13:はわいーい ブリーフケース
13:ブリーフケース
坂上一郎と戸川正雄、二人の女性を先導してシーサイド・ホテルを出た。
本当の名前を聞いていなかった。
問題が起きる前に尋ねよう。
二人の驚きの声で振り向いた。
私達ハワイにいたのね、初めて気づいたような笑みを浮かべている。
T-バックのマイケル・タケがビーチに向かって歩いていた。
奇妙なことに、日陰の中、行き交う車に反射した日差しが彼の見苦しいお尻だけに当たっていた。
ハワイの太陽は天国ボケしているのか、グロテスクなのが好きなのか?
先程の子どもの可愛いお尻のように、もう少し粋な計らいをすると思っていたのに。
まあ、いいか、ここは天国ハワイだ。
あんな毛むくじゃらなT-バックが許されるのだから。
それにしても、よくあんな紐だけで歩けるものだ。
誰もが見ないように装っていた。
通り過ぎて、90度、首を傾げ、お尻だけを見た。
世も末ね、って顔で皆、一様に目を細め、首を振った。
天国でもあのT-バックは異常なんだ。
「マイケル・タケさん!」
気づいてくれない。
歩き方が違うじゃないか、どうしたんだ。
歩いている女性達が含み笑いをしている。
両足の角度が広い、なぜあんなに、。
あ、、馬鹿だな、前部を誇示している、脳天気な男だな。
女性達を部屋に案内した後、ロビーで待っているマイケル・タケとシーサイドに向かった。
「着替えた方がよろしいのでは」
相手にされなかった。
T−バックで行く気だ。
お陰で彼女達の名前を聞きそびれた。
シーサイドのフロントとT-バックで一悶着を起こした後、バスタオルで下腹部を覆って3301に行った。
もう天国でぺこぺこするのは嫌になっていた。
「社長さんと部長さんの荷物が行方不明なのでお尋ねしたいのですが、スーツケースの色は紺色と黒の合計2個でよろしいですか?」
「ああ、そうだ」
「大きさとケースは?
ハードケースですか?
固いのですか?」
「両方とも60×70ぐらいかな。
固いやつだ」
「ホノルル空港でその2個のスーツケースを見ましたか?」
「俺が持って税関を通過したよ」
「私どものスカイツアーの名札は付けてありましたか?」
「ああ」
「それにはローマ字で名前が書かれてましたよね?」
「漢字だ」
「漢字?
ローマ字は?」
「漢字だと言ってんだろう!」
胸ポケットの手帳から一枚をむしり取り、ポールペンをマイケル・タケに渡した。
「紺と黒のスーツケースに書いた漢字をお願いします?」
紺に上村正一、黒色に荒井君夫、と細川に手渡した。
細川は部屋から純にそれらの情報を伝えた。
漢字と聞いて荒井邦男が不機嫌な顔をして沢村を見ていた。
「沢村、ローマ字で書けと言わなかったのか!」
「はい、申し訳ありません。
言ってません」
名前まで変えてきたのにへまの連続で荒井邦男はソファに身を落とすや沢村を呼びつけた。
テーブル上にあったテレビのリモコンで彼の頬を打った。
衝撃でリモコンの電池2個が飛び出た。
一個が邦男のサングラスを直撃して足下のジュウタンに落ちた。
右上唇から血を垂らしながらサングラスを取ろうとひざまずいた沢村の鳩尾を蹴り上げた。
荒井邦男はマイケル・タケを呼んだ。
恐る恐る近寄った彼の股間をバスタオルの上から掴むと同時にあごを殴った。
悲鳴を上げてマイケル・タケが股間を押さえて前屈みになった。
バスタオルと紐バンドがかろうじて腰からぶら下がっている。
頭を右足で強く押した。
後ろに倒れ、ガラステーブルの端で後頭部をしたたか打った。
痛みが全身に走った時、マイケル・タケは沢村から機内に持ち込めと命じられていたブリーフケースを専務のスーツケースの中に入れたのを思い出した。
待合室で座っていると、突然、沢村にブリーフケースを手渡された。
機内持ち込みの手荷物は一個しか認められていなかったので、楽しみにしていたコンピューターゲームをやれなくなった。
旅行の度に持ち物を制限され、上役の荷物の面倒を見るのはいつも自分だった。
今回だけは譲れなかった。
沢村が去った後、専務のスーツケースに無理矢理ブリーフケースを押し込んだ。
ホノルル空港で抜き取ればいい。
空港で沢村にブリーフケースを聞かれた時、コンピューターゲームが入っている自分のバッグに入っていると嘘を吐いた。
