなりません」
「、首相よ、この国の、」
「小安首相、小安宗徳首相ですか、、」
「ええ」

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下:8キャラメル ブルース・リーこのエントリをはてなブックマークに登録

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8:ブルース・リー


「リーはテレビ坊やだね。
よく見れるよ、何時間も」
「誰かと待ち合わせしているのかそれとも週末はこっちに泊まるのかな」
「909の電話に盗聴器を仕掛けよう」
「どうやって?」
「俺は探偵。元は悪。
どんな鍵だって朝飯前さ」
「聞いてて良かった」 

夜中の1時過ぎ、リーがソファから立ち上がった。
数分後、明かりが消えた。
他の部屋の明かりは点かなかった。
「アラン、リーが外に出るぞ。
尾行してくる。
その間に盗聴器を仕掛けてくれ。
どのくらい時間が必要だ?」
「10分」
「やばい時は携帯で知らせる」
「耕三!カツラ!
尾行だから七・三に分けたの持ってけよ」 
「面倒なこったな」

エレベーターは下のサインを出して14階で止まっていた。

階段を駆け降りた。
カツラが取れないように右手で頭を押さえた。
隣のビルの階段下で彼が現れるのを待った。

数十秒後、リーが玄関に現れた。
彼はしばらくタクシーを待っていた。
諦めて14丁を7アベニューに向かって歩き出した。
途中、タクシーを拾った。
7アベニューを右折してダウンタウンに走り去った。 

俺はタクシーを捕まえることができなかった。

「タクシーでダウンタウン向かって走り去った。
車がなくて諦めた。
当分、大丈夫だと思う。
念のため表で見張ってるから終わったら電話くれ」

20分後、部屋で落ち合った。
「留守電付にしたのさ。
俺たちが部屋にいなくても録音される仕組み。
おもしろいもの見つけたよ。
リーはフリーベース(純度の高いコカイン)をやってるね。
間違いない」
「フリーベース?」
「茶色のアディダスバッグがあった。
その中に、ベーキングパウダー、試験管、蒸留水、アルコールランプ、煤がこびり付いたガラスのパイプがあった。
無いのは材料のコカインだけだ」
「なんだそれは?」
「ドラッグだよ。
昔、コメディアンのリチャード・プライヤーが全身火だるまになって通りを歩いてたっての知らないか。
それぐらい危険な遊びさ。
吸うとき引火しやすい。
だが効き目はすごい」
「バッグはリーのか?」
「NY大の学生証があったよ」
「レジナルドもやってるのかな?」
「それはないだろう。
こんなのやってたら馬鹿になる。
リーはレジナルドの部屋を利用してフリーベースをやってるって感じだな」

翌朝、10時、盗聴器から聞こえるリーの声で目が覚めた。

「鍵は受け取ったか?」
「ああ」
「今日の4時、シネマ・ヴィレッヂいつもの所で。
今回はグランドセントラル駅だ。
ロッカーは44」
「今回は例の彼女か」
「さあな。行ってからのお楽しみだ」
「来週の土曜は俺を外してくれてるよな。
電話もなしだよ」
「ああ、その代わり木曜にやる。
頭に入れといてくれ」
「木曜?というと6日か。
翌日は予定があるんだ。
どうしようかな」
「嫌なら頼まないよ」
「いや、やるよ!」 

909の部屋はカーテンが掛かっていた。
中の様子を窺えない。
「戻ってきてたんだな。
耕三、今のは何だと思う」
「分からない。
とにかくシネマ・ヴィレッヂに行ってみよう」
「どこにあるか知ってる?」
「ああ、昔、何度もお世話になった。
名画座って所かな。
12丁の5アベニュー辺りだ。
変装が必要だな。
アラン、今から古着と靴を買いに行こうか」

3時間後、バッグに古着を詰めて部屋に戻った。
上着はなるべく裏表兼用を選んだ。
尾行をした同じ服装で部屋に戻ってくるのを避けたかった。
アランの機転で小さく折り畳むことができて、踝まで隠れるグレー、ブラウンのビニールコートを数枚仕入れた。

