19:下ヒッチハイク. ウィスラーマウンテンこのエントリをはてなブックマークに登録


19:ウィスラーマウンテン
20:バンクーバー
21:シアトル 密入国
22:東京 強制送還
23:ハワイ島 コナ
24:東京 グリーンカード
25:東京ーNY
26:NY ケネディ空港
完 エピローグ




19:ウィスラーマウンテン


それから四日以内に、5枚の写真とキース・スコット宛の手紙が別々に届いた。
写真と一緒に、2万$のアメリカンバンク・チェックが入っていた。

翌朝、角さんはシャーキーと接触するため外出した。
約二時間後に戻ってきた。
「公衆電話の梯子を5回もやったんで時間がかかった。
シャーキーの野郎、写真を渡せだとくどいほど言いやがった。
ロバートが耕二に直に渡して欲しいと手紙にあったから駄目だと言ったが、、うるさい、あいつは」
「ロバートとチャックはシャーキーも誰も信用していません。
俺だけです」
「キースに直に渡して欲しい、と念を押された。
写真紛失はすべてを無にするとな。
奴がグレン大佐一味をワシントン州シアトルにあるCIAの隠れ家におびき寄せる。
その間に耕二はウィスラーマウンテンのキース・スコットに会って写真を渡すことに決まった。
今日が7月9日、金曜日だから五日後の14日、水曜日の夜八時が会合時間だ。
どうだ、やれるか?」
「なぜシアトルなんです?
黒幕の一人がワシントン州選出の上院議員ですよ。
それにロバートの兄貴は今バンクーバー郊外ですよ。
ラス・ヴェガスとか、遠い方がいいんじゃないですか近過ぎます」
「カミンスキー上院議員の関与を証明するためには地元のシアトルで捕まえなけばいけないそうだ。
向こうの都合のいい捜査方針だ。
その分、耕二にはくれぐれも気をつけるように伝えてくれと言ったがな。
CIAなんざ、こっちの危険など考えてない。
どうする、耕二、降りるか?
写真を渡すのも逃げるのも危険だ」
「やります。やばくなったらアラスカにでも逃げます」
「キース・スコットには耕二の名は“サカモト”だと知らせてあるそうだ。
14日の正午、その名で1回キースの山荘に電話を入れるようにと言われた。
相手が、キース、と答えるから、耕二は、サカモト、とだけ言って切る。
それが合い言葉だ。
俺がアムステルダムのパラジッソで会ったジャパニーズのヒッピーがコージか、とシャーキーに聞かれたよ。
Dogshit(犬の糞)が臭かった、とか訳の分からんことを言ってた。
明日トロントに飛べ、14日にバンクーバーに入るのが安全だ。
現地時間でいいから朝10時か午後10時に必ず一回電話をくれるか。
何かあったら俺が行く。
光はもうオーバーステイ(不法滞在)してるからな。
おまえは合法的に出れてよかったな。
またアメリカに来る気なら日本でパスポートを新しくして出てこい。
もうスタンプ押すとこはないだろうからな」
「はい、そうします。
7月17日まで滞在ビザはあるし、髪の毛はほどほど伸びたし。
もうここに閉じ込もるのは限界です」

翌朝、トロントに向け出発した。その夜は市内にあるYMCAに泊まった。
ここもヒッピーが多かった、ベトナム徴兵拒否して逃げてきたアメリカの若者が多くいた。


12日夜、グレン大佐は怒り狂ってボブ・レノンを睨んだ。
「ババの足取りが全くつかめないとはどういうことだ。
変な動きもなかったのか?」

1週間ほど前の夕方、メグの勤め先に30数人のヒッピーミュージシャンたちが15分間、店内にいた、と変な報告を受けた。
「色んな楽器がありました。
この地球には変てこな人種がいるなって感心しました。
シタールを持ったインド人が二人いたんでフレドリック・ババだと思い後をつけました。
RCAビルに消えました。
ガードマンに聞くと、あんたたち、あの有名なシタール奏者も知らないのか、とこけにされました。
なんでも、ラビ・シャンカールって名でした。
ボブさん、聞いたことあります?」
ラビ・シャンカール?
なんでインド人がここで有名なんだ。

三日前、シャーキーがNYからの電話に応答したので追いかけたが駄目だった、と報告を受けていた。
「大佐、お言葉を返すようですが、
ババはピエロでネクタイは裏表、ドイツ-インド系、WASPのジャパニーズ系のウルトラTバックのスモウレスラー、ストリッパー、これ聞いただけで想像つきますか?
特徴といえば右目に三日月形の傷跡があるだけですよ。思考の限界を超えてます」
「なんだ、それは?
おまえは詳しく報告してなかったようだな。
ピエロにネクタイは裏表、Tバックのスモウレスラーストリップだと!
なんだそれは」
それを聞いて、大佐がため息を吐いたとき電話が鳴った。
「大佐!妹とシャーキーの電話盗聴しました。
今テープ流します」

(メグさん、手短にキースさんはどこです。
ついさっきフレドリック・ババから写真が手に入った、と連絡がありました。
すぐにでも彼に見てもらいたいのです)
(今、兄はシアトルにいます。住所は -GOLDEN-ARROW〜〜です。
ババはいつ行けるのですか?)
(15日の午前0時に伺います。キースさんにそうお伝えてください)
(はい)

「よくやった。
シアトルか、ジョージの地元じゃないか」
「大佐、ロバートはなぜ写真を公表しないんですか。
ネガを持ってるはずですよね」
「何らかの理由で現像できない、とも考えられるな」
「でも、5枚、写真があります」
「ネガが役立たずでババの手元にある5枚の写真しかない、としたら辻褄が合う。
シャーキーも今ネガと言わなかった。
ヒギンズがメグの部屋には何もなかったと、と報告したな。
キースが生まれ変わって動き出したところを見ると写真はキースのとこにあったかもな」
「おかしいじゃあないですか。
ババは写真をキースのとこに持って行こうとしているんですよ」
「どこかにあったが今はないんだ!」
「キースに見せる前にその写真を没にすればいいんですね?」


無事バンクーバーに着いた。
翌朝、午前10時、約束どおりキースに電話した。
すべて順調で、今夜、写真を渡すだけだ。
午後2時過ぎ、レンタカーを借りに行った。
店員が国際免許証を見ている。
「パスポートを見せてくれ」
さいわい、誰もいない。
「ここの数字が読めなかったと言えば、あなたの責任にはならないでしょう」
有効と取得の《月》を爪で引っ掻いた。
15五分後、ウィスラーに向かっていた。
金は万能だ、物欲のある人間には。


14日、グレン大佐自ら率いた総勢40人もの男たちが、シアトルのジョージ・カミンスキーの邸宅に集結した。
「キースの所は何人見張ってる?」
「10人ほど。猫一匹、逃がしませんから御安心ください。
ここから車で10分程の所です」
「シャーキーは?」
「昨日夜遅く着いてキースと合流したようです」
「モーランとウィットローは?」
「報告では、モーラン大佐はカナダのウィニペグに行ってます。
カナダ軍参謀部との定期的な会合らしいです。
ウィットロー参事官はワシントンにいると確認できました」


ウィスラーまで5時間のドライブだった。
山、湖、気分は最高だ、途中、ドライブ・インに寄って時間を調節して、夜8時、山荘に着いた。
暗闇から、自動小銃を持った6人の男が出てきた。

