13:With a little help. ドゴン族の太鼓

with a little help from Stranger
13:ドゴン族の太鼓
鉄二はマフィア稼業が好きでも嫌いでもなかった、たまたま親父が広域暴力団、山岡組のボス、山岡哲司、お袋がシチリア・マフィアボスの娘、もう生まれる前からレールは敷かれていた。
親父が若い時、命を狙われて逃げた先がシチリア、まさにゴッドファーザーの日本版だ。ハリウッド映画と違うのは、お袋の死は自動車爆弾ではなかった。子どもを助けようとして亡くなったと、詳しくは知らない、誰も教えてくれないからだ。
当時、ニ歳だった、無理な話だ。
だが、30になってもまだ教えてくれないとは、まだ餓鬼扱いのようだ。
玄関脇にあった太鼓を車に運んだ。
おかしかった、揺すると太鼓の中から“ガサガサ”音がした。
真夜中2時過ぎ、NJ(ニュージャージー)チェリー・ヒルに着いた鉄二は、濃い青色のストライプのシャツに白色の絹のスカーフを首に巻いたアロイの前で、眠気眼をこすりながら太鼓の皮紐を解き始めた。
きつく張られていたので解くのは容易ではなかった。
アロイはウォッカマティーネを手に作業を見ている。
「鉄二、今度はドゴン族の太鼓だとよ。ディマッジョもいろいろ考えるな」
「簡単に解けるのには変えてくれないでしょうね。爪、手の皮がメロメロです。
ボス、切ってもいいですか」
「税関もうんざりするんだとよ、解くのにどのくらい時間がかかるか見よう。解いてみな」
「中身なんて開けなくても調べられるでしょう?」
「ヘロインが太鼓の壁にへばり付いてるんだとよ、、音はしないはずなんだがな」
1時間後やっと皮紐を解いた。
中身を作業台の上に開けると、ヘロインが木片、繊維、植物に化けていた。
頭に来たアロイは受話器を荒々しく取った。
ディマッジョの副ボス、ジョン・スパーロが出た。
「何のつもりだ?手品でも見せてえのか?」
「誰だ?サルバトーレか。何をかりかりしてる。
手品だと?何を言ってんだ」
「ヘロインがゴミに化けたんだ!」
「ちょっと待て!どういうことだ?」
「太鼓の中身はゴミなんだよ!木、植物の屑のな!」
「ヘロインはなかったのか?」
「ない!ゴミだ!」
「サルバトーレ、落ち着け!俺がじかに入れたんだ。
間違いない。なんせ初めてのサンプルだ。
特殊な塗料を太鼓の内側に塗ってその中に上手く隠した。壁がヘロインだ。
念を入れてX線で調べたぐらいだ」
「”がさがさ”揺らすたびに中で喚いたぜ」
「中で喚いた?音がしたのか?」
「捕まえてくれ、ってな」
「おかしいな。塗料が剥げ落ちても音はしないはずだ。
そっちで手違いは?」
「ああ、今のとこ、ありゃしないぜ」
「FBIはどうだ?奴らが仕組んだってのは」
「ヘロインでしょっぴけるのにゴミに変えるか!」
「分かった。徹底的に調べるから少し時間をくれ。
おまえもそっちを調べてくれ」
それから6時間後、
「サルバトーレ、徹底的に調べた。ゴミに変わったのが分からん。
そっちはどうだ?」
「荷揚げ業者から船員にいたるまでな。あんたのシチリアのライバル、インツェリッロ・ファミリーがやったってのは考えられんか。噂ではガンビーノ・ファミリーと手を組んで俺たちと同じことをやろうなんて考えてるらしいが」
「初耳だな。インツェリッロとガンビーノが組むのか。
ガンビーノはコンクリート、ごみ車、ブルックリンの荷降ろしで充分だろう。
まだ勢力を広げようとしてるのか?」
「ああ、強力な組み合わせだ。メデジン・カルテはどうだ?
