3:ヒッチハイク アムステルダム
3:アムステルダム
エバさんと別れてすぐ車が止まった。
中は灰色だ、貧乏揺すりがひどい。
タバコをくわえ、足が交互に跳ねている、いや、全身だ、タバコも。
「時間があるんで好きなとこに降ろすよ」
アムステルダム市駅まで頼んだ。
市内に入って雲息が怪しい、渋滞だ。
事故だろうか。
5円硬貨をプレゼントして降りた。
犬の糞を踏んづけそうになった。
「、、運転してるときはテンポの早いロックは聴かないほうが、、」
「よく言われるよ。揺すると事故らんのよ、わかる?」
駅に向かった。
渋滞の原因は事故じゃないようだ。
若者が恐い顔をして走ってきた。
「お巡りがダム・スクェア(ダム広場)にたむろしてるヒッピーたちを追ん出そうと放水して追っかけまわしてんだ。逃げてっとこさ。
おまえも小突かれるぞ、そのなりじゃ!
先は行かないほうがいいぜ!」
なんて街だ、ここは、犬の糞とヒッピーのか。
若者の群れが大声でわめきながら走って来た。
「逃げろー、逃げろー、お巡りだ!お巡りだ!
みんな逃げろ!」
しかたなく一緒に走った。
鶏声が教えてくれたパラジッソかファンタジオを探すことにした。
一緒に走っている髭もじゃのヒッピーに尋ねた。
「パラジッソに行きたいんだ?」
「そこにいる。少し遠いけど探すのそんなに難しくないよ。地図持ってる?
連れてけたらな、友達とはぐれちまって心配でな」
パラジッソは、ダム・スクェアから4.50分程、
歩いたローゼングラヒト通りにあった。
講堂のような五階建ての大きな古ぼけたビルだった。
入り口がわからない。
隣接した空き地を囲った朽ち果てた塀から男が出てきた。
イラストの入ったサイケ調のTシャツを着ている。
ヘアバンドをしたお釈迦さんとモハメッド、
キリスト達がロックバンドを結成したようだ。
「ウェルカム、パラジッソ(天国)へ」
t-シャツに見とれていた。
「どこかで会ったかな?」
「ストックホルムにいたことは?」
出任せを言った。
予期せぬ答えが勢いよく返ってきた。
「ストックホルから昨日帰ってきたところだ。ジャパニーズ?
もしかしてストックでロバート・スコットというアメリカ人に会ったことないか?」
「会ったことがない」
ひどくがっかりした様子だ。
パラジッソに入ると、適当に学校の机を、15、6個並べて囲った受付があった。
後ろの棚に、バック・パック、リュックが並んでいる。
「泊まりたいんだけど?」
囲いの中にいた、180センチはありそうな女性に尋ねた。
「1日、2ギルダーよ」
「安いな。頼むよ」
「貴重品預かるとこないから自分で管理してね。規則ってものはないから責任持って行動して。ここにいる若者はビューティフルよ。
バック・パックはこの後ろに置いてね。みんな寝袋だけ持って行ってるわ。
それぐらい、、、かな、、、私、ネロ」
「耕二。よろしく。
ここは誰が経営してるの?」
「はっきりとは知らないけど市が関わってるみたいよ」
「市が?ヒッピーのユースホステルを?」
「ええ、」
「部屋の番号は?」
「そんなもんないわ、1階以外なら屋根でも」
「天国(パラジッソ)には部屋の番号がないの?」
誰があんたに教えるもんですか、って笑みが返ってきた。
後ろの棚に白地に赤くを置いて、その、どこでもいい寝場所を探しに行った。
各階が体育館の広さだ。
それぞれの階に無数のマットレスが乱雑に横たわり、上で寝袋・蓑虫がうごめいている。
適当に寝袋を放り投げて1階まで降りてきた。
受付の反対側からボリューム一杯に音が唸り出した。
中で蝋燭の炎と一緒に15、6人の狂人が揺れていた。
まるで別世界だ。
ダムスクェアに向かった。
髮長族、リュックを背負った若者、それに犬の糞だらけだ。
昨日、マラソン中、なんとなく臭かった。
パラジッソ尋ねた彼が踏んづけたな、と思っていたら俺だった。
天国の入り口でぶつかりそうになった若者が鼻をつまんだ
「BULLSHIT(牛の糞)?