応接室には男が二人いた。
ソファに座っている軍服姿の男が、ケネス・モーラン、と自ら名乗り、向かいのソファを指さした。
キース・スコットはベッドに横たわっていた。
額のほくろがあの時より大きく見える、それまでもが生き返ったようだ。

モーラン大佐の言葉が目覚まし時計のように響いた。
「二人ともすでに顔見知りのようだが、私は初対面なのでね。きみがサカモトかね」
「本名はコージ・カゼと言います。国籍はジャパンです。
たまたまスペインのバルセロナで、ロバートとチャックに会いました。
約四ヵ月後、彼らと偶然コロンビアで再会しました」

これまでの経緯を二人に説明した。
そして、5枚の写真をテーブルに置いた。
二人はしばらく見ていた。
モーラン大佐が受話器を取った。
数分後に現れた軍服姿の男に写真を手渡した。
大佐は俺たちに別れの挨拶をして消えた。
5分後、ヘリコプターの飛び立つ音が山荘を覆った。

その間、キース・スコットは俺の顔を凝視していた。
やがて軽く息を吸い込んで口を開いた。
「君には言葉に言い表せないぐらいの感謝の気持ちで一杯だ。
メグ、ロバート、それに私、君とロバートの出会いがなかったらすべてが無だった。
二人はやがて殺され、メグは病院に逆戻り、私は目覚めることなくこの世を去っていただろう。
君のような若い青年に救われたことが新鮮な驚きだ。
危険なことを完璧に遂行した君の勇気と知力に感服している。
私が今ここにいれるのも君のおかげだ、とメグが言った。
それがわからない。
一年九ヶ月もの長い間、意識不明状態だった人間が、なぜ意識を取り戻したのか。
もしメグが言うように、君がそれに関係があるのならぜひ教えてほしい」
「関係ありません」
「私が意識を取り戻したのは君がサナトリウムを訪問した翌日だ。
それにメグの震えがある。
彼女は、君が手を取って深呼吸をしていると震えが止まった、と言った」
「ただ、一緒に深呼吸しただけです」
「サナトリウムの私の病室で君は何をした?」
「お祈りをしていました」
「病室での行動をできるだけ詳しく教えて欲しい?」
「Sixtetのジャケットから5枚の写真を取り出してバッグに入れました。
それからあなたの額に手を当てある人を呼びました」
「私の額に触れて祈った?
その、ある人とは?差し支えなければ」 

ミスターF、パドレ・ピオのことを彼に話した。
「パドレ・ピオがミスターFにやったことを君は私にしてくれたのか?」
「わからないんです。
何をやろうとしているのか、何をやっているのか意識はあるんですが、、無いんです。
半ば無意識に手が行くんです。
その、何かをしてあげたい、しなければ、、とか、、そういう意識がさせるんです。
俺はただ繋げている道具みたいな、、俺の手を使ってミスターFとパドレ・ピオが仕事をする、というのに近いと思います。
上手く言えませんが、ただ、俺の役割は繋げて祈るだけです」
「祈っているとき君は何を感じる?」
「俺の祈りとは、ミスターF、パロレ・ピオのエネルギーを体内に入れる作業です。
手が熱くなります。集中していますからその間のことは何も覚えてません」


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genre : 小説・文学

20:下ヒッチハイク. バンクーバーこのエントリをはてなブックマークに登録

20:バンクーバー

日付が変わって大佐の部下たちは隠れ家に踏み込んだ。
中はもぬけのからだった。
地下室にトンネルが発見された。

早朝2時、総勢40人もの男達がジョージ・カミンスキー邸宅に着いたとき、大佐は怒りを鎮めようと、隠れ家で飲んだ10錠の鎮静剤がちょうどいい具合に効いていた。 
大佐から話を聞いたカミンスキーはひどく取り乱した。    
「大佐!どいうことだ!おとりか?
もうネガも何もかもキースの手に渡ったのか!」
「じたばたするな、ジョージ。
確認してないうちは可能性があるんだからね」
自分の声がやけに落ち着いていたので大佐自身びっくりした。

朝10時半過ぎ、ソファで寝ていたボブ・レノンを電話が起こした。
「大佐!ババのほんとうの名前がわかりました!
ジャパニーズで、名前はコージ・カゼ。
バンクーバーにいます!
今、ウイットロー参事官の電話を盗聴していた監視員から連絡がありました!
盗聴先はバンクーバ市内ではなさそうです、、郊外です。
今テープ流します」

今朝、キース・スコットは、朝鮮戦争時代の戦友で、ニクソン政権内で参事官をしているウィットローに電話を入れた。

「今、バンクーバーにいる。
もしモーランと私が窮地に陥ったら助けて欲しい」
「わかった。できるだけの事はする。
キース、2年近くも意識不明で戻ってくるなんて考えられないな。
心当たりはないのか?
あるはずないよな、意識が無かったんだからな」
「どうもコージ・カゼというジャパニーズがこの世に戻してくれたようなんだ」
「ジャパニーズ?
会ってみたいな。
仏教と係わり合いがあるのかな?
、、用件はわかった。
キース、近々会おうな、元気になれよ」


コージ・カゼはキースに会った様だな、写真は、、? 
「ボビー、バンクーバーでジャップ捜索だ。
本名で泊まっているか、チケットを買うことを祈って、ホテル、汽車、空港、旅行代理店、レンタ・カー会社すべて手分けしてあたれ。
NYに戻るかもしれん、そこんとこは先入観抜きでな。
写真を手に入れたら一万$のボーナスを出す」
 

ウィスラーのコテジ風民宿を出てバンクーバーに向かった。
午後1時過ぎ、バンクーバー市に入った。
スタンレイ・パークで猫の看板が見えた。
「ブラック・キャット」という民宿だった。
70前後の老婆が、リスに胡桃を投げている。
「泊まりたいのですが、部屋ありますか?」

日本までの航空券を買いに市内に向かった。
旅行代理店でバイトをしていた学生風のヒッピーがこっそり教えてくれた。
「チャイナタウンで安い航空券が買える」
17日朝6時半、シアトル発サイアム航空、003便ホノルル経由東京行きだ。
バンクーバーからの直行便は高かった。
ホノルルで少しのんびりするのも悪くない。
その後、グレイハウンドのバスターミナルで、明日16日のシアトル行き最終便のバス切符を買った。
午後7時発で、4時間後の11時シアトル着だ。
明日は早起きしてバンクーバー島に行こう。

ブラック・キャットからNYに電話した。
「角さん、簡単すぎて嘘みたいです」
「シャーキーから昨日電話があってな、メグと交わしたおとり電話の内容に言ってはいけないことを言ったかもしれない、なんてまたふざけた事ぬかしゃがった。
メグから写真しか預かってないと聞いてたんで、写真と言ったそうだ。
それに枚数がそんなにないことを教えたかも、とな。
CIAが!
彼との連絡方法も決めておくべきだった。
何度連絡しても通じん。
どうも落ち着かん。
なんとしても無事脱出しろよ」
「明後日の朝6時半発、シアトルからホノルル経由東京行きのチケット買いました」
「何!シアトルから!直行便じゃないのか?
耕二、危険だぞ、シアトルは!」
「直行便は今までの旅考えたらもったいなくて大丈夫です。
俺の顔も名前も知らないでしょうから」
「真っ直ぐ帰れよ。
こんなときに安い、高いは関係ないだろうが」
「本当はハワイで泳ぎたいんですよ」