「アラン、お前は汚い格好して長髪のかつらにショルダーバッグを背負えよ。
俺は繋ぎのジーパンで行くから」
「まだ部屋にいるよね。リーは中で誰かと会う。
別々に追おうか」
「そうだな。どっちを追うか今決めるか」
「後でいいよ。俺、先に行くよ。前の軽食堂で彼が出てくるのを待ってる。
4時前にシネマ近くで会おう。
そのシネマから近い地下鉄の駅は?」
「14丁かな。ユニオンスクウェアだ」
「まめに連絡するから見失わないよう。
リーの名をブルースにするよ」
「ブルース・リー?
考えすぎだよ、アラン。
相手はチャイニーズだぞ」
「耕三、楽しみも必要だろうが」 

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8:偽威議員 退学このエントリをはてなブックマークに登録

8:退学

凡凡党、小安総裁は、主民党、党首大沢との決選投票の結果、2票の差で首相になった。
参議院では大沢党首が選ばれていたが、両院協議会で意見が物別れに終わり、衆議院の優越性により小安首相がかろうじて誕生した。

「国会内で会うとはな。
想像できなかった。
俺より早く代議士になるなんてな。
この国で黒んぼが代議士になるなんて許しがたい。
よりよって親父の凡凡党ってのもな」
「変らないな、おまえは。
サチは元気か?」
「とっくに別れた」
「別れただと?
ふざけるなよ、穣二。
おまえ、何をやったのかもう忘れたのか?」
「昔の話だな。
それより柿は元気か?」
「誰だ、柿って?」
「しらばっくれるなよ、大和。
在日から帰化した武蔵様のことだよ。
朝鮮系日本人って奴だ。
便利な言葉だな。
フィリピン系日本人、モンゴル系日本人、確か、赤城武蔵とか言ったかな」
「馬鹿、武蔵の家族は戦前からいる。
ここで生まれようが、よその国で生まれようが、帰化しようが、おなじ人間だ、日本人だ。
おまえとどう違う」
「俺はおまえ達みたいな黒柿じゃあないからよ。
そう簡単に国変えたりせん。
面白いよな、おまえ達の名前。
黒と柿が日本の戦艦の名前ってのはな。
ふざけた名前だぞ、生粋の日本人には。
素性を隠したかった気持ちは分るよ。
名前付けた人は後ろめたかっただろうな。
俺みたいな日本人が米流の穣二ってのも笑えるがな」
「それだけか、言いたいのは?」
「武蔵は今どこにいる?」
「教えたくないな」
「アメリカか。あっちの方が柿は住みやすいだろうな」
「おまえのその蔑み、差別はどっからくる?」
「おまえには理解できん。
おまえが俺を理解できないようにな」
「武蔵の場合はなんだ、先祖が朝鮮系だからか。
俺の場合は肌が黒いからか、それだけの理由か」
「国会内で喧嘩したいのか」
「理由は何だ?」
「喧嘩売ってんのか、、、大和民族は日本を愛する気持ちが強い、おまえらより」
「奇麗ごと言うな。
される方の気持は?
どうでもいいのか?」
「日本にいなければいい。
又おん出してやろうか」
「穢されたくないか、汚されたくないか?
おまえのいう大和民族以外の人に、おまえの美しい国、日本を」
「黒んぼには到底、理解できんよ」
「俺はおまえを理解できる。
争いもない、平和な所で、湧き水をおまえは寝ずの番だ。
昔から、有名な名水だ、体にいい、と言い伝えられてきた。
その水はどこにもない稀有なミネラルを含んでいる。
だが、いずれ枯渇する、とおまえは思っている。
おまえの土地だ。
当然、あげたくないよな。
その水は農薬で汚染されているかもな。
一人で足掻いて苦しくないか?」
「足掻く?
馬鹿だな、大和、おまえだろう」
「俺達を学校から追い出して何年だ、、、12,3年か、、昔と変ってない。
日本の首相の息子、将来、代議士になるのがこのレベルではな。
日本も悲しいな」
「好い加減にしろよ。
場所変えて喧嘩してもいいぞ」
「首相の息子と黒人の新人衆議院議員が喧嘩か、、、、前向きじゃないな。
サチとは何があった?」
「一般的な性格の不一致ってやつだ」
「今どにいる?」
「さあ、もう半年以上会ってないからな」


