with a little help from Stranger

69:FBI

「FBIに行って来るわ。KISS、徹を家に連れ帰って」

ソファで横になっていた徹の上半身が勢いよく跳ねた。
「僕も行く」
「起きてたの?ニールの知人だから大丈夫、KISSと家に戻って」
「僕も行く」
「お願い、これは駄目。戻っていて」
「行くよ!」
「KISS、お願い、家に」
「帰るぞ」
「駄目なんだって!」
「何が駄目なの?」
「マイケルはテロリストだ。FBIが家に来たの覚えている?探しているんだよ。僕がいないと駄目なんだってば、誰が信用できるか分からない」
「信用できる人はそんなにいないの」
「マイケルはテロリストだよ。FBIはもういろんなことを知っている」

「FBIが僕を探しに?」
「身元確認の為と言ってたわ。ルティーンだって」
「やはり取引は僕抜きでやってください。勿論、知っている情報は教えます。FBIに僕も行きます」
「徹、お前がテロリスト、テロリスト、って何度も言うからだぞ。こいつは情緒不安定、そこんとこ考えて言葉を選べ、な」
「山岡さん!どこが情緒不安定なんです」
「マイケルも鉄二も止めて!これから先のことだけにしてお願い!マイケル!ここにメンゲレさんの情報がある。あなたを救えないかもしれない。でもやるのよ、この膨大な情報、偶然だと思う?親友、幼馴染のルドウッィクに似ているあなたをここに連れてきた、その日に亡くなったのよ」
「どうしてルドウィックの名を?」

おかしい、、皆が、、深刻そう、でもないけど、、何だ、、哀れみ、、どうなってる、、なぜそんな目で、、

「テロリストのマイケルさんよ、お前は病んでる。金にしか興味がない経済至上主義者の集まりでいきなり原発反対を唱えてもな。システムにどっぷりの彼等にはゴミだ。システムの土台、環境はもう臨終間際、片足スカイダイビング状態なのにまだ貪欲だ。結局は堕ちる。まともだと思っているお前は邪魔で怒りだけを買う。その病は始末が悪いぞ」
「何のことですか!病んでる?山岡さん、ひどいことを!」
「鉄二!マイケルもいい加減にして止めて!、、独り言を言ってたのよ。私、二度目にしたわ。あなたも何か変だ、とこれまで感じていたはずよ。若いあなたには時間がたくさんある。解決できることよ。それには生きること、生き続けることよ」
「、、、、、、、、」
「あなたが望まなくても私は取引してみる。今の状況では期待できない。でも、やる、メンゲレさんの為にも」

徹がいきなり大声を出した。

「メンゲレさんが見えた!分かったよ!ルドウィックが兵隊に連れて行かれた時何も出来なかった。だからヒットラーに殺された。今度こそは何があっても親友を助けたいって、親友ってマイケルのことだよ。だからここに連れて来たんだ」

「俺も行くかな、、もう、マフィアじゃないし。情報もある」
「あなたに罪が及ぶようなことをしたくないの、分かって。じゃあ、私達、行くわ。徹、いい」


高木はパール通りの山岡と男が消えた建物の出入り口を反対車線に停めたタクシー内から見ていた。
予定では今頃フロリダ行きの機内にいるはずだった。
それが出来なかった。マフィアの兵隊が路地角毎に屯して獲物を探している。売ったのは自分だ。
清算しないと、過去と決別しないと、進めない。
この車は無断で借りている。これで過去分の一と決別できる。

180度、生き様を替えるには、その垢を落とし切るには、エネルギーを凝集させて一気に飛び込むしかない。
あれほど探して逢えなかったホームレスと出合えた。
今、音に目覚めた自分がいる。
山岡とあのペレの子を拾ったのが昨日、僅か一日でこんなにも変わる、変われるものなのか。
“君自身が決めることだ”、ホームレスの最後の言葉、、、当然のこと、当たり前のことをしてこなかった。ただ流され続けてきた。
それに、罰を受けなければいけないのに真逆のことが、、なぜ起きている。

女性と子供が建物から、あの子、ペレだ。
声が飛んできた。
“ペレは怖い神”、昨日、降りる時、あの子が呟いた言葉だ。
車を急発進させた。どうしても乗せないと。

目の前に急停車したタクシーに女性は驚いた様子だったが、ペレは自然体で女性を促して乗り込んできた。
「私達を待っていたのですか?」
「待っていました、ペレを」
「ペレ、、?」
「その子です」
「徹を」
「ええ、昨夜、山岡と、乗せました」
「どうしてペレと?ハワイ島の神様だと知って?」
「いえ、、、ハワイ島の神でしたか、、」
「ええ、、キラウエアに住んでいます」し
「怖い神、、ですか?」
「火山の石を黙って持ち出すと災いを受けます」
「、、、、、、、」

ハワイ島、キラウエア、、火山石、2002年、島経由でNYに、俺も何個か、、、災いだと、それが、、、まさか、、

「徹、覚えてる?」
「どうしたの、眼鏡とその髭、昨日はなかったよ」
「変装が、、、マフィアだらけでな」
「マフィア!」
「チャイナタウンにうようよいます。そもそもの原因は私です。山岡がこのチャイナタウンに潜んでいると彼等に教えたからです」
「あなたもマフィア?」
「違います。情報屋でした。どんでもないことをしたと、後悔しています」
「あなた自身、危険なことになるのでは」
「どう足掻こうがプラスにはできないでしよう。でも、そうしたいのです。すみません、急ぎましようか?車が一台、多分、彼等の、、気づいたようです。急発進したのがまずかった、、、どちらへ」
「FBIへ」
「連邦広場ですか、、近いがもう連絡されてる。まっすぐ行けそうもないので遠回りします」

ブロード・ウェイに出た。
キャナル通りを左折する一台の車が前方に見えた。
交差点の手前で信号は赤に変わったが構わず突っ込んだ。
妨害され衝突しそうになった車が一斉にクラクションを鳴らした。

高木は11THで左折した。
そして7アベニューをダウンタウンに向かいすぐ左折して10THを東に向かって突き進んだ。
不思議と信号にかからない。
しかし、2、30M後方にぴたりとマフィアの車が2台付いていた。

高木は3アベニューで右折してバウアリー通りに向かった。
そして、ブルーム通りを左折してすぐ右折した。
マフィアの車が少し離れた。
それからプリンス通りを左折してすぐウースター通りを左折した。
巻いたか、バックミラーに車はなかった。
そして、一つ目の角をすぐ右折して20m程走り、壊れかかったビルの地下に車を入れた。

駐車していたアコードに乗り換えて表に出た。



2011.07.20 


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