11:偽威議員 DV ダメステック・バイオレンスこのエントリをはてなブックマークに登録

11:DV(ダメステック・バイオレンス)


「小安サチさんに面会したいのですが」
即座に返答が来た。
「その名前の患者様は当サナトリウムにはいません」
「旧姓の倉本サチではどうでしょうか?」
「そういう名前の患者様も当サナトリウムには、、」
相当、切実な顔をしていたにちがいない。
「どちら様でしょうか?」
「母の遠縁に当たります。
カルフォルニアに住んでいます。
お袋に入院しているとは聞いていたのですが、
なかなか時間を作れなくて。
今回、仕事のついでに寄ることが出来ました」。
「待っていただけますか?」

奥に消えた。
別の女性が出てきた。
「倉本サチ様は面会を許可されていません」
「一目だけでも、、。
ドアの隙間からでも、、
お願いできませんか」
「申し訳ございませんが出来かねます」
「そんなに悪いのでしょうか?」
「申し訳ございませんが、」

どうしたらいい、何か手はないのか、、
この建物にサチがいる、、手が届くところに、

F市内のホテルからサナトリウムに通った。
今日で7日目だ。
12年の長さを思えば、
おなじ建物にいるというだけで心が落ち着いた。
あれだけ気にかけていた身だしなみに無頓着になった。
受付の女性達が俺の変りようにびっくりした。
心配そうにコーヒを持って来てくれた。
あなた大丈夫?
毎日、10時から4時まで何をするでもなくソファに座っている男が大丈夫のはずがない。
でも、幸せだった。
ここから動く気はなかった。

サチのお母さんらしき人が通った。
最後に会ったのは12年前か、、、
確信がもてない、、多分そうだ。
俺に一瞥も投げなかった。
髭面では分らないか。
サチの親父とは馬が合わなかった。
彼女とはよく話をした。

3時前、彼女が玄関に向かって歩いていた。
走っていた。

「サチのお母さん?」
「どなた、、、、、」
「武蔵です」
「赤城君?」
「はい、サチの容態は?」
「まだサチのこと気に掛けてくれてたの、、」
「どうなのでしょうか?」
「、、コーヒーでも飲みましょうか?」


「何から話したらいいのかしら。
あなたが向こうに行って、サチ変ったわ。
苦しかったのでしょうね」
「、、、」
「あなた、子どもは?」
「いえ、」
「一人なの?」
「はい」
「サチはあなたがいなくなって4年後だったかしら、
結婚した。
知っていたの?」
「大和から聞きました」
「加賀君ね。
懐かしいわね。
あなた達3人仲が良かったものね。
代議士になったわね」
「はい。ここにいると、大和から聞きました」
「そう、、私、後悔しているのよ、サチの結婚。
もう取り返しがつかないけどあなたと一緒になっていたら、、」
「サチに謝りたい。
若かったです、、」
「穣二さんに撲られ、蹴られていたの」
「穣二に、、、」
「早く気づけばよかった。
あの子が苦しんでいたなんて、」
「悪いのでしょうか?」
「反応してくれない、何を言っても。
先生の話だと、人間は強烈な体験をすると、
その時のさまざまな記憶を押さえ込もう、
封じ込めようとするらしい。
感覚、情緒、感情、考え、思考の記憶、、
それらは時間に関係なく心に巣食っているらしい。
離婚してから環境が変ったので出てきたのだろう、
と言っていた。
「体の方は?」
「大丈夫。
火傷と痣はあるけど」
「火傷、、、ですか、、、」
「あなたがプレゼントしたハートのマークのペンダント、
覚えている?
あなたとサチの名前が入った?」
「はい」
「枕の中に入っていたわよ。
まだあなたのことを忘れられないのね」
「そうですか、、、」
「あなたの名前、武になっている」
「、、」
「下の蔵が欠けていたわ」
「、、、、、」
「その髪と髭面どうしたの、浮浪者、見たいよ」
「今日は何日ですか、9日ですか。
一週間、何もしていません」
「一週間?
あなた、ずっとここに?」
「断られて、、通っていました。
サチに会わないで帰れません」
「まだサチを好きなの?」
「忘れたことはありません。
サチと一緒になりたかった。
でも、何もしていないのに家裁なんて、、」
「あの教師、偉くなった。
市の教育関係の仕事している。
あなたに謝らないといけない。
主人が奔走して先生の訴えを取り下げたことになっているけど、
実際は小安代議士がやってくれた」
「どういうことです」
「赤城君、ごめんなさい。
サチと別れる条件は向こうから言い出してきたの」
「向こうから、、小安代議士
じゃあ、サチの結婚は、、」




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genre : 小説・文学

下:10キャラメル チャイニーズ ギャングこのエントリをはてなブックマークに登録

キャラメル超特急
Sweet Candy Express

10:チャイニーズ・ギャング


リーはユニオン・スクウェアで地下鉄、レキシントンアベニュー線に乗って42丁で降りた。
クランドセントラル駅一階のコンコースを通って、パークアベニュー、45丁に通じるエスカレーター下のコインロッカーに向かった。

ロッカー番号、44を開け、報酬のコカイン10g入りの紙包みを取った。
代わりに黒のショルダーバッグを入れて鍵をかけた。
指定される場所の、コインロッカーの複製された鍵は、前日か前々日、レジナルドの郵便受に届けられた。
リーは次の中継者の顔を見ることなく仕事を終えることができた。
ハドソン通りの自分の部屋を知られたくなかったので連絡場所はレジナルドのコンドを利用した。
月二回の運び屋の仕事は、レジナルドがNYに来ない週に当たっていたので好都合だった。

早く部屋に戻ってフリーベースをやろう。 


リーが44番のコインロッカーにバッグを入れたのを確認した。
その後、ベンチに座って見張っていた。
44番がある側のロッカーは壁に隠れて見えなかったが、
取り出す人間を真横から見ることができた。
リーが去って2時間後の午後7時過ぎ、
東洋系の顔をした30前後のスーツ姿の男が44番辺りのコインロッカー前に立った。
周りを気にもせず、黒ショルダーバッグを少し大きめのバッフルバッグに素早く落とした。
急ぎ足で42二丁に出ると、タクシーを拾ってダウンタウンに向かった。
男はキャナル通りで降りると、モットー通りの脇道に入ってビルに消えた。
ビル正面の看板に安良工商とあった。

909の部屋は暗かった。
盗聴テープを巻き戻した。
少し上擦ったリーの声がした。
「リュウ、あの女の名前を教えてくれよ」
「運びは上手く行ったのか」
「もちろんさ。
彼女、話しかけても知らんぷりだ。
頼むよ。
名前だけでいいから」
「しようがないな、名前だけだぞ。
斉燕(エミー・チーイェン)だ」
「ありがとう。
木曜は彼女じゃないよな」
「いいこと教えてやるよ。
彼女は臨時で三月に一回だ。
忠告だが、彼女のお祖父さんはチャイナタウンを仕切ってる恐いボスだ。
彼女には近寄らないほうがいい」
「ボスの孫がなんで運びなんか?」
「リー、あの女は忘れたほうがいいぞ」

その後、男の声が入っていた。
「リー?レジーだ。
金曜に行こうと思ったが、合衆国側の都合で木曜のパーティが流れた。
変更して木曜遅くそっちに行く。
真夜中、近くになるかな。
適当に食べもの仕入れといてくれ」


「今のはレシナルドだろう。
木曜日に来るってことはリーの運ぶ日と重なる。
アラン、面白くなってきたな。
「まず今日のことを整理しようか」
「その前に、情報屋に斉燕(エミー・チーイェン)の祖父、リュウ、安良工商、
ついでにチャイナタウンのボスのことを聞いて来ないか。
さっぱり背景が分からん」
「電話してくるよ」 

アランは向かいの軽食堂からラッキーワンに電話した。
「アランか、何だ今度は」
「NYチャイナ・タウンの情報はそっちで手に入るのか」
「入らんこともないが。
まだNYにいるのか?」
「残念ながら、そうだ」
「直に聞いたほうがいいだろう。
NYの情報屋に連絡してみるから10分後に電話くれ」
「助かるな。頼む」


「彼の名はラッキーエイト。
一応、携帯番号あげとく。
×××××××」
「ありがとう。
で、彼にはどのくらい話したらいい?
信用できるかな」
「話した分だけ情報が手に入るのを請け合う」
「金はどのくらい払ったらいい?」
「アラン、この世界はお互い様だ。
こっちも彼に情報をやる。
何もいらんよ。
電話ですましてもいいし、何処かで会うならその勘定を持つぐらいか。
そこの番号をくれ。
エイトが5分後にかける。
そこにいろよ」
「ありがとう。
ラッキーワンにラッキーエイト。
しけた名前だな」
「余計なお世話だ」


「ワンから聞いたが、何を知りたい」
「チャイナタウン内部のことを少し」
「そこは公衆電話か?」
「そうだ」
「チャイナタウンの何が知りたい?」
「安良工商、斉燕、リュウ、これらの名前とコカインの関連を知りたい」
「ほお、どうやって調べた。
カナダから来たばっかだろう」 

