続下はわいーい40:モモとモモこのエントリをはてなブックマークに登録

40:モモとモモ

モモの気持ちになれた、わかった。柵の工事、二日前はやっていなかった、昨日、病院から帰ってきて見たんだ。
ホタルさんに説明しようと、、、今、亀の話しても理解できない。

“ホタルさん!ダニーの携帯に電話して書類を早く公表してくれるように頼んでくれ!CIAは戸昼達がまだ持っていると思っているから!”

命令口調で強く言った。
感傷に浸っていては、泣いているだけでは、何も始まらない。早くいつものホタルさんに戻ってくれないと。
実際そうだ、モモは元気なんだ!

僕の生意気な言葉は利いた、これで怒ってくれれば、。
ホタルさんが受話器を取るのを確認して走った。
ドア前で急ブレーキをかけた。
すごい勢いで包帯を巻いたおでこがドアにぶつかった。
“ホタルさん!警察にも電話を!
モモは元気だ!諦めるな!”

頷いてくれた、でも、まだ葬儀前の顔だ。
力任せにドアを閉めた。この音でホタルさんは我に返る。

工事中の動物園の柵の前にいた。
歩いても十分かからない、でもどうやってここまで、、ドアの悲鳴が木霊している。

「工事は、、いつからやっているのですか?」
心臓がパンク寸前だ、深呼吸したい、でも言葉がかってに僕をおいて走っている。
「二日前だ、老朽化したからね」
「、夜は、、開けっ放しですか」
「それはないよ、逃げたら動物園がゴーストタウンになっちゃう。一応、柵はしているよ、ちゃちだけどね。それより、あんたが緊急工事が必要だよ。
私は横須賀にいた。ジャパニーズの鉢巻みたいだよ、“白地に赤く”が“赤地に赤く”の真っ赤だ。大丈夫かね、そんなに血の汗出して」

おでこだ、ドアにぶつかった。肩から血まみれ、汗まみれだ。
工事の叔父さんがポケットからハンカチを取り出した。
「これ使いな。新しい、未使用だよ」
「、、いいんですか?」
「今の君は素直に受け取る、私に聞かないで」

おでこが血だらけになったおかげで見知らぬ叔父さんの優しさを知った、得した。
サヨナラを告げて動物園玄関に行こうとした。
「心臓麻痺、起こされたら困るからここから入っていいよ。私は見てないから」


逃がしたかった、、モモは一緒に、?
去年、動物園に二人で来た時、一匹、一人の亀を紹介された。紹介?でも、そうなのだ、友人ではない、モモは目上の人に接しているような感じだった。
その人はみんなと離れて一人ぼっち、横になっていた。

“亀のモモ、ここが彼女の場所、海に近いから、本当は逃げたいんだ、、”
そう言ってモモは頭をなでた。目上の人は気持ちよさそうに首を長く出しておねだりしていた。

亀をモモと呼んだ、その時、僕は大笑いしてしまった。
それから数週間、彼女は石になった。話しかけても知らん振りだ。
当時の僕は彼女の気持ちを汲み取ることができなかった。
モモが血を流していたのに笑ったのだ、柵を工事している叔父さんのようにはできなかった。
それからは少しずつ相手の気持ちを理解しようと、汲み取ろうと勤めた、自分の物差しだけで物事を見ないようにと。

亀の柵は工事現場から50mも離れていなかった。
亀達はいた、モモの姿はない。
管理室に向かった。

「亀が一人いないようですが」
作業服を着た女性がひどく驚いた顔をしている。
包帯、叔父さんのハンカチを突き破って滲み出た血で僕の顔はひどい有様、ゾンビだ。
彼女は獣医さんだった。
「あなた、血を止めないと」
「亀が一人いなくなっていませんか」
「一人?、そんなはずはないと思うけど」
「お願いします、確認していただけませんか。亀のモモがいないはずなんですが」

血まみれのフランケンシュタインが亀のモモなんて可愛い言葉、僕の言語モードはもうモモ・モードだ。
亀に名前?馬鹿なことを?昔の僕のように笑う?

