with a little help from Stranger

63:おかまの殴り合い

午前3時を過ぎても店内は混んでいた。
ここで8~17時のお堅い仕事をしている連中は大体、郊外住まい、通ってくる。
一昔前は貧乏人、金持ち、アーティスト、そのごった煮がマンハッタンだった。だが家賃の高騰で貧乏人は住めなくなった。しかし、ホ-ムレスになってでもここにいたいと願う。同じNYでもクィーンズ、ブロンクス、ブルックリンに住むのとでは、月とスッポンの差がある、刺激だ。やはり俺もマンハッタンを選ぶ。

それらしき姿はなかったが、ここはチャイニーズ系ギャング、ベトナム系ギャングも利用していた。
奴等が鉢合わせしたのを見たことがある。
お互い、目を合わせないように蒸かし饅頭を頬張っていた。だが、サッカーのラストパスって奴だ、どことなく知らん振りして盗み見ている。大好物の前では喧嘩、殺し合いも休戦、笑えるが、マフィアも一緒だ。奴等の勢いにリトルイタリーも侵食されている。その内乗っ取られるだろう。


入り口脇の奥まったストールに腰掛けてカルロを待っていた。
入ってくる客の背中越しに店内を見渡せた。

男が入ってきた、カルロではなかった。
KISS?この天体のあらゆる人種の顔が彼の特徴だ、とGOが。
店内を見渡している。

振り返って俺を見た。
微笑んだ、ように、、あらゆる人種の顔、まさに、世界地図、的を得ている。
肌は褐色、縮れ黒髪、顔全体はヨーロピアン、目はモンゴロイド、鼻は、、馬鹿な、人種とは、俺もステレオタイプ的な考えしか、外見上の相違にすぎないのに。皆、同じ種、もろもろの理由で上手く利用されてきたにすぎない。

「GOの、鉄二?」
「KISS?」
「ちょいやばい、マフィアが外で屯している」
「、、、、、、、」
「時間がない、俺の言うとおりにしろ。喧嘩をおっぱじめる。いいか、本気で殴るな。“おかま”らしく軟らかく叩け、平手でな」

KISSは本気で2発、顔面を殴っていた。
パトカーがドラゴン前に停車するのが見えたからだ。
いきなりのきついパンチに鉄二は血が上った。

「なんでいきなり!」
「俺達はおかま。喧嘩だ、さあ殴れ」
「おかま、、」
「大きな声で、、馬鹿、もう喋るな。演技だ。ほら,おまわりが来る。何も言うな。殴るぞ!」
「何、、」

二人の警官は笑みを浮かべてただ眺めていた。
本気で殴るはめに、、二人の顔はでこぼこになり、唇から鮮血が、、、最悪だ。
パトカーに押し込まれた時、黒塗りの車が3台、速度を落として通り過ぎていった。
ドライバーは一様に険しい顔で睨んでいた。

カルロは俺を売ったようだ。これで当分ゴメスに近づけなくなった。
命があるだけKISSとGOに感謝か。
KISSのt-シャツ胸の人物が気になっていた。
酒瓶、手にした酔っ払い相手に牧師が説教、、全く理解できなかったが、、赤に変色した僧衣を見てなんとなく理解できた。なんでもありということなのか。

パトカーがロベルトのアパート前で停車した。

シャワーキャップを頭にロベルトが出てきた。
「トニー、本当にありがとう。恩に着るわ」
「この二人、本気で殴り合ってたんで割り込めなくてな。観客が多くてな、そこまでしなくていいとも言えなかったわけよ」

KISSがロベルトを睨んだ。
「ロベルト、お巡りさんも承知済みだって連絡くれてもよかったんじゃないか」
「何言ってるの?ひどい顔、でも修復可能よ。これ以上何が望み?」
「修復、、とは、、」




2010.07.11 


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