奴らを取られたら戦争だ」
「じゃあ、コロンビアのカリ・カルテ(コロンビア・カリ市に本拠を置く麻薬組織)も奴らと組むな。
インツェリッロとカリ・カルテはコネがある。昔、俺たちとの戦争で負けたのがコロンビアに逃げた。
カナダ、ベネズエラにもな」
「てことは、このビジネスを始めても俺たちとは同じルートを使わねえってことか」
「そう願いたいな。このルートは俺たちが作り上げたんだからな。
だが参入してきたら、もう甘い汁は吸えないな。
最近メデジンの奴ら金にうるさくてな。コカインの値上げを要求してきた。
実は、サルバトーレ、1週間前にインツェリッロのスパイが見つかった。
絞りあげて吐かせようとしたが殺しちまった。今、聞いた話と辻褄が合うな。
だが、太鼓の情報は流せても中身までは変えられないはずだ」
「ガンビーノが噛んでると見たほうがいいかもな。
きたねえことを考えてやがる。
戦争の準備だけはしとくかな」
「まだ、その段階じゃあねえ。他のファミリーがどっちにつくか読んでからだ」
「手は打つよ。ガンビーノのドン・ゴメスが相手なら勝ち目はない。
ドンを始末すればなんとかなるが。ジョン、戦争になっても地獄の底まで一緒ってことで裏切りはなしだぜ」
「サルバトーレ、その言葉そっくり返すぜ」
「アルカイナの連中はどうだ、何か企んでいないか?」
「奴等はヘロインの元締め、パキスタンルートは一番安全だ、それだけの付き合いだ。深入りしたらとんでもないことになる」
「もう深入りしてんじゃないだろうな、テロ組織との関わり合いだけは御免だぜ」
「アルカイダとは関係ないと言ってたから大丈夫だ。あっちにはいろんな組織があるんだとよ」
翌朝、寝坊したキャシーは玄関に太鼓がないのに気づいた。
徹が持って行ったのね。
学校帰りに徹はキャシーの家に寄った。
母親、エリザベスがいた。
「キャシーは?」
「あなたたちとバンドの練習してると思ったけど違ったの?」
「じゃあ、練習場に行ってみるよ」
太鼓を玄関の入り口に置いておく、と言ってたのに。
アンプ横に太鼓があった。
やっぱり、キャシーは重くて運べなかったんだ。
家に戻ってすぐ電話が鳴った。
「徹、太鼓持って行ったんでしょう?」
「ここにあるよ」
「練習場に太鼓がないのよ」
「だってそこから僕が持ってきたんだよ。ないのはあたりまえさ」
「私の家から持って行ったんじゃないの?」
「う、ううん、君んちになかったよ。
練習所にあったから持ってきたんだ」
「それ、本当に徹の太鼓?」
「もちさ、何を言うんだ!KISSも見たし。そうだよ」
「私の叩く太鼓がないのよ!アンプの横に置いてたのよ!
昨日、家に二つあったの!みんな消えちゃったから私の叩く太鼓がなくなっちゃったの!」
キャシーは泣き出した。
「キャス!泣くなよ!これで君をバンドから追い出そうなんてしないから。
約束するよ。花子さんが帰ってきたらこの太鼓、君にあげていいか聞いてみるからさ」
「本当!徹、約束よ!バンドから追い出さないって!」
キャシーは家に着くやエリザベスの部屋に直行した。
いつものようにベッドに酔い潰れていた。
「ママ、起きて!ママったら、起きて!」
「あら、キャシー、早かったのね。もう学校は終わったの、、、」
「朝あった太鼓がないの、欲しいの。
どこに行ったの、ねぇ、ねぇってば!」
「太鼓?あれはパパのよ。パパが持って行ったわ」
キャシーはどの太鼓が誰のものかもう分からなくなっていた。
花子さんが早く帰って来ることだけを一生懸命に祈った。
KISSが毎日のように見舞いに来てくれた。
もしかして糖尿病以外の不治の病に冒されているのかしら。
身寄りのないロベルトは不安でKISSに哀願した。
「お医者さんに後どのくらいの命なのか聞いて欲しいのよ」