「どうした、おまえ達?」
「先生、黒柿、ロッカーにナイフを隠し持っていますよ。
田中と鈴木が又、撲られました。
喧嘩強いんで歯向かえません。。
何とかしてくださいよ。
日本人じゃあないくせにでかい面して皆困っています」


「加賀、赤城、なぜナイフを持ってる!」
「知りませんよ。俺達のじゃない」
「なぜ、おまえ達のロッカーに入ってた」
「小安達がやったの分ってるじゃないですか。
先生、なぜ彼等の肩ばかり持つのですか」
「生意気なことを言うな。
この前は登山ナイフだったな」
「誰がナイフをロッカーに入れますか、何回も?」
「何回も、、入れたことはあるようだな」
「言葉のあやですよ。
入れてません」
「おまえ等、相変わらずいじめやってるようだな」
「知ってるじゃないですか、小安達が仕向けてるの。
向こうが来るんですよ。待ち伏せしてます」
「これまで何度、止めるように言ったか覚えてるか?」
「茶番はよしてください。
小安達の策略でしょう。
よく知ってるくせに」
「昨日、職員会議で決まった。
退学処分だ。
強制退学にしたいとこだが自主退学にしてやる」
「よう、御用聞きよ、幾らもらった!
豚に成り下がってまで偉くなりたいか!
心売って、長いものに巻かれて、心地よいか、将来も安泰か。
大和、どうする?この偽教育者。
撲るだけじゃな。
息子、ちょん切るか」
「助けてくれ、、、、」

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9:偽威議員 倉本サチこのエントリをはてなブックマークに登録

9:倉本サチ


「岸本さん、興信所を紹介していただけませんか」
「何かお困りごとでも?」
「個人的なことです」
「お急ぎでしょうか?
今、国会会期中なのでスケジュールが、」
「ああ、そうですね」
「依頼内容を文書にしてくだされば明子秘書に持たせますが」
「、そうですね、、、、、じゃあ、お願いします」


「岸本明子様、A興信所の山田です。
この前、ご依頼いただいた倉本サチ様の件でございますが、残念ながら私どもでは調査しかねますので、、申し訳ございません」
「どういうことでしょう?
長年、そちらにお世話になっているのですが、、」
「申し訳ございませんが、この件に関しては、これ以上は、、」

「岸本明子様、B興信所の草柳です。
倉本サチ様の件ですが、勝手ながら調査打ち切りさせていただきます」
「どうしてでしょう?
説明していただけません」
「はあ、申し訳ございませんが。
この件に関しては深入りするな、というのが業界の通念でして」
「地元のよしみで、あなたが知っていることだけで結構ですからお願いします?
あなたの所とは古い付き合いです。
私の祖父の時代から先代とお付き合いがあります。
どうかお願いします」
「ほんの概略だけ、口外なさらないということをお約束していただけますか?」
「はい」
「サチ様、現在、千葉県F市外のサナトリウム・マインドで療養中でございます。
関係者に通常、考えられないぐらいの緘口令がひかれていました。
正直、場所の特定以外、何も得られませんでした」
「緘口令というのは?」
「文字通りです。
無視されました。
これでよろしいでしょうか?」
「マインドは何を主に治療しているのでしょう?」
「噂では、心のケアをしているようですが。
これでよろしいでしょうか?」
「心のケアとは、、、どういうことなの?」
「文字通りのお言葉だと、、思いますが。
これ以上は、、当方にも圧力がございまして、、申し訳ございませんが」
「圧力?」
「申し訳ございませんが、、これで切らさせていただきます」


「代議士、倉本サチ様、千葉県F市外のサナトリウム・マインドで療養中です。
腑に落ちないことだらけで、どこの興信所も詳しく調査してくれませんでした。
インターネットでサナトリウム・マインドを調べたのですが、障害を持った人の心のケアが主な診療内容でした」
「心のケア?」
「事故、突然の障害、家庭内暴力、災害による後遺症、心の傷を負った方の治療をしています。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を持った方達です」
「、、家庭内暴力、、DV(ダメステック・バイオレンス )も入りますね」
「ええ、含まれます。
代議士、差し支えなければお聞きしてよろしいでしょうか?」
「、、、」
「倉本サチ様とのご関係は?
代議士の恋人ですか?
申し訳ありません」
「いえ、違います。
小安穣二の妻です、、でした、、、か?」
「小安?、、総裁?、総裁のご子息?」
「はい、、、」
「そうでしたか。興信所に圧力があったようです」