アランはリーの名前を伏せて、今日、見たことを彼に告げた。

「面白いのを見たな。
分かり易く説明しようか。
リュウの父親は福建青年ギャングのボス童恩正(トニー・トンエンチョン)だ。
今一番勢いがある。
斉燕の祖父は、チャイナタウン・三大ギャングの一つ安良堂のゴッドファーザーだ。
名前は陸家駿(ルーリャチュン)。
安良工商はその会社組織だと思ってくれ。
安良堂も含めて元からある三大キャングは新興の福建青年ギャングをよく思っていない」
「三大ギャングの名を教えてくれ」
「安良堂、協勝堂、洪門堂だ」
「チャイニーズの名前は覚えづらいな。
頭がおかしくなってきたよ」
「後で整理しな、いいか続けるぞ。
リュウの父親、童恩正(トニー・トンエンチョンは裏で斉燕の祖父にコカインを貢いで安全と何かのときの後ろ楯を買ってる」
「なぜそんなボスの孫が運び屋を?」
「身内、友達を使ってるとは聞いてたが孫娘まで出てくるとはな。
俺も今初めて知ったよ。
それまでして二人の関係を隠したい。
孫娘まで使うってことは、ゴッドファーザーにそれだけ信用できる部下がいないってことだ。
リュウの父親は、、」
「待ってくれ、、童恩正(トニー・トンエンチョン)のことだな?」
「そうだ。
ニュージャージー、ブルックリン、
クィーンズにチャイナタウンを作ろうとしているがこれは表向きの話で、
密かにオールドチャイナタウン内の物件を手に入れている。
安良堂のボスの助けでな。
いずれ二人はチャイナタウンを支配するつもりでいる。
今それを身内と他の二大ギャングに知れたら安良堂は内部分裂を起して崩壊するだろうな。
今のチャイナタウンは戦国時代だ」
「敵対するギャングは気づいてないのか」
「協商堂、これも三大ギャングの一つだが、系列のギャングに飛龍ってのがある。
その一派が知ってる。
飛龍の内部でまだ弱小のギャング団だ。
そのボスは好機を狙ってる。
売り込んで自分がでかくなるな」
「込み入ってるな。
その、何だった?
安良堂と福建のボスが将来チャイナタウンを支配する可能性は?」
「初めの頃は月2Kのコカインが今は3倍に増えてる。
分かるか。
欲を掻くとすべて水の泡ってことだ」




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下:11キャラメル パラディウムこのエントリをはてなブックマークに登録

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12:パラディウム


「アラン、込み入ってるな。
レジナルドに専念するか。
チャイニーズギャング、危ないぞ。
忘れよう。
レジナルドの体にコカインぶち込んで早いとこ引き上げようぜ」
「利用できないかな、、」

リーの声が盗聴器から流れた。
「リュウ、木曜の仕事、外してくれないかな。
急な用事ができた」
「お前やるって言ったばかりじゃないか。
今更なんだ!
もう手配した。
変更はできないぞ!」
「どうしても!」
「駄目だ。
どうしてもと言うならもう頼まないよ!」
「分かった!やるよ!やるから!」
「水曜午後、ロッカーの鍵を届ける。
木曜朝いつものように場所を指定する」
「待ち合わせ時間はいつものとおりの4時でいいんだな?」
「それは変更ない」


それから二日間、リーの運び屋の件をレジナルド追い落としに利用できないか、俺たちは考えていた。
その間、909の部屋にリーは現れなかった。
運びの連絡とフリーベースをやる時だけレジナルドの部屋を利用しているようだ。

妙案が浮かばないまま三日の夜になった。
午後10時前、アランはカルロスに電話するため外出した。

14丁、ユニオン・スクウェア先のアーヴィングプレースと3アベニューの間に、コン・エジソンという電力会社ビルがある。
その前にパラディウムとかいう名のコンサート会場があってその2階にビリヤード場があるらしい。
そこで明日夜8時、東側にあるトイレの中。
相手の名はチキート。
マイケル・ジョーダンのロゴが入った黒の帽子、胸にノモ(野茂)のロゴが入ったメッツのTシャツ。
それが目印だ。
ノモってのが何を意味するのか分からん。
相手にはお前の人相を教えてある。
NYのコカイン相場を知らんが、2万$で3k用意しとくらしい。
ここでは破格の値段だ。
明日、午後7時に俺の携帯に電話くれ。
変更があったら向こうから電話が来る」
「カルロス、ありがとう。
ノモは日本から来たピッチャーだよ」
「大リーガーに日本人がいるのか?」
「彼がパイオニアさ」 


4日、午後6時過ぎ、俺たちは指定されたビリヤード場へ向かった。
広いスペースに30以上の台が見えた。
壁にプロの勝負師たちの大きな顔写真が10数枚掲げてあった。
閑散としていたが、一見してプロと分かる数人が六つの台で勝負をしていた。
張りつめた空気に覆われていた。

プールをして時間を潰した。
アランが7時にカルロスに電話をかけて変更がないのを確認した。
その頃から、スキンヘッドの若者がビリヤード場に入ってきた。
酒瓶を手に騒いでプールをやっている。
プロレスラー並の体格をした管理人が数組を追い出した。

8時10分前、教えられた格好をした30前後の男が現れた。
ジョーダンの帽子は合っていたが、皮ジャンから見えるTシャッの胸のロゴが《イチロー》になっていた。

「耕三、見えるか?
ロゴが違う!
イチローになっている。
バッグも何も持ってない。
3kだぞ。
おかしくないか」
「ここで待ってろ。
俺がトイレへ行く」
「カルロスは俺の人相を相手に教えた。
俺じゃなきゃあ駄目だ。
それに《Wild  World》の歌が聞こえてこないから大丈夫 だ。
ここで待っててくれ」
「まだ危険を教えてくれるのか?」
「そのはずだ」 

トイレのドアノブに手をかけてまごついた。
鍵かかかっている。
ジョーダンの帽子、イチローのTシャツ姿の男が、後からアランの肩を2回やさしく叩いた。
鍵を振った。
手ぶらの男に続いてトイレに入った。
男は大用のドアに消えた。

どうなってんだ。
小用便器前で数十秒が過ぎた。
8時を回っていた。
キューケースを右手に持った男がトイレへ入ってきた。
俺達が来た時から賭け勝負をしていた50過ぎのプロだ。
トイレドアの鍵を内側からかけた

「チキート!」 
水の流れる音がして大用のドアが開き、先程の男が出てきた。
プロからキューケースを受け取った。
緑茶の葉っぱが喉にひっかかったような声で言った。
「お前がアランか。
すべてこの中に入ってる。
持ってきな」
「まいったな。
どうなってのか、おかしくなるとこだった。
金はこのポーチの中に入ってる」
[カルロスは元気か。
お前はあいつのダチ公だってな」
「兄貴だよ。
元気だよ。
今回はありがとう」
「外には狂ったのばっかいるから帰り気をつけな。
マリリン・マンソンとかいうネオナチ、スキンヘッドのお抱えバンドのコンサートが真夜中ある。
コカイン持っていると知ったら追っかけてくるぞ。
前もって分ってたら場所変えるんだった」

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12:偽威議員 サチと武蔵このエントリをはてなブックマークに登録

12:サチと武蔵


「家裁送りは必至の状況だった。
先生と8人の生徒が見ていた。
あなたがナイフを持ってなぞっていた、って」
「信じていただけないでしょうが、違います!
何もやっていないのです。
俺も大和も。
彼等がぐるになってでっち上げたのです」
「サチは主人に頼んでいたわ。
あなた達は、、ごめんなさい、、
評判がいい方ではなかった。
誰もが先生と穣二さん達の言っていることを信じた。
主人も私も、」
「何もやっていないのだけは信じてください」
「主人は先生に会って確認したわ。
ナイフの刃を出してなぞっては、、と主人が言った」
「ナイフの刃出してなぞった、、!
嘘です!
丸っきりの嘘です。
ひどいことを」
「主人は弁護士にも相談した。
あなた達には不利な状況で何も出来なかったの。
私達とサチの間はおかしくなったわ。
ごめんなさいね。
サチがあなた達を弁護するので叱った。
もう自分でやるから頼まない、、ってひどく怒ったわ。
あなた達が日本を出た後、聞いたの。
なぜ先生は訴えを取り下げの?
サチ、小安代議士よ、、って言った」
「サチが、、小安に、、頼んだのですか、
結婚は、、俺達のために、、、、」


