30:WIth a little help. スーパー小僧このエントリをはてなブックマークに登録

with a little help from Stranger


30:スーパー小僧

太鼓は貸したくない。キャシーの大事な楽器だ。僕へのプレゼントではなかったの?

隣の部屋でごねている、超能力者が、、僕達より少し広い世界が見える餓鬼、、笑っちゃうな、、要するに僕が40インチの液晶なら徹は100インチの液晶を持っているってことか、違うか、画面が広くなるだけで同じだ。何が見えるの?スーパー小僧よ。

帰ってきた時は昨日とは違った、、パソコンでゲームをやり出して音楽に興味を無くしたモーツアルトって感じ、彼ならその世界でも天才に、、無理か、いいとこまでは行く、?あの才能は別腹だ、、腹、とは、、だってそうだ、あんな子どもが深い、人間の音を出せるはずが、、生き抜いて知り尽くして出る音、、そうでもないか、それでも無理か、、あ、何も知らないからか、、だから僕達、腐れた人間に響くのかよ。
今の徹は完璧な子どもだ。目はハーゲンダッツが欲しくてスーパーのアイスクリーム売り場で、買うまで離れない、と駄々をこねているチビ達と同じだ。
あの太鼓の中の壁にC-4(Composition4、プラスチック爆弾)が入っているなんて、さすがに見えないようだ。やっぱり餓鬼だ。
それにしてもここまでは上手く行っている、怖いぐらいだ。プラスチックを取り出してワシントンスクウェアに置くだけ、後はお袋さんの情報欲しさに現れた山岡がレーザー誘導起爆装置で爆破させてくれれば僕の使命は終わりだ。どうしてお袋さんが亡くなったのか知ったらこの世がすべて厭になる。吹き飛ぶのを喜ぶさ、山岡も。
徹よ、餓鬼っぽいことを言わずに早く太鼓を貸してくれよ、貸してくれるだけでいいんだ。
餓鬼っぽい、、ふん、僕も昨日の花子さん達、大の大人が徹の言葉に真剣に反応した時の後遺症が残っているようだ。あいつは100%ピュア子どもだぞ。

おっと、二人が出てきた。、

「マイケル、約束して欲しいの、必ず返すって」

「勿論です。二、三日と僕言ったけど一日でいいですから。明日、持ってきます。どうも友達の話だと、寸法を測って同じものを作りたいだけのようですから」
上手い、僕は詐欺師になれる、でも相手が僕を信じてくれている花子さんじゃ話にならない。
「どう、徹、一日でいいって、、それならキャシーだって待てないかな」


キャナルストリートをリトルイタリーに向かって歩いている。
三人でだ。変なことになっている、、ロフトの出入り口で、あのジャパニーズのGOと鉢合わせた。一緒に行くと、付いてきた。
徹は無口、無表情、何を考えているのか能面小僧だ。ただ、GOとは親しそうだ、羨ましいぐらい。なぜそう感じる、二人とも何も話していないし、ただ歩いているだけなのに、、ひがんでいるのか?何に?親しい人が誰もいない、、馬鹿な、そんな人間ばかりじゃないかこの世は。

車のクラクションがそぜそう感じたのか教えてくれた。無頓着に歩く徹をかばうようにGOは絶えず道路側を歩こうとしていた。

やさしい人、、GOとは一言も言葉を交わしていない。でもよかった、徹と二人でいるより気は紛れる。スーパー小僧にいじわるするか。シカツしてGOに山岡との関係をそれとなく聞いてみるか。

「GO、昼過ぎワシントンスクウェア近くにいませんでしたか?」
「、よく知っているな。君もいたのか?」
「ええ、NY大に用事があったので」
「大学編入の件か。で、どうだった?」
「情報を得ようと、編入は可能なようでした」
「専攻は?」
「映画です」
「そうか、、それならあそこを薦める。マーチン・スコセシ(Martin Scorsese)、スパイク・リー(Spike Lee)も出ている」
「ええ、知っています。たまたま横断歩道で立ち話をしているのを見ました。危ないことをしますね」
「ああ、、あれか、数年ぶりに親友と出くわしたからだ」

親友、やはり、それにしてもこの人は素直な人だ。いや、昨夜、徹の言葉に反応した、僕を見る目付きはそうではなかった。疑念、胡散臭い、という感じだった。まあ、いいさ、会うのはこれが最後だ。

