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66: With a little help. ホームレス

with a little help from Stranger

66:ホームレス

そうか、昨夜、あの餓鬼と山岡を降ろした場所が3ブロック先だった。
パール通り224、このビルに潜んでいるのか。

高木はタクシーを降りてKISSと山岡が入っていったビルを眺めて思案していた。

山岡の親父にあんたの息子が狙われてる、とでも言うか。
馬鹿な、何も変わらない。
携帯を取った。

「ジャニーニさん、山岡の居所が大体分かりましたよ」
「思ったより早かったな」
「2百万と引き換えに、ケイマン島(カリブ海にある英領の島)にあるバークレー銀行の口座番号に振り込んで下さい。これが番号です。いいですか、バークレイ・××××××××。
一時間以内にお願いします。振り込みを確認した時点で居場所を知らせますから」
「高木、お前も悪になったな。マフィアから金を巻き上げようなん俺達下司より下ってことだ。分かるか、俺が言わんとしていることが。人間じゃない、ってことだ。いい度胸だな」
「ジャニーニさん、勘違いしないでください。巻き上げるなんて、それだけの価値ある情報を売りたいだけです。ビジネスですよ」
「いきなり200と言われてもな。まだ8時前だ、開いてない。どうだ事務所に来ないか?
金なら少しはある。それを手付けに残りは後ってのはどうだ。それだけの金掻き集めるには時間がかかんだよ」
「ジャニーニさん!時差は2時間早いんじゃないんですか、、向こうは10時頃のはずだ」
「高木、ケイマンはここと同じだ。お前の心臓はパクってるようだな」
「そうなんですか」
「嘘は言わんよ。他に手があっただろうにケイマンなんて今時、高木、金にくらんで脳みそだけお前残してどこかに引っ越したようだな。少しネットで勉強してりゃまだ上手い手があったのにな。教えねぇがな」
「とにかく200万、1時間以内に」
「俺の一存ではな、ボスに伝えとく」
「そんな、、」
「高木よ、こっちは山岡探すのを急いでいない。いつでも探し出せる」
「そうですか、、主治医のメンゲレの部屋に居るんですよ」
「メンゲレの部屋、、山岡が!なんだ、そのメンゲレの部屋というのは?」
「あんなビルには住んでないでしようから、大事なものでも隠してたんですかね」

報復されるのは分かっていたので出任せを言わざるをえなかった。
まさか功を奏すとは。
「場所はどこだ!」
「さっき言ったとおりにして下さい。一時間後に確認して電話しますから」
「そのまま待ってろ!俺の一存ではできん」
「いったん切ります。入金確認しだい電話しますからそんときに教えます」
「待て!そのまま待ってろ!」

高木はかまわず電話を切った。
山岡を捕まえることができたら自分への反感は納まると踏んだ。
それにしてもあの慌てようは尋常ではなかった。
マフィアが困るようなものでも隠していたのか。

ジャニーニは部屋を知っている。パスポートと身の回り品、、1時間しか余裕がない。
ロウアイースト9thの自分の部屋に向かった。
アストール・プラザで信号待ちをしていると、アルトサックスの音が不意に聞こえてきた。
時計は8時20分、まさかこんな時間に、

聞き覚えがあったので全身が震えた。
自作の[Well,I used to play that song]だ。

車を降りて走った。
後ろでクラクションが一斉に喚いた。
サックスの音にかぶさった。
もうカオス、メロメロだ、足を速めた。

あのホームレスだった。
手に持っているのは、錆の位置、輝き、色、まぎれもなくあの時のセルマだ。
全く反応しない自分に驚いた。

音が止んだ。
サックス奏者が目を開けた。
「俺を覚えていますか」
「久しぶりだね。10年かな」
「いえ、、、15年、そのぐら、いで」
「何も感じなかったようだね」
「ええ」
「どうだね、音楽は?」
「もう楽器には触っていません」
「もう吹いていないのかね」
「あの頃の情熱は、、、」
「情熱?年月とは関係ないものだ。肥溜めにはまってしみついた臭いから抜け出せなかったかね。マンネリを壊すのはしんどい。同じようだ、と言われようが気にすることはない。100%真摯なものだ、とはっきり言えるだろう。今、この瞬間が大切だ。モメントはすぐ逃げて行く。集中するとおかしくなる。どうしても捕まえるのは困難だ。だから乗っかってサーフィンすればいい」
「、、、、、、、、、あれから自暴自棄になり悪事に手を染めました。今だって金のために人を陥れようとしているのです」
「この遠回りが君自身の音を創るうえで必要だったと感じ取れたらいいね」
「あっ、、ええ、、」
「私は君の《I STILL PLAY THIS SONG》おっと、タイトルを勝手に変えてしまった。
悪く思わないでくれ給え。この曲を書いた君に感謝と敬意の気持ちを持っているのを分かってほしい。
すばらしい曲だ。だからこそ音楽をやってもらいたい。私には創作する才能がないんでね」
「あなたと別れた後また悪いことを、、」
「私がとやかく言うことではない。君自身が決めることだ」

ホームレスはアルトサックスをケースにしまった。
高木にウィンクして人混みに飲まれた。 

いきなりメロディが弾けた
あの、忘れていた、なじみの感覚が跳ねた
なつかしかった
フレーズが大波になって襲ってきた
乗ろうとした
でかすぎた
飲まれた
転がされた
苦しくて悶えた
もうダメだ
、、、、、、、
自分を投げた
、、、、、
風を切る音で目が覚めた 
波に乗っていた
 

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