「サチ、困ってるようだな。
武蔵、刑事事件になる」
「武蔵も大和も何もやってないのになぜあなた達は陥れようとしているの」
「見たんだよ、サチ。
武蔵がなぞっているのを。
先生、大声上げて助けを呼んでいた。
間一髪だったんだ。
俺達、皆見たんだよ」
「嘘よ!
彼は短気だけど、そんなことをやれる人ではないわ。
なぜ本当のことを言ってくれないの?
彼らが嫌いだから?
武蔵の祖先が朝鮮系だからなの、大和の肌が黒いからなの。
ただ、それだけの理由でこんなことやっているの?」
「違う。
嫌ってなんかいない。
それは、、喧嘩はしてるさ。
あいつら生意気で番町面しているからだ。友達は何度も撲られているし、
先祖だの肌の黒いのなんて関係ない」
「本当のことを言ってよ、お願い!
助けて!
お願い!
あなたの言うこと皆聞くのでしょう?
穣二、お願いよ!
二人を助けて!」
「親父に頼んでみてもいい」
「本当!」
「条件がある」
「条件?」
「武蔵と別れろ。
俺と一緒になろう。
そうしたら考える」
「あなた、どういうつもり?」
「どうもこうもない。
武蔵と金輪際付き合わない。
俺と一緒になる、と約束したら親父に頼んでやってもいい。
無罪放免は保障できないが、、先生に嘘を言ってくれるように頼んでもらう」



「あなたが居なくなって、サチ、ひどく変ったわ。
穣二さんと付き合い始めた。
楽しそうではなかった。
別れた後、サチに連絡したの?」
「いえ、、」
「そう」
「彼と付き合っていたけど、あなたのことが忘れられなかったようよ。
体調が悪くて寝込んでいる時、寝言であなたの名前を何度か聞いた」
「、、、、」
「サチから連絡はなかったの?」
「ありませんでした」

母親が財布から小さな紙切れを取り出した。

「この番号、もしかして、、赤城君の?
408−986−1666」
「、、、、サンタクララの部屋のです」
「サチの財布に入っていた」
「、、、、、」
「結婚前、サチの部屋を掃除すると、壁に掛けてあった、
その月のカレンダーの後ろの右隅に電話番号が書いてあった。
毎月、おなじ番号。
今でも覚えている。
415−772−3324」
「、、、、、、、、」
「これも赤城君の、、」
「、、、、、はい、、サンフランシスコの、、
日本出てそこに」
「そう、、、サチはあなたに連絡したかったのね、、、」

やっぱりサチだったんだ、、、、
無言の電話は、、、



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genre : 小説・文学

13:偽威議員 やけどこのエントリをはてなブックマークに登録

13:やけど


「主人はもう何年になるかしら、5年近く話していない。
私とも余り会話がない。
主人、県会議員になって今では実力者よ。
サチ、私達を赦していない。
29なのに今でも大人が汚く見えるのね。
あなた達がいなくなって独りになってしまった。
赤城君、会いたいでしょうね。
先生に聞いてみる。
一緒に来ない、あなた、話を聞きたいでしょう」


「赤城さん、今、面会許可できません。
お母様から昔,お付き合いしていたと伺いました」
「はい、一緒になろうと約束しました」
「今でも相当気になさっています。
鏡を見ようとしません。
もう殆ど創痕は目立たなくなるまでになったのですが、最初のイメージを拭い取れないようです」
「ひどかったのでしょうか?」
「2度と3度の間でやや深めでした。
一部、水疱の下に死んだ皮膚の白っぽい痂皮(かさぶた)ができていました。
右耳と鼻の真中辺りに1cmほど残っています。
皮膚欠損部は改善されました。
当初、運動障害を懸念したのですが今では問題ありません。
彼女はそう捉えていないようです。
まだ違和感があるのでしょう。
残っている創痕は時間の経過とともに殆ど見分けがつかなくなります。
火傷は、誰もが当初びっくりします。
特に女性は、顔の場合はなおさらです」
「原因は?」
「熱湯です。
組織の破壊は70度の場合、1秒で始まります。
彼女の場合はそれ以上の熱が数秒かかったものと思われます。
受傷直後の応急処置がもう少し早ければ感染を起こすこともなかったのですが」
「会えませんか」
「ここに来て一年近くになりますが、
ご自分の顔を見ていません。
火傷した時の顔しか知りません。
もう少し、時間を下さい。
私がそれとなく聞いてみます」
「一年も、、」


「大和、どこだ」
「赤坂の議員宿舎だ。
来いよ」
「日本にいるの知ってたか?」
「部屋に電話してもいないからな。
サチのとこだろう。
どうだった?」
「会えなかった」


「俺達のために結婚を?」
「多分な」
「穣二の野朗、赦せんな」
「あいつに振り回された、この十数年」
「会えないというのは火傷ひどかったのか?」
「頬に痕が残っているそうだ。
いずれ皮膚と見分けがつかなくなるくらいに回復するらしい」
「本当の理由は?
穣二がまだ、?」
「イメージだと」
「火傷のか」
「顔だからな、この一年、自分の顔を見ていないそうだ」
「火傷したのは一年も前か、、代議士の話があって俺が日本に来た頃か」
「そうか、、その頃から無言の電話がかかって来なくなった」
「無言の電話を、?」
「あいつ、俺の電話番号知ってたよ。
シスコとサンタクララの」
「堪らんな、おまえ達、遠回りしたな。
火傷の原因は?」
「お湯だ。
70以上のお湯が数秒かかったそうだ」
「穣二か?」
「知らん」
「サチ、結婚して何年だ、、5,6年か。
よく我慢したな」
「穣二の野朗、仕組んだんだ。
サチと結婚するためにな。
糞教師、サチの親父、偉くなったそうだ。
大和、殺すか」

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下:12キャラメル スキンヘッドこのエントリをはてなブックマークに登録

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12:スキンヘッド


3kのコカインだ。
一刻も早くビィレッヂ・ポイントの部屋へ戻りたかった。

ドア向こうの階段は、鉤十字の刺繍、イラストの入った黒ジャンバー、チョツキを素肌の上に着た、体、腕、顔に刺青をしたスキンヘッド、ネオナチの単細胞達で溢れていた。

管理人に他の出口を聞いた。
あそこしかねぇよ。

チキートが俺たちを見てやって来た。
「どうした?」
「足の踏み場もないぐらい座ってる」 

チキートが管理人に声をかけた。
「ホセ、西の出口はどうなってんだ?」
「マリリン・マンソンのコンサートの時は西の出口は東よりひでぇんで閉めてる」
「聞いたとおりだ。
蹴散らして降りろ。
ユニオン・スクウェアはここ以上に奴らが群れてるから東に向かえ。
キューケースしっかり持ってろよ。
奴ら何やるか分からんからな」

「チーノ(中国人)チーノ」嘲り笑う奴、
不機嫌な顔で睨む奴、へらへら笑っている奴、
もしジーパンを踏んづけようもんなら殺してやるって顔をした奴、それら単細胞の獣の中を目を合わせないようにして降りた。

通りはそれ以上にひどかった。
エボラウイルスに冒されたゾンビが数百人群れていた。
憎悪の目を意識しながら、寝た子を起さないよう気をつけて東に向かった。
タクシーを探したがなかなか来ない。
彼らも避けているのだ。

1アベニューまで来て、奴らがまばらになった。
ほっとした。
その虚を突かれた。
後ろから全速力で走ってきたスキンヘッドが、アランが持っていたキューケースをひったくった。
東に向かって駆けていった。
泥棒はアベニューAを右に曲がってダウンタウンに向かった。

通行人が多い。
みんな何事かと立ち止まって見ている。
ポリスが近くにいるかもしれない、諦めた方が賢明だ。
何度かアランに声をかけた。
15m先だ、届かなかった。

泥棒とアランがトンプキンス公園に消えた。

二人がもみあっていた。
上にまたがって、アランがスキンヘッドを殴っていた。
右足首、革のベルトからナイフを抜き取ろうと手を伸ばしてもがいている。
俺はナイフを奪って右太股に突き刺した。
叫び声が響いた。
人が走ってくる。

アベニューBをダウンタウンに向かって走った。
ここまで1k近く全速力で走っていた。
もう俺に余力は残っていなかった。

4丁で右に曲がって西に向かった。
20mほど行った所で前後を挟まれているのに気づいた。
スキンヘッドだ。
後に3人、前に3人。
前の二人は手にチェーンを持っている。

どうしようもなかった。
もう既にくたくただ。

「アラン、取り引きしよう。
コカイン奴らにやろう」
「おかしいな。
《Wild World》の歌が聞こえなかった」
「“Wild World”何言ってる!
のんびりとこんな時に」
「あいつら仲間がやられるのを見てたんだな。
コカインやっても見逃さないぞ?」
「どうする気だ。
馬鹿達と殺し合うか?」
「奴らは本気だ。
俺たちもそのつもりでいないとやられる。
隙があったら逃げよう。
俺は4人片づけるから、耕三は二人頼む。
あれから空手と合気道を覚えたんだろう」
「心強いこと言ってくれるよな。
お前は喧嘩慣れしてるからいいが俺は初心者だぞ。
二人も、か、、自信ないな。
息が落ち着くまで数分、時間を稼ぐ。
俺が話す。
ちょっと相手を付け上がらせるぞ」
「クールだな、耕三。
惚れ惚れするよ」 

この3年、習っている空手と合気道の成果をいつか試してみたいと思っていた。
しかし、この状況ではやばい。

喧嘩慣れしているアランの野朗は落ち着いたものだ。
奴らの着ているジーンズ、チョッキ、ジャンバーの膨れ具合をチェックしている。
「耕三、前の3人の内、両端を頼む。
右端は右ベルトの所に何か隠してるぞ。
気をつけてな」
 
