偽威議員 プロローグこのエントリをはてなブックマークに登録

偽威議員

二世でなかったら政治家になっただろうか?


概略

運命の悪戯で、望まずして片親が世襲政治家だと知ったアフリカ系日本人、加賀大和、遠い昔、朝鮮から帰化した赤城武蔵、二人は首相、長男の策略で高校を退学させられる。
刑事事件を免れるため、ある条件を呑んで日本を離れた。
13年後、武蔵はサチがサナトリウムに入院していると大和から聞いた。
幼い頃から二人は将来一緒になるつもりでいた。
サチは首相、長男の妻となり、心に深い傷を負って離婚していた。
大和と武蔵は長男を許せなかった。





 プロローグ
1:ワイキキ
2:武蔵
3:参議院選挙
4:カラオケ
5:衆議院議員
6:出生の秘密
7:小安首相
8:退学
9:倉本サチ
10:大和と武蔵
11:DVダメステック・バイオレンス
12:サチと武蔵
13:やけど
14:リストカット
15:再生
16:対決
17:前へ
 エピローグ


登場人物

加賀大和:加賀三郎代議士の息子
ファニー:大和の母親
赤城武蔵:大和の友人
倉本サチ:武蔵の恋人、穣二の前妻
小安穣二:首相の息子、秘書。
岸本忠雄:加賀家、代々の秘書
岸本明子:岸本の娘、秘書
土方彦左衛門:後援会会長
小安宗徳:首相.凡凡党総裁
正大党:正大教お抱え政党
主民党:野党第一党
大沢十郎:主民党、党首
会社党:野党第一党(昔)
キャサリン・ウォーカー:ファニーとそっくりシュープリームスの一員



文中、
人種差別用語が出てきます。
差別、誹謗、中傷、蔑視、等を意図していません。

アフリカ系日本人=黒人
韓国(朝鮮)系日本人=在日
の意味です。


全てフィクションです。




プロローグ

「岸本さん、加賀先生の跡継ぎは誰かいませんか?
戦前の立憲民政党代議士、曾祖父、加賀一郎先生に申し訳ないだろう。
伯父の加賀年男様は自治大臣、祖父の加賀二郎様は大蔵大臣、父君の加賀三郎様は外務大臣の要職を勤められた。
こんな由緒ある代議士の家系を簡単に潰せますか?
地盤、看板、鞄があるのに候補者がいないなんて、ほんと情けない。
これまで地盤維持するのに膨大な金を冠婚葬祭費に使ってきたのにみんなゴミ箱行きになる。
何とかならんのかね。岸本さん?
先生様方が可哀相で」
「ごもっともでございます」
「以前、ある女性候補が言っただろう。
“父の気持ちを眠らせておくわけには行かないと重い決意しました”これで有権者はころりだ。
それに“弔い合戦”の旗を掲げれば、どんな”トウヘンボク“でも当選だ」
「ごもっともで」
「地盤を他人に渡すなんて、、。
縁もゆかりもないのが選ばれたらこれまで金、人脈をかけて作り上げてきた構造、、すべて壊れる。
遺産が無くなる。
建築業の安部組、赤城組には死活問題だ。
秘書じゃあ駄目だ。
この由緒ある加賀家を継ぐお方は、、お世継ぎだ!
お世継ぎでなければ。
加賀家は日本200世襲家元に入っている由緒ある家系だ。
阿部家、塩崎家、世耕家、大野家、小安家、鳩山家、青木家、石原家、小沢家、逢沢家、橋本家、島村家、宮下家、渡辺家、南条家、どうです、、素晴らしい名前だ。
この御立派な世襲一家の仲間入りを堂々としている。
この家系を絶やすことは絶対にできない。
簡単に加賀家は生まれていない。
血、汗、金、人脈、、どのくらいの年月が経っていると思っているのかね。
馬鹿でもいい、現に上の200家の中にも一杯いらっしゃる。
皆様、家系を絶やさないために出た。
当選すれば遊べる。
勉強はぼちぼちやればいい。
皆、お仲間だ。
何かあれば、お仲間の2世のお世継ぎ様達が助けてくれる。
もう家族、親戚も同然だ。
こんな楽な仕事は無いのに、、、。
将来、国会は殆ど世襲議員になる。
牛耳れるんだ。
世襲じゃあないのは陣笠(政党、派閥第一主義、何もしない、業界、団体お抱え代議士)になる運命だ。
そういう構想で2世様はがんばっておられる。
だからこそ、子どもが、、血の繋がったお世継ぎが必要なのだ。そうだろうが、岸本さん?」
「はい、、土方様、ごもっともなお言葉でございます」
「あれだけ女性問題が多いお人だった。
いないのか一人も?」
「はい、先生はご多分に漏れず、金髪女性がお好きで世界中に5人のお子様がいらっしゃいます。
ですが、残念ながら皆様、女性で、お一人だけが未婚でございましたが去年、国籍を米国籍にされたようで、、日本で出馬できる道が閉ざされました」
「その女性も金髪だったのか?」
「はい、そうでございます。
私、可能性があるのではと、お目にかかりました。
お美しい方でございました」
「残念だな、、それは、あ?
金髪の代議士、弔い合戦、、泣かせるじゃあないか。
当選決まってたのにな。
他には、、誰もいないのか、、」
「それが、、、もう一人いらっしゃいます、、」
「何!いるのか!」
「はい、、ハワイ外遊中に、、そのお子様を、と父から聞いております。
その女性の方はもうお亡くなりになったと聞いていますが」
「ハワイ外遊中?
また、先生はとんでもない御仁だな。
男か?」
「はい、」
「年は?」
「30にはなっていないかと」
「何をしていたんだ今まで!
又、国籍か?」
「いえ、国籍は2重国籍で、日本と米国のを持っていますので問題はございません」
「何をやってる!
選挙は来年だぞ、急いで当たってみろ!」
「はい、既に接触はしたのですが、、
いえ、、遠目で見ただけでございますが、、」
「遠目に見た!
岸本さん、あなたは何年秘書をやっているんだ。
あなたのお家も世襲秘書一家だ。
分るでしょう?
え、由緒ある200世襲家元から加賀家が消滅するのですよ。
それでいいのですか?
それとも、先生は認知していないのか?」
「いえ、認知されています。
非嫡出子でございます、、」
「何をもぐもぐと!
何で連れてこなかったのだ!」
「それがでございますね、、、肌の色に、、、問題がございまして」
「どういう意味だ」
「はあ、黒人の方でこざいます」
「、、、そうなの?、、」
「はあ、、と思いまして私の一存では、」
「そうか、、、」
「金髪の女性が好きな先生が又、黒人と?」
「はあ、それは、、私にも、、、」













theme : 連載小説
genre : 小説・文学

1:偽威議員 ワイキキこのエントリをはてなブックマークに登録

1:ワイキキ



「駄目だな。黒人の代議士はまだ日本では受け入れられないだろうな」
「はあ、しかし、なかなかの美声の持ち主のようでつい3年前、NHK世界のど自慢大会にハワイ代表として出場したぐらいでございます」
「のど自慢大会、、何を歌った?」
「“きよしのズンドコ節”だったと記憶していますが」
「誰の歌だ?」
「氷川きよし、でございます」
「演歌か?」
「はい、さようで」
「その人物の名前は?」
「黒人の?、、加賀大和様です」
「加賀ヤマトでいいのか?」
「はい、あの戦艦大和でございます」
「わしは海軍の出だ。
加賀と大和に乗っていた。
加賀が沈没した時、2時間泳いで助かった。
のど自慢ね、、演歌、、面白いかもな。
で、おつむの方は?」
「こちらに4年程いてハワイ大を卒業しています」
「日本にいたのか?」
「はい、中学校から高校まで」
「ということは、漢字、平仮名は書けるのだな?」
「と思いますが、そこまでは」
「代議士となると大事なことだ。
確かめんと。
何でも言うことを聞く馬鹿がいいのだが。
まあ、一度見てみるか?
使える馬鹿なら考えよう。
早い方がいい、ハワイに行く。
飛行機の手配をしてくれ」
「そうでございますか?
加賀奥様のご了承は?」
「いらんよ。
そんなもん」
「そうおっしゃられても、他の女性のお子様、おまけに黒人。
一言伝えておいた方がよろしいのでは」
「お世継ぎがいないのは誰の責任だ。
加賀家存亡の危機なんだ。
わしが決まったら話すからいい」
「かしこまりました。
少しお時間を頂けますか?
私、今週はスケジュールが塞がっていまして」
「あなたはいい。
娘さんの明子秘書を連れて行く。
英語がしゃべれるからな」


