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ジョン レノン


レノンが死んだ!

窓越しにトンプキンス公園を眺めていた。
真夜中過ぎ、通りは人で溢れていった。
誰もが最後の会話をしていた、歌っていた。
通りは、レノンの曲で埋まっていった。

地下鉄を降りた。

太陽が死語に思えるほど程、天が演出した100%曇天だ。
こんな日に、太陽は姿を現わせない。
学校にも、会社にも、、行きたくない、、何もしたくない、
そんな天気だ。
時間はもういない。

通りは、老若男女、あらゆる階層の人間で溢れていた。
セントラルパーク内の追悼式場に向かって歩いている。
すれ違う人の姿はない。
会場をめざす人の帯だけが水のように流れていた。
一様に親しい人を亡くした沈痛な面持ちだ。

公園の空気は寒々しかった。
それは、致命傷を負って地面に横たわり、やがて訪れるであろう死を待つリスの心情に似てひどく重かった。
これだけの人が歩いているのに、落ち葉を踏む音と人の動く音しか聞こえない。
時折、こだまする場違いな車のクラクションが異次元の音に聞こえる。

会場ではレノンの曲がかかっていた。
ステージには長髪のレノンが無表情で椅子に座っていた。
こうなるのを知っていたかのようだ。

暴力に縁のない人間が、いとも簡単に消滅した現実に、
すべてが、か弱く、不安定に揺らいでいる。
前に立っている女性の肩が小刻みに震えていた。
吐き出される白い息だけが寒そうだ。
感覚などなかった。
皆、自分のレノンと別れの会話をしていた。
身動きできない状態で立っていながら誰もが独りぼっちだった。
お互いどんな顔をしているのか分かっていた。
顔を合わせたくなかった。

レノンは死んだ。

theme : エッセイ
genre : 小説・文学

dorock修

Author:dorock修
物語,音楽をとおして何かを共有できないか、心に入り込めないか探っている者です。
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