ボブ・レノンはバンクーバ、グランド・ホテルの一室で部下の報告を待っていた。
「大佐、着いたのが遅かったのでホテルを主にあたりましたが、今のところ駄目です。
明日は代理店、レンタ・カー会社をあたってみます。
もうここにいないかもしれませんね」


翌朝、空港、駅、バスターミナルに部下を分散し、旅行代理店、レンタ・カー会社を重点的に調べた。

耕二がバンクーバー島でドライブしている頃、ボブ・レノンの部下が偽のFBIバッジを手に、あるレンタ・カー会社を訪れていた。
「コージ・カゼという名の日本人を探してるんだが、20前半、180cm、痩せ形、髪は短めで奇妙な服を着ているか、変な歩き方をしている可能性がある」

受付の男は、知らないと即座に答えた。
やっぱり何かやってたな。
2000ふっかけてみるか。

3時半過ぎ、ボブ・レノンに面白い情報が入ってきた。
昨日、チャイナ・タウンの旅行代理店で航空券を買った日本人がいた。
名前がコージ・カゼだった。
エア・サイアム.003便、17日、シアトル午前6時半発、ホノルル経由東京行きだ。
大佐にすぐ報告した。
「ババ、、、コージ・カゼはまだここに居ます。
明朝、6時半、シアトルからホノルル経由で東京行きの航空券を購入しました。
シアトル空港で待ち伏せしましょうか」

ホノルル!東京!
やはり写真はキースたちに既に渡っていた。

「ボビー、シアトル空港に行け。
ババ・コージー、ジャップを殺せ」

睡眠薬の瓶の蓋を開けた。
すべて飲み下した。
ガレージに向かった。
BMWのドアを開けた。

前方にCOKEの字が走っている。
追い越されたくないのか、速度を上げた。
逃げようとしている、、
アクセルをおもいっきり踏み込んだ。
ババ、コジー、コージー、コーズー!
おまえは何者だ!
ハンドルを握る右手の人差指から巨大な爪が伸びていた。
瓶か、、、中で指が窒息している。
なんだ、この空瓶は、、
COKEがなんでこんなとこに
小さい、な、、
COKEじゃあ、、、、ない!
ああ、、、!!!
信号で停まっていたCOKEの字に激突した。

ドガーン!!!!

ボブ・レノンは部下を呼び戻し、シアトル空港に向かった。
写真はもうキースの手に渡ったようだな。
ジャップめ、イエローモンキーなんざに嘗められてたまるか、さんざんこけにしやがって。


6時を過ぎていた。
道路工事で時間を食ってしまった、急がないとバスに間に合わない。
バッグをひったくって窓越しに声をかけて走った。
「支払い終わってますよね、、じゃあ、急ぐんで!」

受付の男は飛び出した。
「ミスターコージ!
情報、2000$で買いませんか!
断るなら、お巡り呼びますよ!」

既に200m先を走っていた耕二に、声は届かなかった。




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21:下ヒッチハイク. シアトル.密入国このエントリをはてなブックマークに登録

21:シアトル 密入国 


シアトル行きのグレイハウンドバスは、予定どおり7時に出発した。
明日はハワイか、泳ぐのは久しぶりだ。
旅しに来たのに、別のものに食われちゃった。
、、、待てよ、、滞在は17日までだったな、、明日だ。
このままだとハワイで泳げない。
まあ、いいさ、遊ぶ資格がある。
一週間、魚になって泳ごう、オーバーステイなんてどうでもいいや。

国境べリングハムでカナダ出国のスタンプをもらった後、50mほど離れたUS移民局で入国手続きをした。
移民官が二人いた。
ラレドのときと違って、5000$近くの現金を持っていたので、不安感、緊張感はなく、あくびさえ出た。
ビザはあるし、若い方は俺とおなじ世代の白人の若者だ。
問題なしだな。

順番が来た。
ページを継ぎ足した、よれよれの分厚い一次旅券のパスポートを手渡した。
「どこから来た」
「バンクーバーです」
「その前はどこにいた」
「トロント、NYです」
「ジャパンまでの航空チケットと金は」
「明朝6時半発の日本行き航空券と、約800$の現金を持ってます」

パスポートを胡散くさそうに調べている。
俺の汚いジーパンを見ながら、目を数回、上下させた。
「あそこの部屋で待ってろ」
嘘だろ、金も航空券もあるのに、、。
5000じゃあ逆に怪しまれると思って800$にした。

部屋で腹巻から800$だけ取り出して残りは靴の中に隠した。
まさか金が有りすぎて入れない、、考えてなかった。

5分ほどして、若い方が30半ばの相棒と入ってきた。
「ケーシー、このジャップ嘘ついてますよ。
日本出国時、246$なのに、今800$持ってるんすからね。
しかも1年ちかく、ヨーロッパ、南米回ってんですよ。
NYで働いてますよ」
「金とチケットを見せてくれ。
あんた、この金はどうした?
この航空券は二日前に買ってるね。
アメリカで仕事したのかね」
「南米で一文無しになったので、1500$、日本からメキシコシテイーに送ってもらいました」
「その写しか証明できるもん持ってるかい」
エンジンをかけて停車しているバスを見た。
「ええ、バッグの中です」

若いのが戸口に行って、大声でバスドライバーに叫んだ。
「ジミー、このジャップの荷物持ってきてくれ」
ドライバーがパウロのバッフルバッグを持ってきた。
「後どんくらいかかるんだね。
みんな痺れきらしちまって」
即座に答えた、憎悪が入っていた。
「行ってもいいぜ。
このジャップはアメリカにゃ入れねえから」

写しを探す演技を続けた。
「どうしても見つかりません」
「カナダへ戻ってくれ」
ケーシーが言った。
「えっ、明朝6時半の日本に帰る飛行機のチケット持ってるんですよ!
どうかお願いします。
それに滞在も明日までですから」
若いのが叫んだ。
「駄目なんだ、ジャップは!」

ひどく落ち込んだ、ここまでの旅で一番ひどかった。
自分の力ではどうしようもできない、、

カナダ移民局の建物にゆっくり歩き出した。
無性に腹が立ってきた。
「ジャップ」の響きがしゃくで、どうにも我慢できなかった。
数時間後の飛行機のチケットまで持ってる!
決心した。
なんとか潜り込んで絶対に飛行機に乗ってやる。
US移民局を振り返った。
戻ろうとした瞬間、移民局の表の明かりが消えた。
横の藪に潜んだ。
電柱の蛍光灯がまぶしい。
紺色のアノラックをバッグから取り出した。
汗が同時に吹き出た、体も、周りの何処もかしこも熱い。
中腰で建物に進んだ。
中の明かりは点いていた、幸い人の気配はない。
壁に寄り添って辺りを見回した。
ここから先が難しかった。
4、50メートル先まで身を隠すものが何もない広場だ。
サーチライトが昼間のように照らしている。
一気に走って藪に飛び込むしかない。
アメリカ側は俺を追い返したことをカナダ側に連絡しただろうか。
あまり時間がない。
飛び出そうとした瞬間、いきなり表の明かりが人の咳払いと同時に俺の真上で点灯した。
びびった。
辺り一面、真っ昼間だ。
俺の頭数センチ上にある窓越しに誰かが歩いている。
先ほど尋問された部屋だ。
頭が窓ガラスに映らないように窓枠の下にしゃがんで壁にへばりついた。