DOGSHIT?(犬の糞)」
犬をまだ見ていない。
犬のじゃないのか?
通りではサイケデリックなポスターがビルの壁をにぎわしていた。
来週ビーチ・ボーイズがコンサートをやるようだ。
アムスに真新しい鼓動を感じた、燃料は若者の熱気と犬の糞だ。
日本を出るとき不安だった、リュックに、白地に赤く、を付けた。
も少し何かが必要だった、髪を二分刈りにした。
不思議なもので少し落ち着いた。
それも首の辺りまで伸びていた。
ここが騒動の起点だ、と言っていたのに、ダム広場にあっけなく着いたので拍子抜けした。
午前中は追い駆けっこやって昼過ぎに止めるのか?
ここならそれもありそうだ。
翌日、オールド・チャーチのチャイニーズレストランで、犬の糞、いや、昨日のヒッピーに声をかけられた。
「俺、ジェームス。今どこにいる?」
「耕二。パラジッソだよ」
「おかしいな、会わないな。何階?」
「4階のど真ん中」
「2階だから会わないわけだ。どうアムスは?」
「バイトがあったら住みたいね。ジェームスは?」
「ここに来て2か月、そろそろカタロニア(スペイン北東)の姉貴の所に行こうかと思ってる。それからブエノスアイレスに帰る」
「アルゼンチンから?」
「ロンドンに一年いた、スペイン語訛りの英語の普及にね」
彼の顔は、長髪、髭、顎髯で覆われていた。
眼鏡を掛けていたので素顔が見えない。
出会った日にダム・スクェアで何があったのか聞いた。
「野宿しているヒッピーを排除しようとポリスが放水したんだ。
みんなで抗議したら追っかけてきた。
ゲームでたまにあんだ、ポリスも刺激が必要なんだ」
その後、別世界へ行った。
光に教わった、ロックがかかっていた。
いきなり蝋燭の光が連続して飛んできた。
目の前で線香花火をやっているようだ。
数人が能面をかぶって踊っている。
あれ、呼んでる、俺を?
「あんた。
どこから来たのん?」
「ジャパン」
「それって、火星のどこあたり?」
「、、、、、」
「私の髪、どう?
2mあん..よ。
でもこれ.私の..じゃないの。
家に猫ちゃん十人と住んでるの、みんなこの..髪にくるまって..寝んの、最高よ。
みんな..に役割が.あって、ごろごろの..目覚まし..やさんとか、あなた、大丈夫?]
耳をつんざくような音の洪水で聞き取れない。
「えっ、何、何が大丈夫かって?」
大丈夫はそっちだろうが?
すぐ横で数人の男が牛と鳥になっている。
「おい、姉ちゃん、俺の踊りわかるか?」
「私としちゃあ.そう.簡単に.わかっ.てもらいたくない。その質問に.は.答えたくない.」
「俺が聞いてん、、、だろう、、、が?
その右手はヘアバンドかな?
あっ、わかった!
鳥の翼だな」
「いい線いってるけど、まだ、もうちょいが足りない。
いい、よく聞いて!
これは.ジーザス・クライストが.私を選んで.
つけてくれた傷があるんで隠してんの!」
「ジーザス・クライスト?
何言っているんだ」
「ねぇ中性!
あたいの.靴踏まないでよ.
これシャネルよ.高かったんだから!」
「わ.たしの.髪の毛.触らない.で。
ねえ、わかる?