「土方会長、あそこに座っているのが加賀大和です。
少し、眠そうな顔をしている方です。
ワイキキツアーのデスクの主任をしています。
歳は28。
調査によると、かなり女癖が悪いそうで、付き合っている女性10人までは確認したそうですが、まだかなりの女性がいるらしく諦めた、と言ってました」
「父君の加賀三郎先生に良く似ているな。
うん、、肌は程よい褐色か、、あれなら日本でもなんとか受け入れられる。
字は書けるのかね?」
「はい、4年程日本にいましたので漢字,仮名問題ありません。
達筆だそうです」
「そうか、、。
どうかね、明子秘書?
女性から見てあの男の好感度は?」
「あの眠そうな感じは女性の母性本能を惹きつけますね。
癖のあるハンサムだと思います」
「独身だったね?」
「はい、女癖が悪い独身です」
「いや、君だよ」
「あ、、、私ですか?、
はい独身です」
「どう、あの男は?
いい男かね?」
「まあ、、どう言ったらいいのか。
私の趣味ではありませんね」
「そうかね、、。
まんざらでもない顔をしているがね、明子君。
おつ、顔が赤いね」
「まあ、会長、、」



「どうも、ようこそハワイへ。
こちらは初めてでいらっしゃいますか?」
「ええ、、楽しみにしていました」
「そうでございますか。
では、説明させていただきます。
このデスクが橋本様の、、お名前はサチコ?ユキコ?、」
「サチコで」
「はあ、橋本幸子、、言葉の響きが穏やかでワイキキビーチのそよ風のようです」
「まあ、、」
「このデスクが幸子様ご滞在中、お手伝いさせていただきますワイキキツアーでございます。
私の名前は加賀大和、何かありましたらご連絡いただければすぐ参上いたしますので」
「これ私の携帯、いつでもいいから連絡待っていますわ。
必ずして」
「あ、、はい。
かしこまりました」



「女性にもてるな。
これで女性票は頂か」
「お客様にも手を出しているようでございますよ」
「客に?
そんなこと会社に知れたら首だろう?」
「誘惑するのはお客様の方なので会社は何もしないそうです。
彼を指名してくる女性客が多いので喜んでいるとか」
「ホストクラブじゃないか」
「はあ、もう皆様、ここハワイではセックスに狂っている、とか調査員が申してました」
「そうか、開放的になるのだな、、。
これで加賀先生も、、」


「サリーちゃんよ、ツインベッドでオーシャンフロントの空部屋ないかな。
何とかしてよ」
「今日はないようね。
パーシャルオーシャン(部分的に海が見える部屋)ならあるけど」
「その部屋、キープしといてくれる。
客に聞いてみる」 


「笠置様、遅れてすみません。
残念ながら海が見える部屋にツインがございません。
グレードを落としたらありますがどういたしましょう?」
「どうこうもないですよ、ワイキキさん。
1時間以上も待たせといて、それはないでしょう。
電話しても出ないし。
いい歳してお袋とダフルで寝れませんよ」
「連れの方はお母様だったのですか?」
「言いませんでしたか!」
「申し訳ありません。
もう少し待っていただけますか。
折り返しお電話差し上げますから」 

「サリーちゃん、なんとかツインベッドのオーシャンフロント頼むよ。
お客さん、待たされて怒ってるのよ。
困ってるのよ」
「じゃあ、今晩家に泊まるならなんとかする」
「約束するよ」

「笠置様、なんとかフロント主任に無理を言ってオーシャンフロントのツインを用意することができました。
ご宿泊予定のご家族がたまたま当ホテルの従業員だったのでキャンセルしてくれました。
つきましては50$追加料金がかかってしまいました。
こちらで勝手に決めてしまったのですがよろしいでしょうか?」


なかなか、抜け目なさそうな男だな。
これなら金さえやれば意のままに動く。
「明子秘書、加賀大和と接触したい。
セットしてくれ」
「はい」


「加賀大和君、単刀直入に話そう。
代議士になる気はないかね」
「代議士?
日本の?」
「君の父君、加賀三郎先生は衆議院議員だった。
その後を継ぐ方がいない。
地盤、看板、鞄、すべて整っている。
資金、知名度、後援会のことだ。
君は人形になってにこにこして愛嬌を振りまくだけでいい」
「にこにこしているだけで代議士になれるのですか?」
「そうだ。
わしは87だ。
60年日本の政治を見てきた。
いずれ国会は世襲議員だけになる。
新人は世襲議員によってふるいにかけられ、扱いやすいのだけを生き残らせて2世、3世、の仲間入りだ。つまり代議士世襲制度があるのだよ。
世襲の長年の知恵だ」
「能力、資質、政策で選ばれるのでは?」
「綺麗ごと言っちゃいかんよ。
そんなもんとっくにありゃせん。
利益誘導、地縁、血縁だよ、民主主義は。
皆、自らの利益になるから投票する。
エゴイズムだ、それが民主主義だよ。
選挙の期間は短い。
公示日から衆議院で12日、参議院で17日だけだ。
それだけがんばれば4年、参議院で6年も遊んで暮らせる。
選挙も簡単。
我々後援会が中心になって選挙運動をやる、組織固めであいさつ回りと必要に応じて決起集会を行う。
それだけだ。
君は、凡凡党総裁の写真ぶらさげて車の上から自分の名前を連呼するだけだ。
適当に、財政改革、環境問題、構造改革、この3つだけ大声で言えばいい。
そうだ、君はのど世界自慢大会に出たことがあるとか?
本当かね」
「のど自慢です。ええ、歌は好きです」
「それはいい、選挙カーの上で歌ったらいい。
うん、それはいい考えだな」
「そんなにいい加減でいいのですか」
「何がいい加減だ!
こうなるまで先代様の血と汗の歴史が刻まれているのだよ。
まあ、任せなさい。
抜け道はいくらでもある。
これも世襲様達のお陰だ。
法律で個人に規制があるのは選挙期間中の政治活動費用だけだ。
日常の政治活動に使う金の規制はない」
「日常の金の規制はない?」
「政治活動の名目もいい加減としたら、どうだね」
「何もないに等しいと?」
「政党に限ると、選挙期間中だろうが何の規制もない。
今度、農相になった息子が事務所でもめてるだろう。
事務所費、人件費、規制がないから、それらを名目にポルシェを買えるのだ。
金は入ってくる。
それを分らないようにするのが難しい。
その隠れ蓑かがこの規制なしの事務所費、人件費だった。
今回の選挙で旗色が悪いので、与党、凡凡党の小安総理は領収書5万添付する、と。
これは大変な譲歩で困ったことだよ。
あの息子のポルシェ、5万じゃあ、いくら領収書がいると思うかね。
名目は?
、、困るよ、これ。
だが、まだ上手い方法がうんざりするほどある。
何でも出来る、どうかね、大和君?
代議士になってくれんかね。
金、女、周到にやればすべて思いのままだ」