身動きできなかった。
発見されるのも時間の問題のように思えた。
俺に踏んづけられた蛾が到る所に転がっている。
光に吸い寄せられた蛾、虫が容赦なく襲ってきた。 

数分後、突然、広場のサーチライトだけを残して建物の明かりがすべて消えた。

体が勝手に走っていた。
自分で驚いた。
え!!バッグが上下左右に弾んだ、体が打たれ、叩かれバランスが取れない。
バッグを藪に放り投げて飛び込んだ。
バッタの目潰しをくらった。
静寂が周りに走った。
俺の息切れだけだ、、
こめかみの辺りから汗がけだるそうに流れ落ちている。

移民局、すべてのライトが灯り、中から懐中電灯を手に男が出てきた。
ケーシーだ。
ライトが目に飛び込んできた。
顔を伏せて地面にこすりつけた。
観念した。

「ケーシー!
あんたの番だぜ!
ネズミだってば。
先週から何匹も見てんだから。
勝ち逃げはなしだぜ。
早いとこやろうぜ!」 

息切れが納まっていた。
眠ってた。

道路から20mほど離れて、沿って歩いた。
辺りは真暗だ、めかるみに何度もはまった。
靴、ズボンは泥だらけ、バッグには押しつぶされた虫の死体がこびりついている。
うまく潜り込んだ喜びはなかった。

12時を過ぎていた。
この1時間半の間、シアトルに向かう車はなかった。
町に行けば公衆電話があるはずだ。
タクシー呼んで遅くても5時半までに空港に着けば、、、、

それから2時間、コンクリートの帯の上を息も絶え絶えに歩いた。
星一つない、暗黒の世界だ。
近くに町があるようには見えない。
コンクリートを歩くのはしんどかった、バッグを枕にその場にへたり込んだ。

3時になっていた。
いきなり水滴が落ちてきた。
口を大きく開けて雨に打たれた。
靴がひどく窮屈だ、横になったまま、かかとで交互に靴を押し出した。
何かが足に引っかかった。
5000$だ、、何も無理して6時半の飛行機に乗ることはないのに気づいた。
滞在ビザの期限は明日、いや今日までだ。
出国さえすればオーバステイなんて関係ない。

しばらく横になっていた。
雨はもう土砂降りになっていた。
パウロとハイディがチューリヒから助けに来てくれそうもない。
顔か痛かった、道路に座った。
ここでなぜ雨にに打たれて座っているのか、適当な理由を探した、、
もう思い浮かばなかった。

30分が経った。
もう雨に打たれるのはうんざりだ。
立ち上がってバッグを担いだ。
逆に引っ張られた、とんでもない重さになっていた。
道路にへたり込んだとき、はるか彼方にかすかにライトが泳いだ。

車だ!
嬉しかった。
3時半だ、まだ飛行機に間に合う、公衆電話のある所まで乗せてもらおう。
でも、、この格好で怪しまれないか?
カナダ側に通報されていたら、、

ライトが、か細げで切ない、俺のようだ。
どうしよう、、、、
道に迷ったと言えばなんとかなる、おまけに、この雨だ、怪しまれない。
もう重いバッグを持つのは嫌だ。

路肩に出て、親指をおもいっきり突き上げた。

車に勢い良く乗り込んだ。

どうも、ありがとうございます!

ドライバーは、怒りと喜びが混じった目で俺を睨んでいた。
奇声をあげて大声で笑い出した。
こんにゃくみたいに揺れている。

最悪、、“ジャップ”と呼んだ、あの若いのだ。 




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genre : 小説・文学

22:下ヒッチハイク. 東京.強制送還このエントリをはてなブックマークに登録

22:東京 強制送還


ずぶ濡れだった、ケーシーが古い上着とズボンを貸してくれた。
「US・IMMIGRATION(移民局)」のマークが胸にあった。

若いのが番号札を持ってきた。
「マークをそれで隠して持ってろ」
前、右横、左横の写真、それから指紋を取られた。
シャッターを押すとき、番号札をわざとずらした。
作業中、若いのはジャップの言葉を嫌になるほど吐き、顔は緩みっぱなしだった。

俺の飛行機が、夢のハワイに飛び立ったころカナダ側に連れて行かれた。
カナダ側は俺の受け取りを拒否した、
US移民局の服を着ているからだと思った。
別室に連れていかれた。
俺は宙に浮いたまま双方の移民官の笑い声を聞いていた。
イミグレをヒッチした密入国者、と聞こえた。

ラジオで、Doors(ドアーズ)の
“WAITING FOR THE SUN(太陽、待ってるんだよ)”がかかった。
エスコートしていた カナダの移民官がなにげなく言った。
「ドアーズも終わりだな。
ジム・モリソン(ドアーズのボーカル)が死んだんじゃあ」
「ほんとうですか!」
「ああ、2、3週間ほど前にパリでな。
公表されたときは墓の中でな、奥方と2、3人以外は、
誰も死体を確認してないらしい」
疲労困憊した俺の体にブルーが覆い重なった。

結局、カナダ側に引き渡された。
その後の身体検査で5000$が見つかり、また複雑になった。
「NYの友達に借りた」
移民官が確認のためNYに電話した。
角さんと話すことができた。

「耕二、密入国して移民官の車ヒッチ?お笑いだな。
でもな、それで命拾いした。
シャーキーからさっき連絡があって、ボブ・レノンはシアトル空港でおまえを待ち伏せしてた。
入国できなくてよかった。
シャーキーがおまえに謝りたいとよ。
本当かどうかは知らんがモーラン大佐のGOサイン待ちだったらしい。
今朝8時にOKが出た、そっちの時間で4時だ。
4時半に、シャーキーから俺に連絡があってな、すぐおまえのシアトル発の時間を教えた。
空港で、ボブ・レノンと彼の部下10人を捕まえたらしい。
おまえが飛行機に乗ってなかった、と言ったんで心配した。
まさか、とんでもないもんをヒッチしたな。
それから、カミンスキーは逮捕された。
グレン大佐は交通事故で亡くなったらしい」


二日後、東京・直行便の高い運賃を払わされて強制送還された。
サイアム航空のチケットは払い戻しがきかなかった。

機内で俺はかなり幸せな気分に浸っていた。
居眠り中に、スイス少年が久しぶりに現れた。
“サヨナラ”と日本語で言った。
足に目が行った、
しっかり飛行機を踏んづけている素足があった。
浮いていることに変わりはないか、、
一人前の男になったのを喜んでくれた、、
彼とは多分これが最後だ、、もう会えないと感じた。

帰国して2か月近くになっていたが、まだ日本にいた。
新しいパスポートとNYまでの航空券を持って、赤坂のアメリカ大使館にビザを取りに行ったが拒否された。

シアトル国境でのことが関係あるのだろう。

メグ、ロバートから手紙が来た。
彼女は、サンディエゴでキースの世話をしていると書いてあった。
ロバートとアントンはトロントに住んでいた。
チャックはNJのアスベリー・パークに戻っていた。
ロバートから送られてきた金、20000$、合計24000$はお咎めなしだった。
“俺たちがすべて遣ったことになってるから自由に使え”
アントンのなつかしいメッセージがあった。
“25$のお馬鹿さんへ”