.喜びの踊りを振りつけてるとこ.
あなた.なんか.シッダルサみたいね」
「おまえどっから来た.
インドネシアか?.
アメリカン・インディアンみたいだな。
おい、あんちゃん!
この姉ちゃんに何飲ましたか教えてくんねぇか.ここじゃ手に入んねぇんだろうな。
インディアンのか?.
金は払うぜ.おしえてくん.、、、、
もしかして、おめえジャパニーズじゃねえだろうな.
親父がひでえめにアッてんだ.ジャパニーズによ.
戦争中に.わかるか?おめえ」
「..いいから私に聞いて.キリストと.シッダルサも.来たのよ」
「何言ってんだ.
おめえは.男女(おとこおんな)のなりしやがって.
俺が話してんだよ..
このジョップによ.
キリストなんざ.どうでもいいんだ!」
「ねぇ押さないでよ!
.唐変木!
社会の窓.なんか.開けて.
閉め.とき.なさいよ」
「何だとこの尼,髪長お化けめ!
カリフラワーみてぇな.頭しゃがって!
.でけえ爆弾が落ちたろうがヒロコ、、?
ヒロナガか.ちょい違うな
.アトム.よ、、原爆よ」
「アトム..原爆..聞いた.聞いた..知ってる!
絶対に許せない。
キリスト様怒ってた…ヒロシキ.とナガシキ.
なんで覚.えてないの!
常識よ!
人間の義務よ!
あんたは人間じゃない!!」
「ありがとうよ.カリフラワー!
.いいか.横から口出.すんじゃねえ!
黙ってろ!.
その.ナガシキの.収容所でよ.ジャップがよ.」
「キリスト様をあなた.なんて言った?」
「うるせえな!
男女(おとこおんな)!
.このジャップに話があんだよ!」
「わたしは.一番弟子よ!」
「親父がよ.ジャップに.ひでえことされたんだ.ナガシキで」
「さあ、いまからでも.遅くナイ.悔い改めろ!」
「うるせぇ!!」
「耕二、何やってた?」
「あの髪の長い彼女が呼んだからさ。
何を話しているのかとんちんかんぷんさ。
まともに話せない。
みんな気が狂ってるんじゃないの?」
「わからなかったの?ドラッグだ。
相手にするな。疲れるだけだ。
明後日、出るんで俺はこれからファンタジオの友達に会いに行くよ」
「明後日、出るの?
来年の一月頃、南米に行く予定なんだ。
連絡してもいいかな?」
「ほんとうか?歓迎するよ」
ネイヴィのポロシャツに
オリーブ色のチノパンツをはいた男が入ってきた、あの宗教バンドのマネージャーだ。
「やあ、覚えてる?昨日?」
「ええ」
「時間あるかな」
「ええ」
「昨日尋ねたロバート・スコットのことだ。
ガムラブロ(溜まり場)によく出入りしてたらしい」
「ガムラブロに行ったことは?」
「ロックただで聞けるのでよく行ってました」
「ストックにどのくらい居たのかな?」
「四ヶ月ぐらいです」
「ジャパニーズだよね。ベ平連は知ってる?」
「はい」
「ベ平連と関係あるのかな?」
「ありません。ロバートはベトナムに?」
エドワードが頭をよぎった。
「ベ平連の助けでスウェーデンに来た。
差し支えなかったらこれからの予定聞けないかな。
おう、申し訳ない。自己紹介忘れてた。
シャーキー・マーフィ、ワシントンから来た。
君は?」
「耕二です。これから南に下って南米に行きます」
「じゃあ、頼み聞いてくれないかな?」
「ええ、事情によっては」
「そうだね。頼むからにゃ事情を話すのが礼儀だな。
三ヶ月ほど前ストックにいるって手紙をもらった。
