9:福助のももしき
 
受話器を置いて鈴木、Walkieを取る。

鈴木: 各デスク、こちらPデスク。アライバル・ナンバー6、ノースウエスト10便、アーリ-チェツクイン、ミスターナガタのスーツケースが3個行方不明。約80*50の大きさで色は交通信号の青、赤、黄色。青はK、赤はF、黄はCの500円玉の大きさのワッペンがスーツケースの取っ手の部分に貼ってある。すなわちケンタッキーフライドチキンのワッペン。例の何とかサンダースの髭のおじさんは無し。ノースウェスト10便の他の乗客の荷物と一緒に旅の途中だと思われる。同じ便で来た客の滞在ホテルは特にチェックをお願いします。もしあったらPホテルまで連絡頼む。

各ツアーデスクより、Walkieで返答
Dホテル、了解。Bホテル、コピしました。Aホテル、コピー。Cホテル、了解。Eホテル,コピー

ゆかり: 鈴木君、ケンタッキーフライドチキンのカールサンダースって何のわけ?
鈴木:  ミセスナガタのケンタッキーフライドチキンへの思いを伝えることが、その気が乗ったスーツケースを探すうえで大事だと思いまして。彼女の気持ちを共有できれば早く見つかりますから。
ゆかり: あら、難しいことを。わたしにはそんなの理解できないわけだけど。
鈴木:  不幸な人ですね。マクドナルドとか?ロッテリアにも?
ゆかり: 何それ、ロッテリア?(“ロ“を巻き舌で強く発音する)ロッテリアってアッテリア?
鈴木:  何すか、それ、駄シャレ?シャレくせ。ロッテリアはですね、、日本の、、、話がそれるんで省きます。簡単に説明しますと、俺の、いや、わたしの場合は吉野家です。あの牛丼様がもう無くなる、お目にかかれない、もうお相伴できない。いつも1時12分に現れていた彼女の姿を見ることができなる。その苦しさ、やるせなさ、そういうものがワッペンにつながるんす。
ウイルス: 鈴木!スーツケース!僕の指! 
鈴木:   悪い、悪い。
ゆかり:  通常のお客様の荷物に紛れ込んでいるなら2時,3時になってしまうわ。衣装合わせに間に合わない。鈴木君、うちの管轄でノースウエスト10便のお客様は4人だったわね。みんなここPホテルよね?
鈴木:   2人だけです。アライバルナンバー9のミスター、カンジュウロウ・オサダ夫妻は高齢のようでこちらに住んでいる息子さんがチェツクインをして滞在中は面倒を見るそうです。こちらがやるのは緊急時の対応と帰国時の空港への送りだけです。
ゆかり:  早めに荷物チェックしておいて。ウイルス、ノースウエスト10便の荷物運んでるドライバーが今どこのホテルにいるのか荷物会社のロバーツに聞いて。

ウイルス、受話器を取り事情を話す。しばらくして

ウイルス: 今ドライバー連絡取れない!取れたらこっちに連絡くる。
ゆかり: (腕時計を見て)もう11時半。わたし、オプショナルツアーの説明があるから先にランチに行くわ。うちの2人のお客さんのチェックイン、わたしがやるから後頼むわよ。何かあったら携帯にね。

ゆかり、急ぎ足でデスクを出て行く。

ウイルス、落ち着かなくてそわそわしている。

鈴木: ウイルス、スーツケース出てくるからそう落ち込むな。明日の午後、ナガタの親父がバンクーバーから到着予定だって。オフイスからFaxが来た。特別何も書いてなかったがやくざの親分だよ。

