下:12キャラメル スキンヘッドこのエントリをはてなブックマークに登録

キャラメル超特急
Sweet Candy Express

12:スキンヘッド


3kのコカインだ。
一刻も早くビィレッヂ・ポイントの部屋へ戻りたかった。

ドア向こうの階段は、鉤十字の刺繍、イラストの入った黒ジャンバー、チョツキを素肌の上に着た、体、腕、顔に刺青をしたスキンヘッド、ネオナチの単細胞達で溢れていた。

管理人に他の出口を聞いた。
あそこしかねぇよ。

チキートが俺たちを見てやって来た。
「どうした?」
「足の踏み場もないぐらい座ってる」 

チキートが管理人に声をかけた。
「ホセ、西の出口はどうなってんだ?」
「マリリン・マンソンのコンサートの時は西の出口は東よりひでぇんで閉めてる」
「聞いたとおりだ。
蹴散らして降りろ。
ユニオン・スクウェアはここ以上に奴らが群れてるから東に向かえ。
キューケースしっかり持ってろよ。
奴ら何やるか分からんからな」

「チーノ(中国人)チーノ」嘲り笑う奴、
不機嫌な顔で睨む奴、へらへら笑っている奴、
もしジーパンを踏んづけようもんなら殺してやるって顔をした奴、それら単細胞の獣の中を目を合わせないようにして降りた。

通りはそれ以上にひどかった。
エボラウイルスに冒されたゾンビが数百人群れていた。
憎悪の目を意識しながら、寝た子を起さないよう気をつけて東に向かった。
タクシーを探したがなかなか来ない。
彼らも避けているのだ。

1アベニューまで来て、奴らがまばらになった。
ほっとした。
その虚を突かれた。
後ろから全速力で走ってきたスキンヘッドが、アランが持っていたキューケースをひったくった。
東に向かって駆けていった。
泥棒はアベニューAを右に曲がってダウンタウンに向かった。

通行人が多い。
みんな何事かと立ち止まって見ている。
ポリスが近くにいるかもしれない、諦めた方が賢明だ。
何度かアランに声をかけた。
15m先だ、届かなかった。

泥棒とアランがトンプキンス公園に消えた。

二人がもみあっていた。
上にまたがって、アランがスキンヘッドを殴っていた。
右足首、革のベルトからナイフを抜き取ろうと手を伸ばしてもがいている。
俺はナイフを奪って右太股に突き刺した。
叫び声が響いた。
人が走ってくる。

アベニューBをダウンタウンに向かって走った。
ここまで1k近く全速力で走っていた。
もう俺に余力は残っていなかった。

4丁で右に曲がって西に向かった。
20mほど行った所で前後を挟まれているのに気づいた。
スキンヘッドだ。
後に3人、前に3人。
前の二人は手にチェーンを持っている。

どうしようもなかった。
もう既にくたくただ。

「アラン、取り引きしよう。
コカイン奴らにやろう」
「おかしいな。
《Wild World》の歌が聞こえなかった」
「“Wild World”何言ってる!
のんびりとこんな時に」
「あいつら仲間がやられるのを見てたんだな。
コカインやっても見逃さないぞ?」
「どうする気だ。
馬鹿達と殺し合うか?」
「奴らは本気だ。
俺たちもそのつもりでいないとやられる。
隙があったら逃げよう。
俺は4人片づけるから、耕三は二人頼む。
あれから空手と合気道を覚えたんだろう」
「心強いこと言ってくれるよな。
お前は喧嘩慣れしてるからいいが俺は初心者だぞ。
二人も、か、、自信ないな。
息が落ち着くまで数分、時間を稼ぐ。
俺が話す。
ちょっと相手を付け上がらせるぞ」
「クールだな、耕三。
惚れ惚れするよ」 

この3年、習っている空手と合気道の成果をいつか試してみたいと思っていた。
しかし、この状況ではやばい。

喧嘩慣れしているアランの野朗は落ち着いたものだ。
奴らの着ているジーンズ、チョッキ、ジャンバーの膨れ具合をチェックしている。
「耕三、前の3人の内、両端を頼む。
右端は右ベルトの所に何か隠してるぞ。
気をつけてな」
 
前後5m程の距離で向かい合った。
リーダ格の木綿豆腐のような肌をした、やけに鼻の下の長いのが爪楊枝を口にくわえたまま毒突いた。
「パンク!
仲間をやってくれたじゃねえか!
薄汚ねえユダ公とイエロードッグが!
「お前、木枯し紋次郎、知ってるのか」
「何言ってんだ!
お前は!
コガラシ、、モン、ン、、」
「やっぱり知らないか。
その爪楊枝、真似じゃなかったの?
ジャパンじゃあかっこいいヒーローだ。
お前みたいに爪楊枝、口にくわえてさ」
「何言ってんだ!
てめえは!
よくも仲間を痛めつけてくれたな」
「木綿豆腐知ってるか?
モーメンドーフ。
ダイヤより固いのさ。
お前の肌よりはましだ。
ひどいでこぼこがあるけどな」
「何をこの野郎!!」 

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

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