猫のピーちゃん・短編

猫のピーちゃん
僕の家には猫がいた、もういない、死んでしまった。僕が殺した。これからの一生はピーちゃんに捧げるつもりだ。
ピーちゃんがいなくなってだらしなくなった。
掃除はしない、脱いだ靴下は、お父さん、お母さんのようにばらばらに旅行中、ズポンも、上着もどこにあるのか探すのが面倒なぐらいだ。
見つけても脱いだままの状態だからいつも裏のままか半分めくれている。面倒だからそのまま着てしまう。
小一でこんなんじゃあ大人になったらどうなるのか、とお母さんは心配している。
”僕におせっかいはいらない。お父さんと仲直りして”なんて言えない。言ったら本当に捨てられてしまう。
ピーちゃんがいたから毎日掃除、整理整頓もしていた。
しないと大変なことになる。食べること、遊ぶことがピーちゃんの仕事、何にでも手を出す。
ピーちゃんは最近やってきた。家は雑司が谷の墓地の近くにある。
巣鴨のお爺ちゃん、お婆ちゃんの溜まり場みたいに、捨てられる猫ちゃん達の銀座だ。
あ、違った、こっちの銀座はみんな生まれたばかりか子猫ちゃんだ。
夜遅く、夜中が多い、こっそりと殺人・人間共はやってくる。
僕は何度も見た。その度に出て行って、僕の一番、怖い顔をしてにらむ。
でも、お母さんはそんなに怖くないと言う。口を開けてあごを思いっきり下に伸ばす、目も鼻もあの世に行ったような顔になる、鏡では怖いんだけど。
別れを惜しんでいた、理由を一杯言ってた、謝っていた、でも、殺人人間だ。
車から投げ捨てる殺人人間もいる。仮面もかぶれる唯一の卑怯な動物、人間。
墓地にはカラスが多い。生まれたばかりの赤ちゃん猫ちゃん達を狙っている。
捨てに来る仮面の殺人人間とおなじ殺し屋だ。
僕には変なとこがある、夜ベッドで寝ていたのに目覚めると全然知らない場所にいたりする。
池袋駅の交番にいたり、サンシャインの前にいたり。
ピーちゃんと一緒に寝るようになって治ったのに、“この子は夢遊病者なんですよ”とお母さんが自慢げに近所の叔母さんたちに紹介する。
“夢遊病者”って何なのかまず僕に説明してもらいたかった。小一では理解できないと決め付けている。
大人は自分勝手でどうしようもない、お父さんはどこかに女の人がいるらしく滅多に家にいないし。
お母さんが自慢げだったので僕も友達に“夢遊病者なんだ“と偉そうに言っていた。
今、僕はみんなに、お母さんにも“むゆう”と呼ばれている。
”むゆうの縄張りはまだ池袋なんですよ“、とお母さんがこの前知らない叔父さんに話していた。
“まだ”なんてどういう意味?どこか遠くに行ってもらいたい?これが今の僕の一番の悩みだ。
朝の5時前、墓地にいた。
ピーちゃんがパンツ一枚で立っている僕の前に墓石の間から出てきた。よちよちのまだずっと前のよちよち歩きだ。
震えている、目にはたくさんの蜘蛛の巣。
こんなに広い墓地なのに、僕の目の前にどうして出てきたのか不思議だ。
僕は部屋に連れて帰ってインターネットで猫ちゃんのことを調べた。
牛乳をうまくやれなかったのでお父さんの部屋にあったスポイトであげた。オシッコ、ウンチ、僕の唾でさすって出してあげた。
最大の難関は、お母さんとお父さんの許しだった。
でもそれもクリアした。犬のウンチを見かけるたびに異常なぐらい怒るのに、お母さんは“猫ちゃんは好きで飼っていたこともある”と言った。
お父さんは何も言わなかった。関係ないことだと思っているからだ、猫ちゃんも、僕も。
勉強をしていた。いつものように邪魔しに来た。仕事も学校にも行かないピーちゃんのこれがアルバイトだ。
不公平だ、僕はピーちゃんが不器用な手で玉ころがしをやってたり、お手玉で遊んだり、買い物袋に入って突進遊びをしているのを邪魔したことはない。
チューインガムが僕の一番好きなものだ、ご飯より好きだ。
ピーちゃんが来てからはオレンジのチューインガムになった、蜜柑が嫌いだからだ。でもその時は甘いコーヒー・フレバーのだった。
塾帰りにコンビニに寄った時、いやな感じがした。
レジでお姉ちゃんがオレンジのチューインガムを10個まとめて買っていた。
案の定、ない、仕方なくコーヒーのを買った。
