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Sweet Candy Express


3.プーケット 


バンコックに夜遅く着いた。
空港からタクシーで市内に向かった。
運転手が話しかけてきた。
「よお、あんちゃん!欲しいもんあるならなんでも揃えるぜ。ヘロイン、マリファナ、ここから5分とかかんないとこにあんだ。安くしとくぜ」
カオサンまで」 
ここにはドラッグをだしに小銭を稼ぐハイエナがうようよしている。
彼らの餌食になった多くの旅行者がバンコック郊外にあるラジャオ刑務所に入っている。
ハイエナの餌食になるのはご免だ。 

出口がないのに食欲はあるはずがない。
この一週間、水とスープしか取っていないので最悪の状態だ。
冷や汗、悪寒、吐き気、ズボンのベルトの穴が三つ減っていた。
カオサン通り近くの安宿に泊まって、翌朝、薬屋を探した。

中華街に大きな薬屋を見つけた。
50前後の主人に事情を説明した。
お祈りに近い。
その間、主人は微動だにせず、石像のように無表情だ。
奥に消えた。
一言も発しなかった。
なんとなく落ち着かない。
なかなかで出てこない。
数人がそれとなく俺を見ている。
客か?そのようには見えない。
そして、奥に入っていった。
何かがおかしかった。
監視されているようだ。
店を出た。
通りの向こうはマーケット(市場)になっていた。
薬屋を窺った。
数分後、警察官が二人、店に入って行った。
アヘンと聞いて、警察に通報したのだ。
ここに薬はあるはずだ。でもどうしたら手に入るのだろう。

バンコックはなんとなく恐かった。
翌日、山根さんに教えてもらったプーケットへ行くことにした。
ツーリスト・バスがあるのを知らなかった。長距離の路線バスに乗ってしまった。
15時間の旅は座席が狭くてしんどかった。
食べ物、排気ガスのにおいに吐き気が襲ってくる。
ヴィニール袋に吐いた。
何も出てこない。
もうおまえには付き合いきれない。
体内の器官がそっぽを向いた。

翌朝7時前、プーケットに着いた。
薬屋を探した。
マーケット近くに一軒あった。
店が開くのを待つことにした。
薬屋の主人は中国人だった、、かなりのお年寄りだ、90近い。
バンコックでのことがあったので、raw−opium(生アヘン)とはっきり言った。
すぐに主人は透明の液体が入った2mLの小瓶を奥から持って来た。
「コップの水に2〜3滴落としてよく混ぜて、1日、2回飲みなさい。これは毒だ。それ以上飲んでは駄目だよ。体がもつのは5日だけだ。1週間以上やってはいけない。それで駄目だったら来なさい。私が医者を紹介してあげる」

カタビーチ行きの小型トラックに乗りこんだ。
薬と老人の説得力のある言葉に興奮していた。
もう10日も糞詰まりだ。
夢遊病者だ。
運ちゃん、4人の乗客が恐々俺を見ている。
誰も俺の横には座らない。
死に場所を見つけた病人が興奮してにたにた笑っている。
ラベルには《opium tint(オピアムティント)》と書かれていた。
毒を以て毒を制すということなのか。 

バンガローで飲んでみた。
コップに一滴落とした。
水面を這った。
広がった。
暗い部屋に日が差した。
光沢を持った輝きに水銀を連想した。
ひどい味だ。
いきなり胸焼けと吐き気が襲ってきた。

四日が過ぎた。
もう胸焼けと吐き気に我慢できない。
明日も駄目なら日本に帰ろう。
朝、フランス式のトイレ(傾斜をつけたコンクリート上に足台のレンガがある)に屈んだ。
気のせいかコンクリートの壁がいつもと違う。
削岩機を手に兵士が直腸に忍び込んだ。
削り始めたのか?

夕方、直径2cm、長さ3cmほどの細長い純白のペンダントがトイレ溝に横たわっていた。
馴染みの排泄した感覚がまったくなかった。
美しかった。
こんな綺麗なものがほんとうに俺の体内から出てきたのだろうか?
見たこともない白さだ。
光沢を持った薄い透明の膜が光っている。
いつのまにか暗くなっていた。
でも、明るかった。
暗闇の中、純白の光に見とれていた。

真夜中、またペンダントがあった。
終わったのだ。
2週間たっていた。
虫歯が痛かった。
こんなに痛かったなんて、、、  

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