ごみ ぷろろーぐこのエントリをはてなブックマークに登録

ごみ



概要
加藤清正を祖にもつといわれる皆清一族、自分が天草四郎、豊臣秀頼の子豊臣秀綱の子孫ではと、思い始めた益田重郎、、その行く末は、、 


登場人物

清尻大一(だいいち):皆清町会長
清尻大二(だいじ):大一の長男
清尻大三(だいぞう):次男
清尻大五朗:皆清族・祖
清尻小一郎:改清族、祖
清尻小市:改清族、CEO
益田重郎(しげお):会社員
益田君子:重郎の妻
清宮ツネ:アーバン・キャッスル皆清大家
水前寺清子:ツネさんの後継、大家
山田裕子(ひろ子):美大生 山田右衛門、子孫?    
福島正:戦国武将、福島正則、子孫?
浅野幸雄:戦国武将、浅野幸長、子孫?
蜂須賀勝:蜂須賀小六(正勝)、子孫?
明智満:徳川方。南光坊天海、子孫?

フィクションです。

  ぷろろーぐ
1:益田重郎
2:2LDK
3:アーバン・キャッスル皆清
4:豊臣秀頼
5:四郎と秀綱
6:鉄人ツネ婆さん
7:ゴミ処分場
8:面接試験
9:new益田
10:三振法
11:鉄人が消えた
12:死体ゴミ
13:5センチの男
14:方広寺鐘銘事件 
15:パレスチナ・イスラム教
16:改名、四郎秀綱
エピローグ 中国オリンピック、原爆、終焉




ぷろろーぐ

蒸し暑い8月、豊島区南池袋100丁、生ごみ集積所横の電柱を股に挟んで男が寝ている。
何で電柱を股に、、、?
枕は昨夜から出ていた不届き者の生ごみだ。
糞熱過ぎて臭いは気にならないようだ。
耳にピアス、頭は髪が薄いのに無理したポニーテール。
スーツはアルマニ、その下はどこかで見たようなシャツ、このアンバランス、どうなってる?
シャツは三面、真ん中が青に、それを挟んで赤。
ロゴが見える、、UNICEF(国際連合児童基金)(注)。
もしかして、、バルセロナか、?
靴がナイキだ、間違いない。
ああ、頭がロナウジーニョのポニーテールに似ている。
まさかCMで使うとは思わなかった、とロナウジニョが言っていた、ゴールポストに4回続けてボールを当てたNIKEのCMを見て買ったのかな、?
何で又、生ごみに添い寝を?

今朝は生ごみ収集の日だ。
プラスチック、缶類、瓶、燃えないごみを入れていないかチェックする為に昨夜から見張っていた。
酒の酔いで寝てしまった。

角のお婆ちゃん清原富さんが出てきた。
まだ、5時だ。
お婆さんも誰か不届き者がいないか見張る為に起きてきた。
続いて前川清、水前寺清子、清水トシ、、
お気づきだろうか、氏名に清の字がついているのを。

サンシャインから雑司が谷墓地にかけてある一族が住んでいた。
総勢、70名、氏名に必ず清という字がついていた。
なんでも先祖は綺麗好きな武将、あの加藤清正公、と言われている。
一族はここを南池袋100丁とは呼ばず、皆清町(かいせいまち)と言った。

その皆清町会長が電柱で生ごみに添い寝している清尻大一だ。
息子は二人、大二と大三。
大二は豊島区の清掃課に努め、大三は清掃車を運転している。

一族には三種の神器があった、ほうき、チリ取り、ごみ箱。
これらのミニチュア判が神棚にあり、毎日拝んでいた。
戦国時代、皆清族(かいせいぞく)と呼ばれた“綺麗、清潔”のDNAを持った特異な一族だった。


サッカー:バルセロナFCは、年1,9百万$(総収入の0.7%)をUNICEFに寄付している珍しいチーム。
しかもシャツにUNICEFのロゴを無償で付けている。

theme : 連載小説
genre : 小説・文学

1:ごみ 益田重朗このエントリをはてなブックマークに登録

1:益田重朗
  
東京は暑か、こげんとこで生活できっちゃろか。
家賃が高かたい、長崎の倍たい。
安かとこないとね。

益田重郎(しげお)は部屋を探していた。
長崎から転勤だ。
部屋探しの期間は一週間しかない。
会社が池袋、どうしても通勤ラッシュを避けたいので池袋近辺を探していたが、家賃が高くて困っていた。

サンシャイン近くの不動産に入った。
机の向こうで中年の男性が背を向けて受話器を手に話している。
まだ自分に気づいていない。
立ち上がっては、耳に挟んだポールペンで、目の前の壁に貼ってある、水着姿の女性のポスターの胸の辺りを触っている。
変な不動産たい。

「貸した鍵、部屋に入れてロックした?
それは困りましたね。
で、お部屋はどうでした?
お決まりになりました?」
―――――――
「え、、部屋汚いからここはいい!
何ですって、このまま帰ります!
鍵は持ってきてもらわないと!」
――――――
「ええ、、、それは分かりますよ。
自動ロックだから気をつけるようにとあれだけ言ったじゃないですか」
――――――
「じゃあ、近くに大家さんが住んでいるのでそこに行かせますから。
待っててくださいよ。
開けてもらってここに持ってきてくださいよ。
部屋を見たいお客様がここにいるので持ってきてもらわないと困ります」
―――――――
「今、大家さんに電話しますから」

全く、手間がかかる客だな。
自動ロックだとあんなに言ったのに、、
アホか!
トンマ!

「ああ、寺前さんのお家でしょうか?」
―――――――――
「あ、、はい。私、サンレイン不動産の有川です。
実はお部屋を見に行かれたお客様が202の部屋の鍵を中に入れたままロックしてしまいまして、申し訳ございませんが202に行って開けてもらえないでしょうか。
鍵を渡していただきたいのですが、、部屋の前で待っていますので
、、お客様のお名前は木下様です。
申し訳ございませんが、お願いいたします」

腐ったジャガイモ!
サツマイモ!

振り向いた途端、目が合った。

「ああ、よくいらっしゃいました。
どうぞ、どうぞ、こちらに」

不動産は、又、信用できんと思った。
態度、口調がころころ変わると。
電話と実際の対応が違うたい。
本当の顔でしゃべれんちゃろか、、これが本当ならカメレオンたい。

「安か部屋を探しとるとですが?」

いきなり入ってきて、安い部屋という客は珍しい。
しとると、、?どこの出だ、西か?
半分、からかいと時間つぶしのつもりで、
「どうぞ、よくいらっしゃいました。
お見かけしたところ九州の方でしょうか?」
「そうたい。
長崎から初めて東京に来たと」
「長崎、、でございますか?
まあ、遠路はるばるよくお越しくださいました」
「人が多か、、皆、人間じゃなか顔しとる。
電車の中、皆知らん振りたい。
若か女性は化粧しとるし、出て行く時は別人たい。
漫画めくる音とチャカ、チャカした音楽、
人種が違うとやろか」
「いえ、そんなことはござません。
これが普通でございますよ、ここでは。
家賃はどのくらいのをお探しでしょうか?」
「7万以下で2LDKで十分たい、なかなか東京は難しか。
ここが4軒目ですたい」

4軒目、、こんなこと言う客は地球にはいない。

「7万で2LDKですか?
それは難しいですよ、お客さん。
倍は出さないと無理です」
「よく皆こんな高かとこに住めるたいね。
7万でどんな部屋が借りれるとね?」
「1DKでしょうか、、ご家族は?」
「妻がいると」
「難しいですね、、7万では、、失礼ですがご職業は?」
「会社員たい、清掃関係の卸し問屋の」
「清掃ですか!
はあ、、それなら可能性がありますな、、」

おかしか不動産たい。
眉間にしわ寄せて考え事しとる。
「可能性があるとですかね?」
「実は、7万でお部屋があります、、が、、見に行かれますかね」

最後の“ね”のトーンがやけに落ちた。
不吉なことでもあるっちゃろか?

2:ごみ 2LDKこのエントリをはてなブックマークに登録

2:2LDK


清宮ツネさんは皆清町で唯一賃貸アパートをやっていた。
部屋は3部屋あり、1LDKと2LDKがこの2年空いていた。

サンシャインは高かね。
飛行機当たらんちゃろか。

ある角を曲がって様子が一変した。
おかしか。
別世界ごとある。
道路が光っとるたい。
布団ひいて寝れるごとある。
監視されているような感じがした。
騎兵隊がアパッチインディアンに見られとるごとある。
開けっ放しの窓からお年寄りが数人見ていた。

このアパートたい。
木造モルタル、2階建てたい。
階段もきれか、、
203号室って、、
ああここたい。
中へ入ってびっくりしてしまった。
異常に綺麗だった。
床は資生堂のクリームで嘗め回したような肌ですべすべ、台所の流し台は鏡のように光っている。トイレにいたっては、新品でもないのにTOTOのラベルが便器の中に見えた。
築50年にしてはきれか、
どげんしたとやろ、、
しみも何もなかたい、、
奇妙なものが、居間の真ん中にあった。
縦横、10,20cmの樫の木に変なものが三つ付いていた。
何ね、これ?
スコップ、に、スプーン、、箱たい。

益田は思案しながら不動産屋に向かった。
何かあるっちゃろか?
あげん綺麗かとは気色わるか。

サンレイン不動産の看板が目に入った。
サンレイン?、、太陽雨、、太陽の雨?
どげん意味やろか。
ここも気色わるか。
また、ポスター触わっとるやろか。

背を向けて受話器を手に話している。
案の定、触っていた。
今度は素手たい。
言葉が出ていた。

変態たい!