「ロベルト、申し訳ない、俺のせいなんだ」
ペレの神話を一生懸命に何度も説明した。
「KISS,あなたっていい人ね。
そんな馬鹿な作り話をして、、、、気休め言ってくれなくてもいいのに、本当にありがとう。
生まれたときから天涯孤独の身でしょう、だから覚悟は出来てるつもりよ。お願いだから先生に、、」
13:ドゴン族の太鼓
鉄二はマフィア稼業が好きでも嫌いでもなかった、たまたま親父が広域暴力団、山岡組のボス、山岡哲司、お袋がシチリア・マフィアボスの娘、もう生まれる前からレールは敷かれていた。
親父が若い時、命を狙われて逃げた先がシチリア、まさにゴッドファーザーの日本版だ。ハリウッド映画と違うのは、お袋の死は自動車爆弾ではなかった。子どもを助けようとして亡くなったと、詳しくは知らない、誰も教えてくれないからだ。
当時、ニ歳だった、無理な話だ。
だが、30になってもまだ教えてくれないとは、まだ餓鬼扱いのようだ。
玄関脇にあった太鼓を車に運んだ。
おかしかった、揺すると太鼓の中から“ガサガサ”音がした。
真夜中2時過ぎ、NJ(ニュージャージー)チェリー・ヒルに着いた鉄二は、濃い青色のストライプのシャツに白色の絹のスカーフを首に巻いたアロイの前で、眠気眼をこすりながら太鼓の皮紐を解き始めた。
きつく張られていたので解くのは容易ではなかった。
アロイはウォッカマティーネを手に作業を見ている。
「鉄二、今度はドゴン族の太鼓だとよ。ディマッジョもいろいろ考えるな」
「簡単に解けるのには変えてくれないでしょうね。爪、手の皮がメロメロです。
ボス、切ってもいいですか」
「税関もうんざりするんだとよ、解くのにどのくらい時間がかかるか見よう。解いてみな」
「中身なんて開けなくても調べられるでしょう?」
「ヘロインが太鼓の壁にへばり付いてるんだとよ、、音はしないはずなんだがな」
1時間後やっと皮紐を解いた。
中身を作業台の上に開けると、ヘロインが木片、繊維、植物に化けていた。
頭に来たアロイは受話器を荒々しく取った。
ディマッジョの副ボス、ジョン・スパーロが出た。
「何のつもりだ?手品でも見せてえのか?」
「誰だ?サルバトーレか。何をかりかりしてる。
手品だと?何を言ってんだ」
「ヘロインがゴミに化けたんだ!」
「ちょっと待て!どういうことだ?」
「太鼓の中身はゴミなんだよ!木、植物の屑のな!」
「ヘロインはなかったのか?」
「ない!ゴミだ!」
「サルバトーレ、落ち着け!俺がじかに入れたんだ。
間違いない。なんせ初めてのサンプルだ。
特殊な塗料を太鼓の内側に塗ってその中に上手く隠した。壁がヘロインだ。
念を入れてX線で調べたぐらいだ」
「”がさがさ”揺らすたびに中で喚いたぜ」
「中で喚いた?音がしたのか?」
「捕まえてくれ、ってな」
「おかしいな。塗料が剥げ落ちても音はしないはずだ。
そっちで手違いは?」
「ああ、今のとこ、ありゃしないぜ」
「FBIはどうだ?奴らが仕組んだってのは」
「ヘロインでしょっぴけるのにゴミに変えるか!」
「分かった。徹底的に調べるから少し時間をくれ。
おまえもそっちを調べてくれ」
それから6時間後、
「サルバトーレ、徹底的に調べた。ゴミに変わったのが分からん。
そっちはどうだ?」
「荷揚げ業者から船員にいたるまでな。あんたのシチリアのライバル、インツェリッロ・ファミリーがやったってのは考えられんか。噂ではガンビーノ・ファミリーと手を組んで俺たちと同じことをやろうなんて考えてるらしいが」
「初耳だな。インツェリッロとガンビーノが組むのか。
ガンビーノはコンクリート、ごみ車、ブルックリンの荷降ろしで充分だろう。
まだ勢力を広げようとしてるのか?」
「ああ、強力な組み合わせだ。メデジン・カルテはどうだ?
