下:3キャラメル 拳銃 
下 キャラメル超特急
Sweet Candy Express
3:拳銃
「面白いことが分かった。
レジナルドは、1ヶ月前、43歳でカナダ大使に任命されたばかりだ。
カナダ・オタワ仏大使館在職中、
極左組織AD元メンバー、ジャン・メルク・トトの逮捕に多大な貢献。
その功績により外務省エリートコースを歩む。
一男一女の子どもがいるが妻とは離婚。
ワシントンDC、ニューヨーク、ローマ、前赴任地のブラジルに男の恋人が存在」
「ロシュトー、この男はどんな奴か憶えてるか?」
「大使館で一週間そこらしか接触しなかったのでな。
俺のためによくやってくれたと記憶してる」
「お前、何か隠してないか?」
「司法取り引き、カナダ移住を持ちかけられた。
仏に護送された後はすべて彼の予測どおりにことが運んだ。
たいした奴だと感心した覚えがあるな」
「司法取り引きはこいつの案か!」
「ケベック過激派の件は知らんが、他はな」
「耕三、黒幕がこいつなら辻褄が合うよ!
ケベックの件はレジナルドがカナダ政府に貸しを作ったんだ。
大使に任命されたのもカナダ側の意向が働いた可能性も否定できない。
昔の組織かケベック過激派にロシュトー暗殺を依頼をした」
「なぜ依頼した?
むしろ、レジナルドが一人で暗殺を仕組んだ、どうだ?
そもそもこいつの案だ、それを知ったらレジナルトを生かしておくか、特にケベック過激派は許さないだろう。
ロシュトーさえいなくなれば安全だ」
「確かにな。
でも、なぜ警告してきたんだろう。
殺すには警告なしのほうが簡単だろう」
「ロシュートの性格を見抜いているんだ。
警告されてドタバタ逃げるような人間じゃないってな。
殺されるのを待っているんじゃないかともな」
ロシュトーが俺の顔を見て、くっくっ、と笑った。
笑ったのを見たことがなかったので俺たちは目を丸くした。
「耕三、いい線行ってるが殺し屋は相当の腕利きだと思う。
警告は関係ないぐらいのな」
「アラン、情報屋はマフィアか」
「ロシュトーに聞いたか。
トロントに知り合いのマフィアボスがいる。
昔同じ孤児院にいた。
ロシュトーは馬鹿にしているけど、裏の情報量は警察以上だ。
それはいいとして、耕三、拳銃を使えるか?」
「いや」
アランは隣の部屋から重そうなバッグとチョッキを持ってきて床の上に置いた。
中には、大小様々な拳銃、自動小銃が入っていた。
「耕三は軽いグロック17がいいだろう。
これは引き金を絞らない限り安全装置が解除されない」
「待て。
難しいことを言うな。
銃が必要なのか?」
「俺と交互でロシュトーをガードするんだ。
殺し屋がこの部屋に押し入って来たらどうする?
丸腰じゃ来ないだろうからな」
銃を受け取った。
思っていたほど重くない。
「重さ、約六〇〇gちょっと。
部品にプラスチックが多く使われているから軽い。
昔は、空港のX線探知機も感知できなかった。
引き金を絞らなけれ、、」
「ちょっと待った。
もう少し分かりやすく言ってくれ」
「この引き金に指を添えない限り暴発の心配はない、
ってことだが、
なぜか暴発事故は起きてる。
なぜだか分かる?」
「アラン先生、分らないよ」
「耕三君、いい。
ホルスターから引き出す時に反射的に触って暴発するんだ。
人為的なミスなんだ」
ロシュトーが俺たちのやりとりに一瞬、にたっ、と笑った。
先程の笑いといい、今まで、心底から笑ったことがあるのだろうか。
「耕三のは引き金の重力を少し重くしてるからその点は心配いらない。
その重さに慣れてくれ」
「ロシュトーは?」
アランは目と眉毛の間隔を広げ、両手の平を上に心持ち挙げた。
「必要ないらしい」
「経験から言わしてもらえば、
狙われていたら逃れるのは無理だ。
自信があるから警告してきた。
それなりの人間を送り込んだってことだ」
「ここに踏み込まれたらどうする。
丸腰じゃあ俺たちにも危険が及ぶってことだ」
「巻き添えか、、、?