びっくりした様子で振り返った。

「お、これは、これは、、」
「綺麗かったけん決めたとです」
「そうですか、、、」
不慮の死で亡くなったと聞いて相槌をうったように聞こえた。
「本当によろしいのでしょうかね?」
坂道でおしっこしていて、アリさん達を濁流で流して強制移住させたような、取り返しのつかないことをしたように聞こえた。
不動が名前になっていた。
「不動さん、決めたらいかんだったと?」

サンシャインから雑司が谷墓地にかけて、都電をはさんで約、100m四方は不動産泣かせの地区だった。
これまでに、数百人が家賃の安さに惑わされた、惑わされた、という言葉はお客様に失礼だとは思うが実際そうだから仕方がない。
必ず、クレームが来た。
お客様の、本当の意志を5回以上確認するという、ちんけいな作業をしなければいけない、と(社)全日本不動産協会、東京都本部、豊島支部で決められていた。

東池袋100丁では、清宮ツネという80の御婆さんが唯一アパートを持っていた。
賃貸用は3LDK、2LDK、1LDKの3部屋で、外観は50年以上の木造モルタルでお世辞にも綺麗とは言えなかったが、中に入ると皆びっくりする。
壁、床、流し台、窓、全てがそれなりの光沢を持ち、しみ、傷、ごみ、ほこり、一つない清潔さで誰もが感動、感銘、感激してその場で即決した。
しかし、ここから不動産泣かせの余分な仕事が始まる。

「時間はおありですか」
「時間、、、」
「このお部屋は試験がございまして、就職試験みたいなものですが、、
それに受からないと入れません」
「試験があるとですか、どんな」
「アホらしくて説明できないので受けてみます?」
「アホらしい、、、」
「聞き流してください。
通常、一週間かかるのですが、早く終われば5千円ずつ家賃が安くなります」
「一日に5千円安くなると?」
「講習、視察、面接、最低3日はかかりますが、仮にそれで終われば4日分の2万円安くなります。
7万の家賃が5万になります」

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genre : 小説・文学

3:ごみ アーバン・キャッスル 皆清このエントリをはてなブックマークに登録

3:アーバン・キャッスル皆清

益田はその気になっていた。
5万の家賃で2LDKが借りれる。
長崎より安かばい。

「どうでしょうか?」
まだ名前を聞いていないのに気づいた。
変な客だったので冷やかし半分のつもりでいたせいだ。
「申し訳ございません。
ここまでお付き合いしていてまだお名前を伺っていませんでした」
「益田たい、益田シゲオ(重郎)たい」
「では益田様、改めてお伺いします。
本物件には(社)全日本不動産協会、東京都本部、豊島支部で定められた条文がございまして、
お客様の意思を5回確認しなければいけません。
よろしいですか?」
「何ば言よっとかいっちょん分からん」
「これもですね、、、
アホらしくて説明できないのですよ。
とにかく、益田様が入居を決められたのなら、
私が言うことに5回、はい、と言っていただけたら終了です。
よろしければいきます。
益田様、清宮ツネ様所有のアーバン・キャッスル皆清203号室のお部屋に入居をお決めになりましたか?」
「アーバン・キャッスル皆清?」
「正式の名前がそうでございます。
よろしいでしょうか。
益田様、清宮ツネ様所有のアーバン・キャッスル皆清203号室に入居をお決めになりましたか?」
「はい、はい、はい、はい、はい、はい」
「まあ、いいでしょう。
確認しました。
おめでとうございます。
では、これにご署名をお願いします。
これからは一切、私、サンレイン不動産は責任を持たない、クレーム受け付けない、という確認書でございます。
これも(社)全日本不動産協会、東京都本部、豊島支部の条文に従っていますのでお願いいたします」
「、、、、、、、、」
「これから清宮様に連絡して、その旨お伝えします。
履歴書をお持ちになり書類検査を受けて、一週間後に合否の手紙が来ます。
それから一週間、講習、視察、面接となります。
うまく行けば2週間後には入居できます」
「2週間!
そげん待てんばい。
一週間じゃあなかと?
今週中に見つけんばいけんたい。
不動さん、何とかならんとね!」
「そうおっしゃられても
益田様の身辺調査、その他で、通常そのぐらいかかるとお聞きしています。
履歴書を持っていき、身辺調査が一週間、それをパスしたら仮入居免、何かうどん、そばのように聞こえるでしょうが、れっきとした免許制度の一種で車の仮免期間と考えていただければよろしいかと」

はあ、、益田は信じられなかった。
こんな部屋があるのだろうか。
アホらしい、と、、誰でも思うたい。

「それから先ほど申し上げた、講習、視察、面接、一週間が始まります。
通常、講習期間は5日、ツネ先生による講習、土日を除いて2時間続きます。
視察、面接がそれぞれ一日かかります。
最低3日かかりますが、それでパスできたら一日、5000¥引きになりますので、家賃7万円が5万円なります」

不動さんの痴漢した壁のポスターを見ていた。
胸の辺りが削れ取る、ピンク壁色の乳首が見える。
ひどかことしよる。

「お気づきでしょうが、お客様はまだ入居なさっていません。
通いで講習を受けるということになります。
ここでツネ先生の合格のハンをもらえなかったら不合格でさよならということにあいなります。
益田様、、、益田様、益田様!」
「、、はい」
「いかがでしょう?
どう見てもアホらしいでしょう。
他の物件をお持ちしましょうか」
「聞きたか。
今までに何人合格したと?」
「仮入居免までは多くの方がいましたが、講習で半分、視察で殆どの方がお止めになります。
晴れて入居された方は、私が知る限り、この20年で3人です。
倍率は東大以上でございますよ。
これだけでは終わりません。
入居後、三種の神器を神棚に供える義務が生じます。
、、三種の神器とは、何でしたか、、久しぶりの説明でして
、、確か、ほうき、ちり取り、ごみ箱、でしたか」
「居間にあったミニチュアたい」
「そう、そうでございます。
まだお聞きになります、」
また、最後の“す”のトーンが下がった。
もうこれ以上しゃべりたくない、と聞こえた。


皆清町での諸事の最終決定権は、すべて清尻大一を長とする皆清町会が握っていた。
仮入居免許後の視察は、皆清町会主催の都内観光ツアーだった。
観光ツアーといっても、通常のものではなく、早い話が夢の島の観光だ。
ウミネコ、カラスがごみと戯れているのを見、心地よい匂いを嗅ぎながらごみと共に半日を過ごし、ツネさんが作った弁当を平らげることができたら視察合格となる。
誰もがげっぷを催して落ちる難関だった。


「不動さん、六日しかなかけんそれで試験をやってもらいたかです。
大家さんに頼んでください。
お願いします」
「え!よろしいのですか。
不合格なら、交通費、すべて実費ですよ」
「よかと。
ファイトが沸いてきたと」

直談判しにアーバン・キャッスル皆清に向かった。

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genre : 小説・文学

4:ごみ 豊臣秀頼このエントリをはてなブックマークに登録

4:豊臣秀頼


直談判せざる得ない状態になった。
一週間で試験を終えて欲しいと、不動さんが頼んでくれた。
電話で口論に発展した。
そっけなく断られて不動さん、相当、頭にきた。
これまでも色々あったようで、最後の捨て台詞が、
猫に毒を盛るぞ、だった。
どうも、大家のツネさんは大の猫好きらしい。
益田も猫が好きだった。
しかし、困ったことになった。

紹介した不動さんが喧嘩したばい。
行っても印象悪かばい。

清宮ツネさんはアーバンキャッスル皆清、木造モルタル2階建ての一階に住んでいた。
恐る恐る、ドアのブザーを押した。
「ごめんください、ごめんください」

お婆ちゃんが出てきた。
柔和な顔をしている。
足元で猫が3匹じゃれている。
「お猫ちゃん、今日は、長崎から来た野良猫の益田重雄たい。
部屋にはいりたかばってん、このお婆ちゃんが意地悪して試験受けさせてくれんたい。
あんた達も助けてくれんね。
野良猫になりとうなかけん」
「誰よ、、あなた?」
「サンレイン不動さんがさっき電話した益田です。
長崎から部屋探しに来とると。
二週間の試験一週間にしてけれんですか?」
「サンレインの紹介は駄目。
帰って」
「あの不動さんとは縁を切りましたけん。
自分の意思で来たとです」
「あなた、何弁をしゃべってるの?」
「自分でも分からん弁です。
お部屋に入りたかです。
試験を一週間に短縮してくれんですか。
お願いします」
「駄目よ。
決まりがあるの。
破れないのよ。
帰って頂戴」
「そこを何とか、お願いしたかとです」
「、、、、お仕事は?」
「卸の会社です、清掃関係の」
「清掃?
詳しく教えて」
「扱っているのは、箒、ちりとり、ゴミ箱、雑巾、たわし、亀の子たわし、
チューインガムなど粘着性の固着物を剥がす金属製のへら、スポンジたわしから錆など頑固な汚れを取るたわし、清掃用具類。
それに衛生器具類。
洗浄後、表面を保護する樹脂ワックス、
合成樹脂ワックス類、水性ワックス、油性ワックス、
それに掃除機類、自動洗浄器、床乾燥機、
ロードスィーパ、バケツ、ガラス清掃、ゴム製水かき、
スクィージ、ガラ、」
「もういい!
、もういいわ!」
「で、国は九州のどこ?」
「長崎です」
「履歴書持っているの?」
「はい、ここに、古いですが1年前のが」
「見せて」
「本籍は、、熊本県天草市大矢野町中越の浦1382番地。
熊本県?
長崎は?」
「今住んでいるとこが長崎市です」
「天草市、、大矢野、、
あら、、
ちょっと待ってて!」