鈴木、Faxをゆかりのデスク上で探す。それとは別のFaxを発見する。読み終えて

鈴木:  珍しく今朝早く出勤してたのはこれか。ウイルス、亀は亀の荒川専務からユカリホフマン宛の極秘のFaxだ。俺たちに知られないように普通の客のように思わせろ、だと。ブラックリストに載っているんで名前を変えて来たらしい。さっきテキヤに渡したメッセージは親分の到着を知らせたんだ。ヒデヨシって名前、そう言えば、何年か前に新聞に載ってたな、数百万の金持ち込んで問題になったんじゃなかったけ、、
ウイルス:ああ、、覚えてるよ。背中に刺青してサーフィンしていたやくざだ!
   アメリカだまして又来た?
鈴木: アメリカだます?変な言い方、お前は正直者だな。星条旗の星、お前にしたいぐらいだ。テキヤも明日来る親分もブラックリスト対象者だってさ。本当は“ながた”じゃなく“ながだ”だって。漢字って読み方違う場合があるからそれを利用しただと。
ウイルス: ナガダ、、違う名前でパスポートできる?
鈴木:  同じようなことして俺の友達にアメリカの永住権2回取ったのがいる。
ウイルス: 他には何が書いてる?
鈴木:  親分と亀は亀の社長は知り合いだからゆかり君よろしく頼む。最後にゆかり君の待遇と賃金アップを考慮するようカメハメハ社長に伝えてあります、とよ。今回、上手くやればサラリーもランクも上がる、ってことだ。なら自分でやりゃいいのに何で俺たち、、やばいことは俺たちの責任にしようってな、
ウイルス: ママがよく言ってた諺、“ケツに入れてシリをえず”。何もしないでもうけよう、ってか!(最後、強調して)
鈴木:   何、ってか?!強く言うな。おまえのボキャブラリー能力でそんな言い方すんな。その前に何言った?
ウイルス: ママの諺?ケツに入れてシリをえず? 
鈴木:   ケツと尻?、、一緒だろうが、、それはね、虎穴にいらずんば虎児を得ず、だ。
ウイルス: そ、、、それ、それ。

突然、ながた、現れる。

ながた: 寒い北海道から着たんだ。ももしきに赤外線入りのらくだの肌着。暑くてたまんねんだ。着替えねんだよ?
ウイルス: (指を隠しながら)そこの角のABCストアーに下着売ってます。
ながた:  福助は? 
ウイルス: 、ふく、、すけ、、ふく、すけ、。?お!、、ふくがすけすけ見える。シースルー。それは別の店で、
鈴木:   いえ、ながた様、福助はここじゃ難しいです。
ながた:  6世なのによく福助知ってるじゃねぇの?あ、?
鈴木:  お祖母ちゃんが持っていたので。
ながた: ふ、、ん。福助の肌着じゃなきゃ駄目なの。どうしてくれんだ!
鈴木: スーツケースが出てくるまで奥様とワイキキでサーフィンはいかがでしょう?サーフボード借りれます。
ながた: 北海道の人間が泳げると思っとる?
ウイルス: いいチャンス。ここで泳げるようになるでしようよ?
ながた: なるでしようよ、、気に食わないな、このばい菌、その言い方は。泳げないのが北海道の人間!わかるか。俺のアイ、イテテーがなくなんだよ!
ウイルス:アイイテテー?それ違いますでしょう?アイデインテティーでしょう?
   
ながた、ウイルスをにらむ。

鈴木:  一生懸命に探していますのでもうしばらくお待ちください。
ながた: どのくらい。
ウイルス: 出てくるまでに決まっているでしょうよ? 
ながた:  まただ。しようよ、、このウイルスばい菌!衣装合わせに間に合わなかったら、おめーら殺すからな。
ウイルス: それ、ここ捕まります。警察訴えますでしょう?犯罪です。僕の指をつみ、、、
鈴木:  つめる。 
ウイルス: そう、つめる、と言った。これも犯罪です。
ながた:  わかった、わかった、、あいアンダースタンド。あい、あっぷ すたんど。すたんど あっぷ、、、待ってるからよ。早く探せよ!
   
帰り際、鈴木を見て弱気な声で

ながた: いいか、6チャン。大金が入ってる、とかじゅん子に言ったそうだが。なーーーんにも入ってねえかんな。本当だ。これだけは言いたかったんだ。 
鈴木:  は、、、、、、
   

2009.07.26 


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