獣医さんは違った、優しかった、やはり動物を扱っている人は違う。

おでこの処置後、亀の柵に向かった。
「あれ、いないわ、ピーチがいない」
「いつもこの海側に一人でいた亀ですよね」
「昨日はいたのよ」
僕をまじまじと見ている。
「ピーチという名前ですか」
「ええ、そう、、」
僕の目を見つめたままだ。

やっぱりモモだ、彼女が逃がした。

「あなたはモモと兄弟なの」
知っていた、獣医さんはモモを知っている。
「いえ、恋人です!」
力強い言葉が出ていた。モモがどう思おうと僕は彼女の恋人だ。

「モモに何かあった、、?」
僕を見ていなかった、、空に、太陽に聞いた。
まぶしいのに、、直視していた。



theme : 連載小説
genre : 小説・文学

猫のピーちゃん・短編このエントリをはてなブックマークに登録

猫のピーちゃん

僕の家には猫がいた、もういない、死んでしまった。僕が殺した。これからの一生はピーちゃんに捧げるつもりだ。

ピーちゃんがいなくなってだらしなくなった。
掃除はしない、脱いだ靴下は、お父さん、お母さんのようにばらばらに旅行中、ズポンも、上着もどこにあるのか探すのが面倒なぐらいだ。
見つけても脱いだままの状態だからいつも裏のままか半分めくれている。面倒だからそのまま着てしまう。
小一でこんなんじゃあ大人になったらどうなるのか、とお母さんは心配している。
”僕におせっかいはいらない。お父さんと仲直りして”なんて言えない。言ったら本当に捨てられてしまう。
ピーちゃんがいたから毎日掃除、整理整頓もしていた。
しないと大変なことになる。食べること、遊ぶことがピーちゃんの仕事、何にでも手を出す。

ピーちゃんは最近やってきた。家は雑司が谷の墓地の近くにある。
巣鴨のお爺ちゃん、お婆ちゃんの溜まり場みたいに、捨てられる猫ちゃん達の銀座だ。
あ、違った、こっちの銀座はみんな生まれたばかりか子猫ちゃんだ。

夜遅く、夜中が多い、こっそりと殺人・人間共はやってくる。
僕は何度も見た。その度に出て行って、僕の一番、怖い顔をしてにらむ。
でも、お母さんはそんなに怖くないと言う。口を開けてあごを思いっきり下に伸ばす、目も鼻もあの世に行ったような顔になる、鏡では怖いんだけど。

別れを惜しんでいた、理由を一杯言ってた、謝っていた、でも、殺人人間だ。
車から投げ捨てる殺人人間もいる。仮面もかぶれる唯一の卑怯な動物、人間。
墓地にはカラスが多い。生まれたばかりの赤ちゃん猫ちゃん達を狙っている。
捨てに来る仮面の殺人人間とおなじ殺し屋だ。


僕には変なとこがある、夜ベッドで寝ていたのに目覚めると全然知らない場所にいたりする。
池袋駅の交番にいたり、サンシャインの前にいたり。
ピーちゃんと一緒に寝るようになって治ったのに、“この子は夢遊病者なんですよ”とお母さんが自慢げに近所の叔母さんたちに紹介する。
“夢遊病者”って何なのかまず僕に説明してもらいたかった。小一では理解できないと決め付けている。
大人は自分勝手でどうしようもない、お父さんはどこかに女の人がいるらしく滅多に家にいないし。
お母さんが自慢げだったので僕も友達に“夢遊病者なんだ“と偉そうに言っていた。
今、僕はみんなに、お母さんにも“むゆう”と呼ばれている。
”むゆうの縄張りはまだ池袋なんですよ“、とお母さんがこの前知らない叔父さんに話していた。
“まだ”なんてどういう意味?どこか遠くに行ってもらいたい?これが今の僕の一番の悩みだ。

朝の5時前、墓地にいた。
ピーちゃんがパンツ一枚で立っている僕の前に墓石の間から出てきた。よちよちのまだずっと前のよちよち歩きだ。
震えている、目にはたくさんの蜘蛛の巣。
こんなに広い墓地なのに、僕の目の前にどうして出てきたのか不思議だ。

僕は部屋に連れて帰ってインターネットで猫ちゃんのことを調べた。
牛乳をうまくやれなかったのでお父さんの部屋にあったスポイトであげた。オシッコ、ウンチ、僕の唾でさすって出してあげた。
最大の難関は、お母さんとお父さんの許しだった。
でもそれもクリアした。犬のウンチを見かけるたびに異常なぐらい怒るのに、お母さんは“猫ちゃんは好きで飼っていたこともある”と言った。
お父さんは何も言わなかった。関係ないことだと思っているからだ、猫ちゃんも、僕も。