ツネさんは履歴書を手に急ぎ足で出て行った。
残された猫達がからかいに寄ってきた。


町会長は昼寝をしていた。
いつものことだ。
「大一さん、起きてよ。
面白い人が来たのよ。
部屋に入りたいって。
見てよ!
名前と、この履歴書の本籍。
、、天草四郎時貞の本籍じゃないの?」
「天草四郎様!!
どれ、益田重雄、熊本県天草市大矢野町中越の浦1382番地、、四郎様の本籍は1383番地だった。
大きな男か?」
「大きいよ。
180以上はある」
「蒲鉾は好きそうか?」
「何を言ってるの、、蒲鉾?
そんなこと知らないわよ。
好きでしょう、長崎だから」
「美男か?」
「好みじゃない」
「紹介は?」
「サンレインよ」
「ポスター痴漢しているスケベ親父か」
「サンレインとは縁切って、自分の意思で来たって。
203号室に入りたいから試験を一週間で終わらせてくれないか、、って」
「四郎様だろうか、、、、
職業は?」
「清掃関係の卸の会社」
「会ってみよう」

清尻大一は、父親が臨終間際に言った言葉を思い出した。

26年後にさるお方が来られる。
豊臣秀頼様の子孫に当たる。
その方のために働くのだ。
豊臣家のために、、

今年だ、、1981年だったから丁度26年だ。
益田の名前、、
天草四郎時貞様は秀頼様の子だと親父が言っていた。
、秀綱様なのか、、

注;
豊臣秀頼:父・秀吉、母・淀殿(茶々)


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genre : 小説・文学

5:ごみ 四郎と秀綱このエントリをはてなブックマークに登録

5:四郎と秀綱


皆清一族の長、清尻家、代々伝わる巻物に先祖様のことが記されていた。

家康は、関が原、大阪、冬、夏の陣、一貫して東軍についていた加藤清正を慶長16年(1611年)、毒殺した。
清正は、なんとか秀頼と家康を和解させようと奔走した。
慶長16年、3月、二条城で二人の会見を成功させた。
秀頼を護るため、懐に短刀を忍ばせていた。
秀頼が殺されそうになったら家康と刺し違えるつもりだった。
その時、家康は清正の豊臣家への恩義の深さに恐怖を感じた。
3ヶ月後の6月24日、毒殺した。

徳川時代になって、髭などの戦国気風が謀反の心あり、と警戒された。
大名はこぞって髭を剃った。
清正は、心地よい、と意に介さなかった。
終生、豊臣家に忠義を持ち続けた。

大阪夏の陣で、真田信繁(別名・幸村)は豊臣秀頼を大阪商人、淀屋常安の用意した船で密かに大阪城から九州に逃がした。
当初、夏、冬の陣に出兵しなかった薩摩に向かっていたが、藩主・島津忠恒の藩政治の混乱を聞き、肥後に変更した。
行き先は限られていた。
豊臣家に忠義が厚い加藤家、以外考えられなかった。

清正亡き後、肥後藩(熊本)は兄の忠正が早世したため、次男、忠広が10歳で家督を継いでいた。
元豊臣家、家臣、藤堂高虎が後見人だった。
高虎は、豊臣家に恩義を感じていたので秀頼を匿った。
外様ではあったが家康の信頼は厚く、疑われることはないと自信があった。

秀頼の子、秀綱は元和7年(1621年)に生まれた。
翌年、秀頼は夏の陣で受けた刀傷が原因の病気でひっそりと亡くなった。
29歳だった。
刀傷は深く、肥後での6年間は病床に臥していた。
身長197cm、体重161kあった体は見る影もなかったが、最後まで武将としての威厳を保っていた。

高虎、寛永7年(1630年)没後、忠広は、秀綱の存在を徳川家に知られるのを恐れた。
若い頃、清正に仕えていた加藤家三傑、重臣、飯田角兵衛(飯田直景)は熟慮の末、加藤家代々の敵、小西行長の遺臣、益田甚兵衛に秀綱を預けることにした。
益田甚兵衛は浪人百姓をやっていた
小西行長は関が原の戦いで敗れ、六条か原で斬首されていた。
飯田角兵衛は、初め加藤家と仲が悪かった小西行長の遺臣に預けるのを躊躇した。
徳川家に通報されるのではと、杞憂だった。
益田甚兵衛はキリシタンだった。
徳川家の禁教政策、過酷な年貢負担、飢餓、それに百姓浪人となった,徳川家に滅ぼされたキリシタン大名、小西行長、有馬晴信、遺臣達は百姓ともども秀綱を匿った。
後、秀綱は天草四郎と呼ばれ、
寛永15年(1638年)4月12日島原の乱で亡くなった。

藤堂高虎、亡き後、忠広はますます家臣団を統制できなくなった。
謀反の連判状を作って家臣をからかったり、度重なる法度違反により寛永9年(1632年)、家光によって所領を没収され、庄内藩主、酒井忠勝預りの身となった。
背景に徳川家臣団の亡き高虎へのしっと、夏の陣から17年経ても幕府が豊臣恩顧の有力大名、加藤家を恐れていたためだ。

酒井忠勝は忠広を哀れに思い、一万石を与え出羽丸岡藩(山形県)が成立した。
承応2年(1653年)、忠広の死で出羽丸岡藩は廃藩となった。

加藤忠広の娘、献珠院は旗本、阿部正之の5男、正重に嫁いだが、家督相続、直後に正重が死去したため、丸岡に戻り一男一女をもうけた。
このことは徳川の目があったので公にされなかった。

皆清一族は、加藤忠広の娘、献珠院が、丸岡でもうけた娘、伊都を祖とした。


変な70近くの親父が来た。
口が異様にでかい。
バルセロナのサッカーシャツに頭はポニーテール。
益田はサッカーと大リーグにははまっていた。
誰かすぐ分かった。
あの、偏平足気味の歩き方、、
CMで日本の高校に留学していたロナウジーニョのホームステイ先のお爺さんのようだ。
でも、こんな太鼓腹じゃあ走れんばい。

「益田様、、さん、町会長の清尻大一です。
本籍は熊本でございますか?」
「はい」
「1977年8月29日生まれでございますか?」
「はい」
「お歳が30歳、、」
「はい、、、いえ、、狭間です」
「狭間?」
「今気づいたとこです。
今日でした。
明日から30ですたい」
「はあ、、そうでした!
今日8月29日でしたね!」

秀頼様は8月29日が誕生日だ。
秀綱様、、天草四郎様の誕生日は公には分かっていない。
家の巻物にも載っていない、、
それまでして秀綱様を隠しておきたかったのか。
父君の誕生日が益田様と同じか、、
待てよ、、
ということは、、
秀頼様は、1593年8月29日お生まれで、家の巻物では1622年5月4日、29歳で亡くなっている。
今度30だ。
秀頼様と秀綱様が交差しているな、、、

「益田様はカトリック教で?」
「いえ、何も信じとらんです」
「天草四郎時貞様はご存知でしょうか?」
「島原の乱、知っとる」
「ご親戚でしょうか?」
「天草四郎の?
なんば言よっとるとですか!
親戚のはずありませんたい。
家の近くで生まれたとか噂はありますたい」
「ほう、、、そうですか、、」

どうなってる。
番地の数字が一つ違うだけで噂だけとは、、
時間かけて様子見るか、、

「お部屋をお探しとか」
「203の部屋、気に入ったとです。
後、6日しかなかとです。
試験を受けさせてください」
「ツネさん、今、試験受けてる子がいたね。
明日が都内観光旅行だよね」
「ええ、山田裕子さんが受けてますよ」
「一緒に明日、頼むよ。
先に観光して講習は明後日からやろう」

ツネさんはひどく驚いた。
会長がこんなこと言うなんて、、
やっぱり天草四郎と関係あるのかしら、
「あなたご家族は?」
「妻がいます」
「じゃあ、明日、奥さんも参加してもらわないと」
「長崎なのですが」
「夫婦で受けてもらわないと困るわ。
観光は絶対に受けてもらわないと、今日中に呼べないの」
「お母さんが寝たきりで動けんのですよ。
当分、単身赴任になる予定です。
いずれ来た時にお願いしたかです」
「益田様、それでいいよ。
身元調査もみんな後だ」

会長が気味悪いぐらいやさしい。
ツネさんは、加藤清正譲りの、大一の惚れ惚れする大きな口に吸い込まれていった。

(参)ウィキペデイア

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genre : 小説・文学

6:ごみ 鉄人ツネ婆さんこのエントリをはてなブックマークに登録

6:鉄人ツネ婆さん

2時間で済むから時間があったら講習を受けないか、会長が言った。
ツネ婆さんは唖然としている。

カトリックに天草四郎、誕生日。
なんかおかしかばい。

ツネ婆さんが用意してくれた作業着に着替えた。
2冊の教科書を与えられた。
ゴミの種類、ごみ資源物とのお付き合い、監修・皆清町会と表紙にある。

「清掃の卸の会社にお勤めなら飲み込みも早いでしょう。
それ隅々まで読みなさい。
ここのバイブルよ」
「バイブル?」
「聖書のことよ」

聖書かよ?
どうなっとるの。
ここは不思議なとこたい。
治外法権もありそうたい。

「はい、お願いします」
「まず、心構えからいきましょう。

1:ゴミを見たら必ず回収。
町内全部です。
道路も含まれます。
ペンキ類、チューインガム、全て撤去です。
2:燃えるゴミについて。
必ず生ゴミ処理機で処理して出してもらいます。
処理機は皆清町が無償で提供します。
必ず水気を取り、濡れたままゴミ袋に入れないこと。
燃えないゴミ、プラスチックなどを絶対に入れない、
ゴミを出す時間の厳守。
当日の朝、5時から8時まで。
3:プラスチック類
必ず、洗濯して太陽さんに乾燥していただく。