僕は今、そのお姉ちゃんを憎んでいる。今度、あったら仕返しを、ピーちゃんの復讐をするつもりだ。
謝ってもらいたいからピーちゃんの写真を持ち歩いている。
素直に謝ってくれなかったら僕はストーカになると、宣言するつもりだ。
ピーちゃんは僕達のベッドの中で、僕が丸めた大きなチューインガムの玉を喉に詰まらせて死んでいた。
いつものように2m先のゴミ箱に口から放り出した。百発百中なのにゴールインしなかった、オレンジじゃなかったからだ。
その時、僕は勉強中だった。
すぐ後ろはベッドなのに、苦しんだはずなのに、何も聞こえない、、ヘッドフォンをしていた。
それから二週間、毎日、あのお姉ちゃんと会った時間にコンビニへ行った。
「お姉ちゃん、ピーちゃんに謝って」
「何?誰?ピーちゃん?」
僕は大人のように一気にまくし立てた、無理だ、言葉か続かない。
「お姉ちゃんがチューインガム買い占めたからピーちゃんが死んだんだ。この写真のピーちゃんに謝って。そうしないと僕は一生ストーカーになってやる」
写真を手に取って見ている。
「この子猫ちゃん、ピーちゃん?亡くなったの?」
「お姉ちゃんがピーちゃんの嫌いなオレンジチューインガム買ったから僕はコーヒーのを買ったんだ。喉に詰まって死んだんだ。謝れ!」
お姉ちゃんは写真を胸に当てて深くお辞儀をした。
やさしい人だったので嬉しかった。
僕の知っている大人のように”私は関係ない”と言わなかった。
お母さんのように”あなたが悪いのでしょう”と言わなかった。
「ピーちゃん、本当にごめんなさい。赦してください。坊や、時間ある?付き合ってくれない」
お姉ちゃんの家は猫屋敷だった。大人,子どものピーちゃん達が一杯いた。
僕とおなじ理由で蜜柑のしか買わなかったのだ。
幼いピーちゃんを抱いて家に向かった。
僕達はもうチューインガムを一生食べないと約束した。
この前、僕は新大久保駅前の交番で保護された。僕の縄張りが拡がっているのだ。
もう大丈夫、幼いピーちゃんがいるから。
帰ったら掃除しないと。
僕の家には猫がいた、もういない、死んでしまった。僕が殺した。これからの一生はピーちゃんに捧げるつもりだ。
ピーちゃんがいなくなってだらしなくなった。
掃除はしない、脱いだ靴下は、お父さん、お母さんのようにばらばらに旅行中、ズポンも、上着もどこにあるのか探すのが面倒なぐらいだ。
見つけても脱いだままの状態だからいつも裏のままか半分めくれている。面倒だからそのまま着てしまう。
小一でこんなんじゃあ大人になったらどうなるのか、とお母さんは心配している。
”僕におせっかいはいらない。お父さんと仲直りして”なんて言えない。言ったら本当に捨てられてしまう。
ピーちゃんがいたから毎日掃除、整理整頓もしていた。
しないと大変なことになる。食べること、遊ぶことがピーちゃんの仕事、何にでも手を出す。
ピーちゃんは最近やってきた。家は雑司が谷の墓地の近くにある。
巣鴨のお爺ちゃん、お婆ちゃんの溜まり場みたいに、捨てられる猫ちゃん達の銀座だ。
あ、違った、こっちの銀座はみんな生まれたばかりか子猫ちゃんだ。
夜遅く、夜中が多い、こっそりと殺人・人間共はやってくる。
僕は何度も見た。その度に出て行って、僕の一番、怖い顔をしてにらむ。
でも、お母さんはそんなに怖くないと言う。口を開けてあごを思いっきり下に伸ばす、目も鼻もあの世に行ったような顔になる、鏡では怖いんだけど。
別れを惜しんでいた、理由を一杯言ってた、謝っていた、でも、殺人人間だ。
車から投げ捨てる殺人人間もいる。仮面もかぶれる唯一の卑怯な動物、人間。
墓地にはカラスが多い。生まれたばかりの赤ちゃん猫ちゃん達を狙っている。
捨てに来る仮面の殺人人間とおなじ殺し屋だ。
僕には変なとこがある、夜ベッドで寝ていたのに目覚めると全然知らない場所にいたりする。
池袋駅の交番にいたり、サンシャインの前にいたり。
ピーちゃんと一緒に寝るようになって治ったのに、“この子は夢遊病者なんですよ”とお母さんが自慢げに近所の叔母さんたちに紹介する。
“夢遊病者”って何なのかまず僕に説明してもらいたかった。小一では理解できないと決め付けている。