「GO、NY長いのですか?」
「長いと言えば長い、七年ぶりだが」
「ジャパンに?」
「ああ、、」

一番前を歩いていた徹がいきなり立ち止まったので背中にぶつかってしまった。

「GOのお父さんはワールドトレードセンタービルのテロで亡くなった」

無表情な言葉、肩の辺りで黒い絹の糸達が怒り狂っている。隙間から能面スーパー小僧の目が肩越しに光っていた。



theme : 連載小説
genre : 小説・文学

31:With a little help. ルドウィックこのエントリをはてなブックマークに登録

with a little help from Stranger

物語が意図していたものと違ってきているような、、始めからないくせに生意気なことを。BLOG波でサーフィンしながらこのまま進みます。愛、自己犠牲を描ければ、、

31:ルドウィック

トレードセンターのテロ、、僕と同じ境遇じゃあないか。
おかしい、GOが驚いた表情、でもない、、少し納得顔で適度にびっくりしている。小僧が何かを知っていると薄々感じていたんだな、、徹は僕がテロリストだと、、だからトレードセンターのことを。

キャナルストリートのど真ん中で三人、突っ立ってにらめっこをしている。通行人がどなっては通り過ぎていく。
携帯が、GOのだった。

“今夜はお釈迦になった。用が出来た”
「そうか、又、日を改めてな」
“ピコのことは知ってるか?”
「ピコ、、彼女がどうした?」
“結婚したのは?”
「知っている」
“離婚したのは?”
「、、知らない」
“これから親父と会う。ファミリー内の事だからこれ以上は言えんが”
「メンゲレ、ジョセフ・メンゲレ?」
“一緒に住んでいるそうだぞ”
「、、、、、、」
“彼女に何か伝えたいことは?”
「、、、、ない、、鉄二」
“分かった。GO、明日、連絡する”

離婚していた、、

僕達の視線を感じたのかGOが先を促した。
「行こう」

どこに行くんだ、GO、あんたは?なんて顔だ。恋煩いで頭がはちきれそう、素っ裸で飛び出したい。なのにシャツのボタンがなかなか取れなくて、、ちぎれ!ちぎってしまえ、ボタンなんて、、早くしないと素っ裸で飛び出せなくなるぞ。
今の電話は鉄二と、、山岡かな、会う予定だったのが駄目になったって感じだ。
ピコ、、知ってる、、知らない、、それに、メンゲレ、ジョセフ・メンゲレ、ナチの大先生様じゃないか。面白い世界だ。馬鹿、又、関係ないことを考えている。でもこんな近くに山岡がいるなんて小説だ、いやそれ以上だ。何でもありさ、この世は。あの時、携帯さえ忘れなかったらお袋達と自動車爆弾で仲良く吹き飛べた。

“先は誰も分からない、でも数歩先は凡その検討はつく。あなたはそれがない。道が二つ、明るいのと暗い、闇の道。明るい方には行こうとしない、避けているのかな。闇のドアを開けた。でも、、その暗さにたじろいでいる”

花子さん、あなたの言葉は一ヶ所を除いて正しいです。数歩先の検討なんて到底無理、鼻歌が訪問してくるぐらい気分のいい朝、キッチンでコーヒーを淹れようとして漏れていたガスが爆発、すてきな秋空から人が降って来る、いつものより数ミリ長い履きなれない靴のお陰で階段から転げ落ちて頭が割れる。何でもありさ、花子さん。僕は“今のこの一瞬”しか信じませんよ。

いつのまにか路地裏のビル前にいた。
又、例の光だ、見たくない。何を考えているの、テロリストお兄ちゃん、僕はすべてお見通しさ、って感じなんだから。
そうではなかった。
何で七、八歳の子がこんな悲しい顔が、、何が見えんだ、徹、お前は何を見てんだ?
子猫を轢いて知らん振りしている人間か、道路で横たわっている子猫か。太鼓の中身を知っているならポリスに届けろ、徹、多くの人の命が助かるぞ。僕に気兼ねなんか、、気兼ねなんて、、



リトルイタリーのガンビーのファミリーレストランで用を済ませて、メンゲレはアップタウン、ウエストにある診療所に戻ろうか思案していた。山岡との待ち合わせ時間の7時まで一時間半近くあった。
運転手を先に帰して歩くことにした。ガンビーノファミリーと敵対関係にあるボナンノ・ファミリーの者と会うんだ。山岡を指名したのは、娘の学生時代の友人と会う、隠れ蓑が必要だった。
それにしても上手い場所を指定した。チャーリィ・パーカー(Charlie Parker・アルトサックス奏者)住居前、あんなとこでファミリーメンバーに出くわす気遣いはない。ピカソでもよかった、アヴェニューA、トンプキンソン公園に面したグロウサリー屋のビルに住んでいたと、昔ドンに聞いたことがある。