10月中頃、角さんから電話があった。
「二日前、光の働いてるレストランが移民局に襲われてあいつ強制送還になった。
今、見送ってきたとこだ。
まったくついてないな、あいつは!」
「奇妙な力を持ってるのにつまらないことでどじ踏むんですね。
金、名声、欲とは無縁のものなのですね」

翌早朝、電話で起こされた。
「もしもし、光です。
耕二いますか」



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23:下ヒッチハイク. ハワイ島 コナこのエントリをはてなブックマークに登録

23:ハワイ島 コナ


米ロックバンド、マニアックユース(Maniac Youth)元ギタリスト、マーク・ボランはハワイ島、コナで、父の部下だったボブ・レノンと名乗る初老の男の訪問を受けた。

数時間前、コナ空港に到着するや襲ってきたスコールで、ボブ・レノンのスーツ、靴はまだ半乾きの状態だった。
スコール後の蒸し暑さに汗が肌着にねっとりしがみつき、水虫が靴下、足、靴まで食べようとしていた。

マークは何でクーラを入れてないんだ?
心臓に悪いのか、、

「私はあなたの幼少の頃をよく覚えています」
「古い話ですね。
父の死に関してお話がおありだとか?」
「大佐がお亡くなりになった当時のことを何か聞いていますか?」
「3歳か4歳でしたからね。
もう当時のことは余り知りたくありません。
あなたに会うのも躊躇したぐらいです」

マークの気を引こうと、レノンは作り話をした。
「大佐は風耕二というジャップ、いや、ジャパニーズに殺されました」
「殺された」
「あれはシアトルのカミンスキー上院議員の邸宅で起きました。
大佐は事故に遭う2時間程前から行方がわかりませんでした。
風はひそかにガレージに忍び込んでいたようです。
上院議員の使用人が大佐と風らしき東洋人がBMWに乗って邸宅を出て行くのを目撃しています。
警察ではまったく信用されなかったようです。
当時は何を言っても相手にしてくれるような状況ではありませんでした」

レノンは使用人の電話番号を自分の名刺に書いて渡した。
彼女には嘘をつくようにと、金を払っていた。

風耕二と聞いて、マークは興味を持った。
名前に心当たりがあった、同じ人物だろうか?
5年ほど前、マニアックユースはシャギーというバンド名で日本ツアーをした。
そのとき、面倒を見てくれたのが風耕二だった。
歳は合っていた、70年代、USに行ったことがある、と言っていた。

レノンは人差し指と親指でしきりにシャツをつかんではパタパタさせた。
乾かそうとしている自分が滑稽に見えてきた。
座っているだけで汗が出るのに、、
それにしても痒い、この足、切りたいぐらいだ。

「あなたの訪問の目的はなんでしょう?」
「去年、刑務所から出てきました。
風に復讐したいのです。
さいわい、あなたは日本に行ったことがあると聞いています。
彼を探し出したいので力を貸していただけませんか。
風は事故に見せかけて大佐を殺しておいてなんの咎めも受けていません」


親父の話は正直、うんざりだった。
ベトナムでの悪行が明るみになり、ダラスの家、財産、すべて税務署に没収された。
親戚には見放され、時が過ぎても、母方の名前に変えても、親父の影は追いついてきた。
事件後、10年余り、お袋と国内を転々とした。
お袋は、ショッピングセンターのレジ、ビリヤード場の売り子、養鶏場、ありとあらゆる職業をやった。
いずれ雇い主が過去を知るまでの僅かな期間だった。
どの職場にもベトナムで戦死した若者の家族がいたので仕事を続けるのは拷問にひとしかった。
いやがらせ、いじめはいつものことで、よく顔に痣を作って帰ってきた。
仕打ちは自分も受けた。
いじめはいつものことだったので気にならなかったが、サンフランシスコの小学校で、南ベトナムから移住してきたベトナム人にいじめられたのには我慢できなかった。
ナイフを使った、転校を余儀なくされた。
結局、お袋は娼婦にまで堕ちた。
88年、原因不明の感染が原因で別人のような容姿で亡くなった。
エイズだったかもしれない、当時は分からなかった。
自分も感染しているかもしれなかったが検査はしていない。
夢の中のお袋は、今二人いた。
親父が殺されていようがどうでもよかった。
ただ、お袋を落としたものがひどく憎かった。

マニアックユースは、ネオナチ、白人至上主義者、御用達バンドだった。
持病の心臓病悪化でバンド活動に支障をきたしたので去年やめた。
ペースメーカーなしでは生きていけない体になっていた。
風という男を日本に行って探す気はしなかった、
でも、もし、あの風が、、、、

ボブ・レノンはマークのことを調べていた。
仲間はいないし、似たような排他主義者の彼なら手助けしてくれるはずだ。
なんせ大佐の息子だ。
長い刑務所暮らしで体はぼろぼろだ、反吐が出るほど嫌いな東洋人の国で人探しなんて、、、、、。
それにしてもマークはどこに行ったんだ?
宙を漂っている。
いつ始めたのか、また、シャツ掴みをしていた。
もう、うんざりだ。
クーラを点けてくれないかな。

「必ず風を探し出します。
あなたに確認して欲しいんです。
あなたしかいません。
そして、こちらに連れてきて欲しい」
「どうやって探し出すおつもりです?
彼の情報を何か得たのですか?」
「風耕二は透明人間になってます。
事件の記録には一切、記述されていません」
「、、、、、、、、、、」
「全国紙の尋ね人欄に広告を出してます。
さいわい風という名前は珍しいそうです」
「写真は?」
「ありません」
「特徴は?」
「ひどく近くにいたのに残念ながら会ったことがないのです」
「じゃあ、あなた御自身で探せるでしょう?」
「世界中の新聞に顔が載りました」
「じゃあ、探し出すのは無理でしょう」
「サンディエゴに風に会ったことがある看護婦がいましてね。
特徴を聞きました。
心臓が悪いのは承知しています。
あなた以外、仲間はもう誰もいなくなりました。
お父上の仇を、とお思いなら連絡ください」



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24:下ヒッチハイク. 東京 グリーンカードこのエントリをはてなブックマークに登録

24:東京 グリーンカード

「耕二、おまえのグリーンカードの宝くじがビンゴした」
「俺のグリーンカード?
何のことです?」
「永住権居住者が少ない国に無条件で永住権を与える法律があって、コンピュータが無作為に選ぶ。
おまえさんのために応募してた、光のもな。
倍率は4000倍ってとこか」
「俺にはやばい過去があるし、駄目でしよう。
、、、角さん、USはもういいかな、って感じです。
俺の生き方とは合いません、ちょっと考えちゃいますね」
「一応、無条件になってる。
書類送るよ、それ見て決めな。
早いもん勝ちらしいがな。
就労先の契約書、俺の音楽事務所になっている」

70、80年代に何度かUSAへ行こうとした。
いつもビザは拒否された。
その内、USに魅力をなくした。
例の何事にもマンチョ思考の武力で、という彼らのDNAが故だ。

角さんはNYでジャズ、ロックのスタジオ・ミュージシャンとして精力的に活動していた。
数か月前にCD“君が代”を出したばかりだった。
ジミヘンの米国歌(STAR―SPANGLED BANNER)の日本版だ。
あの“君が代”はもう地球にいなかった。

