3:はわいーい お客様、、あっての、、このエントリをはてなブックマークに登録

3:お客様、、あっての、、

「日本の代理店に文句を言う」
この一言でハワイの旅行代理店はおろおろした。
彼女はそれを知っていたのだ。
日本から、なぜこうなったのか聞いてくる。
糞食らえだ!
ただ、来週、彼女の旦那の組長が組員を引き連れてツアーで来るのが気になった。
表向きは上村通商になっていたが、関西を拠点にする広域暴力団・宮沢組の東京出張所らしい。
日本からのグループ紹介FAXには、暴力団のことは書かれていなかった。

一月程前、日本からの出向社員ツアー担当、黒木が今回に限って純に上村通商のグループ担当になるよう指示した。
後で暴力団のツアーだと知った。
保身に長けた黒木は最初からやるつもりはなかった。 
日本からの出向社員は現地ツアー業者からの接待、贈り物で潤っていた。
本社の役員、家族が来た時の彼らの態度は、平身低頭、ゴマスリに徹した。
ハワイを離れたくない一心がそうさせた。
ゴマすり、、現地採用だったが、そもそも純には理解できないことだった。
そこまでして、、、

デボラが電話を掛けてきた。
「荒川由美子はキーホルダーだけ受け取ってゲートインした」
後は、日本の代理店に請求書を送り、当事者間で解決してもらうだけだ。
 
デスクに戻ると、客が待っていた。
何回も自殺未遂をしたような中年男性だった。
横に男性の精を搾取したのが見て取れる、小太りで迫力ある50過ぎの女性と中学生の小娘が、男性を嘲笑うかのように立っていた。
最近この手の家族が多い。
男達はみっともないぐらい弱い。
女性は、強くて、たくましくて、ずる賢、、、立場を換えてやりたいぐらいだ。

「川口ですが、、財布を失くしたのですが」
女性達は純がどういう対応をするのか興味津々って顔付きだ。
「財布にクレジットカードは入っていましたか?」
「ええ、ビザにJCBです」 

電話帳で2社の紛失係を呼び出した。
日本語を話せる係員に代わってもらい、受話器を男性に手渡した。
 
その間、ワイキキのダラーレンタカー会社に電話した。
「キーを車に入れてロックしたのね?
谷沢明美ね。
ちょっと待ってて記録を見る。
ああこれだな。
文化センターならエアポートが近いわ。
彼女の登録番号あげるからエアポートのダラーに電話して。
言うわよ。
登録はDxxxxx、Telはxxxxxx」
「こういう場合はどうしてるの?」
「タクシーでスペアキーを持っていってもらうのね。
待って!
2台借りてるわね。
じゃあ、ロックしてないのでエアポートまで取りに来たら。
その方が安上がりよ」

谷沢さんの携帯に掛けた。
彼女の電話から40分以上が経っていた。
「東都さん、遅いわよ!
もう!」
「遅れてすいません。
二つ方法があります。
もう一台の借りている車で空港のダラーまでスペアキーを取りに行くか。
タクシーで空港からスペアキーを届けてもらうか。
もちろん後の方がお金がかかります。
6、7〇$ぐらいだと思いますが」
「ダラーってドルのことよね?
相談してみるから待ってて」

紛失届けをしてカードを無効にしてもらった男性が、純の電話が終わるのを待っていた。
女性と小娘は向かいのソファーに坐ってこちらを見ていた。
「川口様、ちょっとお待ち願えますか?」
谷沢さんの返答を待った。

「東都さん。キーを取りに行きますわ」
「分かりました。
谷沢様の登録番号はDxxxxx、空港のダラー、、ドルのTelはxxxxxxです。
空港のドルに連絡しておきますから」


「どうもすいませんでした。
カードはすべて無効に?」
「ええ、おかげで助かりました」
「他に何か財布には」
「現金が400$と7万円が」
「保険は?」
「入っています」
「紛失したのでしょうか?
盗難なら保険から出るかもしれませんが紛失だと分かりませんね」

連れの二人が大声を出しながらデスクへ来た。
「お父ちゃん、盗難でしょうが!
あなた、盗難よ。
アラモアナショッピングセンターから帰ってくるバスの中で盗まれたのよ」
男性は曖昧な笑みを浮かべて純を見た。
「お父さん、女性が二人いたでしょう!
一人が降りようとしてぶつかったしょう!
その後バッグ見たら財布だけ無かったのよ。
盗難でしょう、お父さん!」
「警察で盗難届けを出してその証明書をもらってください。
保険を請求する時、必要になりますから」


男性にカラカウア通りのワイキキの警察を教えて、内線でフロントを呼んだ。
「東都の純だけどオーシャンビューで1154より海が良く見える部屋ないかな?」
「今日はないようね。
純、オーシャンフロントはどう?
本土のグループキャンセル出たから3日間は安く泊めてあげるわよ」
「いくら?
「一泊プラス、20$で」
「タミー、その部屋、キープしといてくれる。
客に聞いてみるから」 

「木下様、遅れてすみませんでした」
口調が違った。
「何を待たせてんだ!
お前は!
殺すぞ!
1時間以上も待たせやがって。
電話しても出ねぇし、、ふざけるなよ」
「遅くなって申し訳ございませんでした。
今お泊りの1154より海が良く見えるお部屋はオーシャンビューのカテゴリではありませんでした。
一泊20$増しになってしまいますが、フロントオーシャンならご利用できます。
本土のグループのキャンセルを確認する為に遅くなりました。
申し訳ありませんでした。
木下様、どうでしょうか?
目の前は海になりますが、、」

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

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