国には帰れないしストックはおもしろくないんでこの冬カナダに行くと、書いてあった。
彼の家族に不幸があってね。
どうしても居所が知りたい。
ガールフレンドも知らない、最後に会ったのは7月終わりらしい。
アムスに何度か行ってた、と言ったんで来たんだが何も出てこない。
手ぶらで帰るのもしゃくでね。
旅の途中、もし彼に出会ったら私が捜してたって伝えて欲しいんだ。
どうかな?頼めないかな?」
「そういうことなら」
「ありがとう。これは2年前の写真。
右の耳たぶに小指の爪ほどのほくろがある。
身長6.5フィート、cmだと約190センチぐらいかな。
体重は180パウンドだから約80キロ。サイズはミーディアム、歳は24」
あどけない顔が笑っていた。
映画「イージー・ライダー」のCaptain America役のピーター・フォンダそっくりだ。
「国が近い南米に行く可能性がある。
これが私の名刺だ。
手がかりがあったらなんでもいいから名刺の電話番号にコレクトで頼むよ。
居所がわかったら1000$払うから」
ダム近くのマジックバス発着場でハイメを見送った。
金がやばい。
400そこそこしかない。
翌日、バイト探しに出かけた。
レストラン、ホテル、手当たり次第に聞いて回った。
労働許可証がないのですべて断られた。
次の日も7、8軒トライした。
マネージャーが休みなので明日来てくれ、このホテルが唯一残った。
角さんと光に生意気なことを言った自分はいなかった。
翌朝、そのホテルに行った。
ダムスクェアから2、3ブロック南に下った、アムバサダ・ホテルのレストランだ。
「今からやれるか」
朝の11時から夜10時まで、1時間の休憩のみ、
立ち尽くめだった。
棒になった足をひきずってサブ・マネージャーの所ヘ行った。
「どうでした?今日暇だったので楽でしょう。
バイト料、時間、2ギルダーです。
朝10時から夜10時まで1時間の休憩を除いて11時間で22ギルダー。
それから食費2ギルダーを引くので、20ギルダー。
これでOKですか?」
翌朝、チューリヒへ向かった。
エバさんと別れてすぐ車が止まった。
中は灰色だ、貧乏揺すりがひどい。
タバコをくわえ、足が交互に跳ねている、いや、全身だ、タバコも。
「時間があるんで好きなとこに降ろすよ」
アムステルダム市駅まで頼んだ。
市内に入って雲息が怪しい、渋滞だ。
事故だろうか。
5円硬貨をプレゼントして降りた。
犬の糞を踏んづけそうになった。
「、、運転してるときはテンポの早いロックは聴かないほうが、、」
「よく言われるよ。揺すると事故らんのよ、わかる?」
駅に向かった。
渋滞の原因は事故じゃないようだ。
若者が恐い顔をして走ってきた。
「お巡りがダム・スクェア(ダム広場)にたむろしてるヒッピーたちを追ん出そうと放水して追っかけまわしてんだ。逃げてっとこさ。
おまえも小突かれるぞ、そのなりじゃ!
先は行かないほうがいいぜ!」
なんて街だ、ここは、犬の糞とヒッピーのか。
若者の群れが大声でわめきながら走って来た。
「逃げろー、逃げろー、お巡りだ!お巡りだ!
みんな逃げろ!」
しかたなく一緒に走った。
鶏声が教えてくれたパラジッソかファンタジオを探すことにした。
一緒に走っている髭もじゃのヒッピーに尋ねた。
「パラジッソに行きたいんだ?」
「そこにいる。少し遠いけど探すのそんなに難しくないよ。地図持ってる?
