with a little help from Stranger


64:又、ペレの神


KISSと彼女が話していた。
俺は手渡されたオキシドールを頬に当てぼんやりとソファに、

No more“Smoke on the water・Go Fuck DEEP PURPLE
湖上の火事・犠牲者の会。くたばれ、デーパープル(英ロックバンド)

のステッカーが居間の壁にぶら下がっている。
Somke on the water、ディーパープル、、あの名曲のことだろうか、、Go Fuckとは、なぜロベルトは憎んでいる?、、カルロに裏切られた今の俺と同じか。
弟分として可愛がっていたのに、“のに”、馬鹿な言葉を、俺が思っていただけのことだ。
当然か、自暴自棄でNY一のマフィア・ボスを殺ろうとしている男に未来なぞ、、俺も同じことを。
不意に言葉が飛んできた“ペレ”。

あ、、これだった。
コーヒーショップで客が出入りするたびにドアに描かれたドラゴンが俺の顔を執拗に嘗め回した。奴の唾液でべとべとに、、その時からひっかかっていた言葉。
ファイルだ、、お袋が火口に突き落とされた時、華麗なペレの神のようだった、と、それに徹、タクシー運転手に聞いていた、、“ペレの神知ってるか”と。
あのジャパニーズの運転手は、“サッカーのペレなら”と、あの運転手はペレの神に会っている”とも徹が確か言ったな。


「ペレの神が怒って俺の代わりにあんたを病院送りにしちまったんだよ」
「あなた、病室でも、でも信じてない」
「事実だ、ロベルト。ハワイ島のマナウ・ロアの石、3個持ってきた。その一個をあんたにあげたのが原因だ。石はペレの分身なんだ。だから黙って持ち去った者に災いを起こす。俺も信じてなかったが、徹が教えてくれたよ。餓鬼が言うには、俺とGOがハワイの留置所で会ったのも神様の仕業だと」
「留置所、あなた達そんな所で?」
「GOは練れ衣だ。俺はトイレットペーパー遊覧飛行で落としてな。長くなるから話さないよ」
「みっともない話のようね」
「俺を留置所に入れたのはペレだと、徹が言った。俺も仕打ちを受けてたってことさ」
「何もしていない私はなぜ?」
「餓鬼が言うには、俺が馬鹿で懲りないから目を覚ませようとあんたを犠牲にしたと」
「私に借りがあるってことね」
「友達じゃないか、それで十分だろう」
「借りがある人の言葉じゃないわ」


「ペレはどんな神だ?」
いきなりの俺の言葉にKISSの反応は自然だった。

「ハワイ島に住んでる火山の神だ。タヒチ生まれで、姉さん、ナマカオカハイの旦那を誘惑して親父に追ん出された。それからハワイをふらふらしていた。そして、マウイ島で姉さんに殺され、マウナロアで神になった。
気性が激しかったようだ、しかも恐い。ハワイ島の石は体の一部で持ち去った者には執拗な復讐をする。茶目っ気もあってな、どんな人間か化けて試したりもする。物乞いする老婆の姿で金をせがんだりな。金持ちのくせに何もくれなかったら財産を取り上げ、破滅させるそうだ」
「私、あなたに聞きたいことがあるの。なぜ、あのディーパープルのステッカー、”Smoke on” と“the water・Go fuck DEEP PURPLE”の二つに裂かれてぶら下がってたのよ。両端も焦げてたし、あなたとGOの仕業じゃないわよね」
「じゃないわよね、、俺達じゃないよ。ペレの神の仕業だと思っている。お姉さんのナマカオカハイは水の神だ。火山の神と水の神、、、火の神のペレが燃したと俺たちは推測している。“Smoke on”(注) と“the water・Go fuck DEEP PURPLE”に裂かれていたのは、Smokeには撃ち殺す、消す、って意味がある。水を消す、撃ち殺す、、“姉さんを殺す”と読めないこともない。それに“DEEP PURPLE”も海水って連想も出来ないではない、DEEP PURPLEをぶっ潰せだ」
「暇ね、そんなこと考えて」
「徹の入れ知恵だ。石をロベルトにあげるな、と言ったよ。理由を聞いても教えてくれない。とにかくあげるな、と。パワーを持ってる人間しか分からんことだ。どうだ、山岡さん、こんな神さんだ。興味あんのか?」
「あんたが留置所に入ったのとペレは関係があるのか?」
「あの日、マウナロアの石、3個ポケットに忍ばせて遊覧ヘリコプターに乗った、、、、」
「話なさいよ、KISS!大の男がみっともない」
「トイレットペーパを落としちまって、、お巡りさんに当たっちまって」
「それだけなの?」
「お巡りがな、、交通事故のむち打ち症がやっと治ったとこでな。しかもホノルル署に出勤初日。場所もな、玄関だったらしい、署の。またむち打ち症に逆戻りしたって話だ」

ロベルトが大きな声で笑い出した。
俺も“くすり”ぐらいは来たが、お袋、カルロ、、そんな気持ちにはなれなかった。
が、次の言葉で噴出した。
こんな時に笑える俺も幸せだ。

「お巡りさんの名前がSCOTT、(スコット)皆に、スコティ、って呼ばれてた」


注:
DEEP PURPLE:
ディーパープル・英ロックバンド

Smoke on the water:
ディーパープル、1972年,Machine Head(糸つむぎ)アルバムに収録された名曲。アルバムはHeavy Metalのさきがけとなった。
1971年、12月、スイス、モントレー、Frank Zappa(米コンポーザ)のコンサート中(カジノ)客の火遊びが原因でカジノが全焼。たまたま、そのカジノでレコーディング予定だった彼らが対岸で火事を眺めながら作った曲が、、

なぜロベルトがディーパープルを憎んでいたかは、
4章:過去との遭遇をご覧ください。

2010.11.01 


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