「大和、よく衆議院議員になれたな。
おめでとう」
「議員達に陰で“中身のない黒たらい”、と呼ばれている」
「黒たらい?」
「由来はカラオケだ。
今だからおまえに言うが、俺が当選したのはカラオケのお陰だ。
投票二日前までは落選だった。
カラオケ歌ったんで男性票が入った」
「歌ったのか?選挙カーで」
「ああ、手当たり次第に何でもな。
50曲以上だ、笑えるだろう。
さすがに軍歌は歌わなかったが、古いのは春日八郎から宇多田ヒカルまでな」
「見たかったな。
で、黒たらいか?
読めないな、その名前?」
「桶が空だ。
桶をたらいに変えた、年寄り議員は“たらい”の方がなつかしいのだろう」
「秘書の話か?」
「サチ、穣二と別れたみたいだぞ」
「別れた?」
「初登庁の日、国会内で会った。
彼がそう言った。
調べたが、詳しく分らん」
「今どこに?」
「サナトリウムだ」
「サナトリウム!
療養所か?
入院しているのか?」
「もう少し調べておまえに報告しようと思ったのだが今んとこ動けんのよ」
「何の病気だ?」
「分らん。
心のケアを主にやっているようだ」
「ケア、、小安がサチに何かしたのか?」
「興信所が尻込みして調査しない。
秘書の話によれば、興信所に圧力があったとか、、」
「、、、、、」
「武蔵、何も分らん。
俺、黒だし、おまけに有名人だ。
サナトリウム、悔しいが行けんのだ。
しかも、凡凡党の総裁、日本の首相の息子の妻だ、、、
黒人、新人衆議院議員は動けんのだよ」


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下:9キャラメル 小津安二郎このエントリをはてなブックマークに登録

キャラメル超特急
Sweet Candy Express

9:小津安二郎


NY大で、映画を専攻している中国人の友達と知り合ってコカインを知った。
好きなだけ吸わせてくれた。
二日後にはコカインの虜になっていた。
もう抜け出せなくなった頃、運び屋の仕事をやらないかと誘われた。

1年近く、月2回、約6kのコカインを運んでいた。
コカインの入ったショルダーバッグを指定されたコインロッカーに運ぶだけだ。
代償は,月20gのコカインだった。
コインロッカーは、ペンシルバニア駅、中央郵便局、
市立図書館、グランドセントラル駅、タイムズ・スクゥエア、コロンビア大学などに分散していた。

チャイナタウンには,堂(トン)とバンという、同郷の人間を守り、縄張りを仕切る相互扶助組織があった。
堂は表の自衛組織で、会員は街の有力者に限られ、その長はゴッド・ファーザーと呼ばれていた。
絶大なる力を持ち、政治、地下社会を牛耳っていた。
バンは、堂お抱えの武装組織で用心棒として問題解決に当たっていた。

NYチャイナタウンには、安良堂と協勝堂、それに150年近くの歴史を持つ洪門堂の三つの堂があった。
それぞれ、賭場を仕切り、配下のバンが縄張りを護っていた。

バンの中にはセクトがあった。
主なバンには東安バン、飛龍(フライング・ドラゴンズ)、
鬼影バン(ゴースト・シャドウズ)、
福建系の福建青年バンのほか、
ベトナム系のBTK(Born To Kill)、
台湾系のユナイテッド・バンブーなどがあった。
その他、一匹狼のバンが無数にあったので、バン内での縄張り争いは激化していた。

天安門事件後、共産中国に不安を抱いて大陸から逃げてきた中国人が多く住み着いていた。
彼らの大半は、戦後共産党教育で習った北京語を話す福建省出身者の新移民だった。
解放以前、国民党時代に大陸からNYに渡った、広東語を話す老華僑たちは、
国民党旗ではなく共産党の五星紅旗を掲げ、
建国日を10月10日ではなく10月1日の国慶節に祝う新移民の福建省人に好意を抱けないでいた。
彼等は戦前の国民党対共産党という嫌な時代を思い起こさせた。
新移民たちは旧ユダヤ人街の東ブロードウェイを居留地とし、老華僑は古き良きチャイナタウンに彼らが入ってくることを許さなかった。
世代が代わっても、国民党と共産党の代理戦争のような一触即発の危険にさらされていた。


