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26:ハロウィン


ムシャクシャしていた。約束の二時、現れなかった。三分が限度、五分も待った。
案の定、携帯はつながらない。結局、名前さえ分からずじまいだ。
ど素人目が!俺の方だな、ゴールド色のお釈迦さんが夕日を背景にサーフィン、馬鹿、どこまでお目出度たいんだ、俺は。
肝心のお袋のことは嘘か、だが、あそこまで言うんだ。なぜ亡くなったのか知ってる、絶対に。

登山中のキリスト、マホメッド、お釈迦さんのTシャツを選んだのがそもそもの間違いだった。ここに着くまでにうんざりするほどの視線を浴びた。誰もが好奇の一瞥、それも一様にいったん通り過ぎては振り返る、どこじゃない、戻ってきてデザインを覗き込む人達さえ。
まるで、ハロウィンにはカボチャの仮面、なのにどこかおかしい、と改めて確認しようと、スイカだと気付いて納得顔で去っていくような感じだ、、じゃない、俺の場合は。

“この先どうなるのよ、ロープを切るの?誰が切るのよ?私はカトリック、キリストは絶対に切らないわ。自分を犠牲にして助けようとする。もしロープを切ったらあなたに災いが起こるわよ。私が振りかけてやるわ”
“私はイスラムだ。それだけで変な目で見られているのに私達を苦しめたいのか?マハメッドのを切ったら許さないぞ”
不思議なことにお釈迦さんのことをとやかく言う人にはお目にかからなかった、ここには仏教徒が少ないからか。
アルカイナのど素人にすっぽかされた怒りがマホメッドに向かっていた。彼が二人を支えているロープを真ん中辺りで上下に引き裂いた。

あなた方と心中は御免だ、私は生き延びるよ。

露わになった俺の右乳首に彼の手が触れた。快楽に耽っている、歯を食いしばって。
キリスト、お釈迦さんが奈落の底に落ちていく、悲鳴をあげ、、携帯だった。

「鉄二、、今どこだ?」

午後二時、ワシントンスクウェアにいるなんて言ったら、笑う。

「ダウンタウンです」
「ふん、ダウンタウン?広いな。どこだと聞かれたら普通は居場所を言うものだがな。さっきメンゲレから電話があってな。殺し屋を用意しているとよ」
「殺し屋?」

テロリスト集団と変なことになりつつあるのにまだドンを殺す気なのか。

「凄腕らしい。メンゲレが金、経費、すべて持つそうだ」
「読めません。ボスはまだドンを?」
「鉄二、ガンビーノファミリーのドン・ゴメスを殺る、と言わなかったか」
「シチリアのディマッジョとアルカイナのテロ集団との関係をボスが怒っていたものですから」
「アルカイナとは縁を切ったそうだ。俺達はドン、ジョンがインツェリッロの老いぼれボス、ヴィットリオを消す」
「分かりました」
「今夜、メンゲレに会って詳細を聞いて来い」
「今夜ですか?」
「用でもあるのか?」
「いえ、分かりました」

GOに会うのは無理だ、、それにしても7年ぶりに会った日にメンゲレとは、縁がある。
娘のピコはGOの元彼女、離婚してメンゲレと一緒に生活しているなんて知らないだろうな、、、あいつ、日本に帰って、、、そうか、結婚していたのも知らないかもな。

通行人が俺の乳首を弄っているのが誰か覗き込む。カボチャ、スイカの確認じゃない。絶壁でいつ落ちてもおかしくないのに必死で色事に耽っている?なぜ?理解できるだろう、理解できるよな、俺達、皆やる、人間だからよ。
幽霊共も絶壁で色事に耽るのか?ハロウィンの日だけは確かだ。お化け共が通りを闊歩できる唯一の日だ、俺達が幽霊になって。何を考えてやがる、、


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genre : 小説・文学

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27:Charlie Parker


遠巻きに監視していた部下のジャケットとシャツを剥ぎ取って、目障りなTシャツをビルの屋上から放り投げるように命じてワシントンスクウェア・パークから八丁に出てセントマークス、ロウアイースト(lower East)に向かった。
妥当な解決策、今の国連では到底無理、これで三人の登山家は同じ運命だ。今、流行の宗教戦争を収めたような気分だ。