「あの、、洗濯は洗濯機でやらんといけんですか」
「そうしたかったらどうぞ」
「エモン掛けにゴミを干すのでしょうか、、」
「そうするか、綺麗に拭くのよ。
水気が取れてたら合格よ。
あなた、買い物したことあるわよね、馬鹿みたいに資源を浪費していると思わない」
「同感です、」
「リサイクルしないともうこの世は終わりよ。
でもコストは馬鹿にならないでしょう。
ケチャップ、醤油、油で汚れていたらどう」
「綺麗にするのにコストがかかります。
理解しました!」

どうなっとると、、
この町は環境のこと考えとるたい。
普通、80の婆さんはこげんこと言わんぞ。
ツネ婆さんは若かーー。
棺おけボートにして遊びそうたい。

3:燃えないゴミは絶対に燃えないゴミに。

「益田さん、意味分かるわよね」
「はあ、燃えないゴミは燃えないゴミです」
「じゃあ、何が燃えないゴミか3分以内に20言いなさい」
「はあ、、20ですか、、」
たまげた!
「用意スタート!」
威勢のいい婆さんだ
「ワインびん、酒びん、コーヒーの缶、スプーン、フォーク、ナイフ、大根削り、、器、まな板、包丁、、茶漉し、、茶碗、ラーメン茶碗、ご飯茶碗、お皿、湯のみ、鍋、釜、ビデオテープ、CD、DVD、レコード、、、レコード針、カセットテープ、、ベルト、カフスボタン、、チャック、、、、」
「はい!そこまで。
びん類、茶碗類は一つずつ。
ぎりぎり合格」 

その後、粗大ゴミ、有毒ゴミ、古紙類、ビン類、ペットボトル、牛乳パック、廃食用油、受け入れないゴミ等の講習があった。
それぞれ5項目の問答形式の試験だ。
70点以上で合格のところ、71点でかろうじてパスした。

こんな問題だ。
タバコの吸殻が入ったコーヒー缶があります。
あなたはどうしますか?

どうもこうも、そのまま燃えないゴミに捨てます。
間違い。
答え、吸殻を取り出し、皆清町ではフィルターは不燃ごみ、残りは燃えるゴミ。
缶は綺麗に洗って皆清町指定の資源回収日に出す。
そんなこと急に言われても分からんたい。

実習が始まった。
遠くで会長が心配そうに見ている。

早い話、ゴミ集めだ。
あまかった。
手を抜こうものならツネ婆さんのきつい言葉が飛んできた。
雑巾がけをやれと言う。
どこを、道路の真ん中だ。
意味が分からず突っ立っていた。
「何やってるのよ。
早く始めなさい」
「どこをやるとですか?」
「コンクリ、あそこのアスファルト」
道路の雑巾がけ、、、!
どうなっとると!

ツネ婆さん、老眼、近眼なし、とにかく目がいい。
80で視力は1.5だと、どうなっとる。
ニックネームが決まった。
鉄人ツネだ。

目をおっぴろげて、あそこにもゴミがあるでしょう!
道路の白いのはチュインガムよ、ちゃんと剥しなさい!
その土色、ゴキブリがプレスされたのよ、ちゃんと回収!
電柱を磨こうとしたら怒られた。
その木偶の坊は都のよ、だと。

一生懸命にやったので講習合格をもらった。
会長の気持ちを汲んで甘くしてくれたのか。

鉄人ツネ婆さんの講習終業の言葉は、
ゴミ処理の間違いは2回までよ。
3回目はあなた、ゴミよ、だった。
加藤清正が作った法律、三振法を取り入れてる、と言った。
昔は軽い罪や粗相が3回になったら家臣は切腹だったらしい。

400年も前に三振法を清正はやっとった。
ゴミって、、殺されるとやろか、、
忘れよう、明日は夢の島の観光たい。
講習が一日で終わって家賃が5000円安くなったばい。



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7:ごみ ゴミ処分場このエントリをはてなブックマークに登録

7:ゴミ処分場


翌朝、会長の運転で、鉄人、1LDKに入る予定の山田裕子(ひろ子)さん、益田の4人は中央防波堤、外側埋立地、新海面処分場に向かった。
山田裕子さんは美大の学生だった。
益田より優秀な成績で講習をパスした。
鉄人の孫って感じだ。
今日の会長はバルセロナのt−シャツではなかった。
鉄人と同じ、t−シャツの胸に、金色に縁取られた、あの3種の神器、ほうき、チリ取り、ゴミ箱が円の中で輝いている。
円は大きな口だった。
清正公に似ている会長、大一の大口をデザインしたものだ。

こげんセンスのなかデザイン誰が考えるね。
制服やろか、80の鉄人まで、、ジーパン!
着物が似合っとるばい。
気になっていることを鉄人に尋ねた。

「ゴミ捨て場の見学が試験にあるとはどうしてですか?」
「それは最後にあなた達に答えていただきます。
ゴミを見てどう感じたか教えて頂戴」
たまげた、自分で考えろ、、試験だったと?
「ゆう子(裕子)さんもね?」
「はい、、あの、、申し訳ありませんが、私の名前、“ひろ子”です」
「あら、ごめんなさいね。
先入観って怖いわね。
田中裕子さんの大ファンなの、ごめんなさいね。
大一さん、“ひろ子”さんですよ」
「ああ、知っているよ」
「あら、あなたが“ゆう子さん”と言ったのよ。
駄目じゃない、間違えちゃあ」
「ああ、そうだったな」

おかしか、会長は“ひろ子“と言っとったばい。

清掃車だらけたい、戦車ごとある。
トンネルに入った。
会長がクーラーを切って窓を開けた。
結構、臭か。
美味そうに深呼吸をしとる。
鉄人もしとる。
どげん人間たい、、

「東京都で、去年、一人が一日出すゴミの量は1.138kにもなります。
私たちの町内は600g以下に抑えています。
400〜500gの差です。
これが大きいのです。
皆が意識すれば減ります。
リサイクルされるゴミは17,8%にすぎません。
去年、ここに埋められたゴミは903.616tにもなります。
単純計算で、2tの清掃車で45万台がここに運んでくるわけです。
一日、1250台以上にもなります」
清掃車の運転手に手を振りながら会長が言った。

トンネルを過ぎた。
清掃車が楽しそうに動いている。
「ここは活気がありますたい」
「益田さん、あなた今何と言ったの!」
活気があってはいけないのよ!」
剣幕たい。
鉄人がt−シャツの右腕の袖を捲り上げた。
ラリアットが来そうな雰囲気たい。
「すみません、そうですたい」
うかつなことは言えんぞ。

だだっ広い、空襲を受けた跡たい。
清掃車が降ろしたゴミをブルドーザーがすごい勢いで蹴散らしとる。
ウミネコ、カラス様たちがすごか、丸々太っとる。
メタボリックたい。
この島にバイキングレストランがあるけん運動不足になるたい。

山田裕子さんはおとなしか、、
違った、、目が異様に輝いとる。
ああ、そうたい、美大の学生だったたい。
この景色、見て何も感じんようなら芸術家じゃなかばい。
自分も感じ取るもんね。
今からでも芸術家になれんやろか、、

人間はゴミで島造って世界繋ごうとしとるとやろか、、
ゴミで繋がる世界、、夢がなか。

防波堤脇で、弁当をあけた。
ウミネコが寄ってきた、すぐ上を舞っている。

珍しい!
こんなとこで人間が、、何やってる?
え!こいつら、ご飯を食べる気だ。
匂いが俺たちのとは違うぞ!

グロテスクなものばかり入っていた。
半熟卵に、納豆が入ったオジャー、デザートがプディン。
どう見ても“げろ”に見えるばい。
鉄人、会長は目を合わせて笑っている。
へっちゃらたい。
好きなものばかりたい。
裕子さんも美味そうに食べている。
「どうです、お二人とも、これだけのゴミの匂いをかぎながら食事するのは初めてでしょう?」
「ええ、何とも言葉が出てこんです」
「私も、でも苦になりません。
私達が出したものですから」

もう上空はウミネコで真っ白だ、太陽より白い。
何とか、食べ終えた。
げっぷを抑えた。
ウミネコ達が笑った。
そんな美味いもの食べて、げっぷかよ、って顔しとる。
裕子さんは自分よりすごか。
プラスチックの容器まで食べそうだ、米粒をことごとく口に放り込んだ。
食べた後がすごかった、びっくりしたたい。
プラスチック容器をハンカチで綺麗に拭いた、、拭いたとですよ、中も!
ハンカチ持っとらん、困った。
真似せんば試験に落ちるかもしれん。
見渡しても何もなか。
ワイシャツの袖で厳かに拭いた。
また、げっぷが来た、

「さ、感想を聞かせてもらいたいわ。
なぜここが試験になっているのか?
益田さんからおっしゃって?」
「ものを買う時は、食べた後まで考える。
ゴミがどのくらい出るのかまで考えて買う。
ゴミを減らす努力をする」
「あら、標準語?」
「まだここに来て何日にもならんとですが言葉がおかしくなっとるとです」
「そう、、、“ゆう子さん”は?」
「、、、、、生きている限りゴミは出ます。
焼却しても灰が出るからどうしてもここのように最終処分場が必要になるわ。
ダイオキシンや重金属などの有害物質が空気に拡散されるのを防ぐのは難しいわ。
これからの世界は私達、一人一人の行いにかかっています。
直にこのゴミの山を見て本当に減らす努力をしなければと感じました。
いい機会をいただいて感謝します」
「はい、まあ、いいでしょう」
「ここで弁当を食べるのが分からんとです?」
「う、ふふ、、ふ、私の弁当おいしかったでしょう?」
「はい、とっても、、胃の中も嬉しくて馬鹿踊りしとったです」
「お二人とも、綺麗に食べたわね。
それだけ容器を綺麗にしていただいて嬉しいわ。
ねえ、大一さん」
「はい、なかなか有意義な観光でしたな。
ツネさん、明日、最終面接やろうかね」
「ゆう子さんも益田さんも明日、時間は大丈夫?」

