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13:5センチの男

夜9時、会長の次男、清尻大三と二人で蜂須賀さんの屋敷にゴミを取りに行った。
清掃車には大三が勤めている池袋の清掃会社のロゴが入っていた。
会社も死体ゴミに関わっているのだろうか。
大三は同じ世代だ、25ぐらいだろう。
深夜、部屋から見かけたことはあったが初対面だった。
この町に来て半年以上、自分が信用できる男か見ていたのだろう。
会長が紹介してくれた。
「大三、益田さんだ。
これからゴミ搬送は二人でやってもらう。
道中、気をつけてな」
「大三です、よろしくお願いします」

車中は静かだった。
皆清町がおかしい所だったのでどんな人物か興味がった、なんせ初めての若い皆清族だ。
益田は他人に気を遣わない、疲れることはしない。
自分の世界に閉じこもる方だ。
大三もそのようだ、ただ運転している。
乗ってすぐ気づいた、運転が上手い。
眠くなりそうな心地よい揺れ、案山子も立ったまま乗れる。
その度に、眠気覚ましのブレーキがかかる。
信号に捕まらない、速度は50以上は出さない。
むやみにアクセルを踏まない。
エコドライブの見本だ。

蜂須賀さんの屋敷に近づいた。
とんでもない狭い道を普通に走っている。
おかしい、昨日、こんな道を通らなかった。
塀、家、ビル、すれすれだ、その差、5センチ。
大三は楽しんどるごとある、どげんしたと。
この分なら車の幅より狭いとこも行くぞ。
ニックネームを“5センチの男”にした。
言ったら、ことだ。
変に勘ぐる。
口に出さないように気をつけよう。

「大三さん、蜂須賀さんのとこに行くんですかね?」
「ええ、すぐそこですよ」
「こんな狭い道、昨日なかったような気がしとりますが」
「ええ、開拓した道です」
開拓?なんば開拓しとると、東京で。
「道を造っとるとですか?」
「楽しいでしょう、裏道。
親父がいると怒られますからこれから四郎さんで楽しめます。
よろしく」
「はあ、、私の名前は益田重雄ですが、四郎ではないです」
「何をおっしゃいますか、天草四郎でいいじゃないですか、、おっとこの路地だ。
すぐそこです」

黒いプラスチック袋三つが無造作に蜂須賀さんの屋敷の庭先に転がっていた。
成る程、会長が言ったようにゴミだ。
中年の男がいた、蜂須賀小六さんの姿はない。
「大三さん、頼みます。
横浜産で三浦海産の箱に入ってます。
冷凍されていたので臭みはないです」
なんじゃあ、、海産物の運搬か。

普段、会長に聞けないことを聞いた。
「どこに行くとですか?」
「山形のX山です」
「死体を埋めるですか?」
「家の一族の寺で供養して埋葬します。
皆清族、代々のビジネスです」
「はあ、、大三さんは皆清町には住んでいませんね?」
「あそこは年寄りだけです。
俺達、若いのは皆青町に住んでます、北区です」
「若い?皆清町みたいな町があるとですか?」
「規模は南池袋より大きくないのですが約40人ぐらいいますかね。
親父の若い頃は100人以上いたそうですよ。
少子化ですよ、我が一族も減っています。
“かいせい”でも字は違いますよ。
かいせいのせいは青で、青年の青です。
正式には皆青年倶楽部町と言います」
「青年倶楽部町、、、やっぱり綺麗にしとるですか?」
「南池の皆清町は異常です。
誰が道路、道、雑巾がけします、いくらなんでも。
そんなことしたら病院送りになります」
「はあ、世代のギャップがあるとですね。
皆清族は加藤清正公の子孫だと会長が言っとったのですが、そうなのですか?」
「家の巻物ではね。
加藤清正公の子の加藤忠広の娘が山形で結婚した相手が清尻大五郎、家の先祖様です。
でも、あくまで家の巻物ではですよ」
「はあ、巻物では、、そうですか」
「2008年ですよ。
巻物を鑑定団に出せと親父に言ったんですが、殴られました。
あなたこそ天草四郎の子孫らしいと、親父が興奮して言ってましたが」
「何を言うとるとですか、こんな私がそげんなはずないでしょう」
「親父の周りは子孫だらけもう何が出てきても免疫が出来てます。
203の山田裕子さんはあの島原の乱で一人だけ生き延びた山田右衛門、201の福島正は福島正則の子孫です、、、親父が言ってましたけどね」
「山田右衛門?」
「幕府の密偵であなたを殺した張本人でしょう」
「私を殺したんですか」
「原城に閉じこもった一揆軍3万7千人で唯一人生き延びたんですよ。
知らなかったですか」
「全然、」
「絵描き、洋画家だとか、世界三大聖旗の一つ、天草四郎陣中旗は有名らしいです」
「山田裕子さんは、そういえば美大だ。
まさかそげんことはないでしょう」
「福島正さんは知ってるでしょう?」
「隣に住んでますが、まだ挨拶も、、、」

何度も会っていたが、話せなかった。
というのも、いつも別人のように思ったからだ。
女性、婆さん、ハーフ、オカマに始まり、男、老人、パンク姿、ロック少年、学生服、セーラー服、何でもありだった。
突然変異したカメレオンどこじゃない。

「先祖様の親友だと親父が言ってました」
「先祖様、清正公の、親友?
なんですか、それ?」
「福島正則のことです。
戦国時代の話です、」
「豊臣時代の親友ですか?
それが、あの福島正さん?
何にでも化けますよ」
「それが仕事ですから、、」
「何の仕事をしとるとですか?」
「子孫探しです、豊臣家を滅ぼした」

大三の目が最後の言葉で異様に光った。

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

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