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genre : 小説・文学

2:偽威議員 武蔵このエントリをはてなブックマークに登録

2: 武蔵



「武蔵、俺に代議士にならないかと誘いがあった」
「親父の加賀の跡継ぎか」
「跡継ぎじゃあない、お世継ぎ様だ」
「笑えるな!
お前がお世継様なら俺は大統領にでもなれそうだな」
「無理だな、代議士の家系に選ばれた者の特権だ」
「今の小安首相といい、代議士の世襲は増えてるようだな」
「後援会長の感じでは、世襲息子が馬鹿ほどいいみたいだ」
「扱いやすいか。
利権、金にがんじがらめだろうからな」
「当分、馬鹿面していようかと思ってる」
「大和、本気か」
「たまたま片親が代議士だった。
それならやってみたいだろう」
「私生児のお前がそう感じるぐらいだから、世襲息子達は当然の成り行きか。
居心地はいいんだろうな」
「あいつらとは違う」
「何も言わんよ」
「どうだ、シリコンバレーは?仕事面白いか」
「目が相当病んでるな。
慢性疲労越して赤信号が点滅だ。
もうディスプレイ見たくない」
「30前で失明か。
コンピューターがない所に行くことだ。
海がいい、プーケットとか。
3ヶ月、浜辺で遊んでれば目に巣食った悪魔達も逃げるさ。
だが、又、同じことを遣り出したら数日で後戻りだ」
「黒んぼで大丈夫なのか?
日本で」
「俺の黒さは許容範囲だとよ。
ぎりぎりな」
「笑えるな。
真っ黒ならアウトか。
ふざけた国だ」
「そう言うな、それでも俺達の国だ」
「お前みたいな黒んぼが、日本を俺達って言うのもおかしいな」
「お袋の話では、加賀三郎は俺をすぐ認知したらしい。
お袋とどういう風に知り合ったのか知らない。
女遊びはひどかったらしい。
それでも日本人の間には子どもが生まれなかった。
外国人の間にしか生まれていない。
血を継いだ後継者が必要だった。
黒でもな。
俺が生まれたのは加賀が50の時だ。
武蔵、俺はこの話に乗る」
「黒人、黒、黒んぼ、ニガー、何とでも汚く言われるぞ。
惨めな思いするぞ」
「黒いのは事実だからな。
利用できればな」
「利用?」
「今まで日本ではなかったことだ。
黒人が代議士になるなんてな。
インパクトはでかい。
これから人口は減る。
ますます他の国の人との交流が増える。
人々の意識を少しは変えれるのかな。
まだ白人と俺のような黒、他のアジア人にはヘビーな対応をする国だ。
武蔵、羽目を外して日本を見てみようぜ。
やる価値はある」
「俺を引き込むつもりか?」
「そんな若さで失明したくないだろう。
俺が代議士になったらお前を秘書にする。
どうだ?
乗らないか?」
「お前の秘書?
想像できないな」
「今の政治どうだ?
狂ってると思わんか?」
「また、抽象的だな。
青いな、大和、そんなので代議士務まるのか?」
「誰でもやれるさ。
慣習に囚われ,利権に目ざとい世襲と年寄りばっかだ。
彼等とは生活環境が余りにも違う。
世襲政治家達に俺達の感覚なんてない。
生活の痛み、苦しみなんてな。
所詮、凡凡のせんずりだ」
「殆ど当選して出てくるな」
「日本の社会が小泉で変わった。
アメリカ型の社会みたいになってきた。
その内、ここのようにクレジットカード持ってない人が社会の落伍者とみなされ、
現金いくら持っていようがレンタカーさえ借りれなくなる。
ますます富める奴と貧しい人の差別化が進む。
その内、カルフォルニアと同じように3−ストライク法が出来る」
「3−ストライクはないよ。
刑務所の人口がもう満杯でカルフォルニアは首吊り状態だ。
パリス・ヒルトンが3−ストライクで捕まれば面白いけどな。
金持ち連中が抜け道探すだろうが。
政治を変えたいか?」
「変えたい。
20代の若者がインターネットカフェで寝泊りして日雇いで生活している。
考えられるか?
一昔前に。
20代なんて何でもできる。
前には広大な白いキャンパスしかない。
どうにでも描ける」
「そんな生活しか出来ないなら外国に出た方がましだな。
夢、希望がまだある」
「今の若者にはそれさえない、出来ない。
完璧にくもの巣に囚われの身だ。
DVDにしこたまテレビ番組録画してそのままだ。
見もしないのに溜める。
容量が足らなくなってHDD買う。
狂ってる。
なぜそんなことやる?」
「無駄なことに金、体、頭を浪費しているか。
似たようなことやっているからお前みたいに言えないな」
「溜めるために録るんだ。
目的が明確じゃあない。
やがて目的自体、どうでもいいものだと、気づく。
そのどうでもいいものが多い。
メディアが加担して駆り立てる」
「どうやって変える?」
「簡単だ。
世襲議員達が嫌うことをやればいい」
「大和、簡単じゃない。
法律作るのは彼等だ」
「詰まる所、選挙だ。
世襲代議士達は組織票に護られている。
それに宗教団体お抱えの正大党が手助けだ。
それを壊すには若者の投票率を挙げることだ。
2/3は棄権している。
5%上がれば世襲も変わる。
一般大衆の目線で物事を見れる政治家を選ぶ」
「単純じゃないな。
お前も世襲だし、いつの間にかお仲間に入っていたりしてな」
「投票は義務だ、と小学校で教育することだ。
どこかの国みたいにある期間、罰金制度を設けるのもいい」
「世襲議員は反対するな」
「俺見たいなずぶの素人の政治家が増えれば確実に変わっていく。
国会議員に20%の新人枠を置く、70歳定年制、これでも変わる。
武蔵、小安の野朗、親父の秘書やっているらしいぞ」

(パリス・ヒルトン:ヒルトン財閥相続人・トルブルメーカー)
(3-ストライク法:カルフォルニア・1994年、過去に2度有罪判決を受けた人は、万引きでも自動的に25年の刑務所行き)

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3:偽威議員 参議院選挙このエントリをはてなブックマークに登録

3:参議院選挙

土方会長と大和は挨拶回りに出かけた。
支援者、後援団体、支援会社、約50ヵ所を訪問した。
土方は正直、驚いた。
殆ど全ての女性が大和に何らかのメッセージを投げた。
低学年の子どもから婆さんまでもが。
色気、誘い、愛、こんなにもてる男を見たのは初めてだ。

羨ましかった。
87年間の自分の人生は何だった!
自問で頭の中がはちきれそうだった。

女性達の視線が大和に降り注いでいる。
枯れ木が注意を引こうとその横で喚いている。

それでも大和は普段と変らなかった。
持って生まれたものなのか。
自宅での夕食後、酒を手にしたとき、もう自問していなかった。

家の82の婆さんまでもが、、注意を引こうと、色気を出そうと、足掻いていた。
これじゃあ、適わない。
婆さんの色気を見るのは40年振りだ。
こんなに強烈だったのか?
別の自問が顔を出し始めた。
婆さん、俺を愛してたのかな、、、、?

「今日は、どうも色々ありがとうございました」
「これで、皆が君を知ったわけだ。
黒人は駄目だ、、!
大和君、気にしないでくれ。
支援者の中にそう言うのがいた。
わしは奇麗事は言わん。
事実を言う。
気を悪くするかもしれんが」
「お願いします。
陰でこそこそ言われるよりは、黒、黒んぼ、、
どうぞ、会長がお使いになりたいお言葉で」
「だが、これで彼等も変る。
実際、変わってもらわないと今度の選挙は厳しい」
「参議院選挙ですか?」
「主民党が過半数を取る勢いだ。
そうなったら、選挙だ。
大和君、意外と早く代議士になれるかもしれない」
「と、おっしゃいますと」
「参議院を主民党が過半数を取れば法案は通らない。
予算案ぐらいしか。
どうなると思う」
「衆議院選挙ですか?」
「そうだ。
しかし、凡凡党がいくら勝っても情勢は変わらない。
参議院で法案は通らない」
「小安首相を変えても」
「同じだ。
もう首相が誰になっても。
こんな状態では誰もやりたくないだろう。
皆、情勢が分ってきたから首相退陣なんて言わない。
首相はどんな状況でも辞めないよ」

「何か手はないのですか?」
「不ぞろいの絆創膏貼った農相が、
無精ひげでテレビに出てはな。
締まりのないガーゼがだらしなくほつれていた。
野良仕事の気分ではな。
もう若者のお笑いの世界だ。
おまけに満足に話せない。
領収書は出さない。
駄目だな、これじゃあ」
「農相を代えればいいのでは?」
「代えても無理だよ。
皆、同じ問題を抱えている」
「打開策は何もないと?」
「北朝鮮が人質を返してくれたら勝てる」
「それは、、」
「無理だ。
小安を嫌っているからな。
小安自身、北朝鮮がなかったら首相になっていない。
その内、今IAEA(国際原子力機関)が査察をしようとしているが、
その機材の運搬、諸経費、数億を誰が払っているか公表したら小安は死ぬ」
「日本ですか?」
「確実ではないが、ある国際機関を通してと噂がある」
「日本は金は出さないと言ってましたが」
「6者会議、米の都合だ。
日本だけ何もしないわけにはいかない。
米と北朝鮮は国交正常化するかもな。
日本に知らせずに。
今、小安首相の味方はどこにもいない。
誰もが選挙に負けるように仕向けている。
最近、横田めぐみさん生存説を唱えた工作員、安明進が覚醒剤で捕まったらしい。
これも一種の小安嫌いだ。
今度、赴任する駐韓大使の,外務省内でのレベルが低いので韓国政府が激怒して小安をいじめた、って噂だ」
「そうなのですか?」
「わしの情報ではな。
今度の通常国会で成立した改正国家公務員法は、2008年中に官房長官を長とするセンターを内閣府に設置すると規定した。
これまでは各省庁の官房長が再就職あっせんをしていたのを3年以内に禁止してセンターに一元化するということだ。
これに、官僚は激怒している。
首相をいじめたくてしようがない。
主民党は、5年間凍結すると言った。
今までのように各省の官房長官が牛耳っていいと。
今の主民党は凡凡党より官僚経験者の候補者が多い。
社会保険庁もだ。
首相に悪者にされ、解体して首だと言われて被害者意識しかない。
社保の連中はそのレベルだ。
保身しかない。
主民党は、首だと言わないから、首相に不利になる情報を主民党に渡しているって噂だ」
「この半年でそんなに情勢が変わったのですか」
「世襲様様、だと思っていたが、凡凡党も正大党も今回は過半数を取れない。
これまでの野党は真剣に政権を取ろうなんて思っていなかった。
これまで野党だった会社党と凡凡党は裏で出来ていた。
凡凡党から金が来ていた。
当時、国会、委員会、シナリオ通りに皆動いた。
たまたま、大根役者根性出したのが、弾みで撲ったりすると後で謝罪した。
裏では仲良しだったんだ。
だが今回、主民党は政権を本気で取る気だ。
違うんだ。
これまでと」
「どうなると予測されますか?」
「凡凡党も正大党も政権にしがみついていたい。
小安首相も主民党の大沢も党内の人気はない。
大沢なんて若手に嫌われている。
彼等が凡凡党と組む可能性もある。
この政党間の駆け引きは誰も読めんのだよ。
予測どおりに行ったためしがないんじゃあ。
双方が分裂するかな」
「じゃあ、私は代議士には?」
「組織を引き締める。
わしの最後の選挙だ」