前後5m程の距離で向かい合った。
リーダ格の木綿豆腐のような肌をした、やけに鼻の下の長いのが爪楊枝を口にくわえたまま毒突いた。
「パンク!
仲間をやってくれたじゃねえか!
薄汚ねえユダ公とイエロードッグが!
「お前、木枯し紋次郎、知ってるのか」
「何言ってんだ!
お前は!
コガラシ、、モン、ン、、」
「やっぱり知らないか。
その爪楊枝、真似じゃなかったの?
ジャパンじゃあかっこいいヒーローだ。
お前みたいに爪楊枝、口にくわえてさ」
「何言ってんだ!
てめえは!
よくも仲間を痛めつけてくれたな」
「木綿豆腐知ってるか?
モーメンドーフ。
ダイヤより固いのさ。
お前の肌よりはましだ。
ひどいでこぼこがあるけどな」
「何をこの野郎!!」 

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genre : 小説・文学

14:偽威議員 リストカットこのエントリをはてなブックマークに登録

14:リストカット


「加賀君!
赤城君そこにいるの!」
「どちら様で?」
「サチの母親!
サチが自殺未遂を!」


「あなた方、血液は!」
「Aです」
「輸血の血が足りません!
お願いできますか」


「また君達か!」
「あなた、何を言うの!」
「君達がいると何かが起こる」
「輸血して下さったのに何を言うの!」
「、、、」


「先生、どうなのです?」
「間に合いました。
お休みになっています。
左静脈、手動脈の一部が切れてました」
「自殺を?」
「分りません」
「リストカットですか?」
「現時点では分りません。
私が昨日、話したことと関係があるかもしれません。
赤城さん、あなたの来訪のことを夕方、話しました。
動揺した様子は見られなかったのですが、、」
「やはり君だ!
赤城君、加賀君、ここから出て行て行ってくれ!
災いなんだ、君達は!
出て行け!」
「あなた!
赤城君、加賀君、ここにいて、お願い!
あなた!
いい加減にして!
あなたが出て行って!」
「何だと!」
「悪いのは私達よ!
サチのことを本当に思っていた、
サチの結婚も、、
リストカットしていたなんて、
あんなに、苦しんでいたのに、、、
何も知らなかった!
あなた、出て行って、よく考えて!
出て行ってよ!」
「何を!!」


「すいません、先生、、、」
「断定はできませんが、自殺をしようとしたのではなく手首に刃を当てている時に何かの拍子に転んだのではないかと。
左手の肘、肩、腰に打撲の跡がありました。
動脈は皮膚下6、7mmにあります。
手首を切り落とすぐらいの覚悟で切りつけなければ死ねません。
それほど人肉は柔らかくありません。
それに、鋭利でなければ、、
錆びついたカッターの刃でした。
散歩で拾っておいたのでしょうか」


「リストカットをしていたのですか?」
「知らなかった、親なのに、入院するまで。
、、情けないわ。
私達、サチのこと何も知らなかったの。
親として失格よ。
電話では余り話さなかった。
穣二さんは、いつも元気だと、、」
「お母さん、12年前、武蔵も俺も教師に何もやっていません。
サチは俺達のために穣二と結婚した。
俺は過去のことだと割り切れました。
でも、武蔵とサチのことは我慢できません。
あれだけ愛し合っていたのに、、堪りません。
火傷は穣二でしょう。
訴えないのですか?」
「、、、、、、、」
「大和、、いいよ。
今言うなよ」
「言わしてくれ。
これはお前も知らない。
小学校の時、俺はサチに会った。
転校ばかりしていました。
黒い肌が原因です。
サチと同じ小学校に約半年、通った。
サチだけでした、友達は。
いじめられているのを助けてくれました、お姉さんのようだった。
月、2回、ファニーに、、家のお袋です、、、英語を教わっていました。
本当に正義感の強い、たくましい女の子でした。
そんな子を、、ここまで、、」

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

John Lennonこのエントリをはてなブックマークに登録

ジョン レノン


レノンが死んだ!

窓越しにトンプキンス公園を眺めていた。
真夜中過ぎ、通りは人で溢れていった。
誰もが最後の会話をしていた、歌っていた。
通りは、レノンの曲で埋まっていった。

地下鉄を降りた。

太陽が死語に思えるほど程、天が演出した100%曇天だ。
こんな日に、太陽は姿を現わせない。
学校にも、会社にも、、行きたくない、、何もしたくない、
そんな天気だ。
時間はもういない。

通りは、老若男女、あらゆる階層の人間で溢れていた。
セントラルパーク内の追悼式場に向かって歩いている。
すれ違う人の姿はない。
会場をめざす人の帯だけが水のように流れていた。
一様に親しい人を亡くした沈痛な面持ちだ。

公園の空気は寒々しかった。
それは、致命傷を負って地面に横たわり、やがて訪れるであろう死を待つリスの心情に似てひどく重かった。
これだけの人が歩いているのに、落ち葉を踏む音と人の動く音しか聞こえない。
時折、こだまする場違いな車のクラクションが異次元の音に聞こえる。

会場ではレノンの曲がかかっていた。
ステージには長髪のレノンが無表情で椅子に座っていた。
こうなるのを知っていたかのようだ。

暴力に縁のない人間が、いとも簡単に消滅した現実に、
すべてが、か弱く、不安定に揺らいでいる。
前に立っている女性の肩が小刻みに震えていた。
吐き出される白い息だけが寒そうだ。
感覚などなかった。
皆、自分のレノンと別れの会話をしていた。
身動きできない状態で立っていながら誰もが独りぼっちだった。
お互いどんな顔をしているのか分かっていた。
顔を合わせたくなかった。

レノンは死んだ。

theme : エッセイ
genre : 小説・文学

15:偽威議員 再生このエントリをはてなブックマークに登録

15:再生


4時前だ。
大和はソファで寝ている。
サチのいる治療室に向かった。
誰にも見られないように入った。

眠っていた。
サチだ。
か細い、
壊れそうなサチだ。
初めて会った頃のサチだ。

家が近かった。
護った、大きな大人、自転車、車、みんなから護った。
壊れそうだった。
よく怒った、
独りで大丈夫、
あっちに行って。
心配だった。
引っ越した後もよく見にいった。
いつの間にか、受け入れてくれていた。

川遊びをして遊んだ。
サチは竿を持っていた。
その先に箱が付いていた。
中に俺が捕ったセミが入っていた。


桜の木でセミが鳴いた。
4mもあった。
サチがせがんだ。
4歳の餓鬼には無理な高さだ。
サチが登ろうとしたので体をつかんだ。

僕が行くよ。

セミは捕まえた。
下りる時、2mの所で足が滑った。
サチの声が響いた。
落ちる!
サチめがけて落ちていった。
目をつぶって手を広げている。
抱き合ってクサムラに転がった。
顔を見合わせて大声で笑った。
雑草とサチの背負っていたバッグがクッションになってくれた。


中州に向かっていた。
深みにはまって足をすくわれた。
何とか抜け出せた
サチは溺れかけていた。
「サチ、竿だ!
竿から手を離せよ!
離して泳げ!」
「嫌よ!
セミが死んぢゃう!」
「駄目だよ!
離せって!
溺れるだろう!」
「嫌よ!
離さない!」

飛び込んだ。
サチの手に届いた。
握りしめた。
流された。
もう駄目だ、、
サチにしがみついて観念した。
セミの箱が岩に引っかかった。
引っ張られた。
足が地に着いていた。
セミの箱は流されていった。

サチ、あの時、一緒に死んでいたらな、、、
「武蔵、、、」
サチ、竿離さないからだ、、、
「武蔵、、」
セミ助けて命を落としたかも分らなかったのに、、
でも、、あのセミ、助けてくれたんだね、、
代わりに、、
「武蔵、、武蔵、、、武蔵、、」
「サチ、、、、」
「私,、死んだの、」
「、、何を言うんだ。
俺がいるじゃないか。
死なせないよ」
「助けに来てくれたの、、」
「、、、、」
「やっぱり来てくれたのね」
「ごめんよ、、何も出来なくて、」
「、、会いたかった、、、」
「ごめんよ、、サチ、」
「顔、、見ないで、」
「何を言うんだ。
綺麗だよ。
サチ、すごく綺麗だ。
何を気にしているんだ、こんなに綺麗なのに」
「、、、、」
「もう大丈夫だ。
サチの中に俺と大和の血を一杯入れた。
この痕も消えるって、先生が言っていた」
「、、、」
「俺と大和の血が一生懸命に治す。
サチはこれから生き返るんだ。
俺と一緒に」


「どうだった」
「会ってきた。
サチだった、小さい頃の、」
「そうか、、よかった、」
「穣二がかけたそうだ。
俺がプレゼントしたペンダント見つけて、、、ペンダント、、お湯に入れて、、」
「そうか、、よく我慢したな、、、」