ああ、そこまでは考えてなかったな、、、、。
アラン、ベレッタはあるか」
「イタリア製じゃないけど、ベレッタUSA・M21Aがある」
「それでいい」
「よし、じゃあ耕三は銃の練習が必要だな。
明日やろう。
手配しとく。
それからこの部屋に8か所、スミス&ウェスタンM36・チーフスペシャルを隠してある。
確実に作動するという点でリボルバーにした。
安全装置はかかってない。
気をつけてくれ。
引き金を引けば弾が出る。
キッチンに2か所、あそこのキャビネット横とシンクの下。
居間のテレビ横のプラントの後。
ステレオ・スピーカー横。
トイレ便器の裏。
それに自分たちの部屋ドア脇の額縁の裏に一丁ずつ。
場所を覚えて後で確認しといてくれよ。
部屋は、ロシュトーの部屋と居間を挟んで、
耕三は右、俺は左を使う。
もう一つ、防弾チョッキがある。
鋼鉄の10倍近い強度があるスペクトラ繊維というのでできてる。
ライフル、マグナムなどは無理だが中枢器官を通常の弾薬からは守ってくれる。
耕三はなるべく着用するようにしてくれ。
ロシュトーにはこれより優れたチョッキを着てもらいたいんだが嫌なんだよね」
「、、、」
「分った、以上」
「それにしてもいい眺めだな。
正面は公園か?」
アランが席を立って前方を指差した。
「バニアパークって名だ。
左の建物がバンクーバ博物館、右が海洋博物館だ」
ロシュトーの部屋は、居間を含め四部屋ともイングリッシュ湾に面していた。
約400m先にバニアパークが見えた。
イングリッシュ湾の南岸はキッラノとも呼ばれヤッピーが多く住んでいた。
特にW4丁沿いには、エスニックレストランや流行に敏感な店が並んでいた。
翌早朝、俺はアランの知人の指導で銃の練習に行った。
ハラード橋たもとのアクアティクセンター脇で高速ボートに乗り、
バンクーバ・アイランドとの中間地点の洋上で、
グロック17とスミス&ウェスタンM36チーフスペシャル、2丁の拳銃を練習した。
自然体で構える、
実戦では照準サイトを使わず標的をエリアで捕捉する、
と教わった。
それから二日が無事過ぎた。
その夜、出前のピザを食べた後、アランが嬉しそうに言った。
「明日、娘のモモの誕生日なんで午後ウィスラーに一旦戻るよ。
明け方早く戻ってくる。
帰りにしこたま食料品を買ってくる」
「日本から何か買ってくるんだったな。
何歳になった」
「3歳だ。
3人で行けたらマコトも喜ぶんだが」
ロシュトーが紙包みを持ってき珍しく神妙な顔付きで言った。
「モモにあげてくれ。
マコトには今回のことを言わないでくれ」
アランは5年前、日本人の留学生、坂本マコトと結婚した。
ガスタウンで3人のチンピラに絡まれている彼女を救ったのが出会いだった。
意志の強い、聡明な女性で、3歳になる一人娘、モモがいて暖かな家庭を作っていた。
彼らの住居はウィスラーにあったが、
ガスタウン(バンクーバー)に探偵事務所を持っていた。
裏組織に知人が多かったので仕事は繁盛していた。
今でもカレン族に全収入の数%を送金していた。
「耕三、明日は頼む。
一歩も外に出ないようにな。
一応、このビル前に一人、張り付けとくよ。
この紙にそいつの携帯を書いておくから何かあったら呼んでくれ。
名前はぺぺ。
マフィアじゃない。
元警官で頼りになる男だ。
それから出前はこのリストの中から選んでくれ。
同じ人間が運んでくるように言ってな」
「誕生プレゼント、モモに何か買っといてくれよ」
「マコトが変に勘繰るから、耕三が来てることまだ言ってないんだよ」
「頼むよ。
俺の名はいいからお前からということで」
Sweet Candy Express
3:拳銃
「面白いことが分かった。
レジナルドは、1ヶ月前、43歳でカナダ大使に任命されたばかりだ。
カナダ・オタワ仏大使館在職中、
極左組織AD元メンバー、ジャン・メルク・トトの逮捕に多大な貢献。
その功績により外務省エリートコースを歩む。
一男一女の子どもがいるが妻とは離婚。
ワシントンDC、ニューヨーク、ローマ、前赴任地のブラジルに男の恋人が存在」
「ロシュトー、この男はどんな奴か憶えてるか?」
「大使館で一週間そこらしか接触しなかったのでな。
俺のためによくやってくれたと記憶してる」
「お前、何か隠してないか?」
「司法取り引き、カナダ移住を持ちかけられた。
仏に護送された後はすべて彼の予測どおりにことが運んだ。
たいした奴だと感心した覚えがあるな」
「司法取り引きはこいつの案か!」
「ケベック過激派の件は知らんが、他はな」
「耕三、黒幕がこいつなら辻褄が合うよ!