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genre : 小説・文学

4:偽威議員 カラオケこのエントリをはてなブックマークに登録

4:カラオケ



こんなに早く総選挙が来るなんて、
参議院選挙で凡凡党、正大党が負けて過半数を取れなかったからだ。
大和君にとってはチャンスだ。
女性票は完全にこっちのものだ。
問題は男性票だな
丸っきり駄目だ。
ジェラシー、ひがみ、、やきもち、、男も女と同じだ。
自分を差し置いて他の男に熱を上げる、、、。
もてない男には拷問だ。
わしもそうだった、、。
同じ状況だ。
ひがみか、、どうしようもない。
ねたむわな、、ひがむわな、、嫉妬するわな、、
あんなにもてたら。

男達よ、しようがないんだよ。
大和君はもてるんだから。
あきらめてくれよ。
、、、、無理だな。
どうしてもねたむわな、、、。
ほんの一握りの男の特権だ。
だが、彼の場合は子どもから婆さんまで、すべての年代に及ぶ。
どういうことなんだ。
若い頃のわしの方がハンサムだと思うのだが、、。
このままでは負けてしまう。
男性票が必要だ。


今晩は、本日テレビ・ニュース、ONEの尾村です。
衆議院選挙投票まで後4日になりました。
候補者の熱はヒートアップする一方です。
今夜は、未だかってなかった珍現象をレポートします。
G県では、加賀三郎、前外務大臣の後継で長男、加賀大和候補が出馬しています。
加賀候補はアフリカ系日本人です。
母親はアフリカ系米人です。
これまで日本の選挙史でアフリカ系日本人の出馬はありませんでした。
これでも、特筆すべきことなのに、もう一つの奇妙な現象をお伝えしたいと思います。
それは、全ての女性が加賀候補を支持している、ということです。
ほぼ100%と言っても過言ではないでしょう。
その反面、男性の支持は、ほとんどない模様です。
このように性別で支持層が分れるということがこれまでの選挙であったのでしょうか?
今夜のゲスト、選挙アナリストの鹿児島さんに聞いてみたいと思います。

「鹿児島さん、このようなことはこれまでの選挙でありましたか?」
「はい、そうですね。
ここまで一方的に偏る支持層、、、
いえ、、間違いました。
性別によって分れる、ということは私、この30年近く国政、地方選挙に携わってきましたが初めてです。
私自身、どうして、、、という思いで答えを見出せません。
表層的には、候補者があまりにも女性にとって魅力的だからだと思います。
しかし、アカデミックに選挙を研究している者にとって、こんな理由で、、
恥ずかしいというか、、
情けないというか、、もっと学術的な、理論を伴った裏づけがあると思いたいわけでありまして」
「で、学術的な理由があるのでしょうか?」
「いえ、まだ研究の段階です。
先の言葉を補足しますと、世の男性は、皆自惚れが強いのです。
加賀候補の場合は肌の色が違います。
なんでこんな男に、、なんて気持ちがありまして、とても女性を理解できない。
例えば、長年連れ添った仲むつまじいご夫婦で、奥様が急にある男に熱を上げたらどうします?
新婚まもないカップルの片方が、突然、自分に見向きもしなくなったらどうします、、、?
耐えられますか?
しかもですよ、肌、」
「鹿児島さん!
その言葉は!放送中です」
「あ、、、はい、私、鹿児島は絶対に無理です!
我慢できません。日本男子として断固、」
「先生?
先生?
先生、、」
「あ、、はい」
「放送中です。
ちょっと、話が逸れましたか、、、ね?」
「失礼。
それほど、世の中が変わったということでしょうか?
例えば、加賀候補を支持される方々は女性、ゲイが圧倒的です。
男性は皆無に近い。
悲しいでしょう、、
こんなことが国政選挙で起きるなんて、
、そういう訳で、私、この選挙を最後にアナリスト引退を考えています」


「明子君、男が好きなカラオケを年代別に知りたいのだがね。
曲を教えてくれたまえ」
「歌でございますか?」
「そうじゃあ、男性票が欲しい。
大和君は、NHKのど世界自慢大会に出たぐらいだ。
選挙カーの上から歌わせる。
どうだ、いい案だろう」
「はあ、、会長、世界のど自慢大会ですね?
はい、若者にはミスチル、スガシオ、倖田來未、ドリカム、
年配の方には、中島みゆき、高橋真理子、テレサテンでしょうか」
「年代別にリストアップしてくれ。
男が好きな曲だけだ。
大和君が歌えるか確認しよう?
個人的なんだが、
村田英雄の“王将”、千昌夫の“影のワルツ”、
国民歌手の三波春夫の“チャンチキおけさ”も忘れんようにね」





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5:偽威議員 衆議院議員このエントリをはてなブックマークに登録


5:衆議院議員


G市駅前は、群集で身動きが取れないほどだった。
二日後の投票日を前に、加賀大和がマイクを手に歌っていた。

秘書の明子は曲の順序を特に考慮した。
どうしても若者の票が欲しかった。
若者用、中年用、若者用、老人用、中年用、若者用、老人用、
よし、この順でいいわ。


今晩は、本日テレビ・ニュース、ONEの尾村です。
先の参議院選挙の歴史的な敗北を受け、
凡凡党内、反主流の造反によって解散に追い込まれた衆議院選挙の投票日がいよいよ二日後に迫りました。
先日、レポートいたしましたG県、加賀大和候補に新しい動きがありました。
金曜キャスターの小石さんがレポートします。

加賀大和候補はアフリカ系日本人です。
母親はアフリカ系米人です。
先日、ここで起こっている奇妙な現象をお伝えしました。
女性の支持が異様なほど高い反面、男性の支持は得られていない、というものでした。
しかし、私が今日、取材した限りではそうではありませんでした。
加賀候補の演説に集まっていた聴衆の約1/3は男性でした。
お話を伺っていますのでお聞きください。

「黒人が日本の代議士になったらどうなるかと思ってたが、
はるみちゃんの“北の宿から”
あんなに情感入れて歌えるんだから、肌は黒いが日本人の心を持ってるね」

「驚きましたよ。
ORANGE RANGEの“上海ハニー”の後に北島三郎の“与作”ですよ。
こんな組み合わせ信じられますか?
でも、彼等より歌上手かったですね」

「感激したのう。
わしの年で歌聴いて感激するなんて考えられんことです。
“本気かしら”島倉千代子、いいいね。
涙が出てきた。
あれは、、何時だったかな、昭和の42年頃だよ、、」

「すげー落差。
ミスチルの“Tomorrow never knows”そして舟木なんとかさんの“高校三年生”だよ。
俺、投票棄権よ。
一回も行ったことない。
代議士の面見りゃあ分るっぺー。
サラダ油で髪の毛洗ってんのばっかでよ。
あいつらのだみ声、遠慮したいよな。
それで棄権してたんよ。
俺の大事な歌なんてどうでもいい連中だ。
ヒップホップから民謡、演歌、、。
これだよ!
クロスオーバーっのは」

「良かったですね。
サザンの後に北島三郎ですよ。
凝ってましたね、演出?
ユーミン、竹内まりや、梅沢富美男ですよ」
「どういうことでしょう?」
「レポーターやってて分らないのですか?
南と北、それに松竹梅」


万歳!万歳!万歳!万歳!

「おめでとう、大和君、おめでとう。
よくがんばった。
これで加賀家の日本200世襲家元、安泰だ。
おめでとう」
「ありがとうございます。
これも会長と皆様のお陰です。
どうもありがとうございます。
ああ、岸本さん、明子秘書、ほんとうにありがとうございました」
「とんでもございません。
三郎先生も喜んでおられますよ。
私も嬉しくて、、、」
「大和さん、、、、女性の方がお会いしたいと待合室で、お母様のお友達のようです。
ハワイから来られたとか」








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6:偽威議員 出生の秘密このエントリをはてなブックマークに登録

6:出生の秘密



「ヤマト、おめでとう」
「日本語を?」
「米流だと、コリアン系日本人。
ここでは在日韓国人、、、だったわ」
「日本でお生まれに?」
「遠い昔よ」
「ハワイにお住まいですか?」
「カルフォルニアのオークランドに住んでいます」
「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「キャサリン・ウォーカー」
「お袋とは?」
「ファニーとはシュープリームスのそっくりさんショーをワイキキでやっていたの。
あなたにも会ってるわよ、何度も、小さい頃、赤ちゃんの時」
「そうでしたか。
お袋が昔、ショーをやっていた、とは聞いていましたが。
あなたと?」
「ええ、もう一人、エセルと3人。
若かったわ、私たち。
想像つかないでしょう」
「いえ、聴きたかったですね、、。
お袋が歌っている記憶がないので、、
シュープリームスを歌っていたなんて」
「一度もファニーの歌、聴いたことがないの?」
「はい」
「そう、、」
「今日は、わざわざ私に会いに来られたのですか?」
「ハワイにいるエセルからファニーの子どもが日本の選挙に出馬した、って連絡があって。
あなたはよくテレビで報道されているようよ」
「知ってます」
「実は、ファニーと約束していたことがあったの。
あなたが大きくなったら事実を伝えて欲しいと。
時間を作ってくれない?」
「どちらにお泊りですか?」
「Pホテルに」
「申し訳ありません。
今日は無理なので明日でよろしいでしょうか?」
「ええ」
「何時がよろしいでしょうか?」
「当選して忙しいのに大丈夫」
「構いません。
挨拶回りなんて何時でも出来ます」
「10時にPホテルのロビーで」