山田さんは名前が二つになり、ウミネコはバイキングレストランでご飯を食べていた。


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8:ごみ 面接試験このエントリをはてなブックマークに登録

8:面接試験


皆清町公民館に通された。
木造たい、きれか、。
ミニチュアの天守閣ごとある。

会長、鉄人、それに3人のお年寄りがt−シャツ姿で座っていた。
サンレイン不動産の紹介で部屋を見に来た時、窓に座っていた人がいる。
t-シャツの色は会長、鉄人が白、3人は青、黄、赤、なんのことはなか、信号たい。
デザインは同じで、大口の中に3種の神器(ほうき、チリ取り、ゴミ箱)が見える。
町の正装やろか。
あれ、皆ピアスしとる。
男性爺さん達は右に、女性婆さんは、、見えんたい、
ああ、鉄人のが見えた。
皆、おんなじ形たい、ほうきだ。
昨日、会長はチリ取りをしとった。
毎日、三種の神器を変えとると?
男性爺さん、女性婆さんって言い方は、、おかしか?
いや、ここじゃあおかしかことなか、
80の爺さんが、毛むくじゃらの耳にピアスしとるぐらいたい。
どう見ても、KKK(クークラックスクラウン)の秘密結社のごと不気味たい。

「町民の皆様におかれましては、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、ここに、アーバンキャッスル・皆清、202号室、203号室、入居希望者、山田裕子さん、益田重朗さんの最終面接を開催いたします。
私が町会長の清尻大一、こちらが大家の清宮ツネさん、こちらが組長の清原博さん、前川清さん、それに水前寺清子さんです」

皆清町、初めての歴史的な日になりそうだったので皆、興奮していた。
2人の新人が入居する、この20年なかったことだ。
清原博さんは左膝が痛いのを忘れ、水前寺清子さんは入れ歯を、前川清さんは、朝一番に健康のために歌っていた“長崎は今日も雨だった”がスマップの“ありがとう”になっていた。

なんね!
昔の有名人の名前ばっかたい。
皆、80近か、、
清原博さん、左膝を痛そうにさすっとる。
オリックスの人に似とるばい。

「これからお二人に質問をいたします。
最終面接の参考に致しますので真剣にお答えください。
なお、お手元にパンフレットをお配りしました。
とりあえず用意できるものを揃えました。
後で見ていただいて、皆清町を少しでも知っていただきたいと思います。

共存と共生へ、災害時の指針、お年寄りの災害時対策、お年寄りと介護、皆清衛生自治総会報告、一人暮らしの対策と高齢者、ボランティア助成、皆清地域社会福祉協議会報告書、生涯学習センター講座募集のご案内、お寄りのパソコンワールド、お年寄りの頑張らない体操、お年寄り男性のための料理教室、皆清まつり、皆清音頭の踊り方、皆清神社参拝ツアー、お年寄りとビンゴ大会、さあ、やろうマレット大会、皆清神社集金のお願い、平成16年度皆清行事一覧、皆清保険員便り、以上です。

では本題に、
ここまでお二人は優秀な成績で講習、視察を合格しました。
山田裕子(ひろ子)さんは、これをパスすると合格となります。
益田重郎(しげお)さんは、この後、身元調査を行います。
それ如何で合格とさせていただきます。
ご了承ください。
面接は質問形式で始めます。
こちらの質問に、益田重朗さん、山田裕子さんの順でお答えください。
では、始めます。
ツネさんどうぞ」
「はい、では、質問一、益田しろうさん、
アルミ缶一個のリサイクルで40wの電球を何分点けられると思いますか?」
「え、、こげん試験があるとですか?
しろう、、、?
鉄人、いえ、ツネさん、私の名前は益田重朗(しげお)ですが」
「あら、、ごめんなさい。
重朗さんでしたね、気をつけるわ」
「はい、え、、アルミ缶一個、、5時間ぐらいでしょうか」
「“ゆう子さん”は?
「、ひ、ろ、子、、10時間ぐらいだと思いますが、、」
「正解は11時間30分です。
どうです、意外と長いでしょう。
質問二、トイレットペーパー1巻を作るのに牛乳パックは何個必要でしょうか?
益田”しろうさん”」
「え、、、10枚ですかね、、」
「ゆう子さんは?」
「8枚ぐらいでしょうか?」
「正解は牛乳パック6枚です。
意外と、少ないので驚きでしょう。
そうなのです。
意外と、、、この言葉がキーワードね。
こういう事実を知れば対応も変わりますね。
紙の再利用すれば原料から紙を作る時に必要なエネルギーの約75%を節約できます。
リサイクルは回収されたものが製品になって成立するものです。
だからそうしやすいように出すのが重要なのよ。
スチール缶の原料になる鉄鉱石は外国から輸入しています。
どんどんリサイクルが必要なのよ」

どげんなっとると、難しかぞ、、
誰が答えられるね。

会長の大きな口が開いた。
「これは、正解を期待していません。
あなた方の反応を見るためです。
次に移ります。
今、自民党総裁選をやっています。
これに関して率直な意見をお述べください」
「あ、、はい。
自民党はきたなかです。
麻生、福田は仲よか男とおなごたい。
お互い2世議員、代々もう出来とります。
戦略は国民の目を自民党の醜態から逸らすことたい。
マスコミ、国民、もう自民党のシナリオ通り動いとるたい。
安倍は衝撃を与えんばいかんと考えてああいう辞め方をしたとです。
今のとこは上手く行っとりますが、自民党はもうリサイクルできない不燃ゴミですたい。
ウミネコサン達もうんこを空から浴びせるたい。
金まみれの垢、泥、ヘドロがこびりついてもう埋めるしかなかとです。
政権交代が致命傷になるけん必死です。
これまで隠してきた金まみれのマグマが噴火して表に出ますけん。
民主党に一回やらせんといけんです。
不燃ゴミは処理せんといけん。
日本の国民は馬鹿じゃと、思っとりますけん、むずかしか、、」
「はい、、いいですか、、では山田裕子さん」
「国民は馬鹿ではありませんよ。
ちゃんと見ています。
諦めてはいけないわ。
むずかしい、大変だと思っていては駄目です。
改革の名のもと生活は厳しくなっています。
税金の無駄遣いは相変わらずです。
社会保険庁のような泥棒集団を野放しにしてきた政権、厚生大臣、もう改革は必要ありません、革命が必要です。
その一歩として、私達、国民が取りうる手段は政権交代です。
民主党が駄目なら又変えましょう。
主権は私達にある、どれだけの人が思っているでしょう。
官僚、政治家、彼等の主人、雇っているのは私達、国民だと、どれだけの人が感じているのかが問われています。
世襲議員が政治家、大臣、総理大臣、いい加減にしてもらいたいと思います」

皆清町の面接試験はおかしかぞ、革命を企てとるごとある。
お年寄りの項目のパンフレットが多かし、、確かにここは年寄りばっかたい。
若いのまだ見とらん。
ここはなんかあるばい。
年寄りに革命できっちゃろか。
年寄りオカルト集団やろか?
そういえば、あの鉄人の猫ちゃん達は若かったたい。
鉄人もおかしか、、
山田裕子(ひろ子)さんは“ゆう子”、自分も“しろう”たい。
ややこしか、、会長は知らん振りしとるし。
天草四郎の“しろう”ごとある。
あの鉄人が、、ボケるっちゃろか、、

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9:ごみ new益田このエントリをはてなブックマークに登録

9:new益田

益田の身元調査の結果は?マークで終了した。
会長の一存で仮入居を許された。
益田に関する情報を得ることが出来なかった。
親類はお母さんの妹を除いて原爆、原爆病で亡くなっていたためだ。
彼女も、老齢と原爆病で介護施設に入っていた。
17歳で亡くなった四郎(秀綱)に子供がいたのか、調べようがなかった。
ただ、益田の本籍になっている妹さんの家の庭に、うり、ひょうたんが植えられていた。
ひょうたん、は豊臣秀吉、天草四郎の共通する馬印(注)だった。

あの、馬鹿らしい、視察、面接試験から3か月が経った。
その間、状況は劇的に変化していた。
昨日、仮免居期間が終わった益田は、アーバン・キャッスル皆清、203号室、入居が正式に許可された。
202号室は、あの山田裕子さんだ。

講習、視察、面接を3日で終えることが出来て家賃が2万円安くなって5万になる予定だったが、結局、家賃なしで住んでいた。
ややこしい、、町会長、清尻大一の下で皆清町職員として働き始めたからだ。

益田は転勤してきた会社に一日も行かず辞めていた。
当然、長崎でお母さんの看病をしている奥さん、君子さんとの仲がおかしくなった。
なんせ、転勤先の清掃卸の会社は、君子さんのお父さんが世話した会社だ。

皆清町、総人口100人の97%は60以上のお年寄りだ。
一番若いのが山田、22歳、その次が益田、30、そして201に住む40代の福島だ。
何のことはない、アーバンキャッスル皆清住人、3人だけが60以下だ。
だからお年寄りは、アーバンキャッスル皆清をヤングキャッスルとも言った。
山田はともかく、30,40のどこが若いのか。