道路を隔てた通りを、子ども連れの二人の男が歩いていた。東洋系と肩に小さめのショルダーバッグをぶら下げた若者、その横顔はベルリンにいた頃の幼なじみだ。
磁石に吸い付けられたように彼等を追かけていた。

、、あ、信号、人混みで、、見失う。

三人がキャナルストリート裏道の建物に入って数分が過ぎた。

大きな太鼓を抱えてルドウィックが一人で出てきた。
どこか寂しげだ。

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

下巻・32:With a little help. 毛虫このエントリをはてなブックマークに登録

上巻:With a little help from Stranger                           

プロローグ KISS&GO
1:解放
2:徹
3:Deep Purple
4:過去との遭遇
5:日記帳
6:ナチ収容所
7:アウシュビッツ強制収容所
8:ピコと徹
9:溜め息
10;火山の神、ペレ
11:スコティ トイレットペーパー
12:アルカイナ
13:ドゴン族の太鼓
14:花子さん
15:ジョセフ メンゲレ
16:水晶の夜・the night of broken glass
17:アルカイナとアルカイダ
18:見張り
19:若いテロリスト
20:マイケル(Mikhail)
21:俺?僕?
22:ゴッドファーザー
23:ワシントンスクゥェア
24:サーフィン好きなお釈迦様
25:可愛い竜巻
26:ハロウィン
27:Charlie Parker
28:もう一人のマイケル
29:決心
30:スーパー小僧
31:ルドウィック


下巻

32:毛虫
33:米大統領、自爆テロ
34:FBI
35:メンゲレとマイケル
36:交差
37:空白
38:メンゲレの計画
39:メンゲレの死
40:しり切れトンボ

フィクションです。

今もって行き先不明です。物語が意図していたものと違ってきているような、、始めからないくせに生意気なことを。BLOG波でサーフィンしながらこのまま進みます。愛、自己犠牲を描ければ、


主な登場人物

Go 剣持: 元商社マン、現在、風来坊
Kiss: NYに住むTシャツ デザイナー
花子 コルベ: Kissと共にグルーヴィシャツ経営  
徹 コルベ : 不思議な能力を持つ、花子とマキシミリアノ コルベの子ども
山岡鉄二: アロイの片腕・広域暴力団組長・山岡哲司の非嫡出子
マキシミリアノ コルベ:花子のポーランド人の夫
ジョセフ メンゲレ: ドン ゴメスの主治医 
ピコ リード メンゲレ: メンゲレの養女・親友ルーリードの孫 
ルー リード:メンゲレの親友
ルドウィック:メンゲレの親友
マイケル(Mikhail Hashem Abed):20歳のイラク人テロリスト
サルバトーレ アロイ: ボナンノ・ファミリー副ボス
ドン ゴ メス: ガンビーノ・ファミリーボス  
トーマス ブシェタ: NY コロンボ ファミリーボス
ジョン スパーロ: シチリア ディマッジョ ファミリー副ボス
 
注:
NY五大ファミリー:
ガンビーノ、ジェノヴェーゼ、ボナンノ、コロンボ、ルッチーゼ。


[ホロコウスト]
ギリシア語で獣を丸焼きにして神前に供えるいけにえ。
ユダヤ人大量虐殺、ナチスドイツでは、Final Solution(民族浄化、抹殺計画)という。
 

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32:毛虫

ルドウィックはホテルを、立ち止まっては観察、、なぜ周りを一周するのだ。まるで逃げ道を探しているようではないか。気に食わないのか、、またこのホテルも、なぜ中国人の安宿を。
約束の時間に間に合わない、、、離れるわけには、、。
今度はタクシーを、、どこに行く気だ。

運良く捕まえたタクシーで跡を追った。
携帯を取った。

「山岡君、申し訳ない。急用が出来てしまった。約束の時間に行けそうもない。許してくれたまえ」
“2時間も前から待っているのですよ。どうしたのです?殺し屋が調子が悪いのですか?そもそも何だったのです?なぜ俺なんか下っ端に会おうなんて思ったのですか”
「君達がどれだけ真剣なのか知りたかった。君は約束どおりに行動してくれたようだ。私の気持ちは揺るぎないものになった」
“ドクター、あなたはそうでしょうが俺達はあなたの真意がまだ読めない。このままボスに報告したら計画自体が流れるかもしれませんよ。あなたが真剣にドンを殺したいのであれば何か情報をください。そうしないとボスが納得しません”
「ドンを自爆させる」
“自爆?どうやって?」
「殺し屋を教える」
“教える?名前ですか、有意義な情報だとは”
「毛虫だ」
“何です!”
「山岡君、ドンは毛虫の群れを見ると心臓発作を起こす」
“毛虫、、ムカデとかゲジ?”
「カテリーナは、ドン夫人のことだ。来週フロリダの療養所で尻の脂肪を取る整形手術を受ける。
約一月入院する予定だ。来週だ、君、その機会を逃すと計画は先になる」
“待ってください。毛虫ですよ、家のボスをどうやって納得させろと言うのですか?どうしてこれまで表に?”
「ドンと二人の秘密だ。とにかく近々、段取りを知らせる。山岡君、申し訳ないがこれで切る」
“待ってくださいよ、ドクター!”
「とにかく連絡する」
“ちょっと待ってください!ピコにGOが今NYに居ると伝えて下さい。携帯、############です”
「山岡君、切るよ」
“ドクター!、ドクターメンゲレ!番号、控え、、!”