友達の父親、童恩正(トニー・トンエンチョン)は、福建省にいた頃から地域のボスだった。
新移民の増大とともにNYチャイナタウン内でも、福建青年バンのボスとして勢力を拡大していた。
ここで働く福建人のために私設銀行を設け、本土、香港と巨大な金融ネットワークを築き上げていた。
裏で福建人の密入国ルートを持っていた。
その資金を調達できない人間には、借金の肩代わりとしてヘロインの運びを強要していた。
その一方、童恩正は安良堂のボス・陸家駿(ルーリャチュン)にヘロインと交換したコカインを定期的に無償で貢ぎ、チャイナタウン内での安全を買っていた。
二人は親しい関係を他の堂、身内のバンに知られたくなかったので、息子、その友達、親類を運び屋として利用していた。


今日のシネマ・ビィレッヂの看板は、
小津安二郎の『東京物語』と『秋刀魚の味』だった。
リーはこの大酒飲みの日本の監督の作品が大好きだった。
画面は気が狂うほどに静止し、一コマ、一コマがまるで独立した写真作品のようだ。
同じことを身の毛がよだつほど繰り返し、究極点までたどり着こうとするその狂気に震えた。
「オズの映画は無気力な映画だ」
と言ったフランシス・トリュフオー(仏映画監督)が理解できなかった。

4時5分前、切符を買って中に入った。
目が慣れるのを待った。
彼女が一番後の座席で隣の席を空けて座っていた。
数か月に一度しか会えなかったので胸が高鳴った。
初めの頃、少し上向き加減の細い顎を持った彼女が苦手だった。
何gのコカインを貰っているのか話しかけた。
怒って横を向いた。
それ以降、何を話しかけても無視された。
人を小馬鹿にしたような彼女の尖った顔立ちに魅かれていった。

「もう一年だよ。
君、名前ぐらい教えてよ。
僕はリー、クリストファー・リー。NY大の学生、、、」
「それ以上言わないで、何度も言ったでしょう!
知りたくないの!」
「君に恋をしてるんだ!
名前ぐらい教えてくれたっていいだろう」
ジーパンの上から太股を刺している蚊を見ているような目付きで、リーの顔を一瞥した。
それだけだった。
いつにもまして惨めな気持ちで、彼女の尖った横顔を見つめ続けた。

足下のショルダーバッグを蹴ってよこした。
無言で出ていった。


「今、ブルースがシネマから出てきた。一人だ。
ユニバーシティ・プレースをそっちに曲がった。
地下鉄に乗る公算大。
手ぶらだったが今は黒のショルダーバッグを背負ってる。
服装は黒ズボン、メーカーはドッカーだな。
スニーカーが凝ってるぜ。
昔流行ったナイキのマイケル・ジョーダンのツートンカラーの奴だ、、名前は,,、、忘れた。
上はカルバンクラインの青のジャンバー。
背中にCKって書いてある、、、」  
「馬鹿、ブランド名なんか言うな。
黒ズボンと青のジャンバーだな。
黒のバッグは中で貰ったのか?
相棒は?」
「耕三、ミスった。
相棒、確認できなかった。
若い女が二人、席を立ったんだが、、
どっちか分からなかったんだ」
「おまえ、中に入らなかったのか?」
「入ったさ!
切符売り場、誰もいなかったんだ!
5分後だ、、、入ったのは。
暗くて諦めた。
ミスった!」
「アランよ!
プロだろうが、おまえは?
お!来た!来た!
ブルースが見えた。
じゃな」


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10:偽威議員 大和と武蔵このエントリをはてなブックマークに登録