町内に住むお年寄りの世話が益田の主な仕事だった。
それに、月木の可燃ゴミ、火の不燃ゴミ、金の資源ごみの管理、並びに毎朝の老人、掃除体操の検査が加わる。
ここのお年寄りは異常なぐらい掃除好きだ。
毎朝、オリジナルの掃除体操に体系化した鉄人の音頭で2時間運動していた。
綺麗になるはずだ、皆、一心不乱に磨いている。

仮入居した、面接試験3日後から想像を絶するような事態が続いていた。
体の不自由な、介護が必要なお年寄りの世話に忙殺されていた。
山田裕子さんも美大に行く傍ら、臨時の町職員として働いていた。

お世話も試験だと思っていた益田は一生懸命にやった。
入居のためだった、それが人助けの喜びに変わった。
会長から話があった。
会社を辞めてここで働かないか、老人の世話をする職員を募集している、と。
家賃はただ、月給30万、勤務時間、不定、魅力的な仕事だ。
人助けができる、益田は迷わず就職した。
但し、条件があった。
なるべく標準語を話して欲しい、と言う。
お年寄りから何を言ってるのか分からない、と苦情が殺到したそうだ。
皆清町の故郷は山形、おまけに耳が遠い、
ツネ鉄人先生の標準語講座が毎日2時間続いていた。

お年寄りの苦情は少なくなったが、益田自身、何弁を話しているのか“カオス”の真っ只中にいた。
それに転勤した会社に一日も行かず辞め、電話の言葉が別人、、奥さん、君子さんとの仲がこじれにこじれ別れ話に発展していた。

アーバン・キャッスル皆清201号には福島正という、40代の男性が一人で住んでいた。
加藤清正公の親友、福島正則の子孫で、山田裕子さんにいたっては、島原の乱の際、篭城していた原城から一人だけ生き延びたといわれる南蛮絵師、山田右衛門の子孫だと、会長が真顔で言った。
自分は天草四郎の親戚かなんかだと言いふらしているはずだ。
益田は会長をほら吹きだと思っていた。

福島正さんは遅れてきた秋葉系というか変な人だった。
会うたびに服装が違った。
コスチューム衣装だったり、女装だったり、、、
益田はスパイ大作戦に出てくる変装の名人のようだと感じていた。

この3か月間で、不可思議なことが2回あった。
痴呆で介護がむずかしくなったお年寄り二人が忽然と消えた。
翌日、見知らぬ初老の人がいた。
故郷に帰ったので親戚が代わりに住む、と会長が言った。
補充されたという感じだ、益田は奇異に感じた。

会長の息子、大二と大三は皆清町には住んでいなかった。
夜半、数回、会長の家から出てくるのを見かけた。
益田は、まだ彼らに紹介されていなかった。

益田の右耳にはゴミ箱の形をしたピアスがあった。
白いT−シャツの胸には、あの三種の神器が大きな口の中で輝いていた。



馬印:戦国時代から江戸時代において戦国武将が己の位置、武威などを誇示するために旗や、自身の周りに置く印。(ウィキペィア引用)

福島正則:戦国武将、加藤清正の親友。

山田右衛門:島原の乱、幕府原城攻撃の際、唯一生き残った南蛮絵師。
裏切り者、内通者、諸説あり真相?





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10:ごみ 三振法このエントリをはてなブックマークに登録

10:三振法

当初、月火木金のゴミ出し日は交代で集積場に出て管理をしていたが、6時から始まる鉄人の掃除体操を去年からやるようになって交代制はいつのまにか消滅していた。
雨、雪の日を除いて常時70人以上のお年寄りが、ほうき、チリ取り、ごみ箱、たわし、雑巾を持って集積場の周りを徘徊していたからだ。
しかし、最近、アパート、ワンルーム・マンションの増加に伴い新しい入居者との間で問題が生じていた。

南池袋100丁内には皆清族以外の人も住んでいた。
ゴミ集積場はAB、2か所あり、Aは皆清族の人だけだったが、Bは共用だった。
騒動の元は、皆清町が加藤清正公の作った三振法を採用していることだった。
ゴミ出しの警告は2回まで許された、3回目になると三振、ストライクアウトだった。
ゴミ出し模範生に改心するまで、とんでもないことがその人に降りかかった。

益田は会長の指示で、近隣住民とのトラブルを避けるため、月火木金のゴミ出し日にはゴミ集積場Bを4時半から見回っていた。
会長がゴミの横で寝ていることも結構あった。
生ゴミに変なものが入っていないか気になって眠れないのだ。
というのも、三振法適用を命じるのは鉄人ツネ婆さんの役割だったからだ。
以前はそうでもなかったのに、最近は皆清族の、ゴミ急進派・原理主義者の議長になっていた。
痴呆気味だったが三振法を言い渡す時だけは活き活きしていた。
彼女の喜びを奪うわけにもいかず、会長は鉄人が来ない内に、益田と二人でゴミをチェックすることにした。
しかし、7時半に見回りに来る鉄人に現場を押さえられたらどうしようもなかった。

皆清族は皆、本当に異常たい、それが分かっていないところが又、異常たい。
今のところは分かるばってん、自分も先は自信なかたい。

ワンルームマンション犬に住む佐川俊夫が7時40分に生ゴミを持ってきた。
若い、アンちゃん風のサラリーマンだ。
視力、1.5の鉄人の目が輝いた。
この半年で5人の三振者を見つけた眼力は、どんなに小さなプラスチックでも見つけてしまう。

「あら、あなた、生ゴミにプラスチックは駄目と言ったでしょう。
あなたでしょう、プラスチックに不燃ごみ入れるのも」
「違いますよ。
たまには入れるかもしれませんが」
「たまには入れるって何?
絶対に入れないで頂戴。
四郎(重雄)さん、警告何回か確認して?」

益田は三振法適用記録帳を調べた。
警告回数を記入するのは益田の仕事だった。
「はい、ワンルームマンション犬、401の佐川さん、今回が3回目です」
「あなた、三振!」
「何が三振なーの!
ゴミと野球関係あんのかよ?
ババアと野球やってねぇよ。
生ゴミにDVDのちっぽけな包装紙間違えて入れて悪いのかよ。
急いでんだよ。
怖いババアだ」
「はい!
これで、あなたの警告は3回になりました」

ここで会長の言う、鉄人の元気になる儀式があった。
ジャッジ、ジャッジ、ジャッジ、ジャッジ、
K1,PRIDEの審判のように右に回りながら90度で人差し指を立てて言った。
「被告に三振法を適用します」、と叫んだ。
何かに似ていた、“あなたには黙秘権〜〜”刑事言葉と同じだ。
滑稽だった、判決を言い渡された当人はもういないか、背中は遠くにある。

「四郎(重雄)さん、これから毎朝、杉の枝切ってそこ左200m入ったワンルーム・マンション犬401号のドアに置いて頂戴」
「杉、、?」
「あの若者、花粉症なのよ。
時期じゃないけど毎朝、杉見るの嫌でしょう」
「、、はい、分かりました」
「401よ、間違えないでね」

間違えないでね、必ず最後に言う台詞だ。
どうも鉄人は相手の部屋を以前間違えたことがあってそれが揉め事の原因だ、みたいな事を会長が言っていた。
本人はもちろん覚えていない。
その役を会長が自分にするよう働きかけた、と言った。
騒動の原因は鉄人だったのだ。

2か月前、最初の三振法適用者のときは面食らった。
川口という40代のサラリーマン風の男性だった。

悪質だった、、納豆の容器、レトルトのカレー、すべて洗わずにそのままゴミの中だ。
洗濯して、乾かして出す皆清族の人にとって、情状酌量のない重罪だった。
鉄人が例の儀式を2,30m先を歩いている川口さんの背中に言った。

「四郎さん、後で私のパンティ、ブラージャーあげるから川口さんのドアに置いといて」

びっくりした、鉄人のパンティ、ブラジャー、、冗談たい、、80の婆さんの、、
色気がなかやろ、、置いて来い、、と言う。
「改心させるのはこれが一番なのよ。
洗って綺麗に出すようになるから見てなさい」
「他の集積場に持って行くとじゃあないですか?」
「気づかせるの、馬鹿なことしているって。
嫌でも気づくわ。
改心すればわざわざ遠くまでゴミ持って行くことないでしょう。
見てなさい、規則どおりにゴミ出すようになるから。
いつもそうなんだから」

どうなることかと思った、今では川口さんはゴミ出しの模範生だ。
これまで三振法の判決を受け人は皆そうらしい。
その時、益田は感心した、いや、ひどく感動した、、鉄人のパンティはt−バックだった。

相手が女性の場合は、ドア前に置いてくるのは、その女性の出したゴミの中から鉄人が取り出したプライベートなものだった。
お陰で皆、模範生になった。
しかし、問題があった。
当の益田が時期でもないのに花粉症気味なのだ。
これまでやってきたはずなのに鉄人はいたって平気だ。


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11:ごみ 鉄人が消えたこのエントリをはてなブックマークに登録

11:鉄人が消えた


どこの地区にも問題はある。
特に隣近所のトラブルは嫁姑問題と同様、汚染された空気のようなものだと益田は思っている。

偉い坊さんでも、哲学者でも、思想家でも、自分の丹精込めた、命を吹き込んだ庭に猫がウンチしたらたちまち凡人になる。
彼らが遊びに来るのを阻止しようと、お経が、哲学書が、崇高な本が“猫の嫌がる,,本”、“猫を遠ざける,,本”になり、果てはビデオを設置して要塞化に励む。