連れてけたらな、友達とはぐれちまって心配でな」
パラジッソは、ダム・スクェアから4.50分程、
歩いたローゼングラヒト通りにあった。
講堂のような五階建ての大きな古ぼけたビルだった。
入り口がわからない。
隣接した空き地を囲った朽ち果てた塀から男が出てきた。
イラストの入ったサイケ調のTシャツを着ている。
ヘアバンドをしたお釈迦さんとモハメッド、
キリスト達がロックバンドを結成したようだ。
「ウェルカム、パラジッソ(天国)へ」
t-シャツに見とれていた。
「どこかで会ったかな?」
「ストックホルムにいたことは?」
出任せを言った。
予期せぬ答えが勢いよく返ってきた。
「ストックホルから昨日帰ってきたところだ。ジャパニーズ?
もしかしてストックでロバート・スコットというアメリカ人に会ったことないか?」
「会ったことがない」
ひどくがっかりした様子だ。
パラジッソに入ると、適当に学校の机を、15、6個並べて囲った受付があった。
後ろの棚に、バック・パック、リュックが並んでいる。
「泊まりたいんだけど?」
囲いの中にいた、180センチはありそうな女性に尋ねた。
「1日、2ギルダーよ」
「安いな。頼むよ」
「貴重品預かるとこないから自分で管理してね。規則ってものはないから責任持って行動して。ここにいる若者はビューティフルよ。
バック・パックはこの後ろに置いてね。みんな寝袋だけ持って行ってるわ。
それぐらい、、、かな、、、私、ネロ」
「耕二。よろしく。
ここは誰が経営してるの?」
「はっきりとは知らないけど市が関わってるみたいよ」
「市が?ヒッピーのユースホステルを?」
「ええ、」
「部屋の番号は?」
「そんなもんないわ、1階以外なら屋根でも」
「天国(パラジッソ)には部屋の番号がないの?」
誰があんたに教えるもんですか、って笑みが返ってきた。
後ろの棚に白地に赤くを置いて、その、どこでもいい寝場所を探しに行った。
各階が体育館の広さだ。
それぞれの階に無数のマットレスが乱雑に横たわり、上で寝袋・蓑虫がうごめいている。
適当に寝袋を放り投げて1階まで降りてきた。
受付の反対側からボリューム一杯に音が唸り出した。
中で蝋燭の炎と一緒に15、6人の狂人が揺れていた。
まるで別世界だ。
ダムスクェアに向かった。
髮長族、リュックを背負った若者、それに犬の糞だらけだ。
昨日、マラソン中、なんとなく臭かった。
パラジッソ尋ねた彼が踏んづけたな、と思っていたら俺だった。
天国の入り口でぶつかりそうになった若者が鼻をつまんだ
「BULLSHIT(牛の糞)?
DOGSHIT?(犬の糞)」
犬をまだ見ていない。
犬のじゃないのか?
通りではサイケデリックなポスターがビルの壁をにぎわしていた。
来週ビーチ・ボーイズがコンサートをやるようだ。
アムスに真新しい鼓動を感じた、燃料は若者の熱気と犬の糞だ。
日本を出るとき不安だった、リュックに、白地に赤く、を付けた。
も少し何かが必要だった、髪を二分刈りにした。
不思議なもので少し落ち着いた。
それも首の辺りまで伸びていた。
ここが騒動の起点だ、と言っていたのに、ダム広場にあっけなく着いたので拍子抜けした。
午前中は追い駆けっこやって昼過ぎに止めるのか?
ここならそれもありそうだ。
翌日、オールド・チャーチのチャイニーズレストランで、犬の糞、いや、昨日のヒッピーに声をかけられた。
「俺、ジェームス。今どこにいる?」
「耕二。パラジッソだよ」
「おかしいな、会わないな。何階?」
「4階のど真ん中」
「2階だから会わないわけだ。どうアムスは?」
「バイトがあったら住みたいね。ジェームスは?」
「ここに来て2か月、そろそろカタロニア(スペイン北東)の姉貴の所に行こうかと思ってる。それからブエノスアイレスに帰る」
「アルゼンチンから?」
「ロンドンに一年いた、スペイン語訛りの英語の普及にね」
彼の顔は、長髪、髭、顎髯で覆われていた。
眼鏡を掛けていたので素顔が見えない。
出会った日にダム・スクェアで何があったのか聞いた。
「野宿しているヒッピーを排除しようとポリスが放水したんだ。
みんなで抗議したら追っかけてきた。
ゲームでたまにあんだ、ポリスも刺激が必要なんだ」
その後、別世界へ行った。
光に教わった、ロックがかかっていた。
いきなり蝋燭の光が連続して飛んできた。
目の前で線香花火をやっているようだ。
数人が能面をかぶって踊っている。
あれ、呼んでる、俺を?