数日後、例の書類が届いた。
英字の戸籍謄本、AIDS検査を受ける病院名、警察庁発行の犯罪証明書、米国での就労先確認書もしくは証明書を速やかに揃えてアメリカ合衆国移民局に送付せよ、とある。
ご丁寧にも、よく考えて行動しろ、とあった。

一月ほどして、
「どうだ、状況は?」
「まだ、何も」
「そうか。日本人にはUSのグリーンカードがゴミ箱行きもありか。
恐怖で逃げ回ってるアフリカ人、クルドの難民や政治犯、おまえと大違いで死ぬほど嬉しいだろうがな。
ちょっと待て、メグに代わる」
「耕二、トライしてもいいんじゃない。
ロバートもアントンもみんな楽しみにしているわよ」

2ヶ月後、書類を添えて移民局に送った。
考え直してトライすることにした。
まだ強制送還の仕返しが残っていた。
ゴミ箱にいつでも捨てれる。

クリスマスに、インド、プッタパルティのサアティア・サイババの医療施設にいる光から電話があった。
「グリーンカード取れそうだって、角さんから連絡あった」
「上手く行ったらおまえの申請書、毎年出しとくよ。
おまえ、、、パワーあるから必要ないか」
「もういいよ、USは、、、興味ないな」
同じように思っていたのでおかしかった。
強制送還された仲間だ、、、

「昔はUSにあこがれていたのにな。
もう、そっちに行って10年か?
光、居ついちゃいそうだな」
「忙しくて動けないよ。
それはそうと、おまえのヒーリングパワーはどうなった?」
「くすぐるようなこと何度も言うな。
前にも言ったとおりトライしたことはあるさ。
考えてみろ、額に手を当てれる状況なんてそんなにないぞ。
あってもな、こっぴどく怒鳴られのがおちだ、この国は。
意識のない子や屋根から落ちた大工さんとか、、やろうとはしたんだけどな。
たまたま、あのときは偶然が重なったんだ。
おまえはどうなんだ?
パワー、そっちで強くなったんじゃないの?」
「患者の治りが早くなったよ。
ここは天国のようで皆よく笑うせいだ」
「そうか、今度いつ会えるかな?」
「いつでも好きなとき会えるさ。
耕二、パワー使える機会があったら、何言われても、どんなときでもトライしろ!
約束だぞ!」


年が明けて、東京、米大使館から1月17日に面接をする、と通知があった。
当日は異常なまでに緊張していた。

面接は10分とかからなかった。
戸惑った、結構USもいい加減だ。

「合衆国に行ったことは」
「観光で1度だけ」
じろ^と俺の顔を見た。
「米入国時に、写真、指紋を取り、通常、一月後にグリーンカードを送付する」


ボブ・レノンが残していったファイルの漢字名は同じだった。
身長、それに右眉毛上の三日月状の傷跡も。
5年前、送別会で撮った写真を探した。
きれいな三日月だった。
シアトルのカミンスキーの元使用人に電話をかけた。
「東洋人の写真を見ればわかります?」
「緑内障で3年前に失明しました」

ボブ・レノンの過去を調べてみた。
婦女暴行、殺人未遂、ヘロイン密輸事件のほか、ベトナム戦争当時、村を襲って、52人の村民を殺害していた。
小隊は全員、無罪になっていた。

レノンは憎いベトナム人を殺していた。

レノン訪問以来、夢に出てくる母は一人になっていた。
見たくなかった。

2年前、風はシャギーからマニアックユースと名を変え、ネオナチ、極右に変質したバンドをひどく怒っていた。
何度か、風に電話をかけようとしたができないでいた。
受話器を取った。

「誰だ、、、こんな時間に。
4時だぞ」
「あ、、悪い、時差忘れてた!
またかける!」
「誰だ!」
「マーク、マークボラン。
シャギーの」
「マーク?マーク?シャギー?
ああ、、おまえか?
どうした?こんな時間に。
自殺でも考えてんのか?」
「いや、悪い、また電話するよ」
「いいよ、話せよ。
また、っては期限がねぇからな。
どうだ?マニアックオールドは?
相変わらずか?」
「マニアックユース、オールドじゃあない」
「ネオナチに命狙われて逃げたくなったんだろう。
言わんこっちゃねんだよ。
どうだ、単細胞のスキンヘッド君たちは、元気か?」
「去年バンド抜けた」
「ほう、おまえは他のメンバーと違って偏見持っているようには見えなかったが、
そういうのが逆にやばいのもいるからな。
あ、そうか、、、心臓か?、、悪かったよな」
「そうです」
「悪くなるわな、殺せ、ぶっ殺せ、なぐれ、の歌じゃなあ。
で、なんの用だ」
「新しいバンドのことで相談したいんだ。
コナのバンドで日本でデビューできないか」
「残念だが、力貸せない。
2月にNYだ。
当分向こう暮らしになる」
思わず言葉か詰まった。
「い、、、、、つ、、いつ?」
「二週間後の2月25日だ」
「来週、日本に行く予定なんです!
偶然、俺も25日に日本からNYに飛ぶので便を教えてください。
乗ります。
バンドのことでどうしても力を貸してもらいんで」
「何だ、こっちに来るんなら会うか、ちょっと準備で忙しいがなんとかするぞ」
「いや、いいです。
便を、、便を教えて下さい」




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25:下ヒッチハイク 東京ーNYこのエントリをはてなブックマークに登録

25:東京―NY

2月25日・成田発NW15便を予約した後、レノンに連絡した。
「心臓が悪いのに日本に飛んでそれからNYですか?
相当脈があるとお思いのようですね」
「写真送る」
「写真があるのですか!」
「5年前、日本でバンドの世話をしてくれたときのがある」
「わかりました。
写真着き次第、看護婦に確認してみます。
ニ、三日後に連絡しますから。
同一人物なら驚きものですね、大佐の息子さんの知り合いだったなんて」
「殺しには関わりたくないので、風とは離れて到着ロビーから出て来る」
「じゃあ、一緒に出てきたら別人ということにしましょうか」

それから一週間後、
「遅くなりました。
彼女、車の事故で入院してましてね、結論から言うと、?マークです。
東洋人、見分けがつかないわ、と言ったかと思うと、でも、なんとなく似てるわ、と確認できませんでした。
「私は23日に東京へ発つ。
NYで一緒に出てこなかったらあなた次第だ。
私は一切、関知しない」
「必ず始末しますのでご安心ください」

成田に着いてタクシー乗り場へ行こうとしたとき、すれ違った若い女性の携帯にペースメーカーが微妙に反応した。
恐くなった。
ホテルから一歩も外に出られなくなった。



機内は空席が目立った。
マークの姿はなかった。
久しぶりのUSだ。
胸中は乱気流に遭遇した飛行機のように不安で揺れていた。
昔の習性だ、どこのイミグレ(移民局)にも緊張する。
窓のカバーを上げた。
若い頃の自分が真っ青な空で泳いでいた。