猫をよく知っている益田はそんな家を見るとおかしくなった。
努力実って、嫌がる本、遠ざける本共にうっすらほこりが付き始めた頃、彼らの余興が始まる。
入ろうと思えばどんな要塞であろうがいつでも入れた。
盆栽の中にウンチもできた。
屋根、木に登って落とすだけだ。
そこまでやっている人間達が可哀相に思えてそれなりに配慮していただけだ。
そんな意地悪なことをしないで一緒に生きていこうね、と改悛してくれれば、
これからは少し深く掘ってウンチを分からなくしてあげれるのに、、、

隣の住人、町、県、国、なぜ隣同士は仲が悪いのたい、、、、
鉄人の標準語化・講習のお陰で言葉の使い方がおかしい。

長崎では、奥さんの君子さんの実家の東隣に住んでいた。
君子さんのお母さんと西隣のお婆さんは、、もちろん仲が悪い。
信心深い君子さんのお母さんが隣に向かってお経をあげるぐらい仲が悪い。
隣が引っ越してきた翌朝、ウンチがあった。
誰の、、か分からない。
私立探偵お母さんは、今までのも隣で飼っている犬が実行犯で主犯はお婆さんだと断定した。
隣が越してくる前にも数か月に一回の割合でウンチがあったにも拘らずだ。
以来、冷戦状態が続いている、もう20年以上になる。

アーバン・キャッスル皆清、隣に組長の水前寺清子さんが住んでいた。
町の序列では、鉄人がナンバー2で水前寺組長婆さんはナンバー5だ。
ナンバー2より若干若くて76歳、視力、1.2、やや老眼気味だったが、1.5老眼なしの鉄人が異常なだけで、負けず劣らず体力は素晴らしかった。
敏捷性はさすがに小学生の子供並みに動く鉄人には遠く及ばなかったが持久力は勝っていた。

水前寺さんは大の犬好きで3名いる。
鉄人は大の猫好きでこちらも3名。
しかも二人とも大の猫嫌いと犬嫌いだ。

大、大、、これ以上書くと別のをイメージしてしまうので控えます。

これで問題が起きないのがおかしい。
唯一の共通点は、同居人を人間並みに呼ばないと気分を害し、話しかけても知らん振りするぐらいしかない。
水前寺さんは猫よけのレモンの皮、水が入ったペットボトルを町中に置き、
鉄人はそれに抗議し、町内に野良猫用の給食センターを立ち上げようとがんばっている。
益田は両刀使い、両刀使い?
猫も犬も大好き、当然、仲裁役が回ってきた。

この二人、どんな時でも会うと必ず同じ話題を口にした。
内容はまるっきり同じ、お互い頑ななだけに進歩がない。
「水前寺さん、レモンは道路に置かないようにしてください。
ゴミです。
かたづけるのが大変です。
ペットボトルも置かないで、みっともなくて恥ずかしいわ」
「私の庭にウンコさせないようにして、この前軟らかいのがあって困りました。
餌をあげる婆さんが近くに住んでるからいけないのよ」

犬猫を溺愛しているのに、なぜこうなるのか到底理解できん。
自分の馬鹿さ加減が分からんけんたい、
二人の会話を録音して聞かせたら面白かばい。
変化があるかもしれん。
やることにした。

予め録音したレコーダーを二人が鉢合わせた時に再生した。
散々な結果に終わった。
鉄人はそれほどでもなかったが、水前寺婆さんはカンカンに怒って益田の頭を小突こうとした。
結構、この婆さん、武闘派だ。
鉄人は何が起こっているのか理解できなかった、、と感じた。

皆清町、唯一のシンガーソングライター鉄人は、これまで朝一番にやる自分のオリジナル掃除体操、掃除音頭を壇上で指導していた。
最近、歌詞を忘れて佇んでいる姿をよく見かけた。
3か月前は、自分を四郎、山田裕子(ひろ子)をゆう子、と間違えるぐらいだった。
最近、会長をドナウジーニョと呼んでいた。
最初、目の前でドナウジーニュと呼んだ時、鉄人の痴呆が治ったのかと思った。
80の婆さんの領域を超えた若々しい響きがあった。
ロがドになっていたが、ひどく嬉しかった。
そうではなかった。
自分を見て釜本さんと言った。
釜本、、?
釜本邦茂、日本サッカー協会の副会長だ。
68年、メキシコオリンピックの得点王になった人だ。
それ以来、自分の名前が四郎、釜本になった。
痴呆が進んでいた。
家の奥さんのお母さんと同じだ。
外観は変わらないのに別人のようだ、
あの鉄人が、、こうなるの、。

今朝の掃除体操、壇上には水前寺婆さんがいた。
鉄人がいない。
会長が手招きした。
「ツネ婆さんはどうしたですか、調子でも悪いとですか?」
「昨夜、故郷に帰った。
あなたによろしく言ってたよ」
「どうしてですか?」
「痴呆が進んで支障が出てきたからね。
で、益田さん、頼みがあるのだが、3匹、猫預かってくれないかな。
清子さんは猫嫌いだから、、、
アーバン・キャッスル皆清の大家は水前寺清子さんに代わるので猫の面倒見る人がいないんだ。
あなたに頼めないかな」

というわけで3人の猫が家にいる。
鉄人がいなくなった夜、3時ごろ、車の発進する音がした。
窓から見た時は誰もいなかった。
何も言わんで行かんでも、サヨナラぐらい欲しかったたい。

60半ばの清川虹子さんが水前寺さんの家で暮らしている。
鉄人の親戚だ、会長が言った。
もうずっと住んでいるって感じだ、違和感がない。
2か月前に、二人、忽然と消えた時と同じだ。


ロナウジーニュ:サッカー・スペインリーグ、バルセロナの選手。ブラジル人

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12:ごみ 死体ゴミこのエントリをはてなブックマークに登録

12:死体ゴミ


2008年、3月、冬も終わろうとしていた。
益田は会長の信頼を得ていた。
年末の、町の期待される人間像のアンケート調査でダントツの一番になった。
何のことはない、候補者は遅れてきた秋葉系の福島正さんと二人だけだ。
山田裕子さんは美大を卒業して、町の職員になっていた。
余暇にゴミ廃材を利用してアート活動をしていた。
おかげで益田の仕事は楽になった。

掃除体操、掃除音頭、三振法、すべて武闘婆さん、鉄人の後釜の水前寺清子婆さんのことだ、の裁量に任されていた。
益田は彼女の部下になる。
序列もナンバー3まで上がったようで、町始まって以来の婆さん次期会長になるのではと噂されていた。
ナンバー2の清原博さんの膝の状態がよくないためだ。

鉄人がいなくなって皆清町の猫達は迫害の日々を過ごしていた。
鉄人が作ったプレハブの臨時給食センターは撤去され、多くが町から強制退去を余儀なくされた。
武闘婆さんの猫一掃作戦によって、もう至る所、レモンの皮とペットボトルがいばって座っていた。
町全体がレモン漬け状態だ。
益田はやせ細った住所不定猫を哀れに思った。
彼らのために何かをしてやりたかった。
鉄人への感謝の気持ち、恩返しだ。

鉄人が残していった3人の子に、ウンチしたくなったら教えて、と頼んだ。
武闘婆さんの部屋の周りにさせたかった。
やはり、恥ずかしいのか教えてくれない。
しゃがんだのを見たら、誰もいないのを確認して一階に駆け下りた。
問題が生じた、3人とも綺麗好きだ。
穴を掘り過ぎる、ウンチが見えなくなる。
武闘婆さんに見てもらいたかった。
罰が当たった、と改悛してもらいたかった。
コンクリの上でさせた、これだと掘り過ぎない。
3回で止めた。
可哀相になった。
掘って、さあやろうと身構えて、また掘って、落ち着きがない。
くるくる、くるくる、腰を落としては回っている。
綺麗好きだ、やはり掘り足らないのだ、実際掘れていないのだから。
結局、土にしてもらった。
掘り過ぎるのを利用した。
落とし穴作戦だ。
シャベルでウンチを完璧に隠した。
草履と足袋にべっとりだ、、と期待したがことごとく外れた。
視力1.2だったのを忘れていた。

2、3日前から武闘婆さんの挨拶の言葉が変わった。
疑われている。
「猫の便秘はどう?」
どきっと、した。

方針を変えた。
夜半、シャベル片手に運ぶことにした。
こっちの方がたやすい。
しかし、改悛するどころか益々猫嫌いになっている。
何か他の手を考えなければ、

今年になって、お年寄りが二人、忽然と消えた。
誰も補充されなかった、少子化の影響だろうか。
人口が98人に減った。

今朝、会長に連れられて、ある屋敷へ行った。
どうも堅気のようには見えない。
博徒かテキヤ、そんな感じだ。
応接間に、小柄だが結構迫力のある老人が座っていた。

「大一さん、二つありますんでお願いします。
明日、もう一つ出るんで、合計三つ」
「三つですね。
分かりました。
明日の夜、伺います。
会長、紹介しておきます。
家の益田重朗です」
「おう、あんたか、天草四郎の、、?
奇遇な縁だな、、」
「え、、、」

会長が天草四郎にしとる。
もうどこでも天草四郎にされとるぞ。

「私は蜂須賀勝、蜂須賀正勝の子孫です。
なんかこうも豊臣家ゆかりの子孫が集まると勇気が出る。
今が混乱期なら、一仕事できたのに」

なんば言うてると、言いよっとるの、表現がおかしか、、なんば言っとるとよ?
、、、鉄人が急にいなくなって標準語化講座の後期を消化できなかったからだ。

「蜂須賀正勝?」
「益田さん、蜂須賀小六(ころく)は知ってるかね」
「あ、、はい、、あの豊臣秀吉の強盗団の、」
「益田さん、言葉を慎みなさい。
強盗団じゃないよ」
「あ、いい、いい。
テレビ、映画じゃあ強盗団、野盗、になってるからな。
小六の子孫です」
「そうですか、、」