「あんた。
どこから来たのん?」
「ジャパン」
「それって、火星のどこあたり?」
「、、、、、」
「私の髪、どう?
2mあん..よ。
でもこれ.私の..じゃないの。
家に猫ちゃん十人と住んでるの、みんなこの..髪にくるまって..寝んの、最高よ。
みんな..に役割が.あって、ごろごろの..目覚まし..やさんとか、あなた、大丈夫?]
耳をつんざくような音の洪水で聞き取れない。
「えっ、何、何が大丈夫かって?」
大丈夫はそっちだろうが?
すぐ横で数人の男が牛と鳥になっている。
「おい、姉ちゃん、俺の踊りわかるか?」
「私としちゃあ.そう.簡単に.わかっ.てもらいたくない。その質問に.は.答えたくない.」
「俺が聞いてん、、、だろう、、、が?
その右手はヘアバンドかな?
あっ、わかった!
鳥の翼だな」
「いい線いってるけど、まだ、もうちょいが足りない。
いい、よく聞いて!
これは.ジーザス・クライストが.私を選んで.
つけてくれた傷があるんで隠してんの!」
「ジーザス・クライスト?
何言っているんだ」
「ねぇ中性!
あたいの.靴踏まないでよ.
これシャネルよ.高かったんだから!」
「わ.たしの.髪の毛.触らない.で。
ねえ、わかる?
.喜びの踊りを振りつけてるとこ.
あなた.なんか.シッダルサみたいね」
「おまえどっから来た.
インドネシアか?.
アメリカン・インディアンみたいだな。
おい、あんちゃん!
この姉ちゃんに何飲ましたか教えてくんねぇか.ここじゃ手に入んねぇんだろうな。
インディアンのか?.
金は払うぜ.おしえてくん.、、、、
もしかして、おめえジャパニーズじゃねえだろうな.
親父がひでえめにアッてんだ.ジャパニーズによ.
戦争中に.わかるか?おめえ」
「..いいから私に聞いて.キリストと.シッダルサも.来たのよ」
「何言ってんだ.
おめえは.男女(おとこおんな)のなりしやがって.
俺が話してんだよ..
このジョップによ.
キリストなんざ.どうでもいいんだ!」
「ねぇ押さないでよ!
.唐変木!
社会の窓.なんか.開けて.
閉め.とき.なさいよ」
「何だとこの尼,髪長お化けめ!
カリフラワーみてぇな.頭しゃがって!
.でけえ爆弾が落ちたろうがヒロコ、、?
ヒロナガか.ちょい違うな
.アトム.よ、、原爆よ」
「アトム..原爆..聞いた.聞いた..知ってる!
絶対に許せない。
キリスト様怒ってた…ヒロシキ.とナガシキ.
なんで覚.えてないの!
常識よ!
人間の義務よ!
あんたは人間じゃない!!」
「ありがとうよ.カリフラワー!
.いいか.横から口出.すんじゃねえ!
黙ってろ!.
その.ナガシキの.収容所でよ.ジャップがよ.」
「キリスト様をあなた.なんて言った?」
「うるせえな!
男女(おとこおんな)!