勉強をしていた。いつものように邪魔しに来た。仕事も学校にも行かないピーちゃんのこれがアルバイトだ。
不公平だ、僕はピーちゃんが不器用な手で玉ころがしをやってたり、お手玉で遊んだり、買い物袋に入って突進遊びをしているのを邪魔したことはない。

チューインガムが僕の一番好きなものだ、ご飯より好きだ。
ピーちゃんが来てからはオレンジのチューインガムになった、蜜柑が嫌いだからだ。でもその時は甘いコーヒー・フレバーのだった。
塾帰りにコンビニに寄った時、いやな感じがした。
レジでお姉ちゃんがオレンジのチューインガムを10個まとめて買っていた。
案の定、ない、仕方なくコーヒーのを買った。

僕は今、そのお姉ちゃんを憎んでいる。今度、あったら仕返しを、ピーちゃんの復讐をするつもりだ。
謝ってもらいたいからピーちゃんの写真を持ち歩いている。
素直に謝ってくれなかったら僕はストーカになると、宣言するつもりだ。

ピーちゃんは僕達のベッドの中で、僕が丸めた大きなチューインガムの玉を喉に詰まらせて死んでいた。
いつものように2m先のゴミ箱に口から放り出した。百発百中なのにゴールインしなかった、オレンジじゃなかったからだ。
その時、僕は勉強中だった。
すぐ後ろはベッドなのに、苦しんだはずなのに、何も聞こえない、、ヘッドフォンをしていた。

それから二週間、毎日、あのお姉ちゃんと会った時間にコンビニへ行った。

「お姉ちゃん、ピーちゃんに謝って」
「何?誰?ピーちゃん?」
僕は大人のように一気にまくし立てた、無理だ、言葉か続かない。
「お姉ちゃんがチューインガム買い占めたからピーちゃんが死んだんだ。この写真のピーちゃんに謝って。そうしないと僕は一生ストーカーになってやる」
写真を手に取って見ている。
「この子猫ちゃん、ピーちゃん?亡くなったの?」
「お姉ちゃんがピーちゃんの嫌いなオレンジチューインガム買ったから僕はコーヒーのを買ったんだ。喉に詰まって死んだんだ。謝れ!」
お姉ちゃんは写真を胸に当てて深くお辞儀をした。
やさしい人だったので嬉しかった。
僕の知っている大人のように”私は関係ない”と言わなかった。
お母さんのように”あなたが悪いのでしょう”と言わなかった。
「ピーちゃん、本当にごめんなさい。赦してください。坊や、時間ある?付き合ってくれない」

お姉ちゃんの家は猫屋敷だった。大人,子どものピーちゃん達が一杯いた。
僕とおなじ理由で蜜柑のしか買わなかったのだ。

幼いピーちゃんを抱いて家に向かった。

僕達はもうチューインガムを一生食べないと約束した。
この前、僕は新大久保駅前の交番で保護された。僕の縄張りが拡がっているのだ。
もう大丈夫、幼いピーちゃんがいるから。
帰ったら掃除しないと。



theme : ショート・ストーリー
genre : 小説・文学

続下はわいーい41:モモの体温このエントリをはてなブックマークに登録

41:モモの体温


太陽を直視していたのは涙を見せたくなかったのだ。目に泉が、小さなのが出来ていた。容量が足らない、頬が真珠だ、光っている。
この数日、涙ばかり見ている。
自分が流す涙は嫌いじゃない、素の、まざりっけなしの、その人と二人っきりの自分になれる。でも、見るのは御免だ。

答えをもらえないのでじれたのか彼女は太陽に話しかけた。

“七年前、クルザーから子どもが海に落ちた、、ここから200kもある太平洋、八歳の男の子。二日後、オアフの北のビーチに打ち上げられていた。あの亀のモモが横にいた。助けたの、連れて来てくれたのよ。その代償がここ、動物園。
彼女を海に返さなかった。当時、話題になってたくさんの人が押し寄せてきた。何度も海に返してくれるように市と掛けあったわ、モモも一緒、、動物と海しか興味がない子だった。署名も、あの子は一生懸命にやった。
人は自分に関係のないことは真剣に考えようとしない、考えない、と切り捨てた。
モモはそこで諦めたわ。
信念さえを持っていればどんな状況になっても気にならなくなる、何度も彼女に言った、、宇宙人のTシャツ、いつもあのTシャツ、、もう僧衣、信仰みたいだった。この社会に属していない、と“