あれだけ沢村が念を押した程だから大事なものが入っていたにちがいない。
スーツケースが見つからなかったら、、。
金玉を掴まれて殴られるぐらいじゃすまない。
沢村がマイケル・タケに預けたブリーフケースには宮沢組とルイス・エンリケの共同事業に関する補足的な参考書類が入っていた。
沢村は契約書が入ったブリーフケースと補足的な参考書類が入ったブリーフケース、2個を持って搭乗カウンターに行った。
機内持ち込みは一つしか認められていないと指摘された。
ファーストクラスの社長と部長の姿は辺りに見当たらず、
しかたなく参考書類が入ったブリーフケースをマイケル・タケに、必ず機内に持ち込むようにと指示して渡した。
マイケル・タケとはビジネスとエコノミーに分かれていたので、ホノルル空港到着時まで顔を会わさなかった。
参考書類には計画の全容が書かれてあったので、人目には絶対に触れさせてはならないものだった。
邦男の凶暴さを目のあたりにして細川はひどく心細くなった。
到着時、腹痛でトイレでうずくまっていた。
荷物チェックどころではなかった。
矛先が来るのではないかとどきどきしていた。
なんとかここを逃れようと祈るような気持ちで、股間を押さえているマイケル・タケに聞いた。
「税関を出た後、東都の、先程の若者が着ていたようなブルーの制服を着た人にそのスーツケースを預けましたか?」
「預けた」
「制服は先程の若者が着ていたのと同じですね?」
「何度言わせるんだ。
そう、ブルーの服を着た女だった」
「女性でした?」
「そうだ!」
「すぐ探しますからもうしばらくお待ちください」
出ていこうとした細川を沢村拓司が睨んだ。
怒りの捌け口を見つけたような陰湿な目つきだ。
「グループの荷物チェックは添乗員の仕事じゃないのか」
「そのとおりです!
申し訳ありません!」
「スーツケースが出てこなかったらあんたはどうなるか知らんぞ。
ここの滞在者リストの社長の名前も間違えてたようだしな」
「はい!
どうかもうしばらくお待ちください!
見つけしだいすぐ運ばせますから!」
坂上一郎と戸川正雄、二人の女性を先導してシーサイド・ホテルを出た。
本当の名前を聞いていなかった。
問題が起きる前に尋ねよう。
二人の驚きの声で振り向いた。
私達ハワイにいたのね、初めて気づいたような笑みを浮かべている。
T-バックのマイケル・タケがビーチに向かって歩いていた。
奇妙なことに、日陰の中、行き交う車に反射した日差しが彼の見苦しいお尻だけに当たっていた。
ハワイの太陽は天国ボケしているのか、グロテスクなのが好きなのか?
先程の子どもの可愛いお尻のように、もう少し粋な計らいをすると思っていたのに。
まあ、いいか、ここは天国ハワイだ。
あんな毛むくじゃらなT-バックが許されるのだから。
それにしても、よくあんな紐だけで歩けるものだ。
誰もが見ないように装っていた。
通り過ぎて、90度、首を傾げ、お尻だけを見た。
世も末ね、って顔で皆、一様に目を細め、首を振った。
天国でもあのT-バックは異常なんだ。
「マイケル・タケさん!」
気づいてくれない。
歩き方が違うじゃないか、どうしたんだ。
歩いている女性達が含み笑いをしている。
両足の角度が広い、なぜあんなに、。
あ、、馬鹿だな、前部を誇示している、脳天気な男だな。
女性達を部屋に案内した後、ロビーで待っているマイケル・タケとシーサイドに向かった。
「着替えた方がよろしいのでは」
相手にされなかった。
T−バックで行く気だ。
お陰で彼女達の名前を聞きそびれた。
シーサイドのフロントとT-バックで一悶着を起こした後、バスタオルで下腹部を覆って3301に行った。
もう天国でぺこぺこするのは嫌になっていた。
「社長さんと部長さんの荷物が行方不明なのでお尋ねしたいのですが、スーツケースの色は紺色と黒の合計2個でよろしいですか?」
「ああ、そうだ」
「大きさとケースは?
ハードケースですか?
固いのですか?」
「両方とも60×70ぐらいかな。
固いやつだ」
「ホノルル空港でその2個のスーツケースを見ましたか?」
「俺が持って税関を通過したよ」
「私どものスカイツアーの名札は付けてありましたか?」
「ああ」
「それにはローマ字で名前が書かれてましたよね?」
「漢字だ」
「漢字?
