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6:イシル マヤ・キチェ村


風土病で道路にうずくまった。

目が覚めた、ベッドの上だった。
ベッド脇で子どもがグアテマラコーヒー(濃縮したコーヒー)にお湯を注いでいる。
男が子どもの頭を撫でながら受け取った。
トヒルの父親、リカルドに助けられた。
熱、異常なだるさ、脳みそはカビだらけ、食欲はなく完璧に体がおかしかった。
イシルのマヤ村に4か月いた。

1982年4月3日、村がグアテマラ政府軍の強襲を受けた。
数時間前に、会合があるから皆、教会に集まるように、と知らせが来た。
トヒルを俺の布団に入れ、あるだけの服を被せて、マリア、お祖母さんと出て行った。
「明、ここらの村は会合と言われ集まったとこを襲われている。
何かよくないことが、、、。
行かないと兵隊が見に来る。
何かあったら、明、フロリダの友達のとこにトヒルを連れて行ってくれないか」

夜遅くなっても帰ってこなかった。
教会の中は死体の山だった。
リカルド、マリア、村民100人以上が、、なただ、兵隊どもは撲殺した。

トヒルをバックパックに入れて夜半、村を出た。

大きな町のチェックポイントでは、ヘブライ語が聞こえた。
兵隊が寄ってきた。
「ハポネス(日本人)?」
「シー、旅行中です」
「大きなバックだな、何かくれよ」
5人に囲まれた。
バックパックを触ってきた。
「何も、、時計があります!
これで!
これで勘弁してください!
セイコーです!」
「勘弁してくれ、、、何が入ってる。
開けてみろ」
「ネックレスも、、ブレスレットも、、どうぞ、急いでます!
バスに間に合わないので、、」

トヒルが見つかってしまった。
殺す、と言う、5歳になったばかりの餓鬼だ。
銃口が目の前だ。
俺は狂った、
何でもやった。
地面に頭をつけた。
何も悪いことはしていません!
この子は孤児です!
誰も身寄りがいません!
お願いです!
助けてください!
泥が飛んできた。
ぼこぼこにされた。

小さな舌が左瞼で遊んでいた。
兵隊が遠くで笑っている。
素っ裸、、だ。
「どうした、トヒル!
服は、、何かされたのか!」
「アキラ、血が止まんないの」
“の”が、トヒルお母さんに言い聞かせられたようで、
場違いで可愛かった。
落ち着いた餓鬼だ。
お父さん、お母さんのことを何も聞かなかった。
何があったのか知っていた、、マヤの子は強いな。
体中、綺麗な赤の包帯もどきが巻かれていた。
パンツを脱いでまで、、やっぱり子どもだ。
トヒル製作のフランケンシュタインだ。
緩んでずり落ちている。
よかった、。

兵隊達は俺たちが行くのを見もしなかった
5歳の餓鬼の、小さな手、足、壊れそうな素っ裸の体を
見て、殺せる奴はもう人間ではない。

フロリダでリカルドの友達を探した。
ここにはグアテマラから逃げてきたマヤの人達が住んでいた。
リカルドの友達は亡くなっていた。
暗殺されたという噂だ。
トヒルを抱えて途方にくれた。

日本に連れて帰るか、、

日本語か聞こえた。
同郷の長崎の人だった。
私が引き取ります、修道女が言った。


「ダニーから面白いことを聞いた。
前からエンリケは、ドル紙幣偽造・印刷機を購入して北朝鮮に運んだと疑われていた。
だが、出回っている偽紙幣、大半はCIAが製造したものだと噂があるようだ」
「お兄さん、何、それ!」
「カモフラージュだ。
北朝鮮の数は微々たるもので、殆どがCIA偽造だと、」
「おかしいでしょう。
自分の国のお金を偽造するの!」
「議会だ。
昔と違って議会の承認なしで金を使えなくなった」
「そうなのですか、、」
「今年、1月、ドイツの新聞(注)にCIA偽造関連の記事が載ったそうだ。
以来、米政府の反応はない。
エンリケはあの機関の手先だ、何でもやる。
意図的に北朝鮮に偽造させて、CIAが利用している可能性があると、ダニーが言ってた。
純、今回のツアーは必ず何かある。
時間、関係なく連絡くれ。
モモと俺はいつでも動ける」
「純、危険だけどがんばろう。
お父さん達の無念を晴らすのよ」


翌朝、8時、デスクに電話があった。


注:
2007年1月7日の日曜版、独、フランクフルトの新聞、FAZ・アジア版にCIAがワシントン郊外のCIA施設内で$50,$100偽札偽造の記事。米政府、沈黙。

FAZ(Frankufurter Allgemeinen Sonntagszeitung of Frankfurt):
独、保守系新聞。1949年設立、発行部数一日、38万。
(参:ウイキペディア)

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genre : 小説・文学

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