やたら子孫が多いな、、

「で、大一さん、崇伝の情報は?」
「福島が探していますが、脈はありそうなのですが、まだ」
「何のことたい、崇伝?」

帰りの車中、会長が言った。
「明日、夜9時に蜂須賀さんのとこに行く。
帰りは明後日の正午頃になる。
今晩はよく休むように」
「明後日、資源ゴミですけど」
「山田さんが出るからいい。
益田さんにはこれから別の仕事をやってもらうから」
「別の仕事、、はい。
会長、蜂須賀さんが言っとった三つとは何ですか」
「死体」
「死体?って、何ですか?」
「死んだ体、ゴミのことだ」
「人間の遺体ですか?」
「数か月に何回かある。
堅気でない職業の人はよく死ぬ。
それを私達、皆清族が掃除してあげる。
蜂須賀さんは集積屋だ。
ゴミが集まってくる。
私達が処理する」
「は、、よく死ぬんですか?
ゴミって人間の遺体ですたいよね?
「ですたいよね?
一応、人間の形はしているが、ゴミだ」

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13:ごみ 5センチの男このエントリをはてなブックマークに登録

13:5センチの男

夜9時、会長の次男、清尻大三と二人で蜂須賀さんの屋敷にゴミを取りに行った。
清掃車には大三が勤めている池袋の清掃会社のロゴが入っていた。
会社も死体ゴミに関わっているのだろうか。
大三は同じ世代だ、25ぐらいだろう。
深夜、部屋から見かけたことはあったが初対面だった。
この町に来て半年以上、自分が信用できる男か見ていたのだろう。
会長が紹介してくれた。
「大三、益田さんだ。
これからゴミ搬送は二人でやってもらう。
道中、気をつけてな」
「大三です、よろしくお願いします」

車中は静かだった。
皆清町がおかしい所だったのでどんな人物か興味がった、なんせ初めての若い皆清族だ。
益田は他人に気を遣わない、疲れることはしない。
自分の世界に閉じこもる方だ。
大三もそのようだ、ただ運転している。
乗ってすぐ気づいた、運転が上手い。
眠くなりそうな心地よい揺れ、案山子も立ったまま乗れる。
その度に、眠気覚ましのブレーキがかかる。
信号に捕まらない、速度は50以上は出さない。
むやみにアクセルを踏まない。
エコドライブの見本だ。

蜂須賀さんの屋敷に近づいた。
とんでもない狭い道を普通に走っている。
おかしい、昨日、こんな道を通らなかった。
塀、家、ビル、すれすれだ、その差、5センチ。
大三は楽しんどるごとある、どげんしたと。
この分なら車の幅より狭いとこも行くぞ。
ニックネームを“5センチの男”にした。
言ったら、ことだ。
変に勘ぐる。
口に出さないように気をつけよう。

「大三さん、蜂須賀さんのとこに行くんですかね?」
「ええ、すぐそこですよ」
「こんな狭い道、昨日なかったような気がしとりますが」
「ええ、開拓した道です」
開拓?なんば開拓しとると、東京で。
「道を造っとるとですか?」
「楽しいでしょう、裏道。
親父がいると怒られますからこれから四郎さんで楽しめます。
よろしく」
「はあ、、私の名前は益田重雄ですが、四郎ではないです」
「何をおっしゃいますか、天草四郎でいいじゃないですか、、おっとこの路地だ。
すぐそこです」

黒いプラスチック袋三つが無造作に蜂須賀さんの屋敷の庭先に転がっていた。
成る程、会長が言ったようにゴミだ。
中年の男がいた、蜂須賀小六さんの姿はない。
「大三さん、頼みます。
横浜産で三浦海産の箱に入ってます。
冷凍されていたので臭みはないです」
なんじゃあ、、海産物の運搬か。

普段、会長に聞けないことを聞いた。
「どこに行くとですか?」
「山形のX山です」
「死体を埋めるですか?」
「家の一族の寺で供養して埋葬します。
皆清族、代々のビジネスです」
「はあ、、大三さんは皆清町には住んでいませんね?」
「あそこは年寄りだけです。
俺達、若いのは皆青町に住んでます、北区です」
「若い?皆清町みたいな町があるとですか?」
「規模は南池袋より大きくないのですが約40人ぐらいいますかね。
親父の若い頃は100人以上いたそうですよ。
少子化ですよ、我が一族も減っています。
“かいせい”でも字は違いますよ。
かいせいのせいは青で、青年の青です。
正式には皆青年倶楽部町と言います」
「青年倶楽部町、、、やっぱり綺麗にしとるですか?」
「南池の皆清町は異常です。
誰が道路、道、雑巾がけします、いくらなんでも。
そんなことしたら病院送りになります」
「はあ、世代のギャップがあるとですね。
皆清族は加藤清正公の子孫だと会長が言っとったのですが、そうなのですか?」
「家の巻物ではね。
加藤清正公の子の加藤忠広の娘が山形で結婚した相手が清尻大五郎、家の先祖様です。
でも、あくまで家の巻物ではですよ」
「はあ、巻物では、、そうですか」
「2008年ですよ。
巻物を鑑定団に出せと親父に言ったんですが、殴られました。
あなたこそ天草四郎の子孫らしいと、親父が興奮して言ってましたが」
「何を言うとるとですか、こんな私がそげんなはずないでしょう」
「親父の周りは子孫だらけもう何が出てきても免疫が出来てます。
203の山田裕子さんはあの島原の乱で一人だけ生き延びた山田右衛門、201の福島正は福島正則の子孫です、、、親父が言ってましたけどね」
「山田右衛門?」
「幕府の密偵であなたを殺した張本人でしょう」
「私を殺したんですか」
「原城に閉じこもった一揆軍3万7千人で唯一人生き延びたんですよ。
知らなかったですか」
「全然、」
「絵描き、洋画家だとか、世界三大聖旗の一つ、天草四郎陣中旗は有名らしいです」
「山田裕子さんは、そういえば美大だ。
まさかそげんことはないでしょう」
「福島正さんは知ってるでしょう?」
「隣に住んでますが、まだ挨拶も、、、」

何度も会っていたが、話せなかった。
というのも、いつも別人のように思ったからだ。
女性、婆さん、ハーフ、オカマに始まり、男、老人、パンク姿、ロック少年、学生服、セーラー服、何でもありだった。
突然変異したカメレオンどこじゃない。

「先祖様の親友だと親父が言ってました」
「先祖様、清正公の、親友?
なんですか、それ?」
「福島正則のことです。
戦国時代の話です、」
「豊臣時代の親友ですか?
それが、あの福島正さん?
何にでも化けますよ」
「それが仕事ですから、、」
「何の仕事をしとるとですか?」
「子孫探しです、豊臣家を滅ぼした」

大三の目が最後の言葉で異様に光った。

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14:ごみ 方広寺鐘銘事件 このエントリをはてなブックマークに登録

14:方広寺鐘銘事件 


「豊臣家を滅ぼした子孫を探しとるですか?
カメレオン、福島さんが?」
「やけに驚きましたね。
冗談、冗談ですよ。
方広寺鐘銘事件は知ってますか?」
「いえ、知りません」
「あなたの親父さんが、方広寺大仏殿再建の時、梵鐘に刻む銘文を文英清韓に頼んだんです」
「私の親父?」
「豊臣秀頼公ですよ、あなたは秀頼公の子ども秀綱、またの名は天草四郎でしょうが」
「あれ、そうなことはありませんたい」
「まあ、聞いてくださいよ」

おかしい、家の巻物では、、とか面白半分に言ってたように聞こえたけど、真剣な顔をしとる。
うかつなことは言えんぞ。

「文英清韓は生意気な、傲慢な、東福寺や南禅寺の住職をつとめた学僧です。
江戸幕府からの資金援助で荒れていた南禅寺の諸堂の復興に励んだ坊主です。
家の清正公の朝鮮出兵の時は通訳で行きました。
朝鮮語が話せたのでね。
ただ、頭が良すぎて傲慢で困りもんでした」

おかしか、知り合いのごとある。
人が変わったようたい、不気味たい。

「大三さん、よく大昔のことをご存知ですね」
「巻物は家のバイブルですから、餓鬼の頃はお経代わりに読まされました」
「はあ、そうですか」
「あなたの親父さんに頼まれた銘文が問題になったのです。
はめられました」
「はめられた?」
「家康は豊臣家を滅ぼしたくてしようがなかったのです。
口実を探していました」
「口実ですか?」
「世間に非難されないよう上手く豊臣家を滅ぼす口実ですよ」
「はあ、世間の目を家康が気にしたのですか?」
「あなたのお父さん様はまだ大阪におられて健在でしたからね」
「はあ、、」

家の親父に敬語を使った。

「非難を浴びずに滅ぼしたかったのですよ」
「はあ、、なるほどね、」

付き合うしかなかたい。
目が怖いぐらいに光っとる。

「文英清韓の野郎、よりによって国家安康、君臣豊楽の銘文を梵鐘に刻んだのです。
これを待っていたかのように、南禅寺の金地院崇伝、東叡山寛永寺の開祖、南光坊天海と儒学者の林羅山が文句を言いました」
「字を間違えてたのですか?」
「何ですか?
真剣に聞いてます!」
「あ、はい、すみません。聞いています」
「字をよく見てくださいよ。
国家安康?
分かるでしょう?
家康の字が分かれてるでしょうが、ばらばらということです」
「そうですね、そうでした!」

すご