夜七時、10丁とアベニューBの交差点がメンゲレとのデート落ち合い場所、まだ四時前だったが足は自然と向かっていた。あの辺りは久しぶりだ、GOとピコが住んでいた頃よく行った。
ご丁寧にもメンゲレは番地まで指定していた、151アベニューB、トンプキンソン・スクウェア(Tompkins 公園)側、チャーリィ・パーカー(Charlie Parker・アルトサックス奏者)住居前。
チャーリィ・パーカーとは、、メンゲレも若い頃住んでいたとレポートにあったな、ドンに出会ったのも。

俺達の本気度を試したいんだろうと、ボスは言っていたがデートは気が進まなかった。
殺し屋をがいるのになぜ俺達に、経費もすべて持つ、、NYマフィア一番のボスを殺すのにメンゲレはよっぽどの金持ちか馬鹿だ。アシストが要るのか?ボナンノ・ファミリーの後ろ盾も、、死ぬ覚悟は出来ているのに、、俺達の本気度?分からん、何を考えてる。
俺を指名してきた、とボスが言った。GOの友達だと知っていた、、ピコか?彼女を案じて?何を今更、昔の関係に縋ろうと、解せない。

すっぽかされたアルカイナのど素人への怒りは和らいでいた。
いい気なものだ、ワシントン・スクウェアゲートを削岩機で粉々に砕きたい心境だったのに。怒り、悩み、苦しみ、逃げたかったら別ので覆って忘れろか、、楽な、幸せな気分になれる奴なら大歓迎だ、そんなの期待するだけ野暮か。

9丁からトンプキンソン・スクウェアに入ろうとした時、携帯が鳴った。

「約束を守ってくれましたね。次回は必ずお会いします」
ど素人だった。怒りが、、眼を覚まさなかった、もう抗体が。
「何時間も待ってたのに約束を守ってくれませんでしたね、ど素人さん。どこで見ていた?」
「パーク近くの横断歩道の真ん中で立ち話をしているのを見ました。ごめんなさい、俺が持っている写真と同一人物か確認したかったのです、時間を守る人かも。次回は必ずあなたの期待に沿えるようにします」
噴出していた。なんだこいつは、本物の餓鬼だ。
「時間を守る人?なんだ、その、期待に沿えるように、ってのは?曖昧だな。お前は豆腐を枕にして寝てるのか?生き方がだらしないからそんな言葉遣いになるんだ」
「豆腐って何です、、、今だらしないと言いました?あなたに俺の行き方を、、曖昧だなんて、僕は一生懸命に生きています、きました。僕がどんなに苦しんだか何も知らないくせに、、、、、」
餓鬼が柿に、向きになっている。俺が僕に、、、こんなのがテロリスト?アルカイナと関係がある?ジョークだろう。このレベルでは爆破できるのはせいぜいヒマラヤの畑の掘っ立て小屋ぐらいか、、、なぜ俺の写真を、、お袋の死因も。

ピーピー、安物のスピーカーが雑音交じりで、、あなたには到底、分からないとかなんとかの八部合唱隊が続いていた。
「おい、アルカイナ、もういいかそのぐらいで。誰もあなたの苦しみは分かりようがない。あなたが到底、俺のを分からないようにな。自分のがでかすぎてな、口をかっ開いてもそんな言葉、喉チンコまでも無理だ。僕の苦しみか?幸せな奴だ、真剣に向きになれるのは素晴らしいよ、今時珍しい、、お笑いの世界だがな」
「お笑いの世界!」
「もういい。俺のお袋を出しに何をやる気だ?教えてくれないか?言えないなら終わりだ」
「次回に必ず教えます」
「終わり、お前とはもう会わない。二度と電話するな、いいな!」
「あなたのお母さんがなぜ亡くなったのか知りたくないのですか?約束を守らなかったことは謝ります」
「喉チンコまでも出てこれないのが何かおまえには到底、分からん、、関係ないからな」
「あなたに言ってなかったけど僕の名前はマイケルです」
「だから何なんだよ。おまえがマイケルだろうが終わりだ。もう電話するな」