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

下:13キャラメル ある計画このエントリをはてなブックマークに登録

キャラメル超特急
Sweet Candy Express

13:ある計画


木綿豆腐の左にいたスキンヘッドが口笛を吹いた。
アベニューBの方角に、歩いて来る人達がいた。
「チェッ、ついてねえな!
おい、行くぞ!
お前たち、国に帰れ!
二度と来んな!」
西に向かって足早に去った。
10人のプエルトリコの若者だった。
一瞥しただけで、スキンヘッドの逃げた方角に歩いていった。

俺はその場にへたり込んだ。
「驚いた。間一髪だった」
「歌が聞こえなかった訳だ。
それにしても奴らはムラビみたいだな。
覚えてるか、イエロー・リーヴス」
「サバイバルだけしか興味がない三角地帯の部族だな。
ここは人間が相手だ、動物相手のムラビは生きていけない」 「ナイフをあんなに強く刺すなんて。
貫通したな。
一生残るぞ、あれは」
「アラン、嬉しそうだな。
スキンヘッド、ネオナチ、優越主義者にはお前も容赦しないだろう」

キューケースには10錠のデートドラッグ、コカインの入ったプラスチック6袋が入っていた。
アランがコカインをライターであぶってチェックした。
「まあ、こんなものだろう。
ほどほどの質だな。
耕三、スキンヘッドはチキートと関り合いがあるのかな」
「破格の値段で用意してくれたことやカルロスとの繋がりを考えるとそれはないだろう」
「ケースにコカインが入ってるのを知ってたのかな?」
「どうかな、?大事そうに持っていたからだろう」
「そうだ!
あのスキンヘッドをビリヤード場で見なかったか?
俺たちが出口を聞きに戻った時、勘定を払ってるスキンヘッドがいた!」
「いたような気はするが、、、、」
「奴だよ!
俺は一瞬目が合ったんだ。
そうだ!奴だった。
その時、チキートが俺たちの所へ来て何か言った、、、」
「キューを落とすな、とか言ったな」
「それを聞いたんだ」
「お前たち、3人がトイレに入って行ったのやら一部始終を見ていたのかもな。
あそこらに屯していたらチキートが何者か知っていた可能性もある。
常連みたいだったからな」
「スキンヘッドとチキートがグルだったらカルロスにどう説明しようか悩むとこだった」
「アラン、閃いた。
リーとレジナルドが共謀してコカインを盗んだと思わせようか。
リーがコインロッカーに運んだのをチキートに盗ませるってのは。
次の中継者がコインロッカーを開ける時間を大体この前と同じと仮定して2時間後の7時頃だ。レジナルドの出現まで5時間はある。
リュウはロッカーにバッグが入ってないのを知ってリーを探す。
多分、ここ909に来る。
時間は7時30分から8時前後。
彼はリーをどうする?」
「痛めつけて吐かせようとする。
下手すると殺すかもな」
「リーとリュウを909から遠ざけたいな。
どうしたらいい」
「リーをチキートにさらってもらうってのは。
ここから彼のハドソン通りの部屋に連れ去ってもらう。
そしてオーバドース(ドラッグ吸引過多)にしてデートドラッグで眠らせる」
「リュウは?」
「リーが自分の部屋にいるって電話すれば行くだろう。
住所を知らないはずはない」
「それだとリーが殺されるな」
「911(緊急電話番号)に電話するってのは!
リュウより先に救急車かポリスが来るよう時間を見計らってね。
リーが大量のコカインを持ってるとでも言って。
チキートに500g渡してリーの部屋に置いといてもらおう」
「OK。アラン、いいね。
いや、ちょっと待て、、、、その500はまずいな。
リーの部屋の500とレジナルドの部屋で発見される分は同じ質のコカインじゃないとおかしい。
多分、盗んだリュウのに最低2、3kはあるよな?」
「エイトの情報では月2回で6kだから、、そのくらいある。
純度はチキートのより数倍いいはずだ」
「できればそれをリーの部屋に置いておきたいがチキートに頼めるか。
ロッカーからコカイン盗んでリーをここから連れ去ってリーの部屋にコカインを置く。
500だぞ。
しかも純度がいいと知ったら、、信用できるか?」
「何ともいえない。
悪だからね」
「アラン、500置くの止そうか。
リーをオーバドースさせるのはチキートのを使おう」。
「リーは運びの報酬を多分コカインでもらっていると思うよ」
「それは考えに入れず、リーのオーバドースにはチキートのを使おう」
「OK。リーが救急車で連れ去られるのをリュウに見せるってのは。
さもないと909をずっと見張られる可能性がある」
「時間を計ろうか。
チャイナタウンからリーの部屋までと救急車、ポリスのね。
それで電話の順を決める」
「耕三、冴えてるね」
「明日やろう。リュウの電話番号をエイトに聞いてくれ?」
「OK。リョウに電話で誰だと聞かれたら」
「その前に切るさ。
そして、遂にレジナルドの登場だ。
盗んだコカインをどこか部屋に隠して置く。
二人の内どちらかがドア辺りに隠れレジナルドを待つ。
クロロホルムを嗅がして眠らす。
デートドラッグを飲ませポリスに電話する」
「耕三、それじゃあ弱いよ。
何とでも言い逃れできる。
盗んだコカインが入った袋、多分プラスチックバッグだろうけどそれにレジナルドの指紋を付けよう。
レジナルドの尿からコカインが検出されるように注射も打つ。
俺が彼の帰りを部屋で待つよ。
クロロホルムで眠らせた後コカインを注射する。
20分か30分おきに4、5回は注射したいな。
それから常習者に見えるよう体に注射針の跡をできるだけ残しとくよ」
「それだけで常習者に化けるか」
「当座はそれでいい。
新聞がそれとなく臭わせてくれれば読者は信じる」
「一時間以上かかるな。
もう1時半、2時になってる。
それまでリーには眠っていてもらわなければ。
計7時間から8時間になるかな。
デートドラッグで可能か?」
「翌朝まで眠ってもらうよう頼むよ。
そのほうが仕事しやすい」
「指紋をプラスチックバッグに付けるのは可能か」
「そこらで売ってる瞬間接着剤を垂らせば指紋が出てくる。
写真にとってプラスチックバッグに転写させればいい。
駄目だったらレジナルドを眠らした後、直にプラスチックバッグに指紋を付ける。
「瞬間接着剤?そんなに簡単なのか」
「ああ、エイトに頼んでみる」
「当然、部屋に指紋あるよな?」
「ベッドルームに度が入った眼鏡が何個かあった。
眼鏡がオシャカになるけどね。
今夜、取ってくる」
「コカインの中にレジナルドの髪の毛を入れるってのはどうだ。
DNA検査で彼だと分かる」
「耕三いいね!
それはいい考えだな」
「肝心な点。
チキートはやってくれるか」           
「俺たちが彼から買ったコカイン3kが全部戻ってくるかもしれないんだ」
「3k買う必要なかったな、アラン」
「仕方ないよ。分らなかったんだから。
問題はコインロッカーから盗んだコカインの純度がいいってことだ。
チキートが素直に渡してくれるかな、」

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

16:偽威議員 対決このエントリをはてなブックマークに登録

16:対決


「小安総理、ご挨拶遅くなりました」
「こちらでスケジュールの都合が出来なくて申し訳ない」
「どうだね、新人議員3ヶ月の感想は?」
「戸惑いの連続で、慣習、規則に振り回されています」
「私なんか一期目は何をしていたのか記憶にない。
君とおなじだ。
先輩議員の指示に従って行動していればその内、動けるようになる」
「母が申していました。
外務省の役人で小安という方に会ったことがあると。
総理は以前、外務省にいらっしゃったとお聞きしています。
総理ではないかと思っていたのですが」
「私ではないよ。
君のお母様にお会いしたことはない」
「父が外務大臣の時、ハワイで外務省の役人にお世話になったと言っていました。
小安宗徳という名前でした。
外務省で確認したところ、1976年にアメリカ合衆国独立200年祭の外遊の時、父、加賀三郎外務大臣の随行員として総理のお名前が記述されていました」
「、、、そうだった。
200年祭か、、、確かに、加賀外務大臣に同行したね。
忘れていたよ」
「あの夜、何があったのか教えていただけますか」
「何のことだね」
「シュプリームスの女性と加賀三郎大臣のことです。
何があったのでしょうか」
「、、、、、、、、、、」
「教えていただけませんか。
私の生に関することです。
母はもう他界しました。
真相を知りたいのです。
総理の他は誰もいません。
知りたいのです。
どうか、、お教えください」
「あの夜、大臣は酔っておられた。
シュプリームスの女性を気に入ったようだ。
何とかして欲しいと、頼まれた。
知事にそのことを言った。
イエスの返事はもらえなかったそうだ。
知事は雇い主に電話していた。
シュプリームスの、、君のお母さんを大臣の部屋に通した。
明け方、お母さんの部屋に知事の秘書と一緒に運んだ」
「あの夜、何があったのでしょうか?
母が自らの意志で明け方までいたとは考えられません」
「車の中で、知事の秘書が酒にドラッグを入れたと言っていた」
「どうして、、そんなことが、、止めることは出来なかったのですか」
「私は経緯を知らない。
お酒を飲んで話すだけだろうと思っていたのだ。
明け方までなんて思ってもいなかった。
まして、ドラッグなんて」
「その後、母に会いに来ましたね」
「君のお母さんが訴える、と情報が入った。
大臣はおろおろしていた。
私が頼まれた、堕ろすようにと。
申し訳なく思っている。
君のお家とは古くからのお付き合いだ。
当時、私の父が凡凡党の総理だった。
加賀三郎外務大臣のことが表に出ると政局の混乱は必至だった。
凡凡党員なら分ってくれたまえ。
君は加賀三郎先生のご子息だったから日本の国会議員になれた。
君の肌では通常ありえないことだ。
加賀先生のご子息だったからだ。
感謝してお国のために働いて欲しい。
もしもし、田所秘書、時間は大丈夫かね?」

