19:下ヒッチハイク. ウィスラーマウンテン

19:ウィスラーマウンテン
20:バンクーバー
21:シアトル 密入国
22:東京 強制送還
23:ハワイ島 コナ
24:東京 グリーンカード
25:東京ーNY
26:NY ケネディ空港
完 エピローグ
19:ウィスラーマウンテン
それから四日以内に、5枚の写真とキース・スコット宛の手紙が別々に届いた。
写真と一緒に、2万$のアメリカンバンク・チェックが入っていた。
翌朝、角さんはシャーキーと接触するため外出した。
約二時間後に戻ってきた。
「公衆電話の梯子を5回もやったんで時間がかかった。
シャーキーの野郎、写真を渡せだとくどいほど言いやがった。
ロバートが耕二に直に渡して欲しいと手紙にあったから駄目だと言ったが、、うるさい、あいつは」
「ロバートとチャックはシャーキーも誰も信用していません。
俺だけです」
「キースに直に渡して欲しい、と念を押された。
写真紛失はすべてを無にするとな。
奴がグレン大佐一味をワシントン州シアトルにあるCIAの隠れ家におびき寄せる。
その間に耕二はウィスラーマウンテンのキース・スコットに会って写真を渡すことに決まった。
今日が7月9日、金曜日だから五日後の14日、水曜日の夜八時が会合時間だ。
どうだ、やれるか?」
「なぜシアトルなんです?
黒幕の一人がワシントン州選出の上院議員ですよ。
それにロバートの兄貴は今バンクーバー郊外ですよ。
ラス・ヴェガスとか、遠い方がいいんじゃないですか近過ぎます」
「カミンスキー上院議員の関与を証明するためには地元のシアトルで捕まえなけばいけないそうだ。
向こうの都合のいい捜査方針だ。
その分、耕二にはくれぐれも気をつけるように伝えてくれと言ったがな。
CIAなんざ、こっちの危険など考えてない。
どうする、耕二、降りるか?
写真を渡すのも逃げるのも危険だ」
「やります。やばくなったらアラスカにでも逃げます」
「キース・スコットには耕二の名は“サカモト”だと知らせてあるそうだ。
14日の正午、その名で1回キースの山荘に電話を入れるようにと言われた。
相手が、キース、と答えるから、耕二は、サカモト、とだけ言って切る。
それが合い言葉だ。
俺がアムステルダムのパラジッソで会ったジャパニーズのヒッピーがコージか、とシャーキーに聞かれたよ。
Dogshit(犬の糞)が臭かった、とか訳の分からんことを言ってた。
明日トロントに飛べ、14日にバンクーバーに入るのが安全だ。
現地時間でいいから朝10時か午後10時に必ず一回電話をくれるか。
何かあったら俺が行く。
光はもうオーバーステイ(不法滞在)してるからな。
おまえは合法的に出れてよかったな。
またアメリカに来る気なら日本でパスポートを新しくして出てこい。
もうスタンプ押すとこはないだろうからな」
「はい、そうします。
7月17日まで滞在ビザはあるし、髪の毛はほどほど伸びたし。
もうここに閉じ込もるのは限界です」
翌朝、トロントに向け出発した。その夜は市内にあるYMCAに泊まった。
ここもヒッピーが多かった、ベトナム徴兵拒否して逃げてきたアメリカの若者が多くいた。
12日夜、グレン大佐は怒り狂ってボブ・レノンを睨んだ。
「ババの足取りが全くつかめないとはどういうことだ。
変な動きもなかったのか?」
1週間ほど前の夕方、メグの勤め先に30数人のヒッピーミュージシャンたちが15分間、店内にいた、と変な報告を受けた。
「色んな楽器がありました。
この地球には変てこな人種がいるなって感心しました。
シタールを持ったインド人が二人いたんでフレドリック・ババだと思い後をつけました。
RCAビルに消えました。
ガードマンに聞くと、あんたたち、あの有名なシタール奏者も知らないのか、とこけにされました。
なんでも、ラビ・シャンカールって名でした。
ボブさん、聞いたことあります?」
ラビ・シャンカール?
なんでインド人がここで有名なんだ。
三日前、シャーキーがNYからの電話に応答したので追いかけたが駄目だった、と報告を受けていた。
「大佐、お言葉を返すようですが、
ババはピエロでネクタイは裏表、ドイツ-インド系、WASPのジャパニーズ系のウルトラTバックのスモウレスラー、ストリッパー、これ聞いただけで想像つきますか?
特徴といえば右目に三日月形の傷跡があるだけですよ。思考の限界を超えてます」
「なんだ、それは?
おまえは詳しく報告してなかったようだな。
ピエロにネクタイは裏表、Tバックのスモウレスラーストリップだと!
なんだそれは」
それを聞いて、大佐がため息を吐いたとき電話が鳴った。
「大佐!妹とシャーキーの電話盗聴しました。
今テープ流します」
(メグさん、手短にキースさんはどこです。
ついさっきフレドリック・ババから写真が手に入った、と連絡がありました。
すぐにでも彼に見てもらいたいのです)
(今、兄はシアトルにいます。住所は -GOLDEN-ARROW〜〜です。
ババはいつ行けるのですか?)
