11:ごみ 鉄人が消えた
11:鉄人が消えた
どこの地区にも問題はある。
特に隣近所のトラブルは嫁姑問題と同様、汚染された空気のようなものだと益田は思っている。
偉い坊さんでも、哲学者でも、思想家でも、自分の丹精込めた、命を吹き込んだ庭に猫がウンチしたらたちまち凡人になる。
彼らが遊びに来るのを阻止しようと、お経が、哲学書が、崇高な本が“猫の嫌がる,,本”、“猫を遠ざける,,本”になり、果てはビデオを設置して要塞化に励む。
猫をよく知っている益田はそんな家を見るとおかしくなった。
努力実って、嫌がる本、遠ざける本共にうっすらほこりが付き始めた頃、彼らの余興が始まる。
入ろうと思えばどんな要塞であろうがいつでも入れた。
盆栽の中にウンチもできた。
屋根、木に登って落とすだけだ。
そこまでやっている人間達が可哀相に思えてそれなりに配慮していただけだ。
そんな意地悪なことをしないで一緒に生きていこうね、と改悛してくれれば、
これからは少し深く掘ってウンチを分からなくしてあげれるのに、、、
隣の住人、町、県、国、なぜ隣同士は仲が悪いのたい、、、、
鉄人の標準語化・講習のお陰で言葉の使い方がおかしい。
長崎では、奥さんの君子さんの実家の東隣に住んでいた。
君子さんのお母さんと西隣のお婆さんは、、もちろん仲が悪い。
信心深い君子さんのお母さんが隣に向かってお経をあげるぐらい仲が悪い。
隣が引っ越してきた翌朝、ウンチがあった。
誰の、、か分からない。
私立探偵お母さんは、今までのも隣で飼っている犬が実行犯で主犯はお婆さんだと断定した。
隣が越してくる前にも数か月に一回の割合でウンチがあったにも拘らずだ。
以来、冷戦状態が続いている、もう20年以上になる。
アーバン・キャッスル皆清、隣に組長の水前寺清子さんが住んでいた。
町の序列では、鉄人がナンバー2で水前寺組長婆さんはナンバー5だ。
ナンバー2より若干若くて76歳、視力、1.2、やや老眼気味だったが、1.5老眼なしの鉄人が異常なだけで、負けず劣らず体力は素晴らしかった。
敏捷性はさすがに小学生の子供並みに動く鉄人には遠く及ばなかったが持久力は勝っていた。
水前寺さんは大の犬好きで3名いる。
鉄人は大の猫好きでこちらも3名。
しかも二人とも大の猫嫌いと犬嫌いだ。
大、大、、これ以上書くと別のをイメージしてしまうので控えます。
これで問題が起きないのがおかしい。
唯一の共通点は、同居人を人間並みに呼ばないと気分を害し、話しかけても知らん振りするぐらいしかない。
水前寺さんは猫よけのレモンの皮、水が入ったペットボトルを町中に置き、
鉄人はそれに抗議し、町内に野良猫用の給食センターを立ち上げようとがんばっている。
益田は両刀使い、両刀使い?
猫も犬も大好き、当然、仲裁役が回ってきた。
この二人、どんな時でも会うと必ず同じ話題を口にした。
内容はまるっきり同じ、お互い頑ななだけに進歩がない。
「水前寺さん、レモンは道路に置かないようにしてください。
ゴミです。
かたづけるのが大変です。
ペットボトルも置かないで、みっともなくて恥ずかしいわ」
「私の庭にウンコさせないようにして、この前軟らかいのがあって困りました。
餌をあげる婆さんが近くに住んでるからいけないのよ」
犬猫を溺愛しているのに、なぜこうなるのか到底理解できん。
自分の馬鹿さ加減が分からんけんたい、
二人の会話を録音して聞かせたら面白かばい。
変化があるかもしれん。
やることにした。
予め録音したレコーダーを二人が鉢合わせた時に再生した。
散々な結果に終わった。
鉄人はそれほどでもなかったが、水前寺婆さんはカンカンに怒って益田の頭を小突こうとした。
結構、この婆さん、武闘派だ。
鉄人は何が起こっているのか理解できなかった、、と感じた。
皆清町、唯一のシンガーソングライター鉄人は、これまで朝一番にやる自分のオリジナル掃除体操、掃除音頭を壇上で指導していた。
最近、歌詞を忘れて佇んでいる姿をよく見かけた。
3か月前は、自分を四郎、山田裕子(ひろ子)をゆう子、と間違えるぐらいだった。
最近、会長をドナウジーニョと呼んでいた。
最初、目の前でドナウジーニュと呼んだ時、鉄人の痴呆が治ったのかと思った。
80の婆さんの領域を超えた若々しい響きがあった。
ロがドになっていたが、ひどく嬉しかった。
そうではなかった。
自分を見て釜本さんと言った。
釜本、、?