「総理、もうそろそろフィンランド大使がお見えになります」

「聞いたとおりだ。
加賀君、申し訳ない。
時間になってしまった。
また、来たまえ」
「私達はご子息、穣二に振り回されました。
ご存知でしょうか?」
「振り回された?
どういうことだね」
「高校時代の私達のことをご存知でしょうか?」
「刑事事件の件だね。
知っている」
「どのくらいご存知でしょうか?」
「君達が退学に怒って先生の性器をナイフの刃でなぞった。
刑事事件になるのでなんとか助けて欲しいと、穣二に頼まれた。
その先生に会って訴えを取り下げてくれるように頼んだ。
嘘を吐いてもらった。
前途有望な若者をそんな状況には置けなかった」
「総理、なぞっていません。
何もしていません。
穣二が先生と仕組んだのです」
「何を言うんだね、君は。
穣二が仕組んで君たちを、、助けられてよくそんなことを!」
「サチに熱湯をかけたのは穣二です」
「何ということを君は!
サチさんは情緒不安定でリストカットをしていたのだ。
それを、穣二が熱湯をかけただと!、、
なんということを、
出て行きたまえ。
助けられた恩人を何だと思っているのだ!」






theme : 連載小説
genre : 小説・文学

17:偽威議員 前へこのエントリをはてなブックマークに登録

17:前へ

「大和君、何をやったのだね」
「ああ、土方会長、東京に来られていたのですか」
「何をやったのだね、総理に」
「特別何も、、個人的なことを聞きました」
「何だね、それは?」
「申し訳ありません。言えません」
「、、、その顔だと、言いそうもないな」
「申し訳ありません」
「ところでだ、小安首相では駄目だ、という意見が凡凡党内で大勢を占めてきた。
そろそろ政局が動く。
もう首相は過去の人になるからぺこぺこしなくていい」
「どういうことでしょうか?
古くから付き合いがあると,あれほどおっしゃっていましたが、、」
「勝ち馬に乗らないといけない。
小安総理はもう応援しなくていい。
凡凡党は余りにも庶民の感覚、生活から遊離していた。
傲慢で胡坐をかいていた。
わしでも最近の凡凡党を見ていると情けなくなる。
小安総理は総選挙でかろうじて首班指名を受けたが、
もう凡凡党内では主民党に鞍替えを考えている政治家がたくさんいる。
悲しいことだが、200世襲家元政治家の構図が変った。
あの参議院選挙の、野良仕事気分の農相の絆創膏から二世の風当たりが強くなった。
これまでの世襲議員のように、ノータリンではもう務まらない。
二世でも良識のある、政策を立案できる政治家は残れる。
大和君、いい加減では選挙落ちるよ。
勉強するのだ」
「肌が黒いのに当選したのは加賀三郎の子だからだと最近よく耳にします。
私の当選も世襲議員の批判になっているようですが」
「もう地盤、看板、鞄が幅を利かす選挙じゃあなくなった。
日本の政治は健全な方向に向かっているのかもしれない。 
世襲議員でも立派な人はたくさんいる。
加賀大和の名前で勝負できるよう勉強しなさい。
加賀と聞いたら、加賀大和のことだと、皆が思う政治家になりなさい。
今の世襲政治家のように庶民の感覚を失くしてはいけない。
絶対にね。
わしの出番はもうない。
引退するよ。
これが君へのわしの餞だ。
非があったら潔く責任を取りなさい。
前の主民党代表の原前といい、、
わしには若い政治家が権力にしがみつき、時勢を読めないのが分らん。
ああいう優柔不断で非常時に対応できるのか心配だ。
大和君、出処進退は潔くやるのだよ」


「どうだ、そっちの生活は」
「おう、サチ、元気になったぞ。代わる」
「大和、ありがとう。
幸せよ、もう何もいらないわ」
「回復が速いな。よかった。
サンタクララは気に入ったか?
「ええ。体重も増えたわ。
武蔵が料理作ってくれてる。
旨いかどうかは個人差があるけど、でも私には最高のシェフよ」
「おい、おい、武蔵が羨ましいな。
楽しそうだな。
俺達の血は働いてるか?」
「ええ、24時間、休みなし。
痣も薄くなってきた。
大和の血で黒くなると思ったけど、、でも大和の血で黒くなるなら構わない」
「そんなこと言うとほんとに黒くなるぞ」
「構わないわ。
もう前の私ではない。
痣も肌もどうでもいい。
私、思ったの、大和はいつもいじめられていた、暴力、言葉、態度、。
その時の大和の気持ちがどんなだったのだろうって、、よく考えるの。
私の痣なんてあなたの苦しみに比べれば、、
ごめんなさい、思い起こさせちゃった?」
「よく助けてくれたよな、、嬉しかった。
誰もいなかった、、ファニーも肌で悩んでいたし、
俺、いじめられていたの言えなかった。
友達はいないし、サチだけだったんだ。
天使だった。
救われた、、サチみたいな人がいるって。
お袋によくしてくれて本当にありがとう。
サチの為なら死んでもいいと思ってる。
今まで本当にありがとう」
「、、、今まで、って、、大和?」
「サチ、武蔵に代わってくれるか」
「ええ、、」
「武蔵、俺の分まで幸せになれよ。
サチ、離すなよ。
「俺の分まで、、、何を言ってんだ、お前。
言われなくても幸せになるよ。
俺だけじゃあ不公平だから落ち着いたらお前の幸せを考えてやるよ」
「そのときは頼むよ。
武蔵、ありがとう。
お前だけだ、友達は」
「大和、何だお前?
何をしんみりしてる」
「覚えてるか、中学校で俺が転向してきた日にお前が俺の首をいきなり叩いたの」
「古いな、、そうだったな、、そんなことがあったな」
「撲りかかった。
周りがびびってた。
番長に撲りかかったんだ、当然だな」
「俺が驚いたさ、いきなりフックが飛んできた。
いいフックだった」
「喧嘩が強かったのにお前、何もしなかった。
あの時ほど、撲るのが嫌になったときはない。
口から血が流れていた。
何も言わず去っていったな。
後でクラスの奴が話しているのを聞いた。
俺の首に蚊がとまったのを見て番長が軽く叩いたのにあの黒人が撲った、って。
武蔵、なぜ言わなかった、蚊を叩いただけだって」
「言ったさ、蚊が、、ってな。
お前いきなり撲ってきたからな」
「蚊が、、、俺の名前じゃあなかったのか」
「蚊を言ったのさ。
そんなこと撲られている時に言えるか。
駄洒落っぽくて洒落にもならんだろう」
「嘘だ。そんな理由じゃあないだろう、本当は何だった」
「、、、お前を痛めつけるってのが数人いたんでな、、見せしめだ」
「番長が何もできない、と見せたかったのか」
「お前が喧嘩強いのを知った。
あれで友達になれた。
弱いのとはなれん」