(15日の午前0時に伺います。キースさんにそうお伝えてください)
(はい)
「よくやった。
シアトルか、ジョージの地元じゃないか」
「大佐、ロバートはなぜ写真を公表しないんですか。
ネガを持ってるはずですよね」
「何らかの理由で現像できない、とも考えられるな」
「でも、5枚、写真があります」
「ネガが役立たずでババの手元にある5枚の写真しかない、としたら辻褄が合う。
シャーキーも今ネガと言わなかった。
ヒギンズがメグの部屋には何もなかったと、と報告したな。
キースが生まれ変わって動き出したところを見ると写真はキースのとこにあったかもな」
「おかしいじゃあないですか。
ババは写真をキースのとこに持って行こうとしているんですよ」
「どこかにあったが今はないんだ!」
「キースに見せる前にその写真を没にすればいいんですね?」
無事バンクーバーに着いた。
翌朝、午前10時、約束どおりキースに電話した。
すべて順調で、今夜、写真を渡すだけだ。
午後2時過ぎ、レンタカーを借りに行った。
店員が国際免許証を見ている。
「パスポートを見せてくれ」
さいわい、誰もいない。
「ここの数字が読めなかったと言えば、あなたの責任にはならないでしょう」
有効と取得の《月》を爪で引っ掻いた。
15五分後、ウィスラーに向かっていた。
金は万能だ、物欲のある人間には。
14日、グレン大佐自ら率いた総勢40人もの男たちが、シアトルのジョージ・カミンスキーの邸宅に集結した。
「キースの所は何人見張ってる?」
「10人ほど。猫一匹、逃がしませんから御安心ください。
ここから車で10分程の所です」
「シャーキーは?」
「昨日夜遅く着いてキースと合流したようです」
「モーランとウィットローは?」
「報告では、モーラン大佐はカナダのウィニペグに行ってます。
カナダ軍参謀部との定期的な会合らしいです。
ウィットロー参事官はワシントンにいると確認できました」
ウィスラーまで5時間のドライブだった。
山、湖、気分は最高だ、途中、ドライブ・インに寄って時間を調節して、夜8時、山荘に着いた。
暗闇から、自動小銃を持った6人の男が出てきた。
応接室には男が二人いた。
ソファに座っている軍服姿の男が、ケネス・モーラン、と自ら名乗り、向かいのソファを指さした。
キース・スコットはベッドに横たわっていた。
額のほくろがあの時より大きく見える、それまでもが生き返ったようだ。
モーラン大佐の言葉が目覚まし時計のように響いた。
「二人ともすでに顔見知りのようだが、私は初対面なのでね。きみがサカモトかね」
「本名はコージ・カゼと言います。国籍はジャパンです。
たまたまスペインのバルセロナで、ロバートとチャックに会いました。
約四ヵ月後、彼らと偶然コロンビアで再会しました」
これまでの経緯を二人に説明した。
そして、5枚の写真をテーブルに置いた。
二人はしばらく見ていた。
モーラン大佐が受話器を取った。
数分後に現れた軍服姿の男に写真を手渡した。
大佐は俺たちに別れの挨拶をして消えた。
5分後、ヘリコプターの飛び立つ音が山荘を覆った。
その間、キース・スコットは俺の顔を凝視していた。
やがて軽く息を吸い込んで口を開いた。
「君には言葉に言い表せないぐらいの感謝の気持ちで一杯だ。
メグ、ロバート、それに私、君とロバートの出会いがなかったらすべてが無だった。
二人はやがて殺され、メグは病院に逆戻り、私は目覚めることなくこの世を去っていただろう。
君のような若い青年に救われたことが新鮮な驚きだ。
危険なことを完璧に遂行した君の勇気と知力に感服している。
私が今ここにいれるのも君のおかげだ、とメグが言った。
それがわからない。
一年九ヶ月もの長い間、意識不明状態だった人間が、なぜ意識を取り戻したのか。
もしメグが言うように、君がそれに関係があるのならぜひ教えてほしい」
「関係ありません」
「私が意識を取り戻したのは君がサナトリウムを訪問した翌日だ。
それにメグの震えがある。
彼女は、君が手を取って深呼吸をしていると震えが止まった、と言った」
「ただ、一緒に深呼吸しただけです」
「サナトリウムの私の病室で君は何をした?」
「お祈りをしていました」
「病室での行動をできるだけ詳しく教えて欲しい?」
「Sixtetのジャケットから5枚の写真を取り出してバッグに入れました。
それからあなたの額に手を当てある人を呼びました」
「私の額に触れて祈った?
その、ある人とは?差し支えなければ」
ミスターF、パドレ・ピオのことを彼に話した。
「パドレ・ピオがミスターFにやったことを君は私にしてくれたのか?」
「わからないんです。
何をやろうとしているのか、何をやっているのか意識はあるんですが、、無いんです。
半ば無意識に手が行くんです。
その、何かをしてあげたい、しなければ、、とか、、そういう意識がさせるんです。
俺はただ繋げている道具みたいな、、俺の手を使ってミスターFとパドレ・ピオが仕事をする、というのに近いと思います。
上手く言えませんが、ただ、俺の役割は繋げて祈るだけです」
「祈っているとき君は何を感じる?」
「俺の祈りとは、ミスターF、パロレ・ピオのエネルギーを体内に入れる作業です。
手が熱くなります。集中していますからその間のことは何も覚えてません」
- [ 下ヒッチハイク ]