携帯の電源を切ってチャーリィー・パーカーが住んでいた、151アベニューBに向かった。

素っ裸で何度もホテルのロビーに電話を借りにきては拒否された偉大なサックス奏者、タバコの火で枕に火をつけて逃げようとした尊敬できるjazz man、ドラッグと酒に蝕まれて50から60のぼろぎれの体で、34でこの世とおさらばした巨大なミュージシャン。
電話の時は素っ裸、逃げる時は靴下だけは履いていた、、、笑える、靴下の分だけかろうじて人間だった。
まだ俺はましか、ズボンぐらいは穿けるだろうからな、34まで四年、それ以上も生きれそうだ、、、そうも言えんか。
何だ、Charlie、あんたを素っ裸にさせたのは?
ビィボップ(Bebop)jazz、、いかす、ナンセンスな最高の響きだ、Bepopじゃなくてよかった。



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genre : 小説・文学

28:with a little help. もう一人のマイケルこのエントリをはてなブックマークに登録

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28:もう一人のマイケル


山岡を怒らせては駄目じゃないか、とにかく太鼓だ、マイケル、もう着いているはずだ、計画を急げ!

うるさい!ごちゃごちゃ言うな!

怒鳴っていた。

地下鉄だぞ。どうなってんだ、僕はどうした、、なんでこんな奴が僕の中に入り込んだ。
正面に座っていた男が見ている、笑みを、、おかしい、親しみ、、僕に?

おまえもか、中に巣食った奴はなかなか離れないぞ。つきまとってしゃぶってしゃぶって、皮膚、骨、それからいきなり脳味噌に行く。奴の大好物だ。タコスとトンガラシ振りかけてピザパイで包んで食べようとする。気をつけな、俺はかじられただけで済んだ。フセイン殺しに行ってぼろぼろになっちまった味噌は香辛料じゃあだませないとよ。よっぽど不味かったんだ。おまえは若いから旨そうだ、とことん食べられる。そう心配そうな顔すんな。散歩出来なくなるから顔は放免だ、お面だけで液晶テレビみたいになっちまうがな。いいじゃねえか、どうせ後ろは見えんからな。人間共は振り返ってでも見るがな。

フセインだと、なんだ、この人は、おや、、右腕の袖口から手が、、戦争で無くした、湾岸戦争、今のイラク戦争?どっちにぼろぼろにされた?それにしてもなぜ立っている人は彼の両横に座らないのだ。嫌われているのか?国のために戦ったのに?

おまえは中近東系だな、、、はあ、、もしかしてイラク?違うよな、人間共が蛆虫食って生きている糞まみれの街にイラク人がいるはずが、超平和な回虫肥溜め地下鉄には乗ってないよな。


イラクの言葉が車内を駆け巡った。周りが僕を一斉に見た。
他人の事など関係ないと、知らん振りしているように見えたのに。
怖いのか、、イラクが、イラク人が、、怖がれ。身の安全が大事だよ。気を付けたほうがいいよ、アメリカ国内では絶対に起きないと信じきっていると大変な事になるよ、、外でこの国が何をやってるか知るべきだ。

脳みそをかじられた男は一気にまくし立てた。

帰ってきて初めだ、こんなに関心を持ってもらえるのは。みんなよく聞け。俺は今のイラク戦争に従軍した。州兵だった、、まさかイラクまでとは、いろいろあるが、まず湾岸戦争のことを教えてやる。ここのマフィアにルッケーゼ・ファミリーってのがあってな。盗難車をクウェートに密輸していた。フォード、クライスラー、GM、それらをよ、この世界一強力な軍事国、アメリカ合衆国の戦闘機様がこっぱじみじんに、ミサイル、爆弾で破壊した。
テレビで見なかったか?道路でガリバーに踏んづけられたようなゴキブリをよ?あれは盗難車、家の戦闘機が殺した。そもそも今度のイラク戦争は、ブッシュのアホ息子ガ親父の敵を取ろうと始めた馬鹿な復讐戦争だ。湾岸でフセイン殺せなかったんでな。戦争なんて、、馬鹿だな、俺達、人間どもは、
まだあんだよ、、おい、席を立つなって!降りるなよ!