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

下:14キャラメル 続・計画このエントリをはてなブックマークに登録

キャラメル超特急
Sweet Candy Express

14:続・計画


「当初、レジナルドの部屋にコカインを置くだけでいいと思っていたが、、」
「耕三が言ったんだ。
覚えてるか?
レジナルドの体にコカインぶち込むって、」
「言ったな、、コカイン置くだけじゃあ何とでも言い逃れできるからな。
だが実際、体にぶち込むとなると死ぬかもしれない」
「殺しはしない。
量、気をつける。
だが間違って入りすぎたらしようがない。
ロシュトーは死んだ。
殺された。
忘れるなよ」
「強烈な言葉だな、アラン」
「耕三、俺はやるぞ。
レジナルドを必ず蹴落とす」
「分った。
もう少し計画を練ろうか」
「やっぱり、チキート達、信用できないから俺がコインロッカーのコカイン盗むよ」
「ロッカー開けれるのか?」
「30秒。
仮にチキート達が盗んだのがチャイナタウンのお偉いさんが知ったら大変なことになる。
カルロスも狙われる」
「そうだな。
考えてなかった」
「その点、俺たちはマークされてないから容易に逃げ出せる。
できるだけ俺達だけでやろう、どう?」
「じゃあ、チキートに頼むのは?」
「リーを拉致して彼の部屋でオーバードース(吸引過多)させて翌朝まで眠ってもらう」
「分った」
「俺がロッカー開けた後、次の中継者が何時に現れるのかが重要だ。
耕三はそれを見張る。
現れたらすぐ俺に知らせる。
俺はバッグをここに運んだ後、リーの部屋付近で連絡を待つ。
それからタイミングを見計らってリュウに電話する、どう?」
「いいだろう。
もう一つ気になることがある。
誰かがコインロッカーを見張っている可能性はないか。
この前はそこまで考えつかなかった。
もし同じ人間が見張っていたら俺たちに気づくかもな」
「変装を完璧にしよう。
それと尾行があると思って工作する」
「他に何か見落としてないかな」
「レジナルドがポリスに捕まった後、リュウに彼が黒幕で盗んだコカインの一部を持っていると知らせるってのは」
「また、誰だって聞かれたら切るか?」
「いや、レジナルドと一緒に仕組んだ者だが、彼はリーと二人で持ち逃げしようとしたって言うさ。
待てよ。
ラッキーエイトが、対立するギャングにこの運び屋の件を知ってるボスがいると話してた。
彼をうまくはめ込めばリュウは勘違いをする可能性がある。
彼らに盗まれたと思ってね。
彼の存在をちらっとリュウに分からせようか」
「どう?」
「その対立するギャングにも電話してリーの部屋を知らせようか。
リュウのコカインを持って逃げようとしているから今行けばただで手に入るってね。
そのギャングとリュウをリーの部屋付近で鉢合わせさせよう」
「、、、可能かな。
そのボスにも誰だと聞かれたらまた切るのか」
「適当さ。
ボスが電話に出る可能性は低い。
飛龍ギャングに世話になったことがあるリュウの部下だとでも言うさ。
耕三、やる価値はあるよ!
チャイナタウンの不特定多数のギャングが関わっていると思って、リュウはひどくびびると思う」
「冴えてるな、アランよ。よし、やろう!
盗んだコカインだが、その対立するギャングボスにも少し送るってのはどうだ。
現に持っていたら実際関わっていたように思われる。
その情報をそれとなく後でラッキーエイトに流させる」
「素晴らしいね。
最後にリュウに電話するとき誰だと聞かれたら、レジナルドと一緒に仕組んだ者だが彼らは量が多かったので恐くなって飛龍ギャングに売って逃げしようとした、とでも言うか?」
「リュウは信じないだろうが、一応レジナルドにちょっかいを出すな。
だが、電話は最初の一回だけにしといたほうがいいかもな。
アラン、、、やっぱりレジナルドは殺すか。
チャイニーズギャングまで巻き込むんだ。
俺達の安全も綱渡りだ。
生き残ったら誰が仕組んだのかを必ず調べる。
マコト、モモも狙われる。
奇麗事では終わらんぞ。
殺すのがベストだな、、、、。
異存ないか」
アランは無言でうなずいた。

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

完 偽威議員 エピローグこのエントリをはてなブックマークに登録

エピローグ


「穣二、会えないか?」
「誰だ?」
「日本国衆議院議員、加賀大和先生だ」
「まだ秘書の分際でいる俺にあてつけか」
「お前はご先祖様の七光りで寝ていてもいずれ衆議院議員だろう」
「何の用だ?」
「サチが直に渡したいものがあるそうだ。
昨夜、日本に来た」
「俺に渡したいもの、、、何だ、」
「時間作ってくれ。
明後日には帰るらしい」
「今夜は?」
「OKだと思うよ。
早くお前に渡したいようだ」
「議員会館前で8時はどうだ?」
「車で迎えに行く」

「穣二、乗れよ」

「サチが何を渡すのか分らない」
「熱湯かけられたお前に会ってまで渡したいものがあるらしい」
「、、、、」
「お前がかけたのか?」
「事故だ」
「サチにとっては事故だろう。
だが、お前はちがうだろう」
「何を言いたい」
「穣二、よく女に熱湯かけれたな?」
「俺がやったような口ぶりだな」
「サチから聞いた。
ペンダントごとお湯をかけたらしいな」
「馬鹿な、彼女の妄想だ」
「ペンダントに武蔵とサチの名前が刻んであったので頭にきたか」
「大和、いい加減にしろよ。
もう過去のことだ」
「簡単に割り切れるか?
サチ、武蔵、俺はそうはいかない」
「お前らの勝手だ。
俺には終わったことだ」
「馬鹿、お前は相当の馬鹿だな」
「馬鹿!
何だと!
、、、4号線になんか乗ってどこに向かってる!
「まあ、いいじゃないか。
ドライブしようぜ」
「どこに行く気だ?
サチは?」
「まあ、穣二、いいじゃないか。
ゆっくりこれまでのことを話そうぜ」
「サチは嘘か!」
「熱湯マニアのお前には二度と会いたくないだろう」
「大和、いい加減にしろ。
次の出口で首都高降りろ!」
「まあ、いいじゃあないか。
ドライブだ、穣二。
諏訪辺りまで行ってもいいし、まだ話したいなら名古屋、九州まで行ってもいい」
「どういう気だ、こんな真似して」
「これまでのことを話したいだけだ」
「次の出口で降りろ!」
「時速100kの車から飛び降りるだけの勇気がなかったら話せ」
「いい加減にしろ!
降りろ、次の出口で!」
「用足したくなったら座席の下にペットボトル、プラスチックバッグがある」
「ふざけるな!」
「俺を撲ってハンドル奪ってもいいぜ。
言っとくが、俺はお前と心中する気だ。
お前次第だ。
いつでも奪え」
「、、、、、、、」
「あの似非教師を丸めたのか。
お前が頼んで退学にしたのか」
「、、、、」
「サチに横恋慕して武蔵が邪魔になったか」
「、、、、、」
「どうした、総理の息子よ、小安穣二。
ガスが切れる6,7時間も黙っていたら退屈だぞ」
「ふざけた野朗だな、大和」
「穣二、言葉注意しろ。
自分が底なしのふざけた野朗だと、気づいてもいい頃だ。
自分のことしか頭にない馬鹿だと。
特権、権力持った世襲政治家の家に生まれた馬鹿息子だと」
「言葉遣い気をつけろ!」
「今のお前は俺と同じ生身の人間だ、後ろに誰もいない。
黒、黄、白、茶、朝鮮、日本、捨てな。
くだらないものは。
お前は生死の境にいる。
運転手はとっくに生に興味がない。
どうだ、こんな状況でお前の大和民族は朝鮮民族より優れているか、
肌の黒いのは劣っているか、
美しくないか、体臭が嫌か?
どれだけのものだ、お前のしがみついているものは?
教えてくれ」
「、、、、、、」
「俺と武蔵を嵌めたのはどうしてだ?」
「、、、、、」
「穣二、話せよ。
話したくないか、こんな下司野朗には」
「サチだ、、」
「何」
「サチだ、好きになった」
「ふざけるな、色恋が理由で俺達を嵌めたか」
「朝鮮、肌、表向きだ」
「アホかお前は。
サチを奪う為だけに似非教師巻き込んで俺達を退学にした?
武蔵も俺も17だった。
お前みたいに、お偉いさんのバックはいない。
どれだけ苦労したか分るか」
「、、、、、」
「身勝手だな、お前は。
サチに熱湯かけたのは?」
「武蔵の電話番号、ペンダント、寝言、惚れた女がこうだ。
我慢できるか」
「お前は何をしたのか理解できてないようだな。
お前が勝手に惚れたんだ。
親父の力利用して汚い手で仕組んでサチを手に入れた。
武蔵とサチは結婚を約束した仲だ。
知ってただろうが」
「、、、、」
「今でもサチを相当憎んでるか、
馬鹿だな、お前は。
ひどいことやったのにまだ憎しみが消えてないのか。
彼女の痛みが分らんか、、」
「、、、、、」
「お前が世襲で政治家になるのか、、
末恐ろしいな。
人の痛み、苦しみが分らんのがなってはいかんだろう」
「俺は分っているつもりだが」
「今までやってきたことをどう思う」
「非難されるようなことは何もやっていない」
「不感症か?
凡凡だな」
「そうだ、凡凡だ。
馬鹿な凡凡だ」
「いい加減にしろ!
お前のその小賢しいとこが許せない。
すべてサチのせいにしてまで生きたいか」
「、、、、」
「穣二、お前には肝心なものが欠けている。
分るか?」
「欠けている?
俺が不具のような言い方だな
二度と言うな。
許さんぞ」
「不具はお前が言ったんだ。
自覚してるからだろう」
「大和、ふざけるな。
二度と俺が欠けてるなんて言うな!」
「その言葉は堪らんか、そう言われたことはないだろうからな。穣二、不具だと、何度でも言ってやろうか」
「大和、お前、何様のつもりだ!
お前が俺を不具だと!
ふざけるな!」
「まだ怒れるようだな」
「ふざけるな、黒んぼが!」
「おう、やっと本心を言ったな。
黒んぼは嫌いか」
「反吐が出るな。
顔見たくねえ」
「そんなこと言ってると来生は俺より黒んぼで生まれるぞ。
相手の気持ち、立場を考えたことはないのか。
思いやり、優しさは、、」
「黒が馬鹿なことを聞くな。
十二分にある」
「お前が変るとは、、
期待はしていなかったが、、、
悲しいな、、、」
「おい、どうしたんだ!
急にスピード上げて!」
「お前が真の大和民族なら覚悟は出来てるだろう」
「おい!
止せ!
馬鹿!
止せ!」
「離せ!
穣二!
ハンドルから手を離せ!」
「大和!
どうする気だ!
ウワー!!!」


