完:下ヒッチハイク. エピローグ

エピローグ
東京に着いたらどうしようか、ゲート前の待合室で悩んでいた。
もう部屋も行く所も無い。
そうだ!インドだ、光に会おう。
成田で飛行機を探すのは億劫だった。
移民官に頼んだ。
「東京ではなくインドにしてくれませんか。
どうせ運賃を払わされるんだからどこに出国しようが問題ないでしょう。
行き先ぐらい決めさせてください。
お願いします」
スチュワデスが隣のゲートから叫びながら走って来た。
「ドクターはいませんか!
ドクターは!
ドクターはいませんか!」
移民官が彼女に訊ねた。
「隣の12番ゲートから出る飛行機の中で!
お客様が!
心臓発作を起こして!」
12番ゲートへ行こうとした。
俺の左腕を移民官が強く掴んだ。
「どこへ行くんだ!」
「12番ゲートに行かせてくれ!
助けることができるかもしれない!」
「駄目だ!
もう搭乗時間だ!」
「頼むから!」
強引に彼の腕を振り払って12番ゲートに走った。
乗務員の制止を振り切って進んだ。
「医者だ!
通してくれ!」
男が二人、汗びっしょりになって人工呼吸をしていた。
一人が諦め顔で力なく俺に首を振った。
「眠っていると思って、、気づくのが遅かった。
もう停止して10分、近い」
60過ぎの恰幅のいい男の額に右手を置いた。
ミスターFを呼んだ。
「動いたぞ!!」
叫び声が上がった。
歓声と拍手が機内を揺るがしていた。
皆、俺を見ている。
男の子が、ひざまずいている俺の腕に飛び込んできた。
俺の胸でしゃくりあげた、しゃべりがたどたどしい。
「..おじちゃん..ありがとう..
お祖父ちゃんが死んじゃったら..
ぼく..独りぼっちになっちゃう..
パパ..も..ママも..遠くにいっちゃった....
.お祖父ちゃんがいないと..
ぼく..眠れない..
お祖父ちゃんの子守歌聞かないと..
ぼく..眠れないんだよ..
ミルクも..独りで飲めないんだ...
お祖父ちゃんが死んじゃったら..
..ぼく..お祖父ちゃんが.......」
涙を、何度も、何度も、手で拭ってやった。
甘そうに舐めている。
口に含むと甘酸っぱい、ミルクのにおいがした。
到着、予定時間から45分が過ぎた。
ボブ・レノンは、マーク・ボランと風耕二の姿を到着ロビーで探していた。
ノースウェスト・カウンター内の女性に、二人が搭乗していたか確認した。
「ミスター.マーク・ボランは心臓マヒを起こして病院に搬送されています。
病院名はわかりません。
ミスター、コージ・カゼは合衆国に入国できませんでした」
「強制送還か?」
「入国できなかったとしかわかっていません」
なんてことだ!
これじゃあ奴がどっちかわからないじゃないか。
病気持ちを相手にするんじゃなかった。
大佐の子はやっぱり大佐の子だ。
4時間後、アテネ経由のインド・ボンベイ行きの機内にいた。
エスコートしていた移民官が上と掛け合ってくれた。
さすがに荷物は間に合わなくて東京の知人の所に飛んでいった。
アテネの空港から光に電話をかけた。
「1週間以内に行くから」
「待ってた」
「こうなるのを知ってたような言い方だな」
「さすがに入れないとはかわいそうで言えなかった。
でも今回はおまえ自身のために必要だった」
「変な言い方だな。
はっきり言ってくれればこんな無駄しなくてよかったのに」
「必要だったんだ、耕二。
この世に無駄なことなんてないよ」
「、、、、俺、、パワーを持っているのかな?
今回、、、また、、、あってな、、続いた、、」
「疑うな、素直に受け入れろ。
あれからもう何年だ、、」
「もしだよ、、もしそうなら何かそっちで手伝わせてくれないかな。
いや、持ってなくても何か手伝わせてほしいんだ」
「その言葉、待ってたよ」
「ありがとう!
それはそうと、なんか昔と逆だな。
あのときはおまえが強制送還されて俺に電話してきたんだよな。
俺たち、昔とたいして変わってないな」
「変わってなかったのは、耕二!
おまえだけだ!」
夢にお袋が出てきた。
こんなに、若くて、綺麗だったんだ、
外が白んでいた。
看護婦に日付を聞いた。
翌朝になっていた。
風が死んで自分が生きている。
携帯を貸してください。
「風は別人だった、、
ちがった、、
彼は別人だったんだ、、、」
「マーク?
何をおろおろ泣いてんだ!
寝惚けたことを!
別人だろうが何だろうが奴は合衆国に入国できなかったんだ!
強制送還だ!
16時間も待たせやがって!