「何、大和君、明日の予定はどうするんだ!
当選した後の挨拶回りが大事なんだ。
当選して知らん振りされたらどうだ。
駄目だ!
明日は駄目だ!」
「土方会長、昼過ぎまで時間を下さい。
わざわざオークランドから会いに来てくれました。
お願いします」



「お袋と約束?」
「もう充分あなたは大人ね。
私が元気な内に伝えておこうと思って、。
あなたの出生のこと、、、。
ファニーは、ヤマトが大きくなったら伝えて欲しい、と言った。
あなたが知りたくなければ話さない、」
「お願いします。
親父のことを聞いても何も話さないし、話したくなさそうでした。
日本の代議士だと知ったのは亡くなる直前でした。
何度か調べたのですが、、、。
何時かこの日が来ると信じて生きてきました。
どうかお願いします」

「日本から来ていた外務大臣の歓迎レセプションでショーをやって欲しい、と州知事から直々に頼まれたの。
外務大臣が私たちをひどく気に入った、と言ってた。
日本はハワイにとって特別な国、大事なお客様よ。
断れなかった。
私たちはハレクラニホテルに向かった。
ショーの後、すぐには帰れなかった。
ファニーは大臣に呼ばれたわ。

1時間後、知事の秘書と外務省の役人が来て、ファニーは後で送るから、と言った。
エセルと私は先に帰った。
翌朝、ファニーから電話があった。

「キャス、昨日の夜送ってくれたの?」
「ファニー?
どうしたの?」
「私を部屋まで送ってくれたの?」
「私とエセルは先に帰ったわよ。
知事の秘書と外務省の方が、あなたを送り届けると、、
どうしたの?
何があったの?」
「記憶がないのよ」
「記憶がない?
今、自分の部屋?」
「ええ、どうやって帰ってきたのか、、
大臣の部屋でお酒を飲んだのは覚えている。
それからが分らないの」
「そんなに飲んだの?」
「いえ、そんなに、、ワインだけよ」

知事の秘書に確認した。
外務省の方が送った、と言った。
それから何があったのか分ってきた。
生理がなくなってお腹が大きくなってきた。
ファニー、妊娠していたの。

州知事、州政府、領事館、相手にしてくれなかったわ。
メディアに訴えるよう、ファニーに言った。
ホノルル・アドバタイザーの記者とアポが取れて待ち合わせ場所に行ったけど相手にしてくれなかった。
証拠がない、相手は日本の外務大臣だろう、そう言った。
当然といえば当然ね。
私たち、どうしたらいいのか、、分らなかった。
ファニーは、、こんなことあなたに言いたくはないけど、、」
「すべて隠さずお願いします」
「、、ファニー、、堕ろすつもりだった、、
でも、、気が変わった。
2ヵ月後、外務省から役人が来た。
パーティで知事の秘書と一緒に来た人よ。
情報が向こうに行ったのね。
中絶して欲しい、と言ったわ。
そうしてくれれば一千万円払う、と。
あの夜、何が起きたのかはっきりした。
ファニーはあなたを生むと決めた。
許せなかったの。
あなたが、、生まれれば、、
ごめんなさい」
「いえ、、どうぞ、、お願いします」
「、、証拠として断罪できると思ったの、、。
ヤマト、、、大丈夫?」
「、、、ええ、、、、ちょっと、トイレに、、
よろしいでしょうか?」

やっぱりそうだった、、
何だ、、俺は、、
何なんだ、、
なぜだ、、こんなとこに、、
生まれてはいけなかったんだ、、、
生まれては、、、、、、
俺は、、、
生まれては、、いけなかったんだ、
なぜ、、生んだ、、お袋、、、
なぜだ、、
、、、、、
代議士の息子、、
聞いてあきれるぜ、、、、

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7:偽威議員 小安首相このエントリをはてなブックマークに登録

7:小安首相



「ヤマト、大丈夫」
「はい、お願いします」
「つらいでしょう。
でも事実を知ってほしい。
あなたに乗り越えてほしいの。
ファニーもそれを望んだから私に伝えてくれるように手紙に書いたのだと思う。
どう、?」
「ええ、ぜひ全てをお教えください。
お願いします」

「あなたが生まれてすぐ外務大臣の秘書という方が来た。
岸本と名乗った」
「岸本、、家にもいます。
先ほどお会いしませんでしたか?」
「いえ、、相当年配の方だったわ」
「彼のお父さんでしょうか、」
「訴えないでくれ、と言った。
大臣の子どもだと確認できたら認知する、と。
ファニー、訴えるつもりだった。
でも、あなたが変えた。
あなたを授かって幸せを知ったのよ」
「そうですか」
「あなたに夢中だった。
認知されてすぐに、ファニーはあなたを連れて日本に行った。
大臣はあなたに日本語を覚えさせようとした」
「そうでしたか。
なぜ東京にいるのか分りませんでした。
日本語をですか?
だからあんないい生活ができたのですね」
「大臣の後継者があなたしかいない、とファニーが言ってた」
「お袋には恋人か付き合っていた人は?」
「私が結婚した相手はファニーの恋人だった。
結婚してオークランドに行った」
「そうでしたか」
「結婚するまではよく電話、手紙のやりとりをしていたけど、、あなた達はどのくらい日本にいたの?」
「お袋が病気になってハワイにいい医者がいるということで12の時に戻りました」
「そんなに居たの。
不思議ね、私も病気だったのよ。
ファニーと大体同じ時期」
「そうでしたか。
今は、」
「もう大丈夫よ。
ファニーが亡くなった時動けなかった」
「あの時、オークランドから男性が見えました。
旦那様でしたか?」
「ええ。
その前に、手紙が届いた。
ファニーからよ。
事実をヤマトに伝えてほしい、と」
「お袋とは殆ど二人っきりの生活でした。
外に出ることもなく、友達付き合いもなく、孤独が好きな女性でした」
「あなたはファニーが亡くなった後、こちらに戻ってきたの」
「はい、13から17までいました」
「そう、、、」
「キャサリン、もし誰か知っているのなら教えていただけませんか」
「誰を」
「加賀三郎外務大臣のパーティにいた外務省の役人を、、確か、同じ人物が、中絶してほしい、と」
「知ってどうするの?」
「分りません。
もう、30年前のことです。
もう生きていないかもしれない。
でも、お袋はまだ許していません。
私の知る限り一度も加賀三郎に会っていません。
その役人に、何があったのか直に訊いてみたいのです。
お袋に謝罪させたいのです」
「、、、、、、」
「誰か、知っているのですね?」
「、、、、」
「事実を伝えてほしい、と。
それには役人の名前も含まれているような気がしてなりません」
「、首相よ、この国の、」
「小安首相、小安宗徳首相ですか、、」
「ええ」

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8:偽威議員 退学このエントリをはてなブックマークに登録

8:退学

凡凡党、小安総裁は、主民党、党首大沢との決選投票の結果、2票の差で首相になった。
参議院では大沢党首が選ばれていたが、両院協議会で意見が物別れに終わり、衆議院の優越性により小安首相がかろうじて誕生した。