大人は自分勝手でどうしようもない、お父さんはどこかに女の人がいるらしく滅多に家にいないし。
お母さんが自慢げだったので僕も友達に“夢遊病者なんだ“と偉そうに言っていた。
今、僕はみんなに、お母さんにも“むゆう”と呼ばれている。
”むゆうの縄張りはまだ池袋なんですよ“、とお母さんがこの前知らない叔父さんに話していた。
“まだ”なんてどういう意味?どこか遠くに行ってもらいたい?これが今の僕の一番の悩みだ。
朝の5時前、墓地にいた。
ピーちゃんがパンツ一枚で立っている僕の前に墓石の間から出てきた。よちよちのまだずっと前のよちよち歩きだ。
震えている、目にはたくさんの蜘蛛の巣。
こんなに広い墓地なのに、僕の目の前にどうして出てきたのか不思議だ。
僕は部屋に連れて帰ってインターネットで猫ちゃんのことを調べた。
牛乳をうまくやれなかったのでお父さんの部屋にあったスポイトであげた。オシッコ、ウンチ、僕の唾でさすって出してあげた。
最大の難関は、お母さんとお父さんの許しだった。
でもそれもクリアした。犬のウンチを見かけるたびに異常なぐらい怒るのに、お母さんは“猫ちゃんは好きで飼っていたこともある”と言った。
お父さんは何も言わなかった。関係ないことだと思っているからだ、猫ちゃんも、僕も。
勉強をしていた。いつものように邪魔しに来た。仕事も学校にも行かないピーちゃんのこれがアルバイトだ。
不公平だ、僕はピーちゃんが不器用な手で玉ころがしをやってたり、お手玉で遊んだり、買い物袋に入って突進遊びをしているのを邪魔したことはない。
チューインガムが僕の一番好きなものだ、ご飯より好きだ。
ピーちゃんが来てからはオレンジのチューインガムになった、蜜柑が嫌いだからだ。でもその時は甘いコーヒー・フレバーのだった。
塾帰りにコンビニに寄った時、いやな感じがした。
レジでお姉ちゃんがオレンジのチューインガムを10個まとめて買っていた。
案の定、ない、仕方なくコーヒーのを買った。
僕は今、そのお姉ちゃんを憎んでいる。今度、あったら仕返しを、ピーちゃんの復讐をするつもりだ。
謝ってもらいたいからピーちゃんの写真を持ち歩いている。
素直に謝ってくれなかったら僕はストーカになると、宣言するつもりだ。
ピーちゃんは僕達のベッドの中で、僕が丸めた大きなチューインガムの玉を喉に詰まらせて死んでいた。
いつものように2m先のゴミ箱に口から放り出した。百発百中なのにゴールインしなかった、オレンジじゃなかったからだ。
その時、僕は勉強中だった。
すぐ後ろはベッドなのに、苦しんだはずなのに、何も聞こえない、、ヘッドフォンをしていた。
それから二週間、毎日、あのお姉ちゃんと会った時間にコンビニへ行った。
「お姉ちゃん、ピーちゃんに謝って」
「何?誰?ピーちゃん?」
僕は大人のように一気にまくし立てた、無理だ、言葉か続かない。
「お姉ちゃんがチューインガム買い占めたからピーちゃんが死んだんだ。この写真のピーちゃんに謝って。そうしないと僕は一生ストーカーになってやる」
写真を手に取って見ている。
「この子猫ちゃん、ピーちゃん?亡くなったの?」
「お姉ちゃんがピーちゃんの嫌いなオレンジチューインガム買ったから僕はコーヒーのを買ったんだ。喉に詰まって死んだんだ。謝れ!」
お姉ちゃんは写真を胸に当てて深くお辞儀をした。
やさしい人だったので嬉しかった。
僕の知っている大人のように”私は関係ない”と言わなかった。
お母さんのように”あなたが悪いのでしょう”と言わなかった。
「ピーちゃん、本当にごめんなさい。赦してください。坊や、時間ある?付き合ってくれない」
お姉ちゃんの家は猫屋敷だった。大人,子どものピーちゃん達が一杯いた。
僕とおなじ理由で蜜柑のしか買わなかったのだ。
幼いピーちゃんを抱いて家に向かった。
僕達はもうチューインガムを一生食べないと約束した。
この前、僕は新大久保駅前の交番で保護された。僕の縄張りが拡がっているのだ。
もう大丈夫、幼いピーちゃんがいるから。
帰ったら掃除しないと。
theme : ショート・ストーリー
genre : 小説・文学
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