マジソンスクウェアガーデン近くの安ホテルにルドウィックが入っていく。

フロントに彼の姿はなかった。
百ドル紙幣を渡した。
「今、チェックインした青年の隣部屋に泊まりたい。家族の者だ」


しみだらけのカーテンを、躊躇した、、潔く引いた。鋭いネオンに反射してほこりが舞った。太陽の日差し並みに明るい、鈍ければ見えないのに。
凝縮した人間の営みの匂いが僕を襲う。難破して無人島に数ヶ月、人が恋しくても敬遠したい。
こんなに明るいのに内臓疾患をバンドエイドで治そうと傷口を塞がれた窓ガラス越しに見えるこの町は、今の僕には石を落としてもどのくらい深いのか、底に達して鳴ったとしても、耳に聞こえるのかも定かではない無気味な暗闇に感じる。花子さんは僕が大学編入のために来たと信じている、、
目的があって、、僕は映画を勉強したい、、ここにあるカオスのエネルギーをうまく利用して成し遂げることができたら最高だろう。でもただこの世に存在しているだけの人間は厳しい。この巨大なNYに住むにはそれなりの代償を、、何を揺らいでいる。やる、と決めたじゃないか、今さら。
さあ、プラスチックを取り出そう。

一時間半後、呆然と中から出てきた物を見ていた。ヘロインだった。

C-4(Composition4、プラスチック爆弾)の代わりにヘロイン、幹部はどういうつもりだ?
僕は囮かスケープゴートで他の者が別の所で、、そんな!

ベルギー、ブリュッセルを呼び出そうと飛び出した。
緊急の連絡場所として幹部に指示されていたウエストビレッジのゲイバーに向かった

馬鹿な、ヘロインだなんて、、そんな、、ワシントンスクウェアを爆破できないじゃないか、

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

さようなら、STRATOこのエントリをはてなブックマークに登録

さようならSTRATO

その日、中央高速は雨だった。
後部座席で怒っていやいやしている。
運転席も雨だ。
親父の葬式の時と同じだ。

家の二人の猫君、天とジュネはいつもこれに寝そべっていた、
不思議と爪も研がず。
弾かれたいと、音を出すために生まれてきたのに何年もほったらかしにされた。
それでも愚痴一つ言わず二人の相手をしてくれた。
その子ども達はもういない。

いい思い出しかない。
手放そうと決心していとおしくなった。
金のため、とは言えなかった。
音を出すために生まれてきたのだろう?
僕なんかより弾いてくれる人がいいよ。

怒っている、、と思っていた。
そうではなかった。
最後の別れを、とケースを開けた。
もう、僕にかまわずSTRATOは前を向いて自分の道を歩きだしていた。

いつも閉まりの悪いケースの留め金が勢いよく音を立てて収まった。

帰り道、車の中は大雨になっていた。

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

33:With a little help. 米大統領、自爆テロこのエントリをはてなブックマークに登録

with a little help from Stranger

33:米大統領、自爆テロ

上巻、12章.アルカイナ(テロ組織)13章:ドゴン族の太鼓(参照)
(神様の悪戯で、花子さんがアフリカから送った徹のドゴン族太鼓は、シチリア、ディマッジョファミリーがボナンノファミリーに送ったドゴン族太鼓と入れ替わっていた。その中にはサンプルのヘロインが入っていた)



昨夜のアラブネットテレビ、シャヒーラの2時56分のコマーシャルでは何の指示もなかった。
ウエストビレッジ・ゲイバー、アミーゴ・アミガスのバーテンダーは僕を見てブースナンバー2に案内した。一言も、、顔だけで、僕が現れるのを待ったいたかのようだった。