「国会内で会うとはな。
想像できなかった。
俺より早く代議士になるなんてな。
この国で黒んぼが代議士になるなんて許しがたい。
よりよって親父の凡凡党ってのもな」
「変らないな、おまえは。
サチは元気か?」
「とっくに別れた」
「別れただと?
ふざけるなよ、穣二。
おまえ、何をやったのかもう忘れたのか?」
「昔の話だな。
それより柿は元気か?」
「誰だ、柿って?」
「しらばっくれるなよ、大和。
在日から帰化した武蔵様のことだよ。
朝鮮系日本人って奴だ。
便利な言葉だな。
フィリピン系日本人、モンゴル系日本人、確か、赤城武蔵とか言ったかな」
「馬鹿、武蔵の家族は戦前からいる。
ここで生まれようが、よその国で生まれようが、帰化しようが、おなじ人間だ、日本人だ。
おまえとどう違う」
「俺はおまえ達みたいな黒柿じゃあないからよ。
そう簡単に国変えたりせん。
面白いよな、おまえ達の名前。
黒と柿が日本の戦艦の名前ってのはな。
ふざけた名前だぞ、生粋の日本人には。
素性を隠したかった気持ちは分るよ。
名前付けた人は後ろめたかっただろうな。
俺みたいな日本人が米流の穣二ってのも笑えるがな」
「それだけか、言いたいのは?」
「武蔵は今どこにいる?」
「教えたくないな」
「アメリカか。あっちの方が柿は住みやすいだろうな」
「おまえのその蔑み、差別はどっからくる?」
「おまえには理解できん。
おまえが俺を理解できないようにな」
「武蔵の場合はなんだ、先祖が朝鮮系だからか。
俺の場合は肌が黒いからか、それだけの理由か」
「国会内で喧嘩したいのか」
「理由は何だ?」
「喧嘩売ってんのか、、、大和民族は日本を愛する気持ちが強い、おまえらより」
「奇麗ごと言うな。
される方の気持は?
どうでもいいのか?」
「日本にいなければいい。
又おん出してやろうか」
「穢されたくないか、汚されたくないか?
おまえのいう大和民族以外の人に、おまえの美しい国、日本を」
「黒んぼには到底、理解できんよ」
「俺はおまえを理解できる。
争いもない、平和な所で、湧き水をおまえは寝ずの番だ。
昔から、有名な名水だ、体にいい、と言い伝えられてきた。
その水はどこにもない稀有なミネラルを含んでいる。
だが、いずれ枯渇する、とおまえは思っている。
おまえの土地だ。
当然、あげたくないよな。
その水は農薬で汚染されているかもな。
一人で足掻いて苦しくないか?」
「足掻く?
馬鹿だな、大和、おまえだろう」
「俺達を学校から追い出して何年だ、、、12,3年か、、昔と変ってない。
日本の首相の息子、将来、代議士になるのがこのレベルではな。
日本も悲しいな」
「好い加減にしろよ。
場所変えて喧嘩してもいいぞ」
「首相の息子と黒人の新人衆議院議員が喧嘩か、、、、前向きじゃないな。
サチとは何があった?」
「一般的な性格の不一致ってやつだ」
「今どにいる?」
「さあ、もう半年以上会ってないからな」


「どうした、おまえ達?」
「先生、黒柿、ロッカーにナイフを隠し持っていますよ。
田中と鈴木が又、撲られました。
喧嘩強いんで歯向かえません。。
何とかしてくださいよ。
日本人じゃあないくせにでかい面して皆困っています」


「加賀、赤城、なぜナイフを持ってる!」
「知りませんよ。俺達のじゃない」
「なぜ、おまえ達のロッカーに入ってた」
「小安達がやったの分ってるじゃないですか。
先生、なぜ彼等の肩ばかり持つのですか」
「生意気なことを言うな。
この前は登山ナイフだったな」
「誰がナイフをロッカーに入れますか、何回も?」
「何回も、、入れたことはあるようだな」
「言葉のあやですよ。
入れてません」
「おまえ等、相変わらずいじめやってるようだな」
「知ってるじゃないですか、小安達が仕向けてるの。
向こうが来るんですよ。待ち伏せしてます」
「これまで何度、止めるように言ったか覚えてるか?」
「茶番はよしてください。
小安達の策略でしょう。
よく知ってるくせに」
「昨日、職員会議で決まった。
退学処分だ。
強制退学にしたいとこだが自主退学にしてやる」
「よう、御用聞きよ、幾らもらった!
豚に成り下がってまで偉くなりたいか!
心売って、長いものに巻かれて、心地よいか、将来も安泰か。
大和、どうする?この偽教育者。
撲るだけじゃな。
息子、ちょん切るか」
「助けてくれ、、、、」

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9:偽威議員 倉本サチこのエントリをはてなブックマークに登録

9:倉本サチ


「岸本さん、興信所を紹介していただけませんか」
「何かお困りごとでも?」
「個人的なことです」
「お急ぎでしょうか?
今、国会会期中なのでスケジュールが、」
「ああ、そうですね」
「依頼内容を文書にしてくだされば明子秘書に持たせますが」
「、そうですね、、、、、じゃあ、お願いします」


「岸本明子様、A興信所の山田です。
この前、ご依頼いただいた倉本サチ様の件でございますが、残念ながら私どもでは調査しかねますので、、申し訳ございません」
「どういうことでしょう?
長年、そちらにお世話になっているのですが、、」
「申し訳ございませんが、この件に関しては、これ以上は、、」

「岸本明子様、B興信所の草柳です。
倉本サチ様の件ですが、勝手ながら調査打ち切りさせていただきます」
「どうしてでしょう?
説明していただけません」
「はあ、申し訳ございませんが。
この件に関しては深入りするな、というのが業界の通念でして」
「地元のよしみで、あなたが知っていることだけで結構ですからお願いします?
あなたの所とは古い付き合いです。
私の祖父の時代から先代とお付き合いがあります。
どうかお願いします」
「ほんの概略だけ、口外なさらないということをお約束していただけますか?」
「はい」
「サチ様、現在、千葉県F市外のサナトリウム・マインドで療養中でございます。
関係者に通常、考えられないぐらいの緘口令がひかれていました。
正直、場所の特定以外、何も得られませんでした」
「緘口令というのは?」
「文字通りです。
無視されました。
これでよろしいでしょうか?」
「マインドは何を主に治療しているのでしょう?」
「噂では、心のケアをしているようですが。
これでよろしいでしょうか?」
「心のケアとは、、、どういうことなの?」
「文字通りのお言葉だと、、思いますが。
これ以上は、、当方にも圧力がございまして、、申し訳ございませんが」
「圧力?」
「申し訳ございませんが、、これで切らさせていただきます」


「代議士、倉本サチ様、千葉県F市外のサナトリウム・マインドで療養中です。
腑に落ちないことだらけで、どこの興信所も詳しく調査してくれませんでした。
インターネットでサナトリウム・マインドを調べたのですが、障害を持った人の心のケアが主な診療内容でした」
「心のケア?」
「事故、突然の障害、家庭内暴力、災害による後遺症、心の傷を負った方の治療をしています。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を持った方達です」
「、、家庭内暴力、、DV(ダメステック・バイオレンス )も入りますね」
「ええ、含まれます。
代議士、差し支えなければお聞きしてよろしいでしょうか?」
「、、、」
「倉本サチ様とのご関係は?
代議士の恋人ですか?
申し訳ありません」
「いえ、違います。
小安穣二の妻です、、でした、、、か?」
「小安?、、総裁?、総裁のご子息?」
「はい、、、」
「そうでしたか。興信所に圧力があったようです」


「大和、よく衆議院議員になれたな。
おめでとう」
「議員達に陰で“中身のない黒たらい”、と呼ばれている」
「黒たらい?」
「由来はカラオケだ。
今だからおまえに言うが、俺が当選したのはカラオケのお陰だ。
投票二日前までは落選だった。
カラオケ歌ったんで男性票が入った」
「歌ったのか?選挙カーで」
「ああ、手当たり次第に何でもな。
50曲以上だ、笑えるだろう。
さすがに軍歌は歌わなかったが、古いのは春日八郎から宇多田ヒカルまでな」
「見たかったな。
で、黒たらいか?
読めないな、その名前?」
「桶が空だ。
桶をたらいに変えた、年寄り議員は“たらい”の方がなつかしいのだろう」
「秘書の話か?」
「サチ、穣二と別れたみたいだぞ」
「別れた?」
「初登庁の日、国会内で会った。
彼がそう言った。
調べたが、詳しく分らん」
「今どこに?」
「サナトリウムだ」
「サナトリウム!
療養所か?
入院しているのか?」
「もう少し調べておまえに報告しようと思ったのだが今んとこ動けんのよ」
「何の病気だ?」
「分らん。
心のケアを主にやっているようだ」
「ケア、、小安がサチに何かしたのか?」
「興信所が尻込みして調査しない。
秘書の話によれば、興信所に圧力があったとか、、」
「、、、、、」
「武蔵、何も分らん。
俺、黒だし、おまけに有名人だ。
サナトリウム、悔しいが行けんのだ。
しかも、凡凡党の総裁、日本の首相の息子の妻だ、、、
黒人、新人衆議院議員は動けんのだよ」


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10:偽威議員 大和と武蔵このエントリをはてなブックマークに登録

10:大和と武蔵


「大和君、首相から電話があった」
「小安首相、、」
「息子の件といえば分っていただけると,言っていたが」
「そうですか」
「何なんだね、これは?」
「個人的なことで」
「大和君、首相、直々ということは、わしが知らないわけにはいかんのだよ。
日本200世襲家元政治家、加賀一族を護るにはね。
教えてくれんか?
蚊帳の外では君に適切なアドバイスをあげれん。
君は凡凡党の代議士だ。
その総裁が電話してきた」
「個人的なことです。
申し訳ありませんが」
「今の小安宗徳首相のお父さんの小安徳雄様が首相の時、父君、加賀三郎先生は外務大臣に任命された。
それだけじゃない、その前の小安首相の祖父、貴志川様の時は加賀二郎先生は大蔵大臣だ。
分るかね、その前にもお付き合いがある、古くからの盟友、同胞だ。
今回の選挙も、小安首相が応援に来てくれたのを忘れてはいかんよ。
岸本さんの話では、君はまだ当選のご挨拶に伺っていないそうだね。
いかんよ、それは。
スケジュールを聞いて行きなさい。
命令だよ」
「はい、分りました」
「で、だ、、首相の用件は何だったのだね?」
「首相の長男とは高校が同じでした。
そのことです」
「ほう、、そうだったのか。
そういえば君は日本に居たんだったね。
後援会の会長になったのが10年前だから、岸本さんに言われるまで君の存在さえ知らなかった。
三郎先生は隠していたのだね。
首相のご子息と同級生だったのか」
「はい、国会で偶然会いまして、、」
「それで?」
「昔、遊びでよく喧嘩していたものですから、向こうが又遊びたくなったようで。
口論になりました。
衛視の方が間に入って止めてくれました。
私たちを諌めるためにお電話をしてきたのだと思います」
「大和代議士、いい加減にしたまえ!
君は主権者である国民に選ばれた衆議院議員だ。
国会内で喧嘩は言語道断だ!
絶対にやってはいかん!
今、小安首相は微妙なとこにいる。
凡凡党内には反主流派が公然と活動している。
主民党と手を組む、とも噂されている。
こんな時に国会内で息子が喧嘩したらどうなる!
絶対にやってはいかん!」