10:大和と武蔵


「大和君、首相から電話があった」
「小安首相、、」
「息子の件といえば分っていただけると,言っていたが」
「そうですか」
「何なんだね、これは?」
「個人的なことで」
「大和君、首相、直々ということは、わしが知らないわけにはいかんのだよ。
日本200世襲家元政治家、加賀一族を護るにはね。
教えてくれんか?
蚊帳の外では君に適切なアドバイスをあげれん。
君は凡凡党の代議士だ。
その総裁が電話してきた」
「個人的なことです。
申し訳ありませんが」
「今の小安宗徳首相のお父さんの小安徳雄様が首相の時、父君、加賀三郎先生は外務大臣に任命された。
それだけじゃない、その前の小安首相の祖父、貴志川様の時は加賀二郎先生は大蔵大臣だ。
分るかね、その前にもお付き合いがある、古くからの盟友、同胞だ。
今回の選挙も、小安首相が応援に来てくれたのを忘れてはいかんよ。
岸本さんの話では、君はまだ当選のご挨拶に伺っていないそうだね。
いかんよ、それは。
スケジュールを聞いて行きなさい。
命令だよ」
「はい、分りました」
「で、だ、、首相の用件は何だったのだね?」
「首相の長男とは高校が同じでした。
そのことです」
「ほう、、そうだったのか。
そういえば君は日本に居たんだったね。
後援会の会長になったのが10年前だから、岸本さんに言われるまで君の存在さえ知らなかった。
三郎先生は隠していたのだね。
首相のご子息と同級生だったのか」
「はい、国会で偶然会いまして、、」
「それで?」
「昔、遊びでよく喧嘩していたものですから、向こうが又遊びたくなったようで。
口論になりました。
衛視の方が間に入って止めてくれました。
私たちを諌めるためにお電話をしてきたのだと思います」
「大和代議士、いい加減にしたまえ!
君は主権者である国民に選ばれた衆議院議員だ。
国会内で喧嘩は言語道断だ!
絶対にやってはいかん!
今、小安首相は微妙なとこにいる。
凡凡党内には反主流派が公然と活動している。
主民党と手を組む、とも噂されている。
こんな時に国会内で息子が喧嘩したらどうなる!
絶対にやってはいかん!」


千葉県F市外のサナトリウム・マインドに向かった。
最後に会ったのは大和の部屋だった。
12年近くの歳月が流れていた。
幼馴染だった。
一緒になるつもりでいた。
17の冬、退学処分になってカルフォルニアに出た。
そうせざるえない状況に追い込まれた。
サチと別れるのが条件だった。


「大和と加賀は私のパンツを下ろしてナイフを私の性器にあてました」
「どちらがどうしました?具体的に」
「加賀が椅子から私を立たたせてズボンのベルトを緩めました。
パンツをずり下ろしました。
赤城が手に持っているナイフで2度、私の性器を軽く叩きました。
恐怖を感じました、、あの時、生徒が入ってこなかったら、、」


「加賀、何があった?」
「何もありません。
先生が騒いで生徒がクラスに入ってきただけです」
「ここは警察だ。
何もないのに先生が警察を呼ぶか」
「信じていただけませんか?」
「君がズボンを緩めてパンツをずり下ろし、赤城がナイフで2度性器を軽く叩いた、
と言っているが、どうだ?」
「やっていません。
俺達は何もしていません。
赤城が“息子ちょん切るか”と言っただけです。
体には触っていません」


「先生は君が性器を2度軽く叩いた、と言っているが」
「ふざけた野朗です。
何もしてませんよ。
そんなことやるだけ野暮でしょう」
「赤城、“息子ちょん切る”と言ったか」
「言いました」
「で、どうした?」
「似非教師は震えてました。
それだけです。俺達は何もしてません」
「あの先生は似非教師か?」
「あの日、退学処分だと言われました。
俺も加賀も理由が納得いきませんでした。
退学処分になるようなことやっていません。
頭に来て、“息子ちょん切る”と」
「何もやってないで退学にはならないだろう。
今回も先生が通報してきたぐらいだ」
「俺と加賀を嫌っている連中がいます。
そいつらと似非教師は繋がっています」


サチの父親は凡凡党の市会議員で、街の有力者だった。
俺の親父は町工場をやっていた。
バブル崩壊後の急速な景気後退の波をもろ受けた。
銀行の融資が途絶え、もうどうしようもないという時、サチの親父が銀行に掛け合って倒産を免れた。
似非教師の件も、警察沙汰になりそうなとこをサチの親父が手を回してくれた。

代償はでかかった。
サチと別れてくれということだった。
日本にいたくなかった。
カルフォルニアに渡った。
大和はハワイに戻った。
4年後、小安と結婚したのを知った。