ケベックの件はレジナルドがカナダ政府に貸しを作ったんだ。
大使に任命されたのもカナダ側の意向が働いた可能性も否定できない。
昔の組織かケベック過激派にロシュトー暗殺を依頼をした」
「なぜ依頼した?
むしろ、レジナルドが一人で暗殺を仕組んだ、どうだ?
そもそもこいつの案だ、それを知ったらレジナルトを生かしておくか、特にケベック過激派は許さないだろう。
ロシュトーさえいなくなれば安全だ」
「確かにな。
でも、なぜ警告してきたんだろう。
殺すには警告なしのほうが簡単だろう」
「ロシュートの性格を見抜いているんだ。
警告されてドタバタ逃げるような人間じゃないってな。
殺されるのを待っているんじゃないかともな」
ロシュトーが俺の顔を見て、くっくっ、と笑った。
笑ったのを見たことがなかったので俺たちは目を丸くした。
「耕三、いい線行ってるが殺し屋は相当の腕利きだと思う。
警告は関係ないぐらいのな」
「アラン、情報屋はマフィアか」
「ロシュトーに聞いたか。
トロントに知り合いのマフィアボスがいる。
昔同じ孤児院にいた。
ロシュトーは馬鹿にしているけど、裏の情報量は警察以上だ。
それはいいとして、耕三、拳銃を使えるか?」
「いや」
アランは隣の部屋から重そうなバッグとチョッキを持ってきて床の上に置いた。
中には、大小様々な拳銃、自動小銃が入っていた。
「耕三は軽いグロック17がいいだろう。
これは引き金を絞らない限り安全装置が解除されない」
「待て。
難しいことを言うな。
銃が必要なのか?」
「俺と交互でロシュトーをガードするんだ。
殺し屋がこの部屋に押し入って来たらどうする?
丸腰じゃ来ないだろうからな」
銃を受け取った。
思っていたほど重くない。
「重さ、約六〇〇gちょっと。
部品にプラスチックが多く使われているから軽い。
昔は、空港のX線探知機も感知できなかった。
引き金を絞らなけれ、、」
「ちょっと待った。
もう少し分かりやすく言ってくれ」
「この引き金に指を添えない限り暴発の心配はない、
ってことだが、
なぜか暴発事故は起きてる。
なぜだか分かる?」
「アラン先生、分らないよ」
「耕三君、いい。
ホルスターから引き出す時に反射的に触って暴発するんだ。
人為的なミスなんだ」
ロシュトーが俺たちのやりとりに一瞬、にたっ、と笑った。
先程の笑いといい、今まで、心底から笑ったことがあるのだろうか。
「耕三のは引き金の重力を少し重くしてるからその点は心配いらない。
その重さに慣れてくれ」
「ロシュトーは?」
アランは目と眉毛の間隔を広げ、両手の平を上に心持ち挙げた。
「必要ないらしい」
「経験から言わしてもらえば、
狙われていたら逃れるのは無理だ。
自信があるから警告してきた。
それなりの人間を送り込んだってことだ」
「ここに踏み込まれたらどうする。
丸腰じゃあ俺たちにも危険が及ぶってことだ」
「巻き添えか、、、?