モモが署名、知らなかった、出会う前のことだろうか。
話してもいいはずだ、そうしなかった、、
僕も真剣に考えようとしない人、、、。

泉の水はもう枯れていた。獣医さんは決心したように僕を見た。
モモがどうなった?答えを知っているのに、質問?
ついさっき動物を扱っている人は優しいと思ったのに。

大声で彼女の名前を呼びながら作業服の男がこちらに走ってくる。
右手で胸元のボタン、左手で風に飛ばされないように帽子を押さえている。
風の助けを得て抵抗していたボタンも僕たちの前で羽交い絞めにされて諦めた。

「ネロ!運搬用の大型の台車がないんだけど使った?」
「いえ、使ってないわ」
僕を射るように見た。
ビーチに駆け出した。

ヤクザと取り引きをした桟橋横で溺れていた。
かろうじて取っ手の部分だけが顔を覗かせて喘いでいる。
助けないと、
突進した、無我夢中で海の中を走った。

取っ手に数時間前に触ったモモの手を探した。
まだ洗い流されては、、残っている、きっと、体温が、モモの。
手を合わせて温めて、、
こんなことしかできないなんて、、

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

完・続下はわいーい42:生き続けるこのエントリをはてなブックマークに登録

完 42:生き続ける


モモ、チーフ、、あれから半年がたった。僕たちがどうなったのか書いておこうと思う。


淡い期待を持っていた。七年前のように、亀のモモがどこかの島に運んでくれる。
モモが失踪して約三ヵ月後、タヒチ、マルケサス諸島、ビバオア島の浜に打ち上げられているのを地元の人が助けてくれた。あの有名な画家、ゴーギャンがいた島だ。
無人島でなくてよかった、亀のモモが考慮してくれたのだろうか。
オアフから8000k近い、もちろん彼女は付き添っていなかった。解放された感謝の気持ちを僕達に返してくれた。

深夜一時、ダニーから電話があった。
タヒチ、パピートのアドバタイザー支局からの連絡で、若い女性が浜に打ち上げられた。
送られてきた写真にモモがいた、焦げ?真っ黒だ。
お母さんの千恵子さん、ホタルさん、僕、三人で行った。
ハワイからのフライトは土曜日しかない、二日も待った。送られて来る情報は僕達をやきもきさせるものばかりだ。
耳が聞こえない、話すことが出来ない、記憶がない。
彼女が生きている、それがすべてだ。他のことはどうでもよかった。
なんせ三ヶ月も経っている。

ダニーが奔走してくれて公にならなかった。このことが一番の気懸かりだった。
亀と8000k近く旅した女性なんて知れたら大変なことになる。


モモがいなくなった早朝の電話以来、チーフからの連絡はない。携帯も繋がらない。
書類がホノルルアドバタイザーの日曜版に掲載されたのは、チーフの電話から四日後のことだ。

CIAとルイス・エンリケとの関係、CIAも北朝鮮の偽ドル紙幣偽造に関わっていたこと、アフリカのブラックダイヤモンド関連の記事が掲載されていた。
読み終えて虚しさだけを感じた。
最後のページ、数行だけでゴミ箱行きになる物語だ。
所詮、証拠がない、こんなものなのだ、国、政府機関の裏を暴くのは難しい。
合衆国、国民の安全のため、国の威信のため、なんて美辞麗句に人々は毒され、麻痺し、自国がすべての面で優れていると信じきった輩に催眠術をかけられて、それらを見せ付けようと、維持せんがために、他国にまで出向いて、戦い、殺し、殺される。
愛国心?生まれた場所が悪かった?不幸な人達だ。


ヤクザ連中は、専務の荒井だけがまだ収監されている。
金の成る木、名声を得ようと、有罪を無罪にしてしまうハイエナ弁護士連中がわんさか付いているから強制送還されるのも時間の問題だ、ダニーが言っていた。
しかし、宮沢組内の彼の力は以前のようになるかは疑問だとも。組織はどこもおなじだ、次が控えている。