光、角さん、ミスターF,エバ、ロバート、
メグ、チャック、キース、ハイメ、彼らの顔が浮かんでは消えていった。
角さんとメグの長男がもう20歳だ。
ミスターF、エバ、チャック、キースはもうこの世にいなかった。
ハイメは、アルゼンチン脱出後、バルセロナのお姉さんの元にしばらく身を寄せていたが、
1976年、ブエノスアイレスに戻って行方不明になった。
彼のお母さんの手紙によると、ブエノス空港で仲間の目の前で何者かに連れ去られたらしい。
70年代、アルゼンチンでは多くの若者が忽然と消えた。
当時の軍事政権の仕業だ。
やっと、最近になって事実の解明が明らかになりつつある。

ミスターFは1973年、“カタリ派虐殺の真相”というタイトルの本を出版した。
当時、ヨーロッパで大反響を起こした。
一年後、精神を病んだ牧師に放火され、エバさん、ミスターF、二人とも焼死した。
2ヶ月後に会いに行こうと決めた矢先だった。
焼死した日に、カタリ派の青い衣がミスターFから届いた。
葬式の日、快晴だった天候が急変し、大雨、雷が3時間近く続いた。
あのときの出会いが最初で最後になってしまった。


いつ座ったのか横にマーク・ボランがいた。
顔が青白い。

マークは疲れていた。
NY到着までまだ5時間、計器の音にいらいらしていた。
心臓とペースメーカの間に若干ギャップがあった、もう長くないかもしれない。

「マーク?
久しぶりだな。
ファーストクラスか?」
「ええ、、、」
「心臓、悪そうだな」
「移植しても難しいようです」
「マニアックユースと違って今度はLOVE&PEACE(愛と平和)でも歌うか?」

マークは風が60、70年代のロックに詳しいのを知っていた。
父は1971年、7月16日に亡くなっていた。
ドアーズ(doors・usロックバンド)のボーカル、ジム・モリソンが71年の7月3日に亡くなっていた。
その頃、風かどこにいたのか聞き出そうと釜を掛けた。

「そうです。
LOVE&PEACEです。
今度のバンドはどこかドアーズを感じさせるようなバンドです。
あの時代、風さんはアメリカにいたことがあると言ってましたね。
ジム・モリソンは密かにパリで埋められて数日後、公表されたというのは本当ですか?」
「古い話だな、そうだ。
確認されてはないが浴槽で心臓マヒ起こして死んでたそうだ。
彼の奥さんも74年にヘロインで亡くなってるから彼の死を確認した人はもう生存してない。
未だにどこかで生きてると信じている人もいる」
「彼が亡くなった当時はどこにいたのですか?」
「やけにジム・モリソンに興味があるんだな。
なぜそんなことを聞く?」
「コナのバンドのボーカルがジム・モリソンという名前です。
何かの縁かなと思いまして」

ついさっきまで旅の回想をしていた。
くすぐったいような変な気持ちだ。

「USだ。死んだと聞いたのはバンクーバーの移民局だ、ベリングハムとか言ったかな」

バンクーバー、、マークは緊張した。
悟られないように冗談を言わないと。
「移民局?密入国でもやって捕まったのですか?」

風がひどく驚いた。
気まずい雰囲気になった。
ゲームを止めて、単刀直入に聞いた。
「バート・グレンという名に心当たりはありませんか?」
「バート・グレン?ない」
「では、ボブ・レノンは?」
「ない。そのドアーズに似たバンドメンバーの名前か?
以前はどのバンドにいた?」

マークは質問を無視した。

「グレン大佐は?」
「グレン大佐?、、、会ったことはないが昔、名前は聞いたことがあるよ」
「どのくらい前です?」
「君は大佐の何なんだ?
もしかして息子か?」 

マークは深呼吸をして興奮を押さえようとした。
酸素が少ない。

「マーク・グレンが本名です。
父でした。
あなたのおかげで母と私は父の死後苦しい生活を強いられました。
母は88年に亡くなりました、最後の職業は売春婦です。
ボブ・レノンは父の元部下です、去年、刑務所を出たそうです。
彼からあなたのことを聞きました。
あなたがひどく憎い。
あなたが私の父を殺したのですか?」
「殺した?どういう意味だ、大佐は交通事故で死んだと後で聞いた。
ある人に頼まれて俺は証拠の写真を届けただけだ。
大佐にも、その元部下にも会ったことはない」
「証拠の写真?」
「今のおまえに言っていいのか?」
「お願いします」
「ベトナム戦争当時、ヘロイン前に大佐がパーティをしていた5枚の写真だ」

9歳のとき、コロラド州、デンバー市の図書館で写真のことを知った、それが裁判で決定的な証拠になった、と。

「シアトルのカミンスキー議員の邸宅であなたを見た人がいる」
「カミンスキー?大佐の片割れの上院議員だな。
残念ながらそれは何かの間違いだ。
彼の邸宅に行ったことはない。
そもそも俺はシアトルに入れなかった、密入国しようとはしたがね」

マークは喘ぎながら聞いていた。
よかった、
見つけたぞ!
お母さん!
見つけましたよ!
レノンが始末してくれる!



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26:下ヒッチハイク. NY. ケネディ空港このエントリをはてなブックマークに登録

26:NY ケネディ空港

マークがおかしい。
痙攣だ!
心臓マヒだ!
医者は乗ってないか!
スチュワデスが走ってきた。
「医者が乗っていないか探してくれ!」」

右手を彼の額に当てた。
真っ青だ、、
喘ぎがひどい、酸素を求めている。
もう長くはないように思われた。

スチュワデスと機長が足早にやってきた。
「残念ながら医者は乗ってない!
到着まで後4時間、持ちこたえられないか、、」 
機長はマークを見て、諦めたように呟いた。

額に右手を当て、ミスターFに祈った。
機長は怪訝な面持ちで見ていた。

来る度に、少しずつマークの顔に赤みが差し、呼吸が落ち着いていくのを見て不思議そうな顔をした。

発作から3時間後、呼吸はほぼ正常に戻った。
マークは安らかな寝息を立てて眠っている。
「あんなひどい発作を起こしたのに驚きました、
右手を額に当てて何をしていたのですか?」
「まじないです、効いてよかった」 

午前10時、NY・ケネディ空港に着いた。
マークは救急車で病院に搬送された。

救急隊員に座席から担ぎ上げられたとき、風が目に入った。

まだこの世に、、
どうして、、
、、、、、、
よかった、
これでレノンが、、
お母さん、喜んで、

スチュワデスが救急車までマークに付き添った。
「いい友人を持ってよかったわね。
彼がいなかったら危なかったわ。
3時間近くあなたの命を救おうと必死だった。
いい友達を持ってよかったわね」

風が俺の命を、、 嘘だ!