ああ、そこまでは考えてなかったな、、、、。
アラン、ベレッタはあるか」
「イタリア製じゃないけど、ベレッタUSA・M21Aがある」
「それでいい」
「よし、じゃあ耕三は銃の練習が必要だな。
明日やろう。
手配しとく。
それからこの部屋に8か所、スミス&ウェスタンM36・チーフスペシャルを隠してある。
確実に作動するという点でリボルバーにした。
安全装置はかかってない。
気をつけてくれ。
引き金を引けば弾が出る。
キッチンに2か所、あそこのキャビネット横とシンクの下。
居間のテレビ横のプラントの後。
ステレオ・スピーカー横。
トイレ便器の裏。
それに自分たちの部屋ドア脇の額縁の裏に一丁ずつ。
場所を覚えて後で確認しといてくれよ。
部屋は、ロシュトーの部屋と居間を挟んで、
耕三は右、俺は左を使う。
もう一つ、防弾チョッキがある。
鋼鉄の10倍近い強度があるスペクトラ繊維というのでできてる。
ライフル、マグナムなどは無理だが中枢器官を通常の弾薬からは守ってくれる。
耕三はなるべく着用するようにしてくれ。
ロシュトーにはこれより優れたチョッキを着てもらいたいんだが嫌なんだよね」
「、、、」
「分った、以上」
「それにしてもいい眺めだな。
正面は公園か?」
アランが席を立って前方を指差した。
「バニアパークって名だ。
左の建物がバンクーバ博物館、右が海洋博物館だ」
ロシュトーの部屋は、居間を含め四部屋ともイングリッシュ湾に面していた。
約400m先にバニアパークが見えた。
イングリッシュ湾の南岸はキッラノとも呼ばれヤッピーが多く住んでいた。
特にW4丁沿いには、エスニックレストランや流行に敏感な店が並んでいた。
翌早朝、俺はアランの知人の指導で銃の練習に行った。
ハラード橋たもとのアクアティクセンター脇で高速ボートに乗り、
バンクーバ・アイランドとの中間地点の洋上で、
グロック17とスミス&ウェスタンM36チーフスペシャル、2丁の拳銃を練習した。
自然体で構える、
実戦では照準サイトを使わず標的をエリアで捕捉する、
と教わった。
それから二日が無事過ぎた。
その夜、出前のピザを食べた後、アランが嬉しそうに言った。
「明日、娘のモモの誕生日なんで午後ウィスラーに一旦戻るよ。
明け方早く戻ってくる。
帰りにしこたま食料品を買ってくる」
「日本から何か買ってくるんだったな。
何歳になった」
「3歳だ。
3人で行けたらマコトも喜ぶんだが」
ロシュトーが紙包みを持ってき珍しく神妙な顔付きで言った。
「モモにあげてくれ。
マコトには今回のことを言わないでくれ」
アランは5年前、日本人の留学生、坂本マコトと結婚した。
ガスタウンで3人のチンピラに絡まれている彼女を救ったのが出会いだった。
意志の強い、聡明な女性で、3歳になる一人娘、モモがいて暖かな家庭を作っていた。
彼らの住居はウィスラーにあったが、
ガスタウン(バンクーバー)に探偵事務所を持っていた。
裏組織に知人が多かったので仕事は繁盛していた。
今でもカレン族に全収入の数%を送金していた。
「耕三、明日は頼む。
一歩も外に出ないようにな。
一応、このビル前に一人、張り付けとくよ。
この紙にそいつの携帯を書いておくから何かあったら呼んでくれ。
名前はぺぺ。
マフィアじゃない。
元警官で頼りになる男だ。
それから出前はこのリストの中から選んでくれ。
同じ人間が運んでくるように言ってな」
「誕生プレゼント、モモに何か買っといてくれよ」
「マコトが変に勘繰るから、耕三が来てることまだ言ってないんだよ」
「頼むよ。
俺の名はいいからお前からということで」
- [ 下 キャラメル ]
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