早く着けと、祈っていた、、カッターの刃と化したキャナルストリートの文字が男の脳みそを後ろから切り裂いて後方に遠ざかる。

やばかった、、僕はテロリストだ、関心を持たれるのはやばい。
とにかく太鼓だ!山岡は後だ、お母さんの情報は拒めない。今朝、電話して簡単に会えた、僕だって、、誰だって、彼の立場なら知りたい。
ドゴン族の太鼓だ、中身の回収が先だ。
花子さんに聞こう、もう待てない、、待てないなんて、昨日着いたばかりなのに焦っている。こんな気持ちでは、、あの子だ、徹だ、落ち着かなくさせるのは、、あのジャパニーズ、GOも山岡と、、昨日着いたばかり、、、同じことを又、、着いたばかり、だって、だからどうなんだ!馬鹿か僕は。
いやな感じだ。昨夜の放送ではなんの指示も、、ニュースの時間に与えると幹部が言っていたのに。


幸いロフトには花子さんだけだった。



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29:With a little help. 決心このエントリをはてなブックマークに登録

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29:決心


キャナルストリートで地下鉄を降りてロフトまで頭の中は堂々巡りをしていた。
あの男の言葉だ、脳味噌にタコスとトンガラシを振りかけてピザパイに包んで、、タコス?花子さんの顔がピザパイから微かに、、身勝手な僕はそれを食べようと、、、やっぱり巻き込むのは、、馬鹿な、、身近な人の命と他人のとは違うのかよ。
ロフトの玄関ドア、ボタンが答えを教えてくれた。タコスじゃない、タバスコだ。

彼女に近づこうとナイロビでのひったくりの芝居、プレゼントした太鼓、変に思わないのか、、どうする?ここに居たらテロリストの仲間だと疑われる。
今ならまだ、、住所か、、、イミグレに記録が、、利用されたと推測、、取調べは受ける、、それだけで、終わる、、らないか?
ドアを開けてくれた。
花子さんと目が合った。悪魔を見るような目付きではない。なぜこんなに優しく接してくれる?

「マイケル、今朝は早かったのね」
「昨夜のことを謝らないと、前触れもなく来てしまってごめんなさい。友達と連絡が付いたのですぐに出て行きます。すみませんでした」

出て行くと、言ってしまった。命が違った、他人のはどうでもいいと僕は思っている。

「友達の所に、ホテルではないの?」
「はい」
「泊まれるの?あなた、大学の件とは別のことでここに来たんでしょう?」
「いえ、大学の件です。別のことなんてありません。泊まれます」
「、、徹、あの子、私達が見えないものを感じ取れる」

感じ取れる?僕が来るのを知っていたかのようだった、、やっぱり。

「感じ取る?超能力ですか?」
「徹は少し私達より広い世界が見える。だからあなたのことが心配なの」
「僕の何が心配なのですか?徹君が何を感じたのですか?教えてください」
「あなたに火が見えると、、私達がばらばらになるような事も、、、」
「火、、ばらばら?」
「一緒ではないようなことらしい、、私達が」
「そうですか、、」
「思い当たる事はあるの?」
「いえ、、、」
「気付いてた、ナイロビのひったくりの芝居。あなたが計ったように現れて助けてくれた」
「、、なぜ、住所を僕に?」
「さあ、何かしら、あなたの目かな、行き先がなくなったような」
「僕の目、行き先、、」
「先は誰も分からない、でも数歩先は凡その検討はつく。あなたはそれがない。道が二つ、明るいのと暗い、闇の道。明るい方には行こうとしない、避けているのかな。闇のドアを開けた。でも、、その暗さにたじろいでいる」
「、、、、イラクのパスポートだとUS入国が難しいと思って利用できないかと、、ごめんなさい。でも大学の件は本当です。信じて、、」
「そう、、お友達はマンハッタンに住んでいるの?」
「クィーンズです。アストリアです」
「駄目だったら戻ってきなさい」

戻ってきなさい、、どこまでお人好しなんだ。芝居だと知っていたのに、僕がなぜアメリカに来たのかもう知っているんじゃ、花子さん?友達も嘘だって?

「ありがとうございます」
「連絡頂戴ね」
「はい、、、花子さん、僕がプレゼントしたドゴン族の太鼓、二、三日貸していただけませんか」
上手い言葉が出た。これなら怪しまれない。

「太鼓?あ、、どうするの?」
「友達がパーカッショニストで、どうしても叩きたい、と頼まれました」
「あれは徹がバンドで使っているから練習所よ。歩いて20分ぐらいの所だけど、誰かに連れて行ってもらわないと分からない。徹がもう帰ってくるわ。待ってなさい」

ここにない、、徹には、もう会いたくないのに。


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dorock修

Author:dorock修
物語,音楽をとおして何かを共有できないか、心に入り込めないか探っている者です。
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