千葉県F市外のサナトリウム・マインドに向かった。
最後に会ったのは大和の部屋だった。
12年近くの歳月が流れていた。
幼馴染だった。
一緒になるつもりでいた。
17の冬、退学処分になってカルフォルニアに出た。
そうせざるえない状況に追い込まれた。
サチと別れるのが条件だった。


「大和と加賀は私のパンツを下ろしてナイフを私の性器にあてました」
「どちらがどうしました?具体的に」
「加賀が椅子から私を立たたせてズボンのベルトを緩めました。
パンツをずり下ろしました。
赤城が手に持っているナイフで2度、私の性器を軽く叩きました。
恐怖を感じました、、あの時、生徒が入ってこなかったら、、」


「加賀、何があった?」
「何もありません。
先生が騒いで生徒がクラスに入ってきただけです」
「ここは警察だ。
何もないのに先生が警察を呼ぶか」
「信じていただけませんか?」
「君がズボンを緩めてパンツをずり下ろし、赤城がナイフで2度性器を軽く叩いた、
と言っているが、どうだ?」
「やっていません。
俺達は何もしていません。
赤城が“息子ちょん切るか”と言っただけです。
体には触っていません」


「先生は君が性器を2度軽く叩いた、と言っているが」
「ふざけた野朗です。
何もしてませんよ。
そんなことやるだけ野暮でしょう」
「赤城、“息子ちょん切る”と言ったか」
「言いました」
「で、どうした?」
「似非教師は震えてました。
それだけです。俺達は何もしてません」
「あの先生は似非教師か?」
「あの日、退学処分だと言われました。
俺も加賀も理由が納得いきませんでした。
退学処分になるようなことやっていません。
頭に来て、“息子ちょん切る”と」
「何もやってないで退学にはならないだろう。
今回も先生が通報してきたぐらいだ」
「俺と加賀を嫌っている連中がいます。
そいつらと似非教師は繋がっています」


サチの父親は凡凡党の市会議員で、街の有力者だった。
俺の親父は町工場をやっていた。
バブル崩壊後の急速な景気後退の波をもろ受けた。
銀行の融資が途絶え、もうどうしようもないという時、サチの親父が銀行に掛け合って倒産を免れた。
似非教師の件も、警察沙汰になりそうなとこをサチの親父が手を回してくれた。

代償はでかかった。
サチと別れてくれということだった。
日本にいたくなかった。
カルフォルニアに渡った。
大和はハワイに戻った。
4年後、小安と結婚したのを知った。




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genre : 小説・文学

11:偽威議員 DV ダメステック・バイオレンスこのエントリをはてなブックマークに登録

11:DV(ダメステック・バイオレンス)


「小安サチさんに面会したいのですが」
即座に返答が来た。
「その名前の患者様は当サナトリウムにはいません」
「旧姓の倉本サチではどうでしょうか?」
「そういう名前の患者様も当サナトリウムには、、」
相当、切実な顔をしていたにちがいない。
「どちら様でしょうか?」
「母の遠縁に当たります。
カルフォルニアに住んでいます。
お袋に入院しているとは聞いていたのですが、
なかなか時間を作れなくて。
今回、仕事のついでに寄ることが出来ました」。
「待っていただけますか?」

奥に消えた。
別の女性が出てきた。
「倉本サチ様は面会を許可されていません」
「一目だけでも、、。
ドアの隙間からでも、、
お願いできませんか」
「申し訳ございませんが出来かねます」
「そんなに悪いのでしょうか?」
「申し訳ございませんが、」

どうしたらいい、何か手はないのか、、
この建物にサチがいる、、手が届くところに、

F市内のホテルからサナトリウムに通った。
今日で7日目だ。
12年の長さを思えば、
おなじ建物にいるというだけで心が落ち着いた。
あれだけ気にかけていた身だしなみに無頓着になった。
受付の女性達が俺の変りようにびっくりした。
心配そうにコーヒを持って来てくれた。
あなた大丈夫?
毎日、10時から4時まで何をするでもなくソファに座っている男が大丈夫のはずがない。
でも、幸せだった。
ここから動く気はなかった。

サチのお母さんらしき人が通った。
最後に会ったのは12年前か、、、
確信がもてない、、多分そうだ。
俺に一瞥も投げなかった。
髭面では分らないか。
サチの親父とは馬が合わなかった。
彼女とはよく話をした。

3時前、彼女が玄関に向かって歩いていた。
走っていた。

「サチのお母さん?」
「どなた、、、、、」
「武蔵です」
「赤城君?」
「はい、サチの容態は?」
「まだサチのこと気に掛けてくれてたの、、」
「どうなのでしょうか?」
「、、コーヒーでも飲みましょうか?」


「何から話したらいいのかしら。
あなたが向こうに行って、サチ変ったわ。
苦しかったのでしょうね」
「、、、」
「あなた、子どもは?」
「いえ、」
「一人なの?」
「はい」
「サチはあなたがいなくなって4年後だったかしら、
結婚した。
知っていたの?」
「大和から聞きました」
「加賀君ね。
懐かしいわね。
あなた達3人仲が良かったものね。
代議士になったわね」
「はい。ここにいると、大和から聞きました」
「そう、、私、後悔しているのよ、サチの結婚。
もう取り返しがつかないけどあなたと一緒になっていたら、、」
「サチに謝りたい。
若かったです、、」
「穣二さんに撲られ、蹴られていたの」
「穣二に、、、」
「早く気づけばよかった。
あの子が苦しんでいたなんて、」
「悪いのでしょうか?」
「反応してくれない、何を言っても。
先生の話だと、人間は強烈な体験をすると、
その時のさまざまな記憶を押さえ込もう、
封じ込めようとするらしい。
感覚、情緒、感情、考え、思考の記憶、、
それらは時間に関係なく心に巣食っているらしい。
離婚してから環境が変ったので出てきたのだろう、
と言っていた。
「体の方は?」
「大丈夫。
火傷と痣はあるけど」
「火傷、、、ですか、、、」
「あなたがプレゼントしたハートのマークのペンダント、
覚えている?
あなたとサチの名前が入った?」
「はい」
「枕の中に入っていたわよ。
まだあなたのことを忘れられないのね」
「そうですか、、、」
「あなたの名前、武になっている」
「、、」
「下の蔵が欠けていたわ」
「、、、、、」
「その髪と髭面どうしたの、浮浪者、見たいよ」
「今日は何日ですか、9日ですか。
一週間、何もしていません」
「一週間?
あなた、ずっとここに?」
「断られて、、通っていました。
サチに会わないで帰れません」
「まだサチを好きなの?」
「忘れたことはありません。
サチと一緒になりたかった。
でも、何もしていないのに家裁なんて、、」
「あの教師、偉くなった。
市の教育関係の仕事している。
あなたに謝らないといけない。
主人が奔走して先生の訴えを取り下げたことになっているけど、
実際は小安代議士がやってくれた」
「どういうことです」
「赤城君、ごめんなさい。
サチと別れる条件は向こうから言い出してきたの」
「向こうから、、小安代議士
じゃあ、サチの結婚は、、」




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12:偽威議員 サチと武蔵このエントリをはてなブックマークに登録

12:サチと武蔵


「家裁送りは必至の状況だった。
先生と8人の生徒が見ていた。
あなたがナイフを持ってなぞっていた、って」
「信じていただけないでしょうが、違います!
何もやっていないのです。
俺も大和も。
彼等がぐるになってでっち上げたのです」
「サチは主人に頼んでいたわ。
あなた達は、、ごめんなさい、、
評判がいい方ではなかった。
誰もが先生と穣二さん達の言っていることを信じた。
主人も私も、」
「何もやっていないのだけは信じてください」
「主人は先生に会って確認したわ。
ナイフの刃を出してなぞっては、、と主人が言った」
「ナイフの刃出してなぞった、、!
嘘です!
丸っきりの嘘です。
ひどいことを」
「主人は弁護士にも相談した。
あなた達には不利な状況で何も出来なかったの。
私達とサチの間はおかしくなったわ。
ごめんなさいね。
サチがあなた達を弁護するので叱った。
もう自分でやるから頼まない、、ってひどく怒ったわ。
あなた達が日本を出た後、聞いたの。
なぜ先生は訴えを取り下げの?
サチ、小安代議士よ、、って言った」
「サチが、、小安に、、頼んだのですか、
結婚は、、俺達のために、、、、」