武蔵、サチ、俺の分まで幸せにな。
再会できたらな、、、

おかしいわ。
武蔵、手紙これだけよ、、、、


昨夜未明、中央自動車道、東京都八王子市と神奈川県相模原市相模湖の都県境にある小仏トンネル付近で、衆議院議員、加賀大和さん運転の乗用車がガードレールを乗り越え20m落下し大破。加賀大和さんは全身を強く打ち即死、同乗していた小安宗徳首相の長男、小安穣二さんは意識不明の重態です。



6ヵ月後

「穣二、元気を出せ。
そろそろ選挙だ。
右足が無くなったぐらいでめそめそするな」
「、、、、」
「今度の選挙、お前を貴志川爺様のとこで出そうと思う」
「、、、、」
「今のお前ならお爺様の地盤に同情票、簡単に勝てる」
「こんな体で私が何をやれるのです」
「福利厚生、お前と同じように苦しんでいる人達の為に働ける。弱者の味方になれる」



   完  
 
   おさむ










theme : 連載小説
genre : 小説・文学

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はわいーい 上巻


概要

18歳でハワイに来た純一、16歳でシンナー中毒だったモモ、彼女の兄、ミュージシャンのホタル、3人は偶然、父親同士が友達だったと知る。
二人は不可解な死を遂げていた。ホタル・モモの父親は高速道路でパンク修理中に狙撃死、純一の父親はその6ヵ月後、ひき逃げで亡くなっていた。いずれも犯人は捕まっていなかった。
3人は、広域暴力団・ハワイツアーを契機に真相を探ろうとした。



登場人物

高井ホタル:ミュージシャン
高井モモ:元不良。ミュージシャン
高井千恵子:ホタル、モモの母親
高井直人:ホタル、モモの父親。日系3世
橋本純一:東都ツアーデスク勤務 
橋本明:純一の父親
荒井邦男:暴力団,宮沢組幹部,上村通商専務
上村正一:宮沢組幹部,上村通商社長
荒井君夫:上村通商部長
宮沢寅吉:広域暴力団、宮沢組会長
沢村拓司:ボディガード
マイケル・タケ:舎弟
細川肇:上村通商ツアー添乗員
倉田寿子:留学生
戸昼アキラ:グアテマラ・マヤ、キチェ族
ラルフ・ヨハンソン:戸昼の仲間、ココナツ運送勤務
ルイス・エンリケ:ハワイの実力者、武器商人



1:純
2:組長の妾
3:お客様、、あっての、、
4:ホタルとモモ
5:出会い
6:糸
7:明と直人
8:上村通商ハワイツアー
9:ルイス・エンリケ
10:憂鬱な暴力団ツアー
11:予約トラブル
12:消えた荷物
13:ブリーフケース
14:倉田寿子
15:悲劇の添乗員
16:マヤ 戸昼
17:3人の若者
18:ダイヤモンド
19:エンジェル


 フィクションです。


太陽、太陽、太陽、、ハワイはいつも夏だ。

「はい。東都ハワイ、ウェスタンビーチです」
「純君、こちら空港、デボラよ。
客がスーツケースのキーを部屋に置いたらしいのよ。
アロハビィラ・ホテル404号室。
悪いけどチェックしてくれる。
日本の家の鍵から金庫、すべて付いてるらしい。
便はノースの22便だから今から1時間以内の10時までに必ず空港に着くように頼む」
「デボラ、置いたって?
忘れたってことだな?」
「そう、言ったわよ」
「OK,客の名は?」
「荒川由美子」
「どんな鍵でどこらに置いたのか聞いてくれる?」
「ベッド脇のテーブルだ。
キーホルダーにはマップの写真が貼ってあるだ」
「なんだマップって?」
「ちょっと待ってて聞いてみる」
スマップと言っている女性の声がかすかに聞こえた。
「デボラ、デボラ、分かった!
スマップだろう。
すぐチェックするよ。
デボラ、日本語もう少し勉強しろよ。
変なとこで信州弁なんか入れるなよ」

ウェスタンビーチ・ホテル内にある東都ツアーデスク勤務の橋本純一は、アロハヴィラのフロントに電話をして404の室内をチェックするように頼んだ。
折り返しの電話を待っていると、35歳、前後の男性がデスクへ来た。
「申し訳ないのですが部屋なんとかなりませんか。
オーシャンビューで予約したのに海が見えません」
「お名前は?」
「木下幸雄と智子です」
「アーリィチェックイン(前日から予約している部屋)でもうお部屋には入っていらっしゃいますね?」
「今朝7時にチェックインしました」
「海が全く見えませんか?」
「部屋を移動すれば見えますがフロントには見えません」
「ベランダからは?」
「見えます」
「オーシャンビューはそのようになっています。
オーシャンフロントというカテゴリーに入ればまだ海は見えると思うのですが」
「詐欺ではないですか?」
「次回からオーシャンフロントと強く言っていただければ代理店から情報が来るかと思います。
それだと対処できるのですが。
当然、料金は高くなりますが、」
電話が鳴った。
「木下様、申し訳ございません。
ちょっとお待ちください。
はい、東都ツアーズ・ウェスタンビーチ」
「アロハヴィラのフロントだが、鍵あったよ。
どうする?
誰かこっちに来るのかな?」
「ありがとう。
すぐ行くよ。フロントだね」
「そうだ」 

いつもはデスクに二人いるはずが、もう一人のジェニファーは病欠で休んでいた。
退屈で時間を持て余すのに、こういうときに限って同時に難題が生じた。
鍵を優先させようと、純は木下幸雄に言った。
「お部屋でお待ち願えますか。
海が見える部屋がないかチェックしてみますから」

木下幸雄が去った後、純はトランスポーテーション(輸送係)をウォーキーで呼んだ。
「20分以内に空港まで行く車ありますか?
あったら応答お願いします。
ウェスタンビーチの純です」
すぐにウォーキーが鳴った。
運転手の丸さんの、のんびりした声が聞こえてきた。
「純君、この時間、空港に行く車ないよ」
 
しかたなく、デスクにCLOSEの札をかけて、アロハヴィラ・ホテルに行こうとしたとき電話が鳴った。
「あの、、車の中にキーを入れて閉めちゃって動かせないの。
どうしたらいいかしら、、」
「申し訳ないのですが、うちのお客様でしょうか?」
「ええ、東都なんとかのウェスタンビーチ・ホテルのツアーデスクでしょう?」
「はいそうです。
お名前といつこちらに来られたか教えていただけますか?」
「谷沢明美。
来たのはね、、、二日前だったかしら」
「谷沢さん、車はレンタカーですか?
その会社の名前を教えてください?」
「ドルよ」
「ダラーですね」
「違うわ。綴りは、、、D、、O、、L、、」 
純は言葉を続けた。
スーツケースの鍵を早くなんとかしなければ、、、
「分かりました。
借りたのはワイキキですか」
「ええそうよ」
「今どちらに?」
「それが分からないの。
ポリネシアン文化センター過ぎて10分ぐらい走ったとかしら。
ねえー?」
別の女性の声が受話器から聞こえた。
「お連れの方がいらっしゃいます?」
「レンタカー2台借りてみんなで来たの、7人で」
「ポリネシア文化センターから10分とおっしゃいましたね。
どちらの方角でしょうか?
北のノースショオー方角か南のワイキキの方ですか?」
「えーちょっと待って」 

数人の声がした。
後40分しかない。
早くしてくれ、時間がないんだ。

「文化センターから有名なサーフィンをやる方角だって。
もし、もし!
東都さん!
聞いてる?」
 東都さんだって、まったく、こっちの気も知らないで。
「えー木下さん、じゃあ、、」
「谷沢よ!
私、谷沢よ!」
「すいません。
今はどちらからお電話しているのでしょうか?」
「あなた、公衆電話よ!」
「先ほど車は2台あるとおっしゃいましたね」
「ええ、木村さんたちの車は私たちより先に出たのよ。
ああ、戻ってきたわ!」
「谷沢さん、携帯電話を誰か持っていませんか?
持っていたら番号を教えてください。
レンタカー会社に電話をして折り返しそちらに掛けますから」
「私の携帯、そっちで借りたのに使えないのよ。
故障したのを貸し出してるんじゃないでしょうね!」
「そんなことは!
連れの方で誰か持ってませんか?」
「ちょっと待ってて」 
携帯番号を聞いて、
「30分後にそちらに電話しますから待っててください」
一方的に切った。

ウォーキーを手にアロハビィラ・ホテルへ走った。
もう36分しかない。
アロハヴィラまで全速力で走って5分。
ワイキキから空港まで何もなければ車で30分強。
6分以内にワイキキから車を出さないと間に合わない。

theme : 連載小説
genre : 小説・文学