次はこんなへまをしないようにな!」
完
osamu
参考図書
『臨死体験 上下』立花隆著,文藝春秋
『死ぬ瞬間』E.キューブラ.ロス著 川口正吉訳 読売新聞社
『死後の事実』E.キューブラ.ロス著 伊東ちぐさ訳 日本教文社
『異端カタリ派と転生』原田武著 人文書院
『さらばKGB』ティエリ・ウォルトン著 吉田葉菜訳 時事通信社
東京に着いたらどうしようか、ゲート前の待合室で悩んでいた。
もう部屋も行く所も無い。
そうだ!インドだ、光に会おう。
成田で飛行機を探すのは億劫だった。
移民官に頼んだ。
「東京ではなくインドにしてくれませんか。
どうせ運賃を払わされるんだからどこに出国しようが問題ないでしょう。
行き先ぐらい決めさせてください。
お願いします」
スチュワデスが隣のゲートから叫びながら走って来た。
「ドクターはいませんか!
ドクターは!
ドクターはいませんか!」
移民官が彼女に訊ねた。
「隣の12番ゲートから出る飛行機の中で!
お客様が!
心臓発作を起こして!」
12番ゲートへ行こうとした。
俺の左腕を移民官が強く掴んだ。
「どこへ行くんだ!」
「12番ゲートに行かせてくれ!
助けることができるかもしれない!」
「駄目だ!
もう搭乗時間だ!」
「頼むから!」
強引に彼の腕を振り払って12番ゲートに走った。
乗務員の制止を振り切って進んだ。
「医者だ!
通してくれ!」
男が二人、汗びっしょりになって人工呼吸をしていた。
一人が諦め顔で力なく俺に首を振った。
「眠っていると思って、、気づくのが遅かった。
もう停止して10分、近い」
60過ぎの恰幅のいい男の額に右手を置いた。
ミスターFを呼んだ。
「動いたぞ!!」
叫び声が上がった。
歓声と拍手が機内を揺るがしていた。
皆、俺を見ている。
男の子が、ひざまずいている俺の腕に飛び込んできた。
俺の胸でしゃくりあげた、しゃべりがたどたどしい。
「..おじちゃん..ありがとう..
お祖父ちゃんが死んじゃったら..
ぼく..独りぼっちになっちゃう..
パパ..も..ママも..遠くにいっちゃった....
.お祖父ちゃんがいないと..
ぼく..眠れない..
お祖父ちゃんの子守歌聞かないと..
ぼく..眠れないんだよ..
ミルクも..独りで飲めないんだ...
お祖父ちゃんが死んじゃったら..
..ぼく..お祖父ちゃんが.......」
涙を、何度も、何度も、手で拭ってやった。
甘そうに舐めている。
口に含むと甘酸っぱい、ミルクのにおいがした。
到着、予定時間から45分が過ぎた。
ボブ・レノンは、マーク・ボランと風耕二の姿を到着ロビーで探していた。
ノースウェスト・カウンター内の女性に、二人が搭乗していたか確認した。
「ミスター.マーク・ボランは心臓マヒを起こして病院に搬送されています。
病院名はわかりません。
ミスター、コージ・カゼは合衆国に入国できませんでした」
「強制送還か?」
「入国できなかったとしかわかっていません」
なんてことだ!
これじゃあ奴がどっちかわからないじゃないか。
病気持ちを相手にするんじゃなかった。
大佐の子はやっぱり大佐の子だ。
4時間後、アテネ経由のインド・ボンベイ行きの機内にいた。
エスコートしていた移民官が上と掛け合ってくれた。
さすがに荷物は間に合わなくて東京の知人の所に飛んでいった。
アテネの空港から光に電話をかけた。
「1週間以内に行くから」
「待ってた」
「こうなるのを知ってたような言い方だな」
「さすがに入れないとはかわいそうで言えなかった。
でも今回はおまえ自身のために必要だった」
「変な言い方だな。
はっきり言ってくれればこんな無駄しなくてよかったのに」
「必要だったんだ、耕二。
この世に無駄なことなんてないよ」
「、、、、俺、、パワーを持っているのかな?
今回、、、また、、、あってな、、続いた、、」
「疑うな、素直に受け入れろ。
あれからもう何年だ、、」
「もしだよ、、もしそうなら何かそっちで手伝わせてくれないかな。
いや、持ってなくても何か手伝わせてほしいんだ」
「その言葉、待ってたよ」
「ありがとう!
それはそうと、なんか昔と逆だな。
あのときはおまえが強制送還されて俺に電話してきたんだよな。
俺たち、昔とたいして変わってないな」
「変わってなかったのは、耕二!
おまえだけだ!」
夢にお袋が出てきた。
こんなに、若くて、綺麗だったんだ、
外が白んでいた。
看護婦に日付を聞いた。
翌朝になっていた。
風が死んで自分が生きている。
携帯を貸してください。
「風は別人だった、、
ちがった、、
彼は別人だったんだ、、、」
「マーク?
何をおろおろ泣いてんだ!
寝惚けたことを!
別人だろうが何だろうが奴は合衆国に入国できなかったんだ!
強制送還だ!
16時間も待たせやがって!
次はこんなへまをしないようにな!」
完
osamu
参考図書
『臨死体験 上下』立花隆著,文藝春秋
『死ぬ瞬間』E.キューブラ.ロス著 川口正吉訳 読売新聞社
『死後の事実』E.キューブラ.ロス著 伊東ちぐさ訳 日本教文社
『異端カタリ派と転生』原田武著 人文書院
『さらばKGB』ティエリ・ウォルトン著 吉田葉菜訳 時事通信社
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