釜本邦茂、日本サッカー協会の副会長だ。
68年、メキシコオリンピックの得点王になった人だ。
それ以来、自分の名前が四郎、釜本になった。
痴呆が進んでいた。
家の奥さんのお母さんと同じだ。
外観は変わらないのに別人のようだ、
あの鉄人が、、こうなるの、。
今朝の掃除体操、壇上には水前寺婆さんがいた。
鉄人がいない。
会長が手招きした。
「ツネ婆さんはどうしたですか、調子でも悪いとですか?」
「昨夜、故郷に帰った。
あなたによろしく言ってたよ」
「どうしてですか?」
「痴呆が進んで支障が出てきたからね。
で、益田さん、頼みがあるのだが、3匹、猫預かってくれないかな。
清子さんは猫嫌いだから、、、
アーバン・キャッスル皆清の大家は水前寺清子さんに代わるので猫の面倒見る人がいないんだ。
あなたに頼めないかな」
というわけで3人の猫が家にいる。
鉄人がいなくなった夜、3時ごろ、車の発進する音がした。
窓から見た時は誰もいなかった。
何も言わんで行かんでも、サヨナラぐらい欲しかったたい。
60半ばの清川虹子さんが水前寺さんの家で暮らしている。
鉄人の親戚だ、会長が言った。
もうずっと住んでいるって感じだ、違和感がない。
2か月前に、二人、忽然と消えた時と同じだ。
ロナウジーニュ:サッカー・スペインリーグ、バルセロナの選手。ブラジル人
どこの地区にも問題はある。
特に隣近所のトラブルは嫁姑問題と同様、汚染された空気のようなものだと益田は思っている。
偉い坊さんでも、哲学者でも、思想家でも、自分の丹精込めた、命を吹き込んだ庭に猫がウンチしたらたちまち凡人になる。
彼らが遊びに来るのを阻止しようと、お経が、哲学書が、崇高な本が“猫の嫌がる,,本”、“猫を遠ざける,,本”になり、果てはビデオを設置して要塞化に励む。
猫をよく知っている益田はそんな家を見るとおかしくなった。
努力実って、嫌がる本、遠ざける本共にうっすらほこりが付き始めた頃、彼らの余興が始まる。
入ろうと思えばどんな要塞であろうがいつでも入れた。
盆栽の中にウンチもできた。
屋根、木に登って落とすだけだ。
そこまでやっている人間達が可哀相に思えてそれなりに配慮していただけだ。
そんな意地悪なことをしないで一緒に生きていこうね、と改悛してくれれば、
これからは少し深く掘ってウンチを分からなくしてあげれるのに、、、
隣の住人、町、県、国、なぜ隣同士は仲が悪いのたい、、、、
鉄人の標準語化・講習のお陰で言葉の使い方がおかしい。
長崎では、奥さんの君子さんの実家の東隣に住んでいた。
君子さんのお母さんと西隣のお婆さんは、、もちろん仲が悪い。
信心深い君子さんのお母さんが隣に向かってお経をあげるぐらい仲が悪い。
隣が引っ越してきた翌朝、ウンチがあった。
誰の、、か分からない。
私立探偵お母さんは、今までのも隣で飼っている犬が実行犯で主犯はお婆さんだと断定した。
隣が越してくる前にも数か月に一回の割合でウンチがあったにも拘らずだ。
以来、冷戦状態が続いている、もう20年以上になる。
アーバン・キャッスル皆清、隣に組長の水前寺清子さんが住んでいた。
町の序列では、鉄人がナンバー2で水前寺組長婆さんはナンバー5だ。
ナンバー2より若干若くて76歳、視力、1.2、やや老眼気味だったが、1.5老眼なしの鉄人が異常なだけで、負けず劣らず体力は素晴らしかった。
敏捷性はさすがに小学生の子供並みに動く鉄人には遠く及ばなかったが持久力は勝っていた。
水前寺さんは大の犬好きで3名いる。
鉄人は大の猫好きでこちらも3名。
しかも二人とも大の猫嫌いと犬嫌いだ。
大、大、、これ以上書くと別のをイメージしてしまうので控えます。
これで問題が起きないのがおかしい。
唯一の共通点は、同居人を人間並みに呼ばないと気分を害し、話しかけても知らん振りするぐらいしかない。
水前寺さんは猫よけのレモンの皮、水が入ったペットボトルを町中に置き、
鉄人はそれに抗議し、町内に野良猫用の給食センターを立ち上げようとがんばっている。
益田は両刀使い、両刀使い?