僕らは今、ハワイ島に住んでいる。僕は小さな旅行代理店で働いている。
ワイキキの喧騒から逃れてモモは元気だ。
耳は殆ど聞こえない、右がかすか、前日の事故で痛めていたのに海水に長く浸かっていたためだ。
聞こえなくなる、と、、回復しないそうだ。
言葉はない、話したくないのだ、最初はそう思っていた。
そうではなかった、話せないようだ。医者はどこも悪くないと言ったが。

モモは変わった、いや、以前の、僕の知っているモモじゃない、この方が正確だ。
宇宙人のTシャツを見ても何の反応も示さない。
僕がステーキ、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキンを食べても何も言わない、最近、食べなくなったけど。

不思議なことに今、音楽に情熱を注いでいる。
五線譜を持ち歩いている。
音が消えてしまう恐怖から今のうちにと、そう思っていた。
違う、、動き、振舞い、すべてが、空気、雨、風のように自然だ。あるがままにすべてを受け入れている。
最近、絵も描くようになった、びっくりするぐらいかなりいい、タヒチのゴーギャンの影響だろうか。
色弱、色盲であろうと、色の感覚が人と違っていてもいいのだ、空がピンク、黒くても、感じたものを素直に出せばいい。
よかった、細いけど繋ぎ留めていてくれれば僕が大きなロープにしてあげれる。
今の僕の心配は、ない、、強いてあげれば、彼女の歌詞だけ。

今、やりたいことは何 何もやりたくないなんて答えられない
でもそれが答えよ 何もやりたくないの 
淀んだ空の下の昼寝 スモッグの中を走るジョガー
君がいれば最高なんて 君がいれば何もいらないなんて
可愛い言葉も ロマンチックな言葉もいらない
美味いものをたらふく食べても その日の夢はいつも食べられる夢
痛さに目覚める そうよ 痛いのよ 
何もやらないことが とってもnatural
何もやるな natural
 

以前のモモを知っている人達は一様にかわいそうだと言う、耳が、しゃべれなくなったからだ。
そうじゃない、彼らは全然わかっていない。無くしたからどうじゃない、それらに代わる、それら以上のものを、持っているし、得ている。
獣医のネロさんとも知り合えた。とてつもなく優しい人だ、月に二度は必ず来る、様子見だ。今でもモモがこうなったのは自分のせいだと思っている、力が足らなかったのだと。そうじゃないのにありがたい気持ちだ。
みんなの気持ちが彼女を癒して前向きにさせているのだと思う。


チーフの恋人は日本からの出向社員に付いて去っていった、彼女のためなら何でもやったのに。
それも自然なのだ。やれることはすべてやった、だから後を追わない、納得がいく。相手が幸せなら、幸せになれるのなら、僕だって捨てられようがどうなってもいい、大納得だ。

タヒチの病院で僕は会えなかった。
顔だけは見たい、おなじこの世に生きているのを確認だけはしたかった。
恐る恐るドアから顔をのぞかせた。
千恵子さん、ホタルさん、看護婦さんの隙間から、手、毛布の膨らみを見ていた、動いている、、顔は見えない。

千恵子さんが急に屈んだ、、モモは僕を見ていた。
口を小さくとがらせた。

“純“

この時、僕もモモとおなじように誰もが知っている僕じゃなくなった、
記憶が無いほうが生きやすい、なんて馬鹿なことを考えるような僕では。

“私は生きる、生き続けるわ”

モモの目はいつも僕に語ってくれる。
エンジェルがくれるユンケル皇帝ロイヤルどこじゃない、、
取り残されないように僕も真剣に生きなければ。


  完        dorock修

 
参考図書  
ニューダイヤモンドの話:赤羽利昭著 日刊工業新聞社 

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

12:With a little help. アルカイナこのエントリをはてなブックマークに登録

With a little help from Stranger

12.アルカイナ(テロ組織)

いつものように徹夜したKISSは太鼓がないのに気づいた。どこを探しても見つからなかったので徹の部屋に走った。
「徹!太鼓知らないか?」
「、、ああ、あれ、バンドの練習にキャシーが使えないかと思って昨日持っていったよ。KISS、家にいなかったから言いそびれちゃった」
「花子さんが帰ってきてからにしてくれよ。一応、俺宛に来たんだからよ、責任があるからな」
「どうせ太鼓、僕のものなんだ。そのつもりで花子さん送ったんだから、でもいいよ、KISSがかわいそうだから。練習場にあるよ、今日は行けないから明日でいいでしょう?」