信じられなかった、、信じたくなかった。
酸素が少なくなってきた。
発作が来そうだ。
酸素マスクが邪魔だ。
取ろうとした。
マスクを押さえつけられた。

酸素マスクが邪魔なんだ!
レノンに知らせなければ!
レノンに!
ああ、、痙攣が始まってしまった。
注射針か、、
今、注射はよしてくれ!
駄目だ!
注射は!
、、早く!
レノンに知らせなければ!  
違うんだ、、!
風じゃあないんだ!
殺さないでくれ!
頼む!、、、、


救急隊員に担ぎ上げられたとき、目を覚ましたマークが、俺を見て不思議な笑みを浮かべた。
よかった、偶然だろうか、、
パワーなのか、、、

イミグレが見えてきた。
拒否されたら帰る覚悟はとっくに出来ているのに緊張している。
馬鹿な旅行者だ、、
俺の心臓は破裂していた。
もう歩きたくない。
このまま、日本に帰りたい。
密入国の復讐なんてつまらないことを考えたもんだ。

まただ、パスポートを調べてる。
別の係官を呼んだ。
また別室だ。
別室は嫌なんだが、

黒人の係官がいた。
「ミスター・カゼコージ、二、三聞きたいことがあります。
正直に答えて下さい。
いいですか」
「はい」
「あなたは“DVグリーンカード抽選プログラム”申請書の書類にサインをしていますね」
「はい」
「書類に嘘、偽りなく書いたのでサインをしたのですね?」
「え、、、はい」
「以前、米国で不法退去の勧告を受けたことがあるか、という欄がありました。
あなたは、“ノー”とサインをしていますね」

ほら来た。
記録が残ってた。

しらばくれた。
「どいうことでしょう?」
「1971年、7月17日、あなたはカナダ、バンクーバーから合衆国に密入国して捕まっていますね?」
「、、、、はい」
「あなたの“DV・抽選プログラム”当選者の権利は剥奪されました。
今日中に日本へ送還されます。
異議ありますか」
「ありません。
時間をいただけませんか、迎えに来ている友達に説明したいので」

やっぱりOUTだ、USとは縁がない。
もう、いい、この国は。

それから20分後、角さんとメグに移民局内の個室で再会した。
「また駄目か」
メグが、内密の話があるから、と移民官を遠ざけた。
「キースの知人が移民局にいるの!
偉いのよ。
耕二、まだ諦めないでよ!
電話してみるから待っててくれる!」 
メグの肩を優しく抱いて、角さんが俺の気持ちを代弁してくれた。
「その人の力を借りるのは彼は嫌だと思う。
トライしたけどうまく行かなかった。
俺たちに会えただけで満足した顔をしてるじゃないか」
「メグ、一応、ここは空港だけど、アメリカ合衆国内だ。
あれ以来、この国に入ってないからさ。
復讐達成だ、もう満足」

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完:下ヒッチハイク. エピローグこのエントリをはてなブックマークに登録

エピローグ

東京に着いたらどうしようか、ゲート前の待合室で悩んでいた。
もう部屋も行く所も無い。

そうだ!インドだ、光に会おう。

成田で飛行機を探すのは億劫だった。
移民官に頼んだ。
「東京ではなくインドにしてくれませんか。
どうせ運賃を払わされるんだからどこに出国しようが問題ないでしょう。
行き先ぐらい決めさせてください。
お願いします」

スチュワデスが隣のゲートから叫びながら走って来た。
「ドクターはいませんか!
ドクターは!
ドクターはいませんか!」 
移民官が彼女に訊ねた。
「隣の12番ゲートから出る飛行機の中で!
お客様が!
心臓発作を起こして!」

12番ゲートへ行こうとした。
俺の左腕を移民官が強く掴んだ。
「どこへ行くんだ!」
「12番ゲートに行かせてくれ!
助けることができるかもしれない!」
「駄目だ!
もう搭乗時間だ!」
「頼むから!」

強引に彼の腕を振り払って12番ゲートに走った。 
乗務員の制止を振り切って進んだ。
「医者だ!
通してくれ!」

男が二人、汗びっしょりになって人工呼吸をしていた。
一人が諦め顔で力なく俺に首を振った。
「眠っていると思って、、気づくのが遅かった。
もう停止して10分、近い」

60過ぎの恰幅のいい男の額に右手を置いた。
ミスターFを呼んだ。

「動いたぞ!!」
叫び声が上がった。
歓声と拍手が機内を揺るがしていた。
皆、俺を見ている。

男の子が、ひざまずいている俺の腕に飛び込んできた。
俺の胸でしゃくりあげた、しゃべりがたどたどしい。
「..おじちゃん..ありがとう..
お祖父ちゃんが死んじゃったら..
ぼく..独りぼっちになっちゃう..
パパ..も..ママも..遠くにいっちゃった....
.お祖父ちゃんがいないと..
ぼく..眠れない..
お祖父ちゃんの子守歌聞かないと..
ぼく..眠れないんだよ..
ミルクも..独りで飲めないんだ...
お祖父ちゃんが死んじゃったら..
..ぼく..お祖父ちゃんが.......」

涙を、何度も、何度も、手で拭ってやった。
甘そうに舐めている。
口に含むと甘酸っぱい、ミルクのにおいがした。 


到着、予定時間から45分が過ぎた。
ボブ・レノンは、マーク・ボランと風耕二の姿を到着ロビーで探していた。
ノースウェスト・カウンター内の女性に、二人が搭乗していたか確認した。
「ミスター.マーク・ボランは心臓マヒを起こして病院に搬送されています。
病院名はわかりません。
ミスター、コージ・カゼは合衆国に入国できませんでした」
「強制送還か?」 
「入国できなかったとしかわかっていません」 

なんてことだ!
これじゃあ奴がどっちかわからないじゃないか。
病気持ちを相手にするんじゃなかった。
大佐の子はやっぱり大佐の子だ。 


4時間後、アテネ経由のインド・ボンベイ行きの機内にいた。
エスコートしていた移民官が上と掛け合ってくれた。
さすがに荷物は間に合わなくて東京の知人の所に飛んでいった。

アテネの空港から光に電話をかけた。
「1週間以内に行くから」
「待ってた」
「こうなるのを知ってたような言い方だな」
「さすがに入れないとはかわいそうで言えなかった。
でも今回はおまえ自身のために必要だった」
「変な言い方だな。
はっきり言ってくれればこんな無駄しなくてよかったのに」
「必要だったんだ、耕二。
この世に無駄なことなんてないよ」
「、、、、俺、、パワーを持っているのかな?
今回、、、また、、、あってな、、続いた、、」
「疑うな、素直に受け入れろ。
あれからもう何年だ、、」
「もしだよ、、もしそうなら何かそっちで手伝わせてくれないかな。
いや、持ってなくても何か手伝わせてほしいんだ」
「その言葉、待ってたよ」
「ありがとう!
それはそうと、なんか昔と逆だな。
あのときはおまえが強制送還されて俺に電話してきたんだよな。
俺たち、昔とたいして変わってないな」
「変わってなかったのは、耕二!
おまえだけだ!」


夢にお袋が出てきた。
こんなに、若くて、綺麗だったんだ、

外が白んでいた。
看護婦に日付を聞いた。
翌朝になっていた。
風が死んで自分が生きている。

携帯を貸してください。

「風は別人だった、、
ちがった、、
彼は別人だったんだ、、、」
「マーク?
何をおろおろ泣いてんだ!
寝惚けたことを!
別人だろうが何だろうが奴は合衆国に入国できなかったんだ!
強制送還だ!
16時間も待たせやがって!
次はこんなへまをしないようにな!」 

     完    
    osamu

参考図書
『臨死体験 上下』立花隆著,文藝春秋
『死ぬ瞬間』E.キューブラ.ロス著 川口正吉訳 読売新聞社
『死後の事実』E.キューブラ.ロス著 伊東ちぐさ訳 日本教文社  
『異端カタリ派と転生』原田武著 人文書院
『さらばKGB』ティエリ・ウォルトン著 吉田葉菜訳 時事通信社 






 


   


 

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dorock修

Author:dorock修
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