ローマ字は?」
「漢字だと言ってんだろう!」
胸ポケットの手帳から一枚をむしり取り、ポールペンをマイケル・タケに渡した。
「紺と黒のスーツケースに書いた漢字をお願いします?」
紺に上村正一、黒色に荒井君夫、と細川に手渡した。
細川は部屋から純にそれらの情報を伝えた。
漢字と聞いて荒井邦男が不機嫌な顔をして沢村を見ていた。
「沢村、ローマ字で書けと言わなかったのか!」
「はい、申し訳ありません。
言ってません」
名前まで変えてきたのにへまの連続で荒井邦男はソファに身を落とすや沢村を呼びつけた。
テーブル上にあったテレビのリモコンで彼の頬を打った。
衝撃でリモコンの電池2個が飛び出た。
一個が邦男のサングラスを直撃して足下のジュウタンに落ちた。
右上唇から血を垂らしながらサングラスを取ろうとひざまずいた沢村の鳩尾を蹴り上げた。
荒井邦男はマイケル・タケを呼んだ。
恐る恐る近寄った彼の股間をバスタオルの上から掴むと同時にあごを殴った。
悲鳴を上げてマイケル・タケが股間を押さえて前屈みになった。
バスタオルと紐バンドがかろうじて腰からぶら下がっている。
頭を右足で強く押した。
後ろに倒れ、ガラステーブルの端で後頭部をしたたか打った。
痛みが全身に走った時、マイケル・タケは沢村から機内に持ち込めと命じられていたブリーフケースを専務のスーツケースの中に入れたのを思い出した。
待合室で座っていると、突然、沢村にブリーフケースを手渡された。
機内持ち込みの手荷物は一個しか認められていなかったので、楽しみにしていたコンピューターゲームをやれなくなった。
旅行の度に持ち物を制限され、上役の荷物の面倒を見るのはいつも自分だった。
今回だけは譲れなかった。
沢村が去った後、専務のスーツケースに無理矢理ブリーフケースを押し込んだ。
ホノルル空港で抜き取ればいい。
空港で沢村にブリーフケースを聞かれた時、コンピューターゲームが入っている自分のバッグに入っていると嘘を吐いた。
あれだけ沢村が念を押した程だから大事なものが入っていたにちがいない。
スーツケースが見つからなかったら、、。
金玉を掴まれて殴られるぐらいじゃすまない。
沢村がマイケル・タケに預けたブリーフケースには宮沢組とルイス・エンリケの共同事業に関する補足的な参考書類が入っていた。
沢村は契約書が入ったブリーフケースと補足的な参考書類が入ったブリーフケース、2個を持って搭乗カウンターに行った。
機内持ち込みは一つしか認められていないと指摘された。
ファーストクラスの社長と部長の姿は辺りに見当たらず、
しかたなく参考書類が入ったブリーフケースをマイケル・タケに、必ず機内に持ち込むようにと指示して渡した。
マイケル・タケとはビジネスとエコノミーに分かれていたので、ホノルル空港到着時まで顔を会わさなかった。
参考書類には計画の全容が書かれてあったので、人目には絶対に触れさせてはならないものだった。
邦男の凶暴さを目のあたりにして細川はひどく心細くなった。
到着時、腹痛でトイレでうずくまっていた。
荷物チェックどころではなかった。
矛先が来るのではないかとどきどきしていた。
なんとかここを逃れようと祈るような気持ちで、股間を押さえているマイケル・タケに聞いた。
「税関を出た後、東都の、先程の若者が着ていたようなブルーの制服を着た人にそのスーツケースを預けましたか?」
「預けた」
「制服は先程の若者が着ていたのと同じですね?」
「何度言わせるんだ。
そう、ブルーの服を着た女だった」
「女性でした?」
「そうだ!」
「すぐ探しますからもうしばらくお待ちください」
出ていこうとした細川を沢村拓司が睨んだ。
怒りの捌け口を見つけたような陰湿な目つきだ。
「グループの荷物チェックは添乗員の仕事じゃないのか」
「そのとおりです!
申し訳ありません!」
「スーツケースが出てこなかったらあんたはどうなるか知らんぞ。
ここの滞在者リストの社長の名前も間違えてたようだしな」
「はい!
どうかもうしばらくお待ちください!
見つけしだいすぐ運ばせますから!」
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