俺がかわいそう、、餓鬼に言われたくない言葉だ。
「キャシーって、パーカッションやってる子か?
親父がマフィアの副ボス(アンターボス)とかいう?」
「そう言ってる人もいる。電話するから受話器持ってきてよ」

今度は受話器持ってきてよか、、王子から王様になるのも近い。

「キャシー、あの太鼓、花子さんが帰ってきてからにしてよ。もう帰ってくるからさ、KISSがうるさいんだよ。明日持ってくよ」
「わかったわ。徹、ここにあれば明日、学校帰りに寄れるでしょう。
運んで玄関に置いておくわ」
「いいよ、八ブロックもあるんだよ。無理だよ、重いんだから」
「大丈夫、もっと筋肉つけないと太鼓叩けないもん」

俺がうるさいからか、、徹も人のせいにするとこなんざ成長したものだ。千里眼に大人のいやらしさ、、当の本人の前で素直に口にするとこだけは俺と違ってまだ餓鬼だ。

キャシーは午後、八ブロック離れた練習場から太鼓を運んで玄関脇に置いた。
二日前から瓜二つの太鼓が玄関入り口脇にあったので代わりに練習所に運んだ。
六歳のキャシーには大変な仕事だった。運び終えた時、人差指の皮がむけていた。


その夜遅く、山岡鉄二はリトル・イタリーのマルベリー通りにあるキャシーの家を訪ねた。

キャシーの父、サルバトーレ・アロイはNYマフィア5大ファミリーの一つ、ボナンノ・ファミリー副ボス(アンダーボス)だった。七十を過ぎたボス、ジョウ・マルセロに代わってファミリーを仕切っていた。
鉄二はアロイの命令で太鼓を取りに来た。
中には、メデジン・カルテ(コロンビア・メデジン市に本拠を置く麻薬組織)のコカインと交換したヘロインのサンプル、約一キロが入っていた。
イタリアではヘロイン、コカインとも、キロ5万$で売買されていた。米ではコカインが1万1千$、ヘロインが25万$もした。
ドラッグに関して、NY五大マフィアは上納金だけを取ってシチリアからの新参者にまかせていた。
しかし、このうまい話にNYで一番弱小のボナンノ・ファミリーが飛びついた。
 
メデジン・カルテのコカインを、ベネズエラ、エクアドル、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンを偽装用の積み出し地として使い、アフリカのナイジェリアを中継地としてローマ、パレルモ、カタニアまで船で運んだ。
ポルトガルの密輸ボートや入り江の多いスペインのガルシア海岸を出航した漁船団と公海上で落ち合い、荷の交換をすることもあった。

帰りの船でシチリアの盟友ディマッジョ・フアミリーが、アジア、中近東の阿片から精製したヘロインをベルギーのアントワープやオランダのロッテルダム、アムステルダム、英の港を経由してNYまで運ぶという仕組みだった。
なぜか英の港を経由する荷物は税関に疑惑を持たれなかった。
液化したヘロインをシチリア産のワインに混ぜる、トマトの缶に詰める、食肉の中に詰め込む、それらが主な運搬方法だった。
今回、アフリカの太鼓に詰めて運ぶ新しい方法をシチリアが考え出した。
鉄二は二日前に届いたそのサンプルを取りに来た。
この太鼓にはきな臭い噂があった。
アルカイナ(アルカイダの親戚テロ組織)が関わっているらしい、と。

それにしてもアルカイナだと、、もろ日本語じゃあないか、、
テロリストが五大ファミリーと仲良くお手手つないで何おっぱじめるつもりだ。




theme : 連載小説
genre : 小説・文学

dorock修

Author:dorock修
物語,音楽をとおして何かを共有できないか、心に入り込めないか探っている者です。
リンクのmuziedorock/junk musicをクリックしていただければ、junkな音が、

最近の記事
dorock 全作品一覧

全ての記事を表示する

CATEGORIES

MONTHLY

Ranking

ブログランキング・にほんブログ村へブログランキング

fc2
Track Back
Comment
Mail Form

名前:
メール:
件名:
本文:

you're welcome

k2

FC2ブログジャンキー

「アクセス数が全然伸びない…」そんな悩みをブログジャンキーが解決します!

RSS Link
QR
QRコード

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