ブリュッセルの連絡員の声は二日前に連絡した時とは違った、言葉が宙に、、風船の中に閉じ込められて浮いている。しかも早口、彼も僕の連絡を待っていたかのように感じた。

計画は保留、しばらく待機、これからは電話番号が毎日変更されるので2時56分きっかりにシャヒーラテレビのコマーシャルで流れる電話番号を必ず確認しろと。
太鼓にC-4(Composition4、プラスチック爆弾)の代わりにヘロインが入っていた、と言った時、絶句した。
浜でまどろんでいた、遠くに帯状のものが、、夢だろう、、津波だと気付いて脳味噌は気絶、体はラップ、、、よく見るとその後ろにも何かが蠢いている、巨大な恐竜だ!
椅子から転げ落ちたのか凄い音がした。


マイケルNY入国、4時間後、米系ギリシア人、アルカイナ女性テロリスト・デリアは五個のコンドームに包んだ3ポンド(約1.36k)のC-4を体内に飲み込んでテキサス・ダラス空港に降り立った。
それをEP通信記者、ダフィ・セントマリアが飲み込んで二日後に行われるホワイトハウス、ブッシュ大統領定例記者会見で自爆させる手筈になっていた。
しかし、デリアはダラス空港トイレで意識不明に陥り救急車で病院に搬送された。五個のコンドームに包まれたC-4が胃から出てきた。
受け渡し場所に現れなかったと、ダフィから連絡を受けたアルカイナ上層部はNY潜入に成功したマイケルからの連絡を待っていた。
彼はブッシュ暗殺の囮として注意を引きつける役目だった。当然、太鼓にはC-4など入っていなかった。密室に閉じ込められて殺される役目に過ぎなかったからだ。ワシントンスクウェアを爆破して政治的、人道的なメリットなどあるはずがなかった。しかし、マイケルは工作員に選ばれた時、計画に酔っていた。上層部はテロリストとしての欠陥を見抜いていた。

ブリュッセルの連絡員からマイケルが回収した太鼓にヘロインが入っていたと、知らされた幹部は即座に計画の棚上げを決めた。以前ヘロインを卸していたボナンノファミリーの太鼓と何かの手違いで入れ替わった、と推測する者はいなかった。
アルカイナ上層部はマイケルの処遇を協議した。新たにC-4を送ってマイケルに遂行させることも考慮されたが、警備の強化などで不可能との判断に達した。当分NYに潜伏させておくことが決まった。


まさか急に出て行くとは、ピコと電話で話していた。

「ピコ、今夜は用ができて帰れないから先にお休み」
“どうしたの、お父様?何かあったの?帰れないなんて初めてよ”
「心配しなくていい。何もない。それはそうとGOがNYに戻ってきていると、ある人から聞いた。携帯を教える」
“GO?、、NYに?”
「ピコ、番号を言うよ」
“え、、、え、、、、”
「###########、書いたかい?」
“ええ、、、でもなぜお父様が、、”
「GOを好きなのは知っていた。君達の仲を空回りさせてしまった。彼が私に会いたがっていると、何度も言ったね、、もう随分前の話だ。あの時は会えなかった。マフィアのお抱え医者だ、間接的に悪いことを、、君達の仲を裂くようでね。あのテロでGOが日本に帰ったと、悔やんだ。今となっては取り返しがつかないことを、、ピコ、私を許して欲しい」
「何を、お父様、、あれはGOのお母様がお父様をテロで亡くして病気になったからよ。若かった、私達、、すぐ会えると、、気持ちは通じていた、のに、、何かが、、勇気かな。お互い言い出せなかった」
「ピコ、電話しなさい。私はいつでも会うよ」
“お父様は今どこにいるの?”
「ホテルだ。ドンの付き添いでね。だから今夜は帰れない。早くおやすみ」
“、、、、、”
「じゃあ、ピコ、切るよ」

その時だった、隣の部屋のドアが勢いよく閉まる音と駆けていく足音がしたのは。追い駆けるのは老体が許さなかった。

ナチ親衛隊に連行されて行った時のあの早朝の顔だった、太鼓を手に出てきた時の寂しげな顔は。歩き方、振る舞い、すべてが幼馴染だ。歳だけだ、違うのは。こんなことってあるのだろうか、誰かが冥土の土産に仕組んでくれたのか。

もし帰ってこなかったら、堪らなかった。
隣の部屋のドア前に立っていた。
鍵穴にピンを差し込んだ。

テーブルにあの太鼓が、、あの白い包みのようなものは、、。






dorock修

Author:dorock修
物語,音楽をとおして何かを共有できないか、心に入り込めないか探っている者です。
リンクのmuziedorock/junk musicをクリックしていただければ、junkな音が、

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