猫も犬も大好き、当然、仲裁役が回ってきた。
この二人、どんな時でも会うと必ず同じ話題を口にした。
内容はまるっきり同じ、お互い頑ななだけに進歩がない。
「水前寺さん、レモンは道路に置かないようにしてください。
ゴミです。
かたづけるのが大変です。
ペットボトルも置かないで、みっともなくて恥ずかしいわ」
「私の庭にウンコさせないようにして、この前軟らかいのがあって困りました。
餌をあげる婆さんが近くに住んでるからいけないのよ」
犬猫を溺愛しているのに、なぜこうなるのか到底理解できん。
自分の馬鹿さ加減が分からんけんたい、
二人の会話を録音して聞かせたら面白かばい。
変化があるかもしれん。
やることにした。
予め録音したレコーダーを二人が鉢合わせた時に再生した。
散々な結果に終わった。
鉄人はそれほどでもなかったが、水前寺婆さんはカンカンに怒って益田の頭を小突こうとした。
結構、この婆さん、武闘派だ。
鉄人は何が起こっているのか理解できなかった、、と感じた。
皆清町、唯一のシンガーソングライター鉄人は、これまで朝一番にやる自分のオリジナル掃除体操、掃除音頭を壇上で指導していた。
最近、歌詞を忘れて佇んでいる姿をよく見かけた。
3か月前は、自分を四郎、山田裕子(ひろ子)をゆう子、と間違えるぐらいだった。
最近、会長をドナウジーニョと呼んでいた。
最初、目の前でドナウジーニュと呼んだ時、鉄人の痴呆が治ったのかと思った。
80の婆さんの領域を超えた若々しい響きがあった。
ロがドになっていたが、ひどく嬉しかった。
そうではなかった。
自分を見て釜本さんと言った。
釜本、、?
釜本邦茂、日本サッカー協会の副会長だ。
68年、メキシコオリンピックの得点王になった人だ。
それ以来、自分の名前が四郎、釜本になった。
痴呆が進んでいた。
家の奥さんのお母さんと同じだ。
外観は変わらないのに別人のようだ、
あの鉄人が、、こうなるの、。
今朝の掃除体操、壇上には水前寺婆さんがいた。
鉄人がいない。
会長が手招きした。
「ツネ婆さんはどうしたですか、調子でも悪いとですか?」
「昨夜、故郷に帰った。
あなたによろしく言ってたよ」
「どうしてですか?」
「痴呆が進んで支障が出てきたからね。
で、益田さん、頼みがあるのだが、3匹、猫預かってくれないかな。
清子さんは猫嫌いだから、、、
アーバン・キャッスル皆清の大家は水前寺清子さんに代わるので猫の面倒見る人がいないんだ。
あなたに頼めないかな」
というわけで3人の猫が家にいる。
鉄人がいなくなった夜、3時ごろ、車の発進する音がした。
窓から見た時は誰もいなかった。
何も言わんで行かんでも、サヨナラぐらい欲しかったたい。
60半ばの清川虹子さんが水前寺さんの家で暮らしている。
鉄人の親戚だ、会長が言った。
もうずっと住んでいるって感じだ、違和感がない。
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