.このジャップに話があんだよ!」
「わたしは.一番弟子よ!」
「親父がよ.ジャップに.ひでえことされたんだ.ナガシキで」
「さあ、いまからでも.遅くナイ.悔い改めろ!」
「うるせぇ!!」
「耕二、何やってた?」
「あの髪の長い彼女が呼んだからさ。
何を話しているのかとんちんかんぷんさ。
まともに話せない。
みんな気が狂ってるんじゃないの?」
「わからなかったの?ドラッグだ。
相手にするな。疲れるだけだ。
明後日、出るんで俺はこれからファンタジオの友達に会いに行くよ」
「明後日、出るの?
来年の一月頃、南米に行く予定なんだ。
連絡してもいいかな?」
「ほんとうか?歓迎するよ」
ネイヴィのポロシャツに
オリーブ色のチノパンツをはいた男が入ってきた、あの宗教バンドのマネージャーだ。
「やあ、覚えてる?昨日?」
「ええ」
「時間あるかな」
「ええ」
「昨日尋ねたロバート・スコットのことだ。
ガムラブロ(溜まり場)によく出入りしてたらしい」
「ガムラブロに行ったことは?」
「ロックただで聞けるのでよく行ってました」
「ストックにどのくらい居たのかな?」
「四ヶ月ぐらいです」
「ジャパニーズだよね。ベ平連は知ってる?」
「はい」
「ベ平連と関係あるのかな?」
「ありません。ロバートはベトナムに?」
エドワードが頭をよぎった。
「ベ平連の助けでスウェーデンに来た。
差し支えなかったらこれからの予定聞けないかな。
おう、申し訳ない。自己紹介忘れてた。
シャーキー・マーフィ、ワシントンから来た。
君は?」
「耕二です。これから南に下って南米に行きます」
「じゃあ、頼み聞いてくれないかな?」
「ええ、事情によっては」
「そうだね。頼むからにゃ事情を話すのが礼儀だな。
三ヶ月ほど前ストックにいるって手紙をもらった。
国には帰れないしストックはおもしろくないんでこの冬カナダに行くと、書いてあった。
彼の家族に不幸があってね。
どうしても居所が知りたい。
ガールフレンドも知らない、最後に会ったのは7月終わりらしい。
アムスに何度か行ってた、と言ったんで来たんだが何も出てこない。
手ぶらで帰るのもしゃくでね。
旅の途中、もし彼に出会ったら私が捜してたって伝えて欲しいんだ。
どうかな?頼めないかな?」
「そういうことなら」
「ありがとう。これは2年前の写真。
右の耳たぶに小指の爪ほどのほくろがある。
身長6.5フィート、cmだと約190センチぐらいかな。
体重は180パウンドだから約80キロ。サイズはミーディアム、歳は24」
あどけない顔が笑っていた。
映画「イージー・ライダー」のCaptain America役のピーター・フォンダそっくりだ。
「国が近い南米に行く可能性がある。
これが私の名刺だ。
手がかりがあったらなんでもいいから名刺の電話番号にコレクトで頼むよ。
居所がわかったら1000$払うから」
ダム近くのマジックバス発着場でハイメを見送った。
金がやばい。
400そこそこしかない。
翌日、バイト探しに出かけた。
レストラン、ホテル、手当たり次第に聞いて回った。
労働許可証がないのですべて断られた。
次の日も7、8軒トライした。
マネージャーが休みなので明日来てくれ、このホテルが唯一残った。
角さんと光に生意気なことを言った自分はいなかった。
翌朝、そのホテルに行った。
ダムスクェアから2、3ブロック南に下った、アムバサダ・ホテルのレストランだ。
「今からやれるか」
朝の11時から夜10時まで、1時間の休憩のみ、
立ち尽くめだった。
棒になった足をひきずってサブ・マネージャーの所ヘ行った。
「どうでした?今日暇だったので楽でしょう。
バイト料、時間、2ギルダーです。
朝10時から夜10時まで1時間の休憩を除いて11時間で22ギルダー。
それから食費2ギルダーを引くので、20ギルダー。
これでOKですか?」
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