「サチ、困ってるようだな。
武蔵、刑事事件になる」
「武蔵も大和も何もやってないのになぜあなた達は陥れようとしているの」
「見たんだよ、サチ。
武蔵がなぞっているのを。
先生、大声上げて助けを呼んでいた。
間一髪だったんだ。
俺達、皆見たんだよ」
「嘘よ!
彼は短気だけど、そんなことをやれる人ではないわ。
なぜ本当のことを言ってくれないの?
彼らが嫌いだから?
武蔵の祖先が朝鮮系だからなの、大和の肌が黒いからなの。
ただ、それだけの理由でこんなことやっているの?」
「違う。
嫌ってなんかいない。
それは、、喧嘩はしてるさ。
あいつら生意気で番町面しているからだ。友達は何度も撲られているし、
先祖だの肌の黒いのなんて関係ない」
「本当のことを言ってよ、お願い!
助けて!
お願い!
あなたの言うこと皆聞くのでしょう?
穣二、お願いよ!
二人を助けて!」
「親父に頼んでみてもいい」
「本当!」
「条件がある」
「条件?」
「武蔵と別れろ。
俺と一緒になろう。
そうしたら考える」
「あなた、どういうつもり?」
「どうもこうもない。
武蔵と金輪際付き合わない。
俺と一緒になる、と約束したら親父に頼んでやってもいい。
無罪放免は保障できないが、、先生に嘘を言ってくれるように頼んでもらう」



「あなたが居なくなって、サチ、ひどく変ったわ。
穣二さんと付き合い始めた。
楽しそうではなかった。
別れた後、サチに連絡したの?」
「いえ、、」
「そう」
「彼と付き合っていたけど、あなたのことが忘れられなかったようよ。
体調が悪くて寝込んでいる時、寝言であなたの名前を何度か聞いた」
「、、、、」
「サチから連絡はなかったの?」
「ありませんでした」

母親が財布から小さな紙切れを取り出した。

「この番号、もしかして、、赤城君の?
408−986−1666」
「、、、、サンタクララの部屋のです」
「サチの財布に入っていた」
「、、、、、」
「結婚前、サチの部屋を掃除すると、壁に掛けてあった、
その月のカレンダーの後ろの右隅に電話番号が書いてあった。
毎月、おなじ番号。
今でも覚えている。
415−772−3324」
「、、、、、、、、」
「これも赤城君の、、」
「、、、、、はい、、サンフランシスコの、、
日本出てそこに」
「そう、、、サチはあなたに連絡したかったのね、、、」

やっぱりサチだったんだ、、、、
無言の電話は、、、



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13:偽威議員 やけどこのエントリをはてなブックマークに登録

13:やけど


「主人はもう何年になるかしら、5年近く話していない。
私とも余り会話がない。
主人、県会議員になって今では実力者よ。
サチ、私達を赦していない。
29なのに今でも大人が汚く見えるのね。
あなた達がいなくなって独りになってしまった。
赤城君、会いたいでしょうね。
先生に聞いてみる。
一緒に来ない、あなた、話を聞きたいでしょう」


「赤城さん、今、面会許可できません。
お母様から昔,お付き合いしていたと伺いました」
「はい、一緒になろうと約束しました」
「今でも相当気になさっています。
鏡を見ようとしません。
もう殆ど創痕は目立たなくなるまでになったのですが、最初のイメージを拭い取れないようです」
「ひどかったのでしょうか?」
「2度と3度の間でやや深めでした。
一部、水疱の下に死んだ皮膚の白っぽい痂皮(かさぶた)ができていました。
右耳と鼻の真中辺りに1cmほど残っています。
皮膚欠損部は改善されました。
当初、運動障害を懸念したのですが今では問題ありません。
彼女はそう捉えていないようです。
まだ違和感があるのでしょう。
残っている創痕は時間の経過とともに殆ど見分けがつかなくなります。
火傷は、誰もが当初びっくりします。
特に女性は、顔の場合はなおさらです」
「原因は?」
「熱湯です。
組織の破壊は70度の場合、1秒で始まります。
彼女の場合はそれ以上の熱が数秒かかったものと思われます。
受傷直後の応急処置がもう少し早ければ感染を起こすこともなかったのですが」
「会えませんか」
「ここに来て一年近くになりますが、
ご自分の顔を見ていません。
火傷した時の顔しか知りません。
もう少し、時間を下さい。
私がそれとなく聞いてみます」
「一年も、、」


「大和、どこだ」
「赤坂の議員宿舎だ。
来いよ」
「日本にいるの知ってたか?」
「部屋に電話してもいないからな。
サチのとこだろう。
どうだった?」
「会えなかった」


「俺達のために結婚を?」
「多分な」
「穣二の野朗、赦せんな」
「あいつに振り回された、この十数年」
「会えないというのは火傷ひどかったのか?」
「頬に痕が残っているそうだ。
いずれ皮膚と見分けがつかなくなるくらいに回復するらしい」
「本当の理由は?
穣二がまだ、?」
「イメージだと」
「火傷のか」
「顔だからな、この一年、自分の顔を見ていないそうだ」
「火傷したのは一年も前か、、代議士の話があって俺が日本に来た頃か」
「そうか、、その頃から無言の電話がかかって来なくなった」
「無言の電話を、?」
「あいつ、俺の電話番号知ってたよ。
シスコとサンタクララの」
「堪らんな、おまえ達、遠回りしたな。
火傷の原因は?」
「お湯だ。
70以上のお湯が数秒かかったそうだ」
「穣二か?」
「知らん」
「サチ、結婚して何年だ、、5,6年か。
よく我慢したな」
「穣二の野朗、仕組んだんだ。
サチと結婚するためにな。
糞教師、サチの親父、偉くなったそうだ。
大和、殺すか」

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14:偽威議員 リストカットこのエントリをはてなブックマークに登録

14:リストカット


「加賀君!
赤城君そこにいるの!」
「どちら様で?」
「サチの母親!
サチが自殺未遂を!」


「あなた方、血液は!」
「Aです」
「輸血の血が足りません!
お願いできますか」


「また君達か!」
「あなた、何を言うの!」
「君達がいると何かが起こる」
「輸血して下さったのに何を言うの!」
「、、、」


「先生、どうなのです?」
「間に合いました。
お休みになっています。
左静脈、手動脈の一部が切れてました」
「自殺を?」
「分りません」
「リストカットですか?」
「現時点では分りません。
私が昨日、話したことと関係があるかもしれません。
赤城さん、あなたの来訪のことを夕方、話しました。
動揺した様子は見られなかったのですが、、」
「やはり君だ!
赤城君、加賀君、ここから出て行て行ってくれ!
災いなんだ、君達は!
出て行け!」
「あなた!
赤城君、加賀君、ここにいて、お願い!
あなた!
いい加減にして!
あなたが出て行って!」
「何だと!」
「悪いのは私達よ!
サチのことを本当に思っていた、
サチの結婚も、、
リストカットしていたなんて、
あんなに、苦しんでいたのに、、、
何も知らなかった!
あなた、出て行って、よく考えて!
出て行ってよ!」
「何を!!」


「すいません、先生、、、」
「断定はできませんが、自殺をしようとしたのではなく手首に刃を当てている時に何かの拍子に転んだのではないかと。
左手の肘、肩、腰に打撲の跡がありました。
動脈は皮膚下6、7mmにあります。
手首を切り落とすぐらいの覚悟で切りつけなければ死ねません。
それほど人肉は柔らかくありません。
それに、鋭利でなければ、、
錆びついたカッターの刃でした。
散歩で拾っておいたのでしょうか」


「リストカットをしていたのですか?」
「知らなかった、親なのに、入院するまで。
、、情けないわ。
私達、サチのこと何も知らなかったの。
親として失格よ。
電話では余り話さなかった。
穣二さんは、いつも元気だと、、」
「お母さん、12年前、武蔵も俺も教師に何もやっていません。
サチは俺達のために穣二と結婚した。
俺は過去のことだと割り切れました。
でも、武蔵とサチのことは我慢できません。
あれだけ愛し合っていたのに、、堪りません。
火傷は穣二でしょう。
訴えないのですか?」
「、、、、、、、」
「大和、、いいよ。
今言うなよ」
「言わしてくれ。
これはお前も知らない。
小学校の時、俺はサチに会った。
転校ばかりしていました。
黒い肌が原因です。
サチと同じ小学校に約半年、通った。
サチだけでした、友達は。
いじめられているのを助けてくれました、お姉さんのようだった。
月、2回、ファニーに、、家のお袋です、、、英語を教わっていました。
本当に正義感の強い、たくましい女の子でした。
そんな子を、、ここまで、、」

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