奴らを取られたら戦争だ」
「じゃあ、コロンビアのカリ・カルテ(コロンビア・カリ市に本拠を置く麻薬組織)も奴らと組むな。
インツェリッロとカリ・カルテはコネがある。昔、俺たちとの戦争で負けたのがコロンビアに逃げた。
カナダ、ベネズエラにもな」
「てことは、このビジネスを始めても俺たちとは同じルートを使わねえってことか」
「そう願いたいな。このルートは俺たちが作り上げたんだからな。
だが参入してきたら、もう甘い汁は吸えないな。
最近メデジンの奴ら金にうるさくてな。コカインの値上げを要求してきた。
実は、サルバトーレ、1週間前にインツェリッロのスパイが見つかった。
絞りあげて吐かせようとしたが殺しちまった。今、聞いた話と辻褄が合うな。
だが、太鼓の情報は流せても中身までは変えられないはずだ」
「ガンビーノが噛んでると見たほうがいいかもな。
きたねえことを考えてやがる。
戦争の準備だけはしとくかな」
「まだ、その段階じゃあねえ。他のファミリーがどっちにつくか読んでからだ」
「手は打つよ。ガンビーノのドン・ゴメスが相手なら勝ち目はない。
ドンを始末すればなんとかなるが。ジョン、戦争になっても地獄の底まで一緒ってことで裏切りはなしだぜ」
「サルバトーレ、その言葉そっくり返すぜ」
「アルカイナの連中はどうだ、何か企んでいないか?」
「奴等はヘロインの元締め、パキスタンルートは一番安全だ、それだけの付き合いだ。深入りしたらとんでもないことになる」
「もう深入りしてんじゃないだろうな、テロ組織との関わり合いだけは御免だぜ」
「アルカイダとは関係ないと言ってたから大丈夫だ。あっちにはいろんな組織があるんだとよ」
翌朝、寝坊したキャシーは玄関に太鼓がないのに気づいた。
徹が持って行ったのね。
学校帰りに徹はキャシーの家に寄った。
母親、エリザベスがいた。
「キャシーは?」
「あなたたちとバンドの練習してると思ったけど違ったの?」
「じゃあ、練習場に行ってみるよ」
太鼓を玄関の入り口に置いておく、と言ってたのに。
アンプ横に太鼓があった。
やっぱり、キャシーは重くて運べなかったんだ。
家に戻ってすぐ電話が鳴った。
「徹、太鼓持って行ったんでしょう?」
「ここにあるよ」
「練習場に太鼓がないのよ」
「だってそこから僕が持ってきたんだよ。ないのはあたりまえさ」
「私の家から持って行ったんじゃないの?」
「う、ううん、君んちになかったよ。
練習所にあったから持ってきたんだ」
「それ、本当に徹の太鼓?」
「もちさ、何を言うんだ!KISSも見たし。そうだよ」
「私の叩く太鼓がないのよ!アンプの横に置いてたのよ!
昨日、家に二つあったの!みんな消えちゃったから私の叩く太鼓がなくなっちゃったの!」
キャシーは泣き出した。
「キャス!泣くなよ!これで君をバンドから追い出そうなんてしないから。
約束するよ。花子さんが帰ってきたらこの太鼓、君にあげていいか聞いてみるからさ」
「本当!徹、約束よ!バンドから追い出さないって!」
キャシーは家に着くやエリザベスの部屋に直行した。
いつものようにベッドに酔い潰れていた。
「ママ、起きて!ママったら、起きて!」
「あら、キャシー、早かったのね。もう学校は終わったの、、、」
「朝あった太鼓がないの、欲しいの。
どこに行ったの、ねぇ、ねぇってば!」
「太鼓?あれはパパのよ。パパが持って行ったわ」
キャシーはどの太鼓が誰のものかもう分からなくなっていた。
花子さんが早く帰って来ることだけを一生懸命に祈った。
KISSが毎日のように見舞いに来てくれた。
もしかして糖尿病以外の不治の病に冒されているのかしら。
身寄りのないロベルトは不安でKISSに哀願した。
「お医者さんに後どのくらいの命なのか聞いて欲しいのよ」
「ロベルト、申し訳ない、俺のせいなんだ」
ペレの神話を一生懸命に何度も説明した。
「KISS,あなたっていい人ね。
そんな馬鹿な作り話をして、、、、気休め言ってくれなくてもいいのに、本当にありがとう。
生まれたときから天涯孤独の身でしょう、だから覚悟は出来